怪獣の方舟~The Earth of Monster~   作:わいえす!

27 / 33
大変長らくお待たせしました…一日200文字程度しか進んでなかった上に、切り所を完全に失っておりました……


第7話『ある青年の独白』

……10年前、あの日も暑かった事を覚えてる。

親父達に連れられてこの集落に来た後、俺は預けられていた屋敷から抜け出した。

この地区で最も大きい立派な屋敷であったらしいが、俺はその人の探るような暗い眼が不安だった。居心地の悪いその屋敷から出たかったと言うのと、オマケに親父の言ってた「自分が知らないモノ」、それを俺も見てみたい。そんな憧れめいた思いもあったのだ。面と向かって言ったことは無かったが……

屋敷を抜け出して、2、30分と言った所だろうか、幸か不幸か集落の人には見つからず、そして何か発見も無かった。夏の強い日差しに体中が汗まみれ、あそこから出るんじゃなかったと後悔し始めた時、ふと1つの山道が目についた。木々が鬱蒼と茂り、その道は昼にも関わらずとても薄暗かった。何を思ったか、俺は吸いよせられるようにその道へ入っていった。あの時は不気味さは感じなかったし、むしろ涼めるかもと思ったのかもしれない。

山道をドンドン進んでいくと、やがてやや開けた場所に出た。広場めいたそこを見渡すと、奥に小屋のような建物が見えた。近づいてみるとその扉は半開きで中を覗き見ることが出来そうだった。ふと、好奇心に駆られて隙間に顔を覗かせた瞬間、俺は息を吞んだ。

 

がらんどうの部屋に座る一人の少女

背は低くて、同い年位の子供に見えた

その子の長い黒髪は今にも床につきそうだった

格好は和服に似てるけど、微妙に違う

その浮世離れした姿に、俺は目を奪われた。

 

俺の体はゆっくりと、そして流れるように小屋の中へ進む。それに気付いたのか、目の前の子もゆっくりとこちらを振り向く。

綺麗な瞳だ。ガラス玉を思わせる目が歩みを止めた俺を捉える。俺と女の子は無言でしばらく向き合った。

それが俺…旗中進二と河野龍女の出会いだった。

 

 

 

中部方面隊 作戦指揮所

 

 

「……現在、日高川流域を中心とした回転翼機及び空防の偵察機による情報収集を継続的に実施中、ですがマンダ型巨大生物の発見に至っておりません。また、旧河野地区の巨大生物、ガバラの死骸は化学防護隊による調査を環境省と連携して実施、周辺への影響を確認しています。」

 

日本の“首都”である京都、そして重要な経済拠点である関西圏を防護する為に配置された中部方面隊、その中枢である総監部の地下には対巨大生物戦の作戦指揮所が設けられていた。幕僚の一人が地図を前にして状況の報告を行う。

 

「直ちに追加派遣が可能なのは、1個偵察戦闘大隊及び1個メーサー隊、観測戦闘ヘリコプター隊も数時間以内に即応可能な状態になります。また、本日中に1個戦車連隊を中核とした戦車戦闘団の編成が完了、展開が可能です。」

 

幕僚は淡々と状況を報告する。

かつての北日本の侵攻に備えるため、中部方面隊には大規模な戦車部隊を持つ機甲師団を有している。

メーサーは強力なマイクロ波で標的を焼く、対巨大生物への切り札とも言うべき装備である。先月のバラゴンとの戦闘では展開が間に合わなかったものの、日本近海に存在が確認されたゴジラ型巨大生物への対応で出動準備がなされていた事もあり、早期に展開が可能になった形だ。

大規模な通常兵力、対巨大生物に特化した兵器。バラゴン戦以上の兵器があるにも関わらず、中部方面総監である山地の内心には拭いきれぬ不安があった。

 

「海空からの支援は?」

「空防からは爆装状態の攻撃機4機がアラート待機を行っているとの報告が上げられています。海防はフリゲート3隻が明日までに出動可能と報告を受けております。」

 

山地の質問に幕僚は淡々と答える。

少なすぎる。その言葉を聞いた全員の内心に浮かんだ言葉はそれであった。対巨大生物戦において火力は必須である。近代装備が高い命中精度を持っているにせよ、かなりの弾数が無ければ戦果は期待できない。それがバラゴン戦で防衛隊が得た戦訓であった。

 

「攻撃機を増やすように空防へ交渉できないか?」

 

