究極生命体カーズの奇妙な異世界転移   作:奈落への流星群

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帰ってきた男

体の外部から強い衝撃を感じた、がそれでもまるで卵の殻のようになっている鉱物を破壊することは出来なかったようだ。

二重三重と厚い層になっているこの鉱石はそう簡単に破壊できぬ。もし破壊出来るのであればとっくにこのカーズがしている。

内部ではなく外部の力が加わればもしやと思ったが月夜に提灯だったな。

小娘にしてはよくやったと捉えるべきか…。

 

「ち、畜生ー!!」

 

やめろやめろ!!このカーズを叩くのをやめろォ!!

そんなに叩いても壊れるわけがあるか。

この小娘、そんなにそれが大事なのか?

 

「この額に深く埋まった魔法石さえ取り出すことが出来れば…。」

 

俺の体を叩いたそのままの状態で静止してやがる。

いったいいつまでその体勢でいる気だ。

はぁ、っと深くついた溜息を俺の顔に浴びせるなッ!!

本当にムカつく小娘だ。

どうやらこの額のものが取れなくて悔しいらしいな。

俺としてはまた必死に足掻きながらも失敗して悔しがってほしいが。

うん?どうやら俺の体からようやく手を離したらしい。

そしてそのまま俺から離れていく。

どうやら完全にしょぼくれたって感じの歩き方だなあれは。

まだまだ工夫の仕方はあるだろうに。こんな短時間で諦めるとは。

初めから根気のない奴なのか、それとも元からそんなに大事なものじゃぁなかったのか。

あんなに懸命に取ろうしていたのだ。後者の可能性は低いな。

しかしつまらぬな。ちょっとした暇つぶしもこれで終いか。

…小娘、唐突に立ち止まって何をしている。

 

「また来るからなキモイのー!!」

 

はははははッ!!!面白い奴だ。これはしばらく退屈せずに済みそうだ。

だがこいつまた俺を愚弄しよって。

このカーズがいかに高等であるかいずれ見せつけなければならないようだな。

しかしあの滑稽な小娘もほんの少しは役に立ったようだ。

このカーズに対して何度か喋りかけてくれたおかげで奴が話しかけていた言語が理解出来そうだ。

石仮面をつけ、究極生命体になって得たIQ400は今だ健在といったところかな。

もし本当に膜のようになったこの鉱石を破壊してくれれば、他生物を食料にしてまた活動することが出来るかもしれん。

小娘のちっぽけな力で破壊出来たらの話だが。

また来ると言っていたし、奴が再びここに現れるのを待つか。

動けぬのでどっちにしろ待つことしか出来ないのだがな。

そういえばこうやって自分以外の誰かを認識するなんて随分久しぶりだ。

ワムウ、エシディシ。

何故奴らは誇りとやらを重視してみすみすやられたのだ。

自分の命や、俺の夢より大事なものだったのかそれは。

もし奴らが生きてさえくれれば、俺は地球を支配出来ていたかもしれんぬのに。

彼らは俺は容姿や種族は同じでも、精神や魂が違ったのか?

もしや俺の夢は最初から間違っていたというのか?

血塗られたこの手で死屍を積み上げながら登った地球の頂点はこんなにも寂しく空虚なものなのか?

このカーズが屍の山から見下し、嘲弄した人間達が勝ったのにはなにか意味があるのか?

…いくら自問自答したところでこの答えは分かりそうにもない。

ただ今は小娘が来るのを待とう。

 

何時間経っただろうか。今は昼か夜か?それすらも分からない。

宇宙で過ごした時間よりも小娘が来るのを待つ時間のほうが長く感じる。

またあの滑稽な姿を早く俺に見せてくれ。

うむ、俺を中心にして出来た隕石孔に何者かが近づいてくる振動音がする。

やっと来たか小娘。このカーズを待たせるとは実に不敬だぞ。

しかしなにか違和感のある歩き方だ。こんな奇妙な歩き方をするとはいったい…。

深く鋭く、感覚を研ぎ澄ませるのだ。地面から伝わり鉱物の体に響く微細な振動音を検知するのだ。

よし、徐々に音の正体が掴めてくる。

この歩行のパターン、前出会った小娘とは別のものだな。しかも一体ではなく複数体いるようだ。

何者だァこいつ等は。

 

「グルル、ガルッ!!」

 

今のは向かってくる生命体の鳴き声か?

この声の波長や高さから推測するに犬や狼によく似ている生物だな。

しかし地球の犬っころとは違って随分体重が重く、デカいな。

おそらく四足歩行、数は12体。

統率の取れた群れである可能性が高い。獣にしては知能指数は高そうだ。

獣如きがこのカーズに何の用だ。

一体がこのカーズを踏み台にして、額にあると思われる何かを舐めている。

舐めたと思ったら、舐めた個体にもう一体が噛みついた。

どうやら舐めた奴より高位な位階の者が叱ったようだな。

小娘が必死こいて取ろうとしていたように、こいつ等にとっても大切なものらしいな。

だが獣如きに取れるのか?

