プリキュア5の世界に転生しました…悪役サイドだった者ですが。 作:クルミ割りフレンズ
「一体どういう事ですかコレは!」
「どうもこうも無ぇ、見たまんまだろうが。」
エターナル本部にて黒いローブの男とアナコンディがある一室にて向かい合っている。アナコンディは声を張り上げると共に手に握っていた紙束、ローブの男が提出した報告書を思わず机に叩きつけてしまっていた。
報告書とは名ばかりの代物であるがそれはいつもの事。寧ろ報告書すら書かない事もあるこの男の相手は幾分か慣れ始めていたが今日はいつもと比べても少々機嫌が悪かったのが重なってしまった。部下たちが何度も出撃してはローズパクトの回収は叶わずイライラしていた。そんな時にこの男だ、いつも通りのこちらを舐め切った態度にふざけた報告書。当の本人はソファーにふんぞり返って足まで組んでいる。
男の提出した報告書の内容も欄など無視してデカデカと「○○回収」だけである。確かにエターナル内にはネバタコスの様な横柄な態度の者も居るがここまでは無いし報告書だって他の部下共々しっかり提出している。
「別に良いだろうが、仕事はやってやってんだ。感謝してくれても良いぐらいだ。」
「何を世迷言を。大体ローズパクトだって回収されていないばかりかプリキュアと一緒に居る者にも貴方は敗北しているようですが?」
「そもそもローズパクトとか言うモンの回収担当はあのサソリとハチの2人で俺じゃ無い。それに負けたのは俺じゃなくてドーパントだ。負けた原因も人間どもが脆弱だからに他ならない。」
怒鳴ってから怒りが一周して逆に冷静になった為少しでもと皮肉を言うが男は全く意に介さず、こちらを舐め切った態度を崩す事は無い。確かにこの男態度も口調も悪くオマケに報告書すら出さず出したとしてもこの内容だが仕事自体はキッチリしている。
「さっきも言ったがよぉ、仕事はやってるぞ。お前の部下たちよりもなぁ。」カチ
「ICEAGE!」
アナコンディが怒りこそしても正面切って強く出れない理由。単純に男の戦闘力もある。が一番の理由は男の背後にある夥しい数の氷漬けになった物品の数々にある。
今はもう絶滅してしまったと言われている動植物たち。歴代の名匠たちが作り上げた調度品や宝石、世界中の美術館が喉から手が出るほど欲しがるであろう絵画や彫刻などの美術品。既にエターナルの持つリストの5分の1はこの男によって埋められている。
「瞬時に凍結させたからなぁ、死んでも無いし壊しても無ぇ。これでもまだ何か文句あるかよヘビ女。」
またアナコンディをイラつかせるが確かに結果を出し続けている。なまじ自分の部下たちよりも成果は出している為他の部下ほど強く出られない。
「もう何も無いなら俺は帰るぜ。」
「待ちなさい、またドーパントとやらを差し向ける気ですか。」
「駄目だな、ドーパントじゃ奴の相手は務まらない事が分かった。精々嫌がらせが良い所だ、前も確実に死ぬと思った実験台が生存していた。
そもそも被害を顧みなければ奴はどんなドーパントでさえ瞬殺するだろう。」
「奴、貴方がずっと付け狙っているウェザートという者でしたか。」
「ああそうだ!『ウェザート』その名を聞くだけでも捻り潰したくなる!」
「それで、貴方はどうするおつもりで?まさか...」
「クククああ、お前が思っている通り。今回は俺自ら出張る。」
男は不気味に笑いながら漆黒のローブを翻しながらその場を後にした。
◇ ◇ ◇
さて、こまち さんのお姉さんである まどか さんを救けて早数日。特にエターナルの連中が仕掛けて来る事も無く比較的穏やかな日常を過ごしていた為今がどの辺りなのか分からずちょっと悩んでいました。
そこでど忘れしていましたがまだフローラさんが立体映像よろしく青いバラについて少しだけ話すイベントが起こっていませんでした。偶々私が居ない時にあったのかもとそれと無く聞いてみましたが特に無いとの事。
つまりこれから起こるのだろうと最近ナッツハウスに通い詰めてお手伝いをしています。先日の事もあって割とアテにならなくなって来た私の原作知識、でもこれが当たらないと困る事態もありますし何より私がミルキィローズと会いたいという重要な目的もあるのでイベントの把握は大事です。
それで休日という事もあり、今日も今日とてナッツハウスでお手伝いです。とは言え今は休憩中、私や年長組が持ち寄ったお菓子でティーブレイクの準備中。
