怪獣の方舟~The Earth of Monster~   作:わいえす!

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ちなみにバラダギ戦闘団の編成ですが、


普通科連隊:BTR-80(B)×20、
重迫撃砲中隊:120mm迫撃砲 RT×16
戦車中隊:T-72M1×13
特科大隊:2S7M×15
多連装ロケット中隊:24連装自走ロケット砲(ポンポン砲)×15
対戦車小隊:中距離多目的誘導弾×4
電子偵察小隊:地上レーダー装置
偵察小隊:オートバイ、BTR-80


また、航空支援として
Su-22M7(500lb LJDAM×4※内2発は貫通型)×2
が加わります。


第14話「地と風」

夏の空にいくつかの光が輝く。一見すると花火のように見えるが、それは花のように散らばらずに一つの玉として落ちていく。光――防衛隊の重迫撃砲によって放たれた照明弾――は地上とその中をゆっくりと進む赤い巨体を照らした。

 

 

「Rcn(偵察部隊)よりCP、バラゴンを確認した。岩屋村方面へ向かっている。送れ。」

その巨体を山の木陰から偵察をしていた防衛隊員が無線機で伝える。その直後、照明弾に反応するかのようにバラゴンが大きく吠える。報告する必要はなかったかもしれない、そう隊員は自嘲しながら指揮所からの指示を待つのだった。

 

 

岩屋村役場 指揮所

「……神社からは来ませんでしたね。」

バラゴン出現の報告を受けた小杉は呟く。彼らにとって最悪のケースはバラゴンが神社から岩屋村へ直接現れる事であったが、幸か不幸かバラゴンが現れたのは神社から北へ1㎞ほど離れた谷からであった。

「恐らく、婆羅陀魏様のおかげと思います。」

そう答えたのは、魚崎の袖を掴んでいる小百合であった。避難計画の調整を行おうとした魚崎にそのまま着いてきたらしい彼女だったが、先ほどの動揺っぷりは微塵も見せない様子で続ける。

「婆羅陀魏様はあの湖はお住まいになると同時に、人に見つかることのないように“結界”のようなものを張って、湖を隠していらしたのだと思います。」

「しかし、戦いの末にバラゴンがあの湖を占領したが為にバランはその維持が出来なくなり不安定化、バラゴンは神社への道が塞がれたか、より結界の緩くなったこの谷から出てきたのではないでしょうか?」

魚崎が小百合の後に続いて言う。魚﨑は話を脱線させたと思ったのか、咳払いをして話を続ける。

「とにかく、村民は一旦神社の方へ避難させるように放送を流します。30分もあれば、避難は完了すると思います。」

そう言いつつ魚﨑は同意を得るかのように山根の方をチラリと見る。山根もその意志を汲んだのか、ゆっくりと口を開く。

「…バラゴンの目的がバランとの戦いにあるのなら、わざわざ人を狙うことはないでしょう。予想進路から離れている岩屋神社なら避難場所にはなると思います。」

その言葉を受けて魚崎が放送を行うよう伝えた瞬間、無線を請け負っていた隊員が声を上げる。

「偵察部隊より、バラゴンが間もなくKP(キルポイント)に到達するとのことです。」

キルポイント――防衛隊がその火力を投射する地点へ近づいていると言うことは、防衛隊が阻止に失敗すれば時間を置かずにバラン、そして岩屋村にも被害が及ぶことを意味する。

果たして避難は間に合うのか、その場に入る全員がその現実に歯がみをするのだった……

 

 

迫撃砲から放たれた照明弾が辺りの山々をを煌々と照らす。その山々の間、数百メートルとない平地をバラゴンは悠然と進んでいく。

《Fo(前進観測者)よりFDC(射撃指揮所)。バラゴンがKPに侵入。送れ。》

《FDCより、TOT発動。》

間もなく、射撃体勢にあった15両の24連装自走ロケット砲、それから間を置いて同じく15両の2S7自走カノン砲から炎と土煙を上げながら砲弾が放たれる。TOT――弾を同時に“弾着”させるためにタイムラグを持って放たれたそれは、あたかも砂の城を飲み込む波のようにバラゴンに襲いかかる。