「…それが、対ゴジラ戦に備える為に海防も空防も戦力を割いているためにこれ以上の支援はすぐに送ることは出来ないと……」

 

「この首都が一大事の時に限って……せめてA-10かSu-25があれば……」

 

質問をした幕僚が歯噛みをするように唸る。ゴジラ型巨大生物の出現によって即応が可能になった一方で、異なる脅威への対応はおざなりになっているのが現実であった。実際の所、彼らも複数ある戦車連隊から1つだけ派遣するのが精一杯であった。阻止できなければ首都侵攻もあり得るというプレッシャー、大規模な部隊の即時展開が可能にも関わらずそれが出来ない歯がゆさに、かつて地上部隊の支援する襲撃機として配備されていた機体の名を口にした。

 

「いえ、あります。」

 

うっすらと暗い雰囲気の立ちこめる指揮所に響いた1つの声に周囲の視線が向けられる。

 

「襲撃機ではありませんが、航空機にはアテがあります。近衛師団、その飛行戦隊です。」

 

その言葉に指揮所の動揺の声が響く。その躊躇いの声に山地は苦笑の混じった溜息をつく。近衛師団は京都を中心に配備された部隊で、約一万人の兵力を有し自前の航空戦力も保有している事から、支援を要請するにはうってつけと言えた。しかし……

 

「黒木三佐。近衛師団の存在意義は“陛下”そして御所の守護だ。我々と守るべき領域が違う彼らと連携出来るかね?」

 

「彼らは首都への侵攻こそ避けるべきシナリオです。それがあり得る今、連携を拒絶する理由は無いでしょう。」

 

山地の言葉はその最大の懸念、冷戦が終わっても解決しなかった連携の不足を懸念するものであったが、声の主、黒木翔一は淀みなく答える。

有事の際の作戦において指揮官へ然るべき助言、指示を行い、主導する作戦では部隊間の調整、時にはその指揮を執る……統合幕僚監部直轄の組織、特殊戦略作戦室から派遣されたその男はまさしくその所属に相応しい言動とも言えた。

 

「……分かった。近衛師団への交渉と調整は黒木三佐、特殊戦略作戦室に一任する。上には私からも伝えておくので、早速取りかかってくれ。」

 

「はっ了解しました。直ちに近衛師団との交渉に入ります。」

 

「よろしく頼む。」

 

山地の言葉を受けて黒木が出て行った後、指揮所を僅かな沈黙が包む。

 

「…宜しかったので?」

 

「何も無いよりかは遙かにマシだ。おおかた、上が彼を派遣してきたのもこれをさせるためだろう。」

 

幕僚の言葉に山地はやや自嘲気味に答えた。本来であれば他の組織との連携、調整は彼ら中部方面隊ではなく、その上級組織である陸上総隊が行う。陸海空3防衛隊とは独立した組織である近衛師団との連携を想定すること自体、ハードルが高いのであった。事態が事態とは言え、そこへ交渉に行く大胆さは、所属する組織としてよりも黒木が生来持つものであろう。若さとはそのようにあるべきなのだろうか、と山地は内心で自問した後、それを打ち消して自身の問題に取り組む事にした……

 

 

 

……小屋の中は蒸し暑い外界から断絶されたように涼しく、静かだった。

俺は吸い寄せられるようにその少女の隣に座った。緊張していたのか気持ちが浮ついていたのか、座った後もキョロキョロと見渡していると、少女と再び目が合う。

ガラス玉のような少女の瞳に緊張で引き攣った顔の俺が映る。何かを話さなきゃ、義務感のようなものに背中を押された俺はとにかく喋り始める。旗中進二という名前、今年で12歳ということ、そして俺が東京から来たと言うと人形のように感情を見せなかった少女は不思議そうに首を傾げた。

東京が分からないのだろうか、そう思った俺は人とビルが沢山ある所と言うと、再び少女は首を傾げてその端整な顔をぐいっと近づける。もっと知りたい、少女のガラス玉の瞳が語りかける。東京の歴史、文化、そこに住む人達……気付いたら俺は饒舌にそれらを話していた。皆聞いた話だけども、思わず恥ずかしくなった俺は最後にそう付け加えた。その様子が愉快だったのか、少女はしなを作ってコロコロと笑う。初めて見せた笑顔に俺も思わず笑みがこぼれる。その時、小屋に西日が差していることに気付いた。親父達に心配される、そう慌てて立ち上がった俺に少女は驚いたように体を仰け反らせる。慌てて小屋を出ようとした瞬間、少女の背が目に入る。