「シロップさん、今からホットケーキを焼いてくるから待っててもらえるかしら。」
「ほんとうロプ!」
シロップ君はホットケーキが食べたそうだったので こまち さんに頼んで買い置きしておいた材料で作ってもらっています。こまち さん以外にも りん さんに作って頂いている時もありますね。私も一応出来ない訳では無いのですが普段からよく料理されているお二人の方が私より美味しい物が作れますし。ほら私って人の身じゃないですしこの体になって食事そのものが完全に娯楽になってしまっています。なので気が向いた時には買ったりお店で食べたりで自炊は殆どしなくなってしまいました。
王様たちにしてもらう訳にもいきませんし多分シロップ君は食べないでしょう。後々の関係が楽しみな身としては うらら さんにも作って頂く事は考えましたがカレーを入れようとする姿が浮かんだので。かれん さんも途中までは良いんですけど卵の殻が入っても栄養的には大丈夫だと言いそう、というか一度やったので辞退して頂いてます。のぞみ さんはまぁ、そのキッチンが悲惨な事になりそうなので...。
おっと回想していたらローズパクトが光り輝き始めその輝きは更に増し続け部屋中を光で満たしました。そしてその光が収まるとローズパクトからは立体映像ながら一人の美女が。
おぉ、こうして生で見ると本当にお美しい。春先では諸々の事情があって対面する事は叶いませんでしたから、こうして会う事が出来て割と嬉しいです。
『皆さんにお伝えしなくてはいけない事があります。闇に強い憎しみと怒りが現れています。彼らは赤いバラを散らして希望を奪いに来るでしょう。
気を付けて下さい。赤いバラと青いバラの力、二つの力を合わせるのです。』
ふむ、この辺りの忠告は原作通りですね。闇の力が増しているから気を付けなさい、二つのバラの力を合わせれば立ち向かう事が出来る。この忠告が新たな戦士であるミルキィローズと出会うイベントになります。
ん?この忠告が終われば通信終了する筈ですがまだ終わっていない、というかフローラさん私の方を見ていらっしゃる?えっこれ私喋る流れですか?何か恐れ多い気がしなくもありませんが。えっとただの会釈ではアレですし、軽めのボウアンドスクレープで良いでしょうか?
『貴方は...。』
「お初にお目にかかります、フローラ殿。私の名はウェザートと申します、以後お見知りおきを。
かつては彼女たちと敵対する組織に身を置いておりましたが今は一人の大人として、仲間として彼女たちと共におります。」
あまり大仰なのはどうかと思ったので背は挨拶をする時の様に下げて右手は胸に、左手は握って腰の方に持って行く。これならあまり失礼にならないでしょう。
『そう、貴方がウェザートなのですね。』
「えっ...。」
その言葉に一瞬ドキリとしました。えっフローラさん私の事をご存じで?何か目を付けられる様な事でも...何個か思い当たる節はありますけど。いやいや、フローラさんは伝説の戦士とはいえまだ学生でしかない彼女たちを知っていたくらいです。私の事を知っていても不思議ではありませんとも。
『ならば貴方にも忠告をしなければなりません。貴方が対峙しなければならない闇は他を凌ぐ勢いで悪意と力を増大させています。
この闇は私は完全に知る術を持たない物なのです。だからどうか、この闇と向き合える貴方だからこそその対処をお願いします。』
私が対峙しなければいけない闇...十中八九『奴』の事で間違いは無いでしょう。闇の力の増大というのは恐らくガイアメモリの事でしょうか。いえ、あまり早計な事は控えましょう。
結論付けるには情報が幾らか足りません。あっ、言われた事に対しての疑問があったのですけれどもう映像は切れてしまいました。残念ですがここからは自力でどうにかするしかありませんか。
何はともあれフローラさんからの有難いお話も終わりこれで楽しいティータイム、とはならず先程のお話もあっていつもの和気藹々とした雰囲気は鳴りを潜め皆さん程度の差はあれど何処か真剣な顔で黙々とお菓子を食べるのでした。
時間は進んで次の日、今日は全校生徒による校内庭園の清掃活動です。まぁ今日は生徒を主体にした清掃なので私はその裏方に回っていますけどね。今彼女たちは不安でしょうがないでしょうがそこは頼もしいリーダーである のぞみ さんによる激励によって持ち直す筈なので心配ありません。それでも何かあれば何かしら相談などをしてもらえる程度には頼られる様にはなりましたしね。
