究極生命体カーズの奇妙な異世界転移   作:奈落への流星群

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魔牙狼との闘い 1

動け動け動け!!

一歩を踏み出そうと全身の筋肉を張り詰めても鉱石の殻を破ることが出来ない。

宇宙に何年いても損壊することのなかったこの体。簡単には壊れぬのか。

だがそれでも今、ここで外に出なければいけないのだ。

一歩踏み出しこの小娘と出会えば、カーズが求めた夢の果てで何かを見出すことが可能かもしれない。

夢のためならいかに不格好で非力で傷つきながらも我武者羅に突き進む小娘。

思えば俺はこいつとどこか似ている。

何千年、いや何万年、もしくは何億年前のこと。太陽を克服することを恐れた闇の一族はエシディシと俺を取り囲み、罵倒と軽蔑の言葉を掛け続けながら俺達を殺そうとした。

何故夢を諦めぬのか、何故夢のための犠牲を微塵も厭わぬのか。

その答えは既に俺の胸の中にあった。夢だからだ。夢は日の光が届かない遥か深い洞窟であっても抑圧することはできぬ。

夢への衝動は何者にも止められない。己自身でさえも。

小娘もその身に収まりきらぬ抑えられない夢への衝動を抱く、カーズと同じ精神の持ち主。

だが小娘は俺とは違う奇妙なことを一つ言っていた。

村のみんなを救う…だと?。

自分の夢と対等な存在が小娘にはあるというのだ。

夢を天秤にかけて釣り合うものがある。それは一見バランスが取れているようで取れていない。

それはどちらも何方付かずで終わるからだ。心願は極めることで完成される。

小娘の願望は完成されていない癖に、ある物事に命を懸けれるのか?

俺は知りたい。俺の凝り固まった考えを変えてくれるのは奴だけなのかもしれないのだ。

…額がなぜか熱い。そしてその温かさが冷えた鉱物の内部へとじんわり俺の体と心を伝わっていく。

まるで今まで硬直していた俺の人生が融解していくように。

目を塞ぎ視界を覆っていた鉱石に皹が入り崩れて落ちた。

見える。鉱物が剥がれたおかげで狼達に囲まれ今にも殺されそうな小娘の姿が見える。

そんな小娘の姿が闇の一族に囲まれ殺されかけた時の俺と重なった。

 

「グオッ!?」

 

「輝彩滑刀の流法(モード)!!」

 

鉱物の殻を内側から破壊し、即座に俺の両腕から生えた剣で小娘を抑えていた狼二匹の首を刎ねた。

どうやら肝心の長はすぐさま俺の攻撃を察知し小娘の体から離れたようだ。

外に出た途端、暖かな光に包まれた。今は昼、だがこの体は朽ちていない。日光への耐性はしっかりあるようだ。

ようやく、ようやく俺は外に出ることが出来たのだ。

 

「うおおおおお!!やったぞぉ!!」

 

喜びの余り、つい叫んでしまった。砂漠で何時間も彷徨った後に高所からどぽんと湖に飛び込んだようなとても爽やかな気分だ。

だが体が重い。地球よりもこの惑星の重力が重いのか、それとも久しぶりに活動したことに体がまだ順応していないのか。

どっちにしろ究極生命体としての能力がだいぶ損なわれているようだ。即刻エネルギーの吸収を行わないとまずい。

刎ねた狼の首を胸に押し当て、消化液を肌から直接分泌しを吸収する。

まだまだ十分に動けるだけのエネルギーが足りぬ。

首がなくなった二匹の狼の体も両手で掴んで持ち上げ、一気に喰らう。

狼達が歯ぎしりをしながら俺を睨む。そうとうこのカーズに対して怒っているようだ

 

「え、えええっ!!!人型の隕石って本当に人だったの!?」

 

俯せになっていた小娘が俺を見て驚愕し、腰を抜かしている。ジロジロ人の体を見やがって。

今は時間に余裕はない。狼共が今にも俺達に向かって飛びかかろうと身構えている。

戦闘能力の低い小娘を連れながら戦うのは今のこのカーズには少し荷が重い。

一度距離を取らなくては。

 

「ええい、うるさいぞ!!早く立て!!」

 

「う、うん!」

 

立ち上がった小娘の手を握って半径30mばかりのクレーターの外へ跳躍した。

狼達が地面を蹴りこちらに駆けてくる音がする。逃がしてはくれないらしい。

狼の数は残り10匹。体長3mばかりの狼が俺達の命を狙う。

奴等もまたクレーターの外へ大きく飛び出した。

小娘も俺の知らない謎の力を使って攻撃できるようだが、一人で戦ったほうが手っ取り早い。

なにせこの小娘、戦闘経験がほとんどなさそうだからな。

 

「小娘、獣の相手はこのカーズがする。貴様はそこの岩陰で待ってろ。」

 

「な、なんだと!?いきなり褌一丁で出てきてその言いぐさはなんだ!変態か!?」

 

小娘、自分の身分を弁えていないようだな。

この俺より一回りも小さい体の癖に減らず口を叩き追って。

初潮も終えてなさそうな小便臭いこの娘は後で躾が必要そうだ。

 

「貴様さっきまで狼に生きたまま食われそうになったことを忘れたのか?その小さい脳で思い出したらさっさと隠れてろ。」

 

「ロン毛の癖に…。」

 