 

じゃあね。また明日。

 

俺は自然と口から出た言葉を投げかけると、少女はビクリと背中を震わせて笑顔で振り返り、ありがとうと口を動かすのが見えた。それを見て俺はスキップ気味に山道を降っていく。名前も知らない初めて会う少女、それでもこんなに嬉しく、胸が躍ることがある。その時の俺は胸にそんな想いでいっぱいだった……

 

 

京都 首相官邸

 

 

「なにっ近衛師団を出す!?」

 

官邸内の執務室で開かれた総理レク、その中で報告を受けた総理大臣、大河内清は驚きとともに体を椅子から浮かせた。

 

「総理、事態は先月の“バラゴン”以上です。このまま放置すれば1944年の東京の再来となります。ご決断を。」

 

うーんと黙り込んだ大河内に柘植明美官房長官が念を押すように促す。言葉にこそしないが、自分が総理の立場であったら即断をする、その迫力を感じさせる態度であった。

 

「しかし…防衛隊はともかく、近衛師団まで投入するとなると“陛下”に…」

 

「総理、よろしいでしょうか?」

 

柘植の圧を受けても渋る大河内に新たな報告を受けたらしい防衛大臣が挙手する。

 

「只今、“勅許”が下りたと報告がありました。近衛師団はいつでも動かせます。」

 

本来であれば近衛師団も防衛省の傘下であり、戦力を割くことに対する“陛下”の同意は必要はなかった。しかし、前例がない事態故の念押しは総理を動揺させるのに十分であった。

 

「総理、最高指揮官は貴方です。命令があれば、我々防衛隊は徹底的にやります。」

 

 

防衛大臣の声に強い意志がこもる。柘植は何も語らなかったが、その眼はやりますね?と雄弁に語っていた。大河内は二人を交互に見て大きくそして長くため息をついた。

 

こうして、対巨大生物戦としては初めて近衛師団の投入が決定した。

 

 

 

……最初、遠目でそれを見たときは何なのか理解できなかった。

 

屋敷へ戻る俺が見たのは、鋤や鍬を武器のように持つ幾人の男達、その中心で血だまりに沈む男の姿だった。

後頭部が血に染まり、うつ伏せで倒れたままピクリとも動かないが、その服装に俺は見覚えがあった。親父、そう口を動かしてよろよろと向かおうとした瞬間、不意に横から何者かに押し倒される。押したおされた痛みをこらえながら胸元を見ると、それは青白く弱々しい顔をしたお袋だった。

 

「……どこ行ってたのよ。バカ息子。」

 

肩で荒く呼吸をする彼女は、言葉と裏腹に喜ぶような口調で語りかける。俺が言葉を返そうとしたとき、辺りが騒がしくなる。見ると、親父を囲っていた男達がこちらへ向かって来ていた。

 

「あの地区長、最初から私達を殺す気だったみたい……ヤキが回ったわね、私もあの人も。」

 

言われてようやく鋤と鍬の一団の中にあの暗い目の男がいる事に気づいた。俺がその一団をただ見てるとお袋がよろよろと立ち上がる。

 

「とにかく……山へ隠れなさい。夜まで隠れて…早朝に町へ行く。そこまでは…流石にあいつらも追って来られない。」

 

俺に背を向けてお袋が一方的にまくしたてる。その時になって、俺はようやく彼女の右腕が血で真っ赤になってることに気付いた。それに関わらず、お袋は一団へ向かっていく。何をしようとしてるのか悟った俺に、彼女は笑顔で振り返る。

 

「これから何やっても、後悔しないようにね。」

 

そう言ったお袋が前に向き直るのと、鍬が彼女の脳天へ振り落とされるのは同時だった。崩れ落ちる彼女に男達はさらに道具を振り下ろす。親父と同様、お袋はピクリとも動かなくなり男達は一様に俺を見る。次はお前だ、その感情を感じ取った俺は山へと駆け出した。山へ隠れろ、パンク寸前の頭にその言葉だけが反芻される。脇目も振らず、俺はただ山の奥へと走り続けた。

 

 

 

……どれくらい経ったであろうか。日はとうに沈み、月明かりが辺りを照らす。怒鳴り声と草を書き分ける音を何度もやり過ごしながら、俺はなんとか生き延びていた。未だに理解が追いつかない中、俺は茂みに隠れながら見つかるかもしれない恐怖にただ怯えていた。