そして同時に放課後重要なイベントであるミルキィローズとの遭逢がある筈です。本心では彼女たちの苦しむ姿など見たく無いので介入してでもスコルプさんをぶっ飛ばしに行きたいです。しかしそれでは彼女たちの成長する機会を邪魔してしまう事になってしまう。今更ですが唯でさえ異物でしか無い私が物語りを引っ掻き回すべきでは無い。まぁ『奴』の登場など割としっちゃかめっちゃかになってはいるのですがそれでも展開自体は私の記憶している物と凡そ同じと言っていいでしょう。飽くまでも推察になりますが彼女たちにとっての重要なイベント、それさえ邪魔しなければあまり問題は無いのではないかと考えています。
兎にも角にも今回は出来るだけ手出し無用という方向性で...っ。
「何でしょうかコレは、雨が降るからという理由だけでは無さそうです。やけに嫌な風が吹きますねぇ...。」
自分の作業をこなしていれば時間は既に清掃活動も終わりに近く、空も段々と曇っていっています。ただの気の所為であれば良いのですがこの風、どうにも心の何処かで警鐘が鳴り続けます。
こういった時の嫌な予感って当たるから嫌なんですよねぇ。
という事で放課後です。私ももうお仕事は済ませたので一緒に帰ろうと誘われたのですが泣く泣くお断りしました。時が経てば経つ程どうにも警鐘は大きくなっていく。
空模様はその不安を煽るかの様な曇天、というかもう直ぐに降り始めますね。スコルプを補足しましたし、あちらでは事態は既に開始している様です。取り敢えず当初の予定通りに今回は見守りましょう、必然的にココさん達が酷い目に遭うのを見過ごす事になり心苦しいですがね。
おや等々降り始めましたか、記憶通りならこの後にブンビーさんが来てココさん達をっっっ!?!?!?!?
この吐き気がこみ上げる程の悪意と力、間違いない。
「『奴』だ。私の
「WEATHER!」
居場所が分かれば直ぐにでも時計塔へと転移します。放っておくなど論外です、奴なら何をするか分かったものじゃありませんから。
急いで時計塔まで来てみれば奴は壁に凭れかかりながら私を見ていました。何だ、今度は一体何を企んでいる?
「クククよぉ、今回は最初から臨戦態勢だな。気配を出せば直ぐに来てくれる、嬉しいぜぇ。」
「あそこまで露骨では気付くのも当然でしょう。今度は一体何を考えている?」
「そんなもん無ぇよ、今回は俺が直々に出て来たまでだ。ドーパントじゃ嫌がらせにしかならないみたいだしなぁ。」
成程、我々以外に他の者が居ないのもそういう事ですか。
ここに来て改めて思い返しましたが奴の実力は未知数。私が知っている事は奴はガイアメモリを作れて私にダメージを負わせる位の実力は持っているだろうという事程度。どんな能力を持っているのかさえ私は知らない。
知らないという事がここまでストレスになるとは思いませんでしたよ。
そしてもう一つ分からない事、それは奴の正体です。最初に会った時から奴は私に対して並々ならない悪意を向けて来ていた。秋元まどかを捕えてドーパントに変えたのも恐らく奴の言う嫌がらせの一つでしょう。
しかし私自身ここまで悪意を向けられる覚えが無いのも事実。ナイトメア時代も極力社内の者以外とは
「幾つか...お前と出会った時から疑問に思っていた事がありました。」
「あぁん?俺とお前は敵。これ以上に分かり易い事は無ぇだろうが。」
「そこですよ、あの時初めましての時からお前は私に強い悪意を向けて来ていた。無関係の人間を巻き込む事すら厭わない程の悪意。」
「......。」
「お前という存在にはっきり言って見覚えはありません。初遭遇の時ならまだしもガイアメモリすら作ってしまう様な輩。
こんな特徴を持つ奴が居れば忘れる筈がありませんからねぇ。今まで関わって来た方を思い返しても分からない、お前は一体誰ですか。」
「......。」
私と奴の間に沈黙が流れる。それどころか先程まで垂れ流す様に私に向けられた悪意すら霧散しています。何だ?一体何を考えている?
しかしこの奇妙な沈黙は奴の盛大な溜息と共に破られる事になりました。
「...はあぁあ。」
その溜息は全力で私に対して呆れているような、何処か馬鹿にしてくる様な物でした。どういう事だ?やはり私と奴は過去に何処かで出会っているとでも言うのか?
