怪獣の方舟~The Earth of Monster~   作:わいえす!

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すっかりご無沙汰になってしまいました。リアルの諸々とか、書いてる時も部隊の規模とか指揮官の階級はどうなってるのとか、細かい部分が気になると止まらなく……
GW中はフリーなので、もう少しペースを早めたい所……


第9話「怪獣と人」

数時間後 岩屋神社

 

《……ただ今、続報が入って参りました。本日、岩手県中央部にて出現した巨大生物をバラゴン、バラゴンと呼称すると発表しました。政府の会見の様子がこちらになります。》

 

《……本日、岩手県に現れました、巨大生物は、中生代に存在しました、恐竜の一種である、バラナスドラゴンとの類似性が指摘されており、一方で大きさ等が全く異なることから、新たな巨大生物として認定、同恐竜から名前を取ってバラゴンと呼称することとなりました。》

 

 

自宅兼社務所の一室にあるテレビから、バラゴンのニュースが流れる。情報化社会とは凄まじいもので、旗中達が怪獣――バラゴン――と遭遇し防衛隊と一戦交えた事は瞬く間に広がった。ちなみにバラゴンの名前は、旗中の呟きを偶々聞いていた山根がそのまま報告して採用されたものである。よもやこんな形で怪獣の名付け親になるとは思わなかった、と旗中は心の中でごちる。とにかく、バラゴンは人間に害を及ぼす巨大生物であり、政府としても一刻も早くこれを退治したいと言うわけだ。しかし、相手は地面に潜る巨大生物。どこから現れるかも分からず、よしんば見つけて攻撃をしても効果が見込めず、そのまま潜って逃げられる……戦いようが無いと流れで前哨基地となってしまった神社で愚痴る防衛隊員達を、旗中達は目撃しているのだった。

 

 

そこで思考を打ち切った旗中は、目の前にいる3人――魚崎と瀬良親子――と向き合う。バラゴンに関しては防衛隊が何とかするとして、彼には気になることがあった。

 

婆羅陀魏山神はバラゴンじゃない

 

あの後、明日香は確かにそう言った。彼女の言葉には咄嗟に吐いた嘘とは聞こえなかった。つまりは事実に基づく明確な否定。それが意味するのは……

「……それで、結局婆羅陀魏様って何なんです?」

西部が口火を切る。こんな時は単刀直入に聞くのが手っ取り早いだろう。西部のマイペースな性格はこういうときに光る。

「……お母さん、どうしよ……」

当人達にしても、今回のはアクシデントだったらしい。この部屋に来てからアワアワとしていた明日香が小百合に助けを求める。小百合はふぅと溜息を一つ吐いて

「こうなっては仕方ありませんね……本当は自分達で見るのが1番なのですが……」

「と言うと…?」

「婆羅陀魏様…バラノポーターは確かにあの湖にいると言うことです。」

西部の質問に魚崎が答える。

「恐らく、バラノポーターは私達人間が来るはるか前からこの地域にいたと思われます。そして後から来た人間達と交流を続けていく内に、カミとして崇められるようになっていったのでしょう。その橋渡し的な役割を担ったのが、小百合さんや明日香ちゃん……岩屋神社の巫女でした。」

魚崎はそう言って、目の前に置いてあった湯飲みに口を付ける。

「……なるほど。そこで婆羅陀魏神楽に繋がるのですね。」

龍女が合点の言った顔で呟く。それを見た魚崎は満足そうに湯飲みを置いてその通り、と答える。

「婆羅陀魏神楽の元となった伝承が真実であると断じる事は出来ませんが、バラノポーターが巫女とコミュニケーションを取れる事を考えると、十分にあり得る話です。」

魚崎はそうはっきりとした口調で断言した。聞き役に徹していた旗中はうーんと唸る。

「いずれにせよ、それを確かめるには実際に見てみないとですね……山根先生がここにいればなぁ……」

「ちょうど防衛隊と作戦会議を開いてますからね。」

龍女の言葉に旗中は溜息を吐く。

「神社裏どころか、社務所から出るなって言われてるし、八方ふさがりか……」

旗中のぼやきを受けて、今度は全員が同時に溜息を吐く。 実は、バラゴンがどこに現れるか分からないとして神社に残るよう言われたのだが、ほとんど軟禁状態でこの部屋に集められたのだった…

 

 

 

 

「……俗に怪獣と呼ばれる巨大生物ですが、その特徴的な生態として、その場で自らに適した環境を作り上げる事、そして自分と同じような存在に対して強い敵愾心を抱く事が上げられます。」