何度これがドッキリであればいいだろうと思っただろうか。普通に出れば親父達とまた会えるのではないか、そう思って出ようとすると、後悔するなと言うお袋の声に茂みに引き戻される。それを何度も繰り返していた。

 

どうすればいいんだよ、俺は小さく呟く。まだ11歳の俺に出来ることは無かったし、やりようも無かっただろう。とにかく場所を移動しないといけない。そう思った瞬間、体のバランスが大きく崩れる。知らない内に斜面に近づいていたらしい、そう気付いた時には俺は斜面を転がり落ちていた。何度石や木に体をぶつけたであろうか、ようやく回転が収まり体中の痛みをこらえながら立ち上がると、そこが見覚えのある風景である事に気づいた。

広場のような空間にポツンと小屋が1つ、そしてその奥に洞窟のような物がある事に気づいた。ここなら隠れられる、俺は吸い寄せられるようにその洞窟へと入っていった。

 

洞窟の中は、暑さ残る外界と断絶されたように肌寒く静かだった。俺はそれに臆することなくその奥へ進んでいく。始めは塗りつぶされたように真っ暗であった洞窟は次第にその輪郭をおぼろげに見せてくる。月明かりが完全に遮られた時、代わりに奥から小さな光がゆらゆらと煌めくのが見えた。

それが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と気付いたのはそう間もないことだった。俺が見ていることに気付いたのか、清流のような白くきめ細やかな肌を照らされた少女がこちらへゆっくりと向きにこりと微笑む。

 

「またお会いしましたね……あら?」

 

何かに気付いたのか、少女の表情が怪訝なものに変わる。彼女の目線に倣って視線を下に向けると、服が真っ赤に染まっていた。お袋が倒れ込んできた時になったのか、そう理解したとき途端に鼻の先が熱くなり視界が歪む。違う。違うんだ、俺はその言葉すら詰まり、ただ嗚咽だけが漏れる。

すると、辺りが不意に暗くなり体が暖かさに包まれる。

 

「大丈夫ですよ。ここに怖いものはありません……」

 

「親父が…お袋が…」

 

少女が抱きとめたと分かった後、俺は泣きじゃくりながら何が起こったのか、そして何を見たのかを話そうした。時系列すら噛み合ってないそれを説明するのには永遠に近い時間が必要だった。

 

 

 

それをようやく言い終わった時、背後から無数の足音が近づいてきた。咄嗟に振り向くと、血に染まった農耕具を構えた何人もの男達が俺に暗い瞳を向けていた。

 

「お前達はここの秘密を知ってしまった。生かしておくわけにはいかない。」

 

そう言いながらその一団の中からあの地区長が現れる。何を言ってるのか理解できなかったが、殺そうとしてることだけはハッキリと理解できた俺は体中がガタガタと震え始める。ゆっくりと近づいてくる男達から目を離せず、小さく震える俺を暖かい手がそっと撫でる。

 

「もう心配はいりません。後は私めにお任せを。」

 

そう耳元で優しげに囁いた少女は俺の前に立つ。俺とそう違わない年であろう少女のその姿に、男達から明らかな狼狽の色が現れる。清姫様、そう呟いて後ずさりする地区長達を尻目に少女は再び振り返る。

 

「出来れば、少し目と耳を塞いで下さいませ。…その…見られると恥ずかしいので……」

 

はにかみながら言う少女に答えるかのように俺は目と耳を塞ぐ。その直後、洞窟の中を強風が吹き荒れ、俺の体は木の葉のように飛ばされた。

 

どれぐらい経ったのだろうか、気絶から立ち直って間もない体をよろよろと洞窟の外へと向かった。

 

空が、燃えている。

 

雲一つ無い夜空に火の粉が舞い散る様を見上げながら、俺はそうぼんやりと考えた。いや、そうしないと俺は目の前の光景が受け入れられなかったんだろう。

 

俺は崖のギリギリまで歩を進め、ふもとにあった集落を見ようとする。しかし、数刻前までそこにあった集落の姿は見えず、代わりに見えるのは一面の炎と燃え滓のように点在する炭のような何かだけだ。そう、この天まで焦がすような炎の正体は、あの集落を焼き尽くす業火であったのだ。

 

