怪獣の方舟~The Earth of Monster~   作:わいえす!

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清瀧戦闘団の編成

4個戦車中隊:10式戦車×52
3個特科中隊:99式自走りゅう弾砲×15
1個多連装ロケット砲中隊(増援):24連装ロケット砲車×15
1個普通科中隊:96式装輪装甲車×20
1個対戦車小隊:中距離多目的誘導弾×4
1個偵察戦闘大隊:16式機動戦闘車×13
87式偵察警戒車×8
1個メーサー中隊:90式メーサー殺獣光線車(改)×4
1個観測戦闘ヘリコプター隊:OH-1B×2
RAH-1×16

その他連絡偵察用としてヘリ数機

他防衛隊等からの支援

航空防衛隊
Su-22M7×4

海上防衛隊
もがみ型フリゲート×3

近衛師団
JAS-39C×12


第8話『接触』

翌日 朝7:00 旧河野地区

 

「……呼んでいる。」

 

真夏らしい強い日差しの中、龍女はその言葉と共に目を覚ます。防衛隊の捜索から隠れながら野宿していたにも関わらず、彼女はそれをおくびにも出さずひとつ伸びをする。

 

「…と言うより罠でしょうか♪」

 

龍女はそうあっけらかんと言う。彼女が今まで動かなかったのは、身を隠す他にもあの“少女”の出方を窺っていたと言うのもあった。どうやら読み通り、少女はしびれを切らしたらしい。龍女は軽くストレッチをするように伸びをすると、ふと空を見上げる。

 

「…こうやって空を見るのは最後なんでしょうね。」

 

そう呟く彼女の表情には寂しさが滲んでいた。

 

 

 

5分後 日高川町内、前方指揮所

 

「マンダ型の現在位置は!?」

 

「日高川中流、旧河野地区です!」

 

「ガバラの調査隊と近すぎる…調査隊を下がらせろ。」

 

「了解。偵察戦闘大隊に援護させます。」

 

「偵察中隊。こちらCP(指揮所)。これより後方の戦闘中隊と合流し調査隊の後退を援護せよ。但し発砲は自衛のみに限ることとする。」

 

「戦闘中隊。こちらCP。直ちに前進し偵察中隊と合流、調査隊の後退を援護せよ。但し発砲は…」

 

「UAV及び航空機も直ちに展開。出来る限りの情報収集に努めよ。」

 

“マンダ”型と“ガバラ”との戦闘から一夜、町内に設置された前方指揮所は“マンダ”再出現の方を受け、報告と命令で騒然としていた。

その天幕の中を、山根と旗中が人々の合間をすれ違いながら進んでいく。その人混みを抜けた先、指揮所の奥には地図の置かれた巨大な机とそれを囲む10人程度の迷彩服を着た防衛隊員の姿があった。

 

「山根先生、お待ちしていました。」

 

山根達の姿をいち早く認めた迷彩柄の1人…黒木と言う名前らしい…が声を掛ける。昨日は大阪から京都へ飛んだ後に直接この指揮所へ来たらしいこの男は、その疲れを見せない様子で話しかけた。

 

「“マンダ”がまた現れたとの事ですが?」

 

「ええ、最後に姿を消した河野地区に再び出現しました。まだ詳細は…」

 

「偵察中隊より報告。“マンダ”型は現在南東方向へ毎時20キロ程度で山間部を進行中。」

 

山根の問いに黒木が答えようとしたタイミングで新たな報告が入る。

 

「この進行方向ですと、都市部の田辺市に接近する恐れがあります。」

 

「目標の侵攻ルートは山地で車両の走行は困難です。特科と航空機による攻撃が有効かと。」

 

「あと1時間で目標は特科の有効射程から逃れます。目標が人口密集地にいない今なら砲撃が可能です。」

 

“マンダ”型の詳細が報告され、黒木以外の幕僚達が発言する。任務とは言え、“彼女”を敵と見る防衛隊に旗中は無意識に拳を握り締めていた。

 

「待って下さい。」

 