「おいおい俺と出会って数か月経ってるってのに俺が誰かも分からなかった、てか?呆れた奴だなウェザートォ。」
「何が言いたい、それとも我々は過去に出会っていたとでも?」
「いいや。成程なぁお前からすれば俺の事なんか眼中に無かったから知らなかったって事だろぅ?」
「一体、何を言っているのですか。」
奴からまた悪意がこちらに向けられてくる。単純な害意だけじゃない、これは嘲りですかね?口調も何処か笑っている様にも感じられます。
「あぁ俺の正体、だったか?」
奴が溜息を吐いてからずっと俯かせていた顔を上げる。
その時私と奴の間に一際強い突風が吹きました。そして、その風でフードがはためき今まで闇の様に暗く見る事が出来なかった奴の顔が見えました。
そんな、馬鹿な...ありえない!奴は!コイツの『正体』は、まさか!
「なっ!?お前の、正体は!」
「ククク...!」
まぁこの時私は激しく動揺してしまい、奴に対しては隙を晒すには十二分な時間でした。
◇ ◇ ◇
「いててっ」
「大丈夫なの?」
「うん、何とかね。あれ?あの子は何処行ったんだろ?」
所変わってサンクルミエール学園にてプリキュア5の面々は
自分たちがスコルプによって誘き出されている間にココ・ナッツ・シロップを人質に取られ、動揺していた事もあっていつもの様に動けなかった為であるが今回の事を教訓にして彼女たちはまた一歩成長するという流れである。
本来の展開との違いはミルキィローズが登場した辺りから雨は止み晴れる筈が今でも尚降り続けている事だろう。何ならゴロゴロと雷鳴すら聞こえ始めている。
「皆、雨もどんどん強くなっているわ。一旦戻りましょう、雷も鳴り始めているし。」
流石にこのまま雨に打たれながら雷雲の下で過ごすのは有り得ないので取り敢えず校舎の方に戻ろうとした時だ。
ドゴオォン!!!
『っ!!!???』
その場に居た全員が驚愕と同時に警戒の眼を向ける。爆撃とも取れる程の凄まじい轟音を響かせながら地面に激突したソレ。先程ドリームがプリキュア・シューティング・スターによって地面に突っ込んだがその比では無い。まるで隕石が降って来たかの様にクレーターが出来てしまっている。
雨で土煙が直ぐに収まった為目を凝らすと...
「ぐっゴホッゴホッ!油断しましたか...!」
『ウェザートさん(ココ)(ナツ)(ロプ)!?』
「なっ!?皆さん、ダメだ!直ぐに逃げなさい!」
シロップはそこまででは無いがそれでもドリーム達はウェザートのその様子から衝撃を受ける。ウェザートとは嘗て敵だった時に二度戦った事があるからだ。どちらも手を抜かれ何なら二度目は力の3割しか使っていなかったにも拘わらず尚圧倒された程だったからだ。彼女たちは身を以ってウェザートの強さを痛感しているからこそ動揺する。
生憎表情は怪人態である為窺えないが声からしてもいつもの余裕綽々といった物が感じられず鬼気迫る物が宿っているのが良く分かる。何より状況的に見てもウェザートは何者かに吹き飛ばされて此処に来たのだと分かってしまったから。
そして空から黒い塊が降りて来た事で完全に状況を把握した。地面に降り立ったのは何度も自分達、正しく言うならウェザートの前に現れた黒いローブの男。こいつが彼を吹き飛ばしたのだと理解した。
「何だよ、氷すら覆って無ぇな。真面なダメージにすらならなかったか?」
「「「「「っ!」」」」」
咄嗟に戦おうと構える、が
「ダメだ!戦ってはいけない。自分達の状態を良く見なさい!」
何より焦っている様子のウェザートの剣幕によって制される。確かにスコルプ・ブンビーとの戦いでのダメージは蓄積している。だからと言って何故ここまで止められるのかが分からなかった。
「うん?ああそう言う事か。お前も俺の正体を知らなかったんだ、当然ソイツらも知る由も無いか。」
そう言うと黒いローブの男は徐にフードを取る。それによってウェザートと同様今まで闇の様に暗く見る事が出来なかった男の顔が見えた。
「...え?」
「どういう、事よ」
「だって、そんな事が」
「一体、何がどうなってのよ」
「あれは、どう見ても...!」
彼女達がここまで同様するのも無理は無い。何故なら
「ウェザートさんと...同じ顔」
何故なら普段は頼りになる教師としても大人としても慕っている、ウェザートと同じ顔がそこにあったからだ。
前書きに言ったモチーフ元ですが正解を言うと『ウェザー・ヘラクレスペネトレーション』が轟轟戦隊ボウケンジャーより技のモチーフはボウケンジャーの武装であるデュアルクラッシャーから。技名は同じくボウケンジャーの合体ロボであるダイボウケンドリルの『マキシマムペネトレーション』。
『ウェザー・ウルフクランチ』は仮面ライダーバルカンの必殺技『シューティングブラスト』をモチーフにさせて頂きました。