すると、ズシンズシンと地面を揺らしながら、よく目を凝らして見てみると、炎と夜闇の間を何かが蠢いているのが見て取れた。おれはそれを捉えようとじいっと目を凝らす。そして、その正体を理解したとき、俺の目はその姿に釘付けになった。龍だ。蛇のように長い胴と小さく短い脚、頭部の角と長いヒゲは伝承で言われる龍の姿、まさしくその通りの姿がこの集落を焼き尽くしていた……

 

 

 

和歌山 日高川町

 

「……そうして俺だけが生き延びて、気付いたら合流してた龍女と一緒に焼け出されたって訳です。」

 

日高川の河川敷、その土手の上で旗中はそう話を締めくくる。非現実的な話だ、一瞬山根の脳裏にはそんな言葉が浮かぶ。しかし、静かに過去を語る旗中の言葉には確かな実感と重みを感じざるを得なかった。

 

「旗中君、君は“彼女”を……彼女が何者だと思っているんだい?」

 

山根は彼の話を肯定も否定もしなかった。彼にとってはそれ以上に旗中の話に現れた“龍”、その存在をさらに掘り下げたかったのだ。

 

「……俺にとっては龍女は命の恩人です。あそこに彼女がいなければ、俺はとっくに殺されていた。アイツが何者であっても、それだけは変わりません。」

 

その時、無数の重いエンジン音が辺りに響き渡る。トラックを思わせるそれらは彼らの後ろ、町役場の方から聞こえてくるようであった。見ると、赤いパトランプの付いた先導車に続いて戦車を思わせる砲塔の付いた装甲車が何台も走行している姿があった。

 

「機動戦闘車…防衛隊か。」

 

山根の言葉に旗中はえぇと小さく答えた。防衛隊がここまで来た以上、あのマンダ型巨大生物との戦闘もあり得ると言う事になる。

 

「旗中君……もし、また彼女と会いたいなら彼らを利用するんだ。」

 

利用する、その言葉に思わず旗中は山根の方を向く。いつになく真面目な顔をした山根の姿があった。山根は機動戦闘車の車列をチラリと見てさらに言葉を続ける。

 

「君は…自分で解決しないといけない、そう思っているようだけど、人間一人が出来る事はごく限られてる。今ここで動いても何の解決にもならない。必要なのは情報と手段だ。」

 

「分かってます…でも、俺はもう後悔したくないんです。」

 

「だからこそだよ。」

 

山根は苦笑しながらそう言うと旗中の肩を叩く。いつの間にか思い詰めた表情をしていた旗中は驚きの表情を浮かべるが、彼は気にせずにその体を引き寄せて続ける。

 

「後悔しない為に今は一休みする時だ。本番はこれからさ。」

 

笑顔の山根にそのまま町役場へと引きずられていく旗中であったが、その内心では不思議と小さな安堵感がわき上がっていた。




設定


メーサー、メーサー隊
1944年のゴジラ以降、相次ぐ巨大生物の襲撃に対して人類側は度々核兵器を使用してきた。しかし、それでも巨大生物の駆除に失敗、もしくは駆除が成功に至っても周辺への被害が甚大となる結果であった。その為、世界各国は非核兵器による対巨大生物戦の研究が始まり、その中で日本において開発されたのがメーサー兵器であった。
メーサーはマイクロ波を使う兵器で、その威力は一撃で巨大生物の巨体を半壊させるとも言われる。メーサー隊は3個メーサー中隊で構成され、さらにその中隊にメーサー殺獣光線車4両が配備されている。


A-10とSu-25
冷戦期である1980年代に南北日本が配備していた襲撃機(いわゆる攻撃機)、A-10が陸上防衛隊に、Su-25が北日本空軍にそれぞれ配備されていた。両機種とも対地専用の機体であり、両陣営の地上部隊からは絶大な信頼を得ていた。しかし、統一後には対地専門の特性や速度の低さが問題視され、2000年代までに全てが退役してしまった。軍からは退役している両機種だが、A-10はその一部が米軍で再運用されたり、Su-25は一部が保管されている他、その低コストさから民生品で運用されている。


近衛師団
京都に配備された師団で“陛下”御所の守護を行う部隊である。3個普通科連隊と1個戦車連隊を基幹とし、これに加えて独自の部隊として戦闘機部隊が配備されている。
戦闘機部隊は北日本の先制攻撃を受ける可能性を考慮し、比較的短い滑走距離で離陸できる航空機が配備されている。かつては“AJ37 ビゲン”を配備していたが、2000年代よりその後継機として“JAS39C グリペン”が配備されている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。