《だんちゃーく、今!》

榴弾にロケット弾、朝に受けた砲撃以上の爆炎がバラゴンを包む。しかし、そこは怪獣。機甲部隊を容易に戦闘不能に出来る砲撃が直撃したにも関わらず、バラゴンに与えられたダメージ殆ど見受けられなかった。しかし、バラゴンにはそれ以上に以前の砲撃を思い出させたのか、早く砲撃の雨から逃れようと駆け足になる。

《FOよりFCP。バラゴンはなおも前進!》

《FCPより迫撃砲中隊。弾幕初弾発射!》

FCPからの命令と共に陣地から一斉に放たれた120mm迫撃砲は炸裂と同時に炎のカーテンとなってバラゴンの視界を覆う。

《RcnよりCP。バラゴンの速力が低下するも、未だに前進を継続。送れ。》

《CPよりRcn。了解。戦車中隊及びBTRは突撃破砕射撃を準備。》

《戦車中隊、準備完了。》

《BTR、射撃用意良し。》

《突撃破砕射撃……発動!》

迫撃砲の最終弾着と共に戦車中隊のT-72M1からAPFSDS(装弾筒付き安定翼徹甲弾)、BTR-80(B)から機関砲弾が放たれる。それらは全てバラゴンの頭部に命中し、バラゴンの足を完全に止めた。

《目標に命中。次弾りゅう弾。》

効果ありと判断した戦車中隊長は即座に爆発性に優れるりゅう弾に変えるよう指示。ダメージをさらに深く与えるように射撃を続ける。バラゴンはりゅう弾の直撃を受け続けてじりじりと後退を続けていたが、やがてその足を止めると目の前の車両達に向かって大きく吠えた。その直後、彼らの足下が大きく揺れ始める。

《!?全車後退!》

異変を感じた戦車中隊長は咄嗟に後退を指示するが、その直後にバラゴンの足下の地面が勢いよく盛り上がる。その次に中隊長が見たのは津波のように迫る視界を覆い尽くさんばかりの地面だった。波は彼らの目前で収まったかのように見えた後、その次の瞬間には噴火したかのように地面が大きく噴き上がり、彼ら戦車部隊を天高く打ち上げた。

 

 

「何だ今の!?」

西部が思わずそう叫ぶ。バラゴンが吠えた瞬間、戦車が吹き飛ぶ光景は岩屋神社から僅かに離れたところで撮影していた旗中達にもはっきりと見えたのだった。

「まるで爆発したように見えたけど……」

旗中がそう呟く。吹き飛ばされた戦車は逆さまに地面へと叩き付けられ、飛ばされる事は無かった車両も同じく後退してきた車両同士で衝突するなどで、まともに戦える車両は殆ど残っていないようだった。

「なるほど……バラゴンは大地を操れるのですね。」

旗中の左に立っていた龍女が納得するように呟く。思わず振り向いた旗中を見ることなく彼女は静かに続ける。

「流石は地底怪獣……いえ、“地の神”と呼ぶべきと言った所でしょうか?…さてさてどうやって戦いましょう?」

そう凶暴な笑みを浮かべながら言う龍女の横顔を見て、旗中は恐怖と喪失感、それらがない交ぜになったものを胸中に抱くのであった……

 

 

ほぼ同時刻、村役場の指揮所にも報告が届く。

「戦車、稼働5。BTR、稼働8。バラゴンは未だに健在。こちらへ前進中とのことです……」

対バラゴンとして投入されたT-72とBTRはそれぞれ13両と20両。その半分以上が行動不能にされたことになる。彼らに重い現実が沈黙としてのしかかる中、連隊長がその空気を破るように魚崎に声をかける。

「魚崎さん、村民の避難状況は?」

「……まだ、完了したとの連絡はありません。なので……」

慎重に言葉を選びながら答える魚崎に、連隊長は短く分かりました、と答えると

「残存車両は直ちに国道から後退。指揮所は村民の避難完了までここを維持。避難の完了次第、指揮所の後退と航空支援を実施。各普通科中隊、対戦車小隊は遅滞戦闘に努めるよう。予備の戦車中隊には……」