 

「グルル…、ガオッ!!」

 

なんだ!?小娘の時は比べ物にならないとても強力な衝撃を感じたぞ。

しかも俺を中心に囲んで釣瓶打ちしてやがる。

小娘のように額のものだけ取るのではなく最初から破壊して奪うつもりらしいな。

どうやら小娘の時とは遥かに生物としての格が違うようだ。

だからといっても一撃でこの鉱物を破壊出来るだけの力は奴等にはなさそうだ。

だが長時間何度もこうして衝撃を与え続ければ、層が少しづつ破壊出来そうだ。

好都合。そのまま肉体付近まで鉱物となった部分を破壊し近づいてくれれば肉体の断面から再生することが出来る。

外に出ても特にしたいことがあるわけではないが、異世界というものを見学してみたい。

この殻に閉じこもっていれさえすれば、永遠の安心と絶対の命が保証されている。

魅力的ではあるし地球の生物を凌駕したこのカーズでさえも別世界で生きられるとは限らない。

だがそれでもワムウ、エシディシが求めた誇りと人間共がこのカーズに勝った理由を俺は知りたい。

それがこのカーズが追い求めた夢の先。完成された夢物語の茶番や蛇足に過ぎないと分かっていてもだ。

あわよくば小娘がなぜ俺の額に着いたものを欲しがるのか知りたいしな。

さぁやれ獣よ。このカーズという猛獣を檻から解き放て!!

 

「魔力精製・魔凝集射(マギョウシュウシャ)!!」

 

な、なにいいいィッ!!

この小娘なにをしてやがる!!

獣に向かって俺を破壊しようとしたときの何かを撃ちやがった。

せっかくこの獣たちが俺を外へ出そうとしているのにだ!!

しかし小娘、この数この強さの獣を相手に出来るとは思わぬが何故こんな真似を。

 

「狼族なんかにそんな貴重な魔法石を渡せるか!!」

 

…なんとなく言葉が理解できるぞ。

俺の額に貴重な魔法石とやらがくっ付いているらしい。

一体いつどこでそんなものが付いたのか。

しかし獣にも人にも大切な存在である魔法石とはいったい何なのだ?

小娘が薄紫の弾丸のようなものを次々と撃ち出す。

狼の群れの足音は依然として12体のまま。

どうやら小娘が放っているものは狼達に掠りもしてないようだな。

狼達に小娘の貧相な体を貪り食われることになりそうだな。

まぁ構わぬが。どうせ小娘は俺の鉱物を破壊出来ぬ。

狼の数が減らないまま小娘が死んだほうがカーズにとっては得であるな。

自分の力量を過信して狼達に突っ込んだのが悪いのだ。

 

「単純な噛みつき、引っ掻きとかの物理攻撃に加えて、口内から圧縮された魔力の塊を撃ち出しての攻撃。」

 

「別に複雑な魔法じゃないからこそ、乱発できるし予備動作も詠唱も必要ない。」

 

「クソッ!!こいつ等強い!!」

 

どうやら小娘、なんの策もなしに飛び込んだようだな。

一方的に攻撃されてやがる。逃げるだけで反撃できていない。

終わりだな。

 

「まだ諦められるもんか。私の夢のためにも…、村のみんなのためにも!!」

 

夢、夢があるのだな。

単純なことに今まで気づかなかった。

彼女もまた夢を追い続ける夢の奴隷。

そうか、俺意外にも夢を追うものがいるのか。

 

「きゃぁっ!!」

 

小娘がクレーターの湾曲に躓いた。

狼達が涎を垂らしながらゆっくりと小娘に近づいてくる。

間違いない。小娘を食おうとしている。

 

「は、離せ!!」

 

狼達が小娘の腕に噛みつき抑える。

うつ伏せになった小娘の上から、一回り大きい群れの長らしきものが馬乗りになった。

長の鋭い牙が小娘の首筋を狙う。

何故かは分からない。何故かは分からないが。

俺はなんとかしなければと直感的に感じる。

だが俺はなにもできない、動けない。

完璧であるからだ。頂点は常に一人で仲間や他者を求めず己ののみを信じるからだ。

外に出なければ永遠の安心、永遠の究極、神のままでいられる。

この殻に閉じこもってさえすれば。

だが今この時。完璧、究極に固執していたが、今ならその究極を捨ててまで彼女の夢を知りたいと魂が叫んでいる。

動くはずのない体が震える。

狼が遂に首元に噛みつこうとした。

 

←To be continued

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