旗中達が社務所で溜息を吐くその時、山根は神社の外に建てられた前線指揮所での作戦会議にオブザーバーとして参加していた。山根は周りの隊員達の目を見ながら続ける。

「前者についてですが、代表的な事例としてゴジラが上げれれます。ゴジラが一時的に封じ込められたアラスカやインドでは、既存の生態系を自らのものに変化、セルヴァムと呼ばれる自らの分身とも言える生物を作り出しました。後者については、セルジオ島と言う事例が上げられます。この島は1945年にゲゾラ、ガニメ、カメーバと言う三体の怪獣が現れました。この三体は非常に面白い怪獣で、私が以前に同島を訪れた時には……」

「すいません。出来れば内容はかいつまんで頂いて……」

小杉が嗜めるように山根の言葉を遮る。山根は仕方ないと言う風に一つ息を吐くと

「これらの巨大生物達は復員間近だった日本軍に駆除されるまで、争いを続けたとされます。これ以外にも怪獣同士が戦ったと言う事例は多数ありますが、逆に地域内にいる怪獣達が共存したという事例は皆無です。これを踏まえると、怪獣達はそれぞれ敵愾心のようなものを持ち、何らかの手段で存在を認知したなら、相手を倒しに行く。そのような生態が考えられます。」

山根はそこで言葉を区切る。

「問題は、巨大生物は人類に対しての反応はまちまちな所です。かのゴジラも人間そのものには攻撃を行わなかったと言う記録が残っています。」

「しかし、バラゴンは民間人を襲ったと。」

「はい。恐らくはバラゴンは人類を敵と見なしている可能性が高いと思われます。」

小杉の言葉に山根はそう答える。小杉はなるほどと答えると

「私からも質問を1つだけ。バラゴンを殺すことは可能ですか?」

「現時点では何とも言えません。ですが、短時間の攻撃で逃げた事を考えると、人間を襲うと手痛い反撃を受けると覚えさせる事は出来るかもしれません。」

その後は山根がいくつかの質問に答えて、それを作戦に反映させるという流れが続いた。

 

 

30分後、山根が指揮所の天幕から出て来る。そのタイミングでぐうとお腹の鳴る音がする。空を見上げると、太陽がほぼ真上に見え、ちょうど今が昼である事を理解する。なるほど腹も減る訳だ。そう納得した山根は防衛隊の野外炊具の方へ向かおうとする。防衛隊の同行者だけあって、食事も彼らと共にする事になった為である。その時であった。防衛隊員とは異なる、別の一団の声が聞こえたのは。

 

 

 

巨大生物が近くに現れた時、民間人は無闇に外へ出ない、そして巨大生物の進路上に自らがいるならば速やかにそこから離れる事が求められる。一見矛盾するように見えるが、巨大生物との戦いにおいては混乱こそが最大の脅威、それがこの80年間で彼らが学んだ教訓でもあった。

そして現在、岩屋神社の前には村人達が集まっていた。

「村長!本当に怪獣が出ちまったべ!祭りさどうするんだ!」

「祭りが中止になったら、俺たちどうなるんだ!」

「今防衛隊の人達来てバラゴン追い払うなり何なりするから、みんなひとまず家に戻って……」

「追い払えなかったらどうするんだ!祭りば中止か!?」

村民達が口々にそう叫ぶ。彼らにとっては怪獣よりも村祭りらしい。魚崎がなだめるが余り効き目はない。

「こうなったらアイツとっ捕まえて、剥製にしちまうべ!」

ついには猟銃を抱えた男がそんな事を言い始める。50mはあるバラゴンをどう剥製にするのか、そもそもどうやって捕まえるのか、もはや滅茶苦茶である。

 

「……これは一体…?」

この光景を後ろから見つめていた旗中達に山根が声をかける。

「見ての通りです。バラゴンが出たって事でそいつを何とかして欲しいって言いに来たみたいです。…防衛隊の監視を潜り抜けて。」

旗中が最後にそう付け足す。村と神社を繋ぐ道には歩哨を立てていたようだが、元より慣れてなかった地形の為に地元民でしか知らないルートでここまで来たらしい。警察官や防衛隊員が戻るように説得をしようとするが村民達は聞く耳を持たない。

これは長くなりそうだ。そう考えた旗中と山根が同時に魚崎を手伝おうとすると

「皆さん!」

神社内に声が響き渡る。旗中や山根、魚﨑と村民達、周りの人間が一斉に声の方へ向く。

「わ、私が何とかします!」

周囲の反応に動揺したのか、僅かにどもりながら瀬良明日香はそう続けたのだった……

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