くっ…怒るな、落ち着けカーズよ。究極生命体になったこの俺がそう簡単にガキの口公言に腹を立てていたらキリがなかろう。

クソ俺はこんな奴の夢を知るために出てきたのか?小娘と俺ではやはり上品さと気品さに違いがありすぎる。

そうだコイツを捕食すればエネルギー面を解決出来るのではないだろうか。

いや待て。それじゃあジョセフに敗北した時と同じだ。冷静になるのだカーズよ。

人間の癖にカーズと同じようにただただ夢を追う者を見つけたのだ。接触すればこのカーズにとって喜ばしい新しい発見があるかもしれない。

だからまだ小娘に手を出すわけにはいかない。そう自分自身に言い聞かせる。

 

「そういえばさっきの輝彩滑刀ってどうやったの?魔法には見えなかったけれど。」

 

「いちいちうるさいぞ!!」

 

「はいはい。」

 

この小娘!!もう許せん!!一度、力の差を分からせなければいけないようだ。

 

「ちょ、何してんの!?」

 

小娘の首元を掴み盛り上がった岩の後方へ投げ飛ばした。

人間が地面と激突するいい響きの音が聞こえた。

 

「いてて…、あんた後で覚えておきなさい!!」

 

勝手に言ってろ。

 

「バウバウ!!ガルル…、ガオッ!!!」

 

ワンワン五月蠅いぞ獣風情が。3匹の狼がこちらに向かってくる。

少し地球の狼より体格が大きく、口から何か撃ち出せるところで野生動物がこのカーズに及びはせん。

輝彩滑刀の流法(モード)。体から刀が突き出す独自の流法(モード)だ。

突き出た刀の周縁を極小の鋭利な刀が回り続けることによって複雑な光の反射をし、刀身が煌めく。

一度この刀が触れたものは一個一個の微細な刀と合わさって斬るというより削ぎ落すのだ。

 

「その首残らず削ぎ落してやる!!」

 

3匹の狼が俺に一斉に飛びかかった。奴らが筋肉を使って地を蹴り飛び上がった瞬間、そこに筋肉の硬直という短い隙が生まれる。

頂点に一度は立ったこのカーズ、隙など見逃さない。狼に向かって足を踏み出し両腕から突き出した輝彩滑刀で一匹、二匹と首を刎ねた。

まだ3匹目が空中にいる間に顔の側面に蹴りを入れる。狼は蹴りを突然入れられ足から着地が出来ずに背中から地面に落ちた。

甲高い鳴き声を上げ怯んだ所に輝彩滑刀を上から振り下ろし、首元に触れる。

力を込めずに輝彩滑刀を首に置くだけで細かい刃の回転運動により滑らかに肉を削り取ってくれる。

回転の数が増すごとに刃が狼の肉に沈み込んでゆく。そのまま豆腐を滑らかに切るが如く3匹目の首を落とした。

地面には大量の血液が流れて広がっていく。獣臭いな。

俺は討ち取った首を残りの狼共に見せつけるように翳した。そしてその首を目の前で手から吸収した。

さあ怒りで我を忘れて向かってくるのかこの獣は。それともこのカーズに恐れをなして逃げるのか。

どちらにせよ好都合。どうする獣共。

 

「きゃあぁぁぁ!!」

 

今のは小娘の悲鳴!?馬鹿な、俺ではなく後方に身を隠す小娘の方を狙うとは。

これはしてやられた。小娘の戦闘能力では獣一匹相手するのも命懸けだろう。早く向かわなくては。

 

「違う、今のは私の声じゃないわよ!!」

 

「なにッ!!」

 

悲鳴を聞いて咄嗟に小娘の方に体を向けていた俺はその言葉を聞いて狼共に視線を戻すと、大きく口を開けた長が目の前にいた。

この獣、まさか小娘の声を真似たというのか。だとすればなんという賢さ。地球の野生動物の比ではない。

 

「ぐっ!!」

 

うまい具合に揺動されて首筋への一撃を狙われたが、ほんの僅かな差で左腕を盾にした。

なんという強い咬合力。左腕が狼の長に噛まれたままで引き離すことができない。

待て、逆に言えば今がチャンスだ。俺の左腕が長から離せないなら長もまた噛み続けているせいで俺から離れないはず。

右腕に生えた輝彩滑刀で長の首を落とせる!。

輝彩滑刀が奴の首筋に触れるかというところで長は鰐のデスロールのように体を大きく捻り、優れた咬合力を活かして左腕を俺から奪い取った。

コイツ、ただの獣かと思っていたが人間との戦闘慣れしていやがる。

左腕が奪われてもいずれ再生する。問題はない。奴が次の動作に移る前に近づき刺し殺す!!

長がバックステップをして俺から距離を取った。

少し距離を取ったところで俺のスピードなら間合いを詰めて刃を振りかざせる。今だ近づけ!!

狼の長が近づく俺を見て、まるで人間のように口角を上げてにやりと笑った。

その笑みに俺は少し不気味さを感じる。何が可笑しいんだ。

そう思った矢先、奴は腹ばいになった。なんだ今になって降伏か。

降伏はのめん。腹を切り裂いて、余った皮で絨毯でも作ってやろう。

奴が背を低くした瞬間、青白い光が目に飛び込んだ。

狼達が横一列に並び、俺にエネルギー弾を撃ち込もうとしていた。ようやく気付いた、長が急に頭を下げたのは弾の軌道から外れ当たらないようにするため。

狼の長は、なにからなにまで計算済みだったのか。

十発近くの青白い光弾が風を切り裂きながら俺に向かってきた。

 

-To be continued

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