会話の流れを遮ったのは山根であった。右手を上げながら山根は続ける。

 

「現時点で“マンダ”の行動原理が不明です。先に攻撃を仕掛ければ、被害の拡大を招く恐れがあります。今は様子を窺うべきです。」

 

「…山根先生のお気持ちは分かります。しかし、我々が射撃位置へ展開する時間を考えれば、猶予は30分が限界でしょう。出方を見るには余りにも時間が無さ過ぎます。」

 

防衛隊の指揮官らしき男が僅かな間を置いて山根に反論をした。周囲の幕僚達も異論を挟む様子はない。どうしても“彼女”と戦わないといけないのか、そう旗中が諦めかけた時、黒木の姿が目に入った。“マンダ”の報告以降は一切言葉を発さずに思案にふける彼が旗中の方を向くと、ふっと口をほころばせた。旗中がその真意を図りかねてる間に、黒木は笑顔を吹き消すと防衛隊員の方へ向き合った。

 

「少し宜しいでしょうか?今回の“マンダ”型は平地ではなく、起伏の激しい山地を南下しています。日高川沿いが平野部となっているにも関わらずにです。これは()の行動原理が都市の破壊や人間の殺傷ではない可能性が高い。」

 

地図を指差しながら話す黒木であったがそこで区切りを入れる。

 

「師団長。“マンダ”型巨大生物へ専門家立ち会いでの偵察を提案します。」

 

 

5分後

 

「まさか、こんなにあっさりと現場に行けるとは思いませんでした……」

 

前方指揮所出て間もなく、旗中の驚きと困惑の入り交じった小声で山根にそう話しかける。

 

「急がば回れ。ただ動くだけが行動じゃないって事さ。」

 

山根はその様子を見やってか、余裕のある答えを小声で返す。黒木の提案は師団長に間もなく了承され、特殊作戦室の手配した装備で現地へ向かうという事となった。理想的、と言う以上に余りに出来すぎた状況に、旗中自身が二の足を踏んでいた。

 

「…やっぱり都合良すぎません?」

 

「旗中君。今は一刻を争う状況だ。考える前に行動しなさい。」

 

後悔したくないんだろう?真面目な口調になった山根の目がそう語りかける。その目に映る旗中は酷く怯えて見えた。

10年前もこうだったのだろうか。その感慨は旗中に電気ショックのような衝撃をも与えた。

 

「…分かりました!やりますよ!何に乗ってけば良いんです!?」

 

旗中は臆病風を振り払うようにかぶりを振ると、半ばヤケクソ気味に答える。その姿に山根は苦笑すると、何かに気づいたのかふと空を見上げる。

 

夏の青空に2機の迷彩柄のヘリ。1機は細身の胴体で側面に小さな“羽”を生やしたような機体。もう1機は横につぶれたかのように広がった胴体に燃料タンクが2つ付いた機体だった。2機は2人の頭上を一旦通過すると再び彼らの方へ旋回しながら戻ってくる。そして燃料タンク付きが降りてくると彼らの前に着陸すると機体側面のドアを開ける。

 

「ちゃんとLRAD付きか。準備が良い。」

 

2人がヘリに乗り込む中、山根がそう呟く。

 

「山根さん!何か言いました!?」

 

「独り言だ!気にしなくて良い!」

 

ヘリの騒音にかき消されて内容を聞き取れなかった旗中の問いを山根が流す。やはり自分は利用されてるのではないだろうか、複雑な思いを抱きながらヘリコプターは大空へと上がっていった。

 

 

 

「“ブラックホーク”が離陸。“ニンジャ”と現場空域に向かいます。」

 

「…黒木二佐。これで良かったのかね?」

 

「彼らからの情報は非常に重要です。バランの先例を踏まえると弾薬装備の損失無く乗り切れます。今後の対応を考える上でも、ここからが本番と見るべきでしょう。」

 

師団長の言葉に黒木は淡々と返す。市街地侵入までのタイムリミットが頭にあるのであろう師団長を混乱させないためにも余計な言葉は不要であった。

 