連隊長は淀みなく各所に指示を与える。淡々と行うその動作に、小杉は悔しさが滲み出てるように見えた。

 

 

「小杉さんに他の隊長さん達も、バラゴンも一応は生き物です。気休めかもしれませんが、目を撃てば視界が塞がれますし、足を撃てばバランスが崩れて転倒します。」

小杉達が指揮所を出て間もなく、山根がそう声をかける。最初に会った時から怪獣に愛着を持っているような言動をする山根であったが、彼なりに人間への情があったらしい。

「なら、ケツにでも撃ち込んでやりますか!」

誰かが冗談ぽく言う。思わず笑う小杉達であったが、目だけは笑っていない。皆、死を覚悟してるからだろう。

「これが終わったら、この村にまた来てください。皆で歓迎しますよ。」

今度は魚崎が彼らに言う。

「でしたら、戦闘団全員で。それでは、行って参ります。」

小杉達は彼らに敬礼した後、持ち場へと向かうのであった……

 

 

「小銃班と機関銃手は目を狙え!」

「無反動砲は足狙え!転ばせろ!」

曳光弾が飛び交う中に怒号が響き渡る。普通科連隊とバラゴンの戦いは熾烈を極めていた。朝の戦い以上に普通科連隊はゲリラ的に、そしてピンポイントで攻撃をする。バラゴンもそれが自身の能力なのか、次々に周囲の地面を波立たせては隊員達を吹き飛ばす。隊員達はそれをものともせず、今度は盛り上がった地面を楯替わりにして攻撃をする。

視界が殆ど使えず、攻撃が全く病まないことに苛立ったのか、バラゴンは口から炎を迸らせる。熱線を吐く気か。先ほどから銃撃戦に参加していた小杉がそう感づく。その時、4つの閃光がまさに熱線を吐かんとするバラゴンの口に命中し、大きく爆炎を拡げる。対戦車小隊が熱線のタイミングを見計らって中多――中距離多目的誘導弾――を発射したのだ。1発で戦車を優に破壊できる威力のミサイルがバラゴンに直撃し、周囲を焼き払うはずだった熱線もその足下に放たれる。熱線は地面に直撃すると同時に爆発を生み、大量の土と石が巻き上げられる。

「伏せろ!」

そう叫んで、自らも地に伏せる小杉だったが、土煙の中から3つほどの光が輝いているのが見えた。それはやがて周りの輪郭が見えてくると共にもう一つ光が増えるのが見えた。

「村方面に退避!」

バラゴンに見つかった、本能的にそう判断した小杉は周囲に命令を出しながら、自身の小銃を向ける。彼自身、それが無駄であろうと分かっていた。しかし、今まで倒れていった戦友や部下の為に一矢報いてやりたい。その思いが彼に小銃を向けさせたのだった。

 

 

しかし、

(……風?)

その瞬間、小杉は土と鉄の匂いが薄まっていく事に気づいた。そしてその代わりに入ってくる清涼な風。夏のうだるような暑さを振り払ってくれるあの風が村の方から来ていた。

そして次の瞬間、巨大な影が一際強い風と共にバラゴンを吹き飛ばす。防衛隊の砲撃に全く動じなかったバラゴンがまるでボール球のように大きく宙を舞う。バラゴンは戦車部隊のいた所を飛び越え、彼方のにある山に叩き付けられる。

「な、何が……」

起こった、そう続けようとした小杉はバラゴンのいた所に見て目を見開く。

月に照らされた茶色がかった体色、頭部から尻尾にかけて一直線に生えた角、顔の側面から伸びる角と肉食獣を思わせる牙の生えそろった口……

「バラン…!?」

小杉の驚愕に満ちた声が響く。バランはそれに答えるかのように大きく吠える。暑さと不快感を忘れさせる清涼な風が辺りの木々と草花をざわめかせた。

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