暗黒大陸出身のイヅナたん   作:羊、飛ぶ。

1 / 7
改正しました。前よりはマシだと思います。


全滅

「報告!フリューゲル三体が急速接近中!!」

 

「遂にきたか!避難を急がせろ!!」

 

 メビウス湖の沿岸に構えられた小国、東部連合。人口約二万人の、危険な動植物や環境ばかりの世界で、比較的安全な地域に築かれた拠点だ。

 

「わいは迎撃に出る」

 

「お供いたします」

 

「……いや、あんたは」

 

「孫を無事に逃すために、一つこの老骨も使ってみませんかな?」

 

「…わかった、あんたは戦士団と一緒に二体の足止めや」

 

 彼らは獣人種(ワービースト)。高い知能に身体能力、鋭い危機察知能力、一部の者が持つ、自身に物理限界に迫るほどの強化を施す力を持つ。子供の間はその辺に放り出すだけで簡単に死んでしまう程度だが、三十歳ほどになると急激に成長し、その後二百歳頃まで若い体を維持し、五十年ほどかけて老衰していく生態を持つ種族にして、この東部連合の民たちである。

 

「時間がないぞ!最低限の装備だけでいい、すぐに逃げるんだ!」

 

「戦士団は、奴らの足止めだ!絶対に抜かせるな!!」

 

 そして獣人種(ワービースト)は今、滅亡の危機に立たされていた。

ことの始まりは十世紀前。当時、獣人種(ワービースト)たちの間に強力な統率者が現れた。圧倒的な力と叡智を持った彼は、当時の獣人たちをまとめて、国を広げ、そして神の怒りに触れた。

 

「まさかもう一度会うことになるとはなぁ」

 

「あら、どこかでお会いしたことが?」

 

「まあ、わしもあの時は小さかったからなぁ、分からないのもむりあらへんか」

 

 当時彼が何をしたのかは伝わっていないが、結果として国は崩壊し、生き残りの獣人種たちは、それぞれ別の場所へ逃げて、神が放った尖兵・フリューゲルに抵抗していた。

 

「復讐なんぞする柄やないけど、親父の仇や、張り切って戦わせてもらをか」

 

「…ああ!思い出しました!あなたあの愚か者の娘でございますね!」

 

 フリューゲルたちは強かった。数こそ少ないが、光を操り、音速の数倍で空を飛び、獣人種と同等もしくはそれ以上の身体能力、多種多様の強力な術を持つ彼女たちに抵抗できるものは、ほとんどいなかった。

 

「いくで、フリューゲル!」

 

「楽しい戦いになるといいですね、獣人種!」

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

 ここに、一人沿岸を逃げる少女がいた。彼女の名前は初瀬いづな、東部連合の最高権力者にして最強の獣人である巫女に次ぐ実力者である初瀬いのの孫娘である。

 

(じいじ、巫女さま……)

 

 彼女は、空から見つかりやすい沿岸を全力で逃げることで、囮として、仲間たちが逃げ隠れする時間を作ろうとしていた。

 

「はぁ、早く、走らないと…」

 

 いずなは、いわゆる天才だった。センスがよく、頭もいい、子供ながらすでに『血壊(けっかい)』を不完全ながら使い、あと五年もすれば、大人の戦士にも勝てるだろうと言われていた。

 相談役の孫という立場を重く受け止め、いずれみんなを守ろうと努力する子だった。

 

(神さま、いずなは、いずなはどうなってもいいから、みんなを助けて…!)

 

 だが、彼女の願いは届かない。獣人種は、その神に捨てられた種族なのだから。

 

「はぁ〜い♡いらっしゃいませ〜♪」

 

「っ!……フリューゲル、ジブリール!」

 

「あら、知っているのですか?」

 

「じいじが言ってたです、最強のフリューゲル………巫女……さま?」

 

「ああ、これのことですか?獣人種にしては異様に強かったものですからついコレクションにと、綺麗に首をおとすのはなかなか大変だったんですよ」

 

「なん…だ、そりゃ、ありえねえです、無傷……なんて」

 

「まあ強いと言っても獣人種にしてはのことですから。それから、じいじというのは先ほどのおじいちゃんのことでしょうか?あの子たちが手間取っているようだったのでつい手を出してしまいましたが、あの方も私のことを知っていたようでしたので。なかなかでしたが、コレクションにするには弱すぎましたね」

 

「……っく」

 

 いずなも、フリューゲルの迎撃に向かった者たちのことは覚悟していた。だが、そのあとの言葉は、もう全て終わってしまったことは、予想できなかった。

 

「どうせ最後だからとお話に付き合いましたが、これ以上はいいでしょう」

 

「……最後?どういう意味だです!」

 

「文字通り、獣人種はあなたで最後、というだけですが。まさか、私が仕事をサボってるとでも?もしかして、会話して仲間を逃す時間稼ぎでもしてるつもりでしたかぁ?」

 

「っつ!……あっ………う……」

 

(…嘘じゃねえ…です。そんな、簡単に…終わって…っ!)

 

 獣人種の優れた五感は、相手の心臓の鼓動や、些細な表情の変化から、嘘を見抜くことができる。いずなは、その力でジブリールが本気で言っていることに気付いてしまった。そして、いずなは聡明だ。巫女さまを無傷で倒すような相手が、獣人種の生き残りを見落としているとは思えなかった。

 

「え、なん、え、え、あれ、あ…」

 

 ジブリールが、右腕を向けていた。

 

「では、これでお仕事終了です!」

 

「あ、う……うあああああ!!」

 

「『理不尽な衝撃(カドゥケウス)』」

 

 いずなは、ジブリールから放たれた不可視の衝撃によって、湖の奥へと吹き飛ばされていった。

 

「んぅ、新技としては、いまいちの出来ですね」

 

 そう言って、ジブリールは満足し、帰って行った。




おのれジブ○ール、ゆ゛る゛さ゛ん゛!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。