「明野より戦闘ヘリ隊が離陸。現着まで35分。」

 

「小松から爆装のフィッター2機が離陸。20分で到達します。」

 

指揮所に報告が次々と入ってくる。現在、山々を移動する“マンダ”に対して、着々と準備が整えられていく防衛隊の中で航空機が最も速く対応出来るだろう。

 

(…ここを乗り越えられなければ、我々が“奴”に勝つ事は叶わない。)

 

時間の無い自分達にとってこの状況は最後のチャンスなのだ。指揮所の中で黒木のその内懐は鉄面皮に遮られ、誰に悟られる事が無かった……

 

 

日高川町を離陸した多用途ヘリ、UH-60JA“ブラックホーク”は僚機であるOH-1B“ニンジャ”と共に紀伊山地の山々を越えて飛行する。修験者達が仏教における聖地である高野山を目指して登った山々を旗中は神妙な面持ちで見つめていた。現着まで後一分、とパイロットの声が聞こえる。普通に歩けば数時間はかかったであろう道のりを数分で到着する。山根の言った“利用する”というのはこの事なのだろう。

 

「…見えた!」

『CP。こちらアルバトロス。“マンダ”を視認した。指示を請う』

 

本能と言うべきか、アルバトロス…彼らを乗せたUH-60JAのパイロットよりも速く旗中の目がマンダを捉える。70mはあるであろう長大な背中は、旗中には小さく寂しいものに見えた。

 

「…やるぞ。旗中君。」

 

左手を肩においた山根がそう呟いき、旗中は静かに頷いた。巨大生物の中から人類に友好的な存在が確認されたことから、今回のマンダに対して人類からコミュニケーションを偵察の一環として行う、それが黒木からの提案であった。

 

 

 

『仮に成功したとして、そのマンダをどう対応する?巨大生物を飼育する設備を我々は有していない。』

 

『今回は行動を停止する事が目的です。停止さえ出来れば、その後に我々が行動する余裕が出てきます。』

 

 

 

指揮所でのやりとりを旗中は思い返す。コミュニケーションの手段は音声が選ばれ、こうして機体の側面に巨大スピーカーのLRADが装備された。

150dB前後の大音量を指向性の強いスピーカーで流す事で数キロ離れた場所まで音を伝達出来るそれは非致死性兵器に分類される。今回はその指向性を生かして長距離からのコミュニケーションを行うために持ち込まれたという。

旗中は使用可能となったLRADのマイクを手に取りつつ、横目でニンジャをチラリと見た。先程まですぐ隣にいた迷彩柄の姿ははるか遠くに離れていた。もし、旗中が失敗してマンダが攻撃を仕掛けて来た場合、あの機体が退避を援護する事になる。そうなれば全面的な戦闘に…

 

「考えすぎるな。()()()()に話せばいい。」

 

再び、隣の山根が声を掛ける。普段通り、と言う言葉に旗中はハッと気付いた。俺達はこの10年間、ずっと一緒だったじゃないか…その思いを胸に、旗中はマンダを見据えた。

 

「おはよう龍女。今日はいつになくらしくないな。」

 

「動きが止まった…?」

 

旗中が話し始めた瞬間、マンダの動きが止まる。山根のその呟きを聞きながら旗中は続ける。

 

「昔から何かあれば大暴れ、大学入ってマトモになったと思ったらこの大騒動だ。また“理不尽な事”でもあったか?」

 

普段通り、河野龍女は組織であっても個人であっても理不尽が嫌いな()()だった。だからこそ、今回もある程度の仮説が立てられた。

 

「…龍女、今回も戻ってくるんだろ?何も言わずにさよならなんて、らしくないじゃないか。」

 

旗中の言葉を聞いたマンダがゆっくりと振り返ろうとする。だが、その途中で眩い光が差したかと思うと、その巨体は影も形もなくなっていた。

 

「マンダが消えた…!?」

 

その光景に背後の山根と防衛隊員達が驚きに包まれる。旗中も一瞬動揺するが、すぐにