怪獣の方舟~The Earth of Monster~   作:わいえす!

23 / 33
第3話『或る少女の独白』

私はいつも孤独だった。

家の人は外を見せてくれなかった。

私はいつも孤独だった。

ある時、屋敷の外で遊んでいた(わらべ)が木の実をくれた。

私は少し嬉しかった。

しばらく後、屋敷の辺りを野犬が彷徨いていた。その口には小さな手、その手に付いた袖はあの童のだった。

私は体の内に冷たい風が吹くのを感じた。

私はまた孤独になった。

いつからか、生垣の向こうから私を誘う歌が聞こえるようになった。

私にはその歌が煩わしく聞こえた。

その声は毎晩続き、家人は皆それに応えるように言った。

私はそれがとても億劫だった。

ある日、屋敷に一人の僧が泊まりに来た。

私にはその人が輝いて見えた。

その僧は私に外の世界を教えてくれた。

私はそれがたまらなく楽しかった。

 

私はその人の寝所へ忍び込んだ。

その人はひどく驚いたようだったがまたここに戻って妻とすると約束をした。

私はもう一人じゃなくない。そう思った。

約束の日、その人は何時まで経っても現れない。

私は気付けば門の前にいた。

日は沈みかけても通る人々の中にその人の姿はない。

私は旅人にその人のことを尋ねた。

その旅人は答えた。既にここを発っていると…

私は頭の奥が凍り付くのを感じた。

もうあの人はここに来ない。なら私は…

私は駆け出した。何も考えずにただ走った。

目の前を塞ぐ旅人は押し退けた。襲いかかってきた野犬は殴り飛ばした。

いつの間にか星空は朝日に消えていき、その光は私の体を照らす。

そして目の前にあの人の姿が見える。ああ、間に合った。そう思った時、私の体は前に倒れた。泥だらけの体は悲鳴を上げ、指1つ動かない。あの人は舟に乗り、川を渡っていく。

私は鉄の味がする口をパクパクと動かす。置いていかないで、一人にしないで、その言葉は壁に阻まれたかのように届かない…

 

すると、どうしたことでしょう。今の今まで動かなかった手が動く事に気づいたのです。手だけではなくて、腕も、肩も、脚も…私の体の全てが先程よりも、一晩中走っていた時よりも、遙かに力強く……

私は川に飛び込むと瞬く間に対岸へたどり着きました。あの人は私が来たことに驚いたのか、尻餅を付いてすぐに走り去っていきます。もう私は来ているのですから、何を急ぐ必要があるのでしょう?

前に見た時よりも小さくなったあの人を私は追い掛けます。あの人がお寺に駆け込んだとき、私の体は金縛りにかかったように動かなくなりました。忌々しい、その言葉は炎へと変わって金縛りの元を焼き尽くします。再び自由になった私はあの人の姿を探します。すると、ぽっかりと空いた井戸に“私”の姿が移りました。酷く細長い躯に牙の生えそろった大きな口、2本の角と爛々と輝く瞳の姿は…私?違う…私はこんな化け物では…

すると目の端を走る人影が見えました。嗚呼、あの人です。あの人なら、あの人ならば私を…私をどうするのです…?

追い掛けながら私の思考はグルグルと同じ所を回ります。山中へ入ったあの人が足を止めると“私”を見上げます。そして、あの人が何事か唱え始めると私の体は力を失ったかのように倒れました。私はこれを吹き飛ばせるというのに、なぜ動かないのでしょう…私が化け物だから…?力はもう入らず、意識もどこかへ消えていく途中、あの人て私は一瞬目があった気がします。私を封印しようとする意志を感じる眼…ああ、私が恐ろしかったのですね。そう納得した時、私の意識は暗闇へと落ちていきました……




本来は前座くらいの感じだったのですが、勢い余った結果こんな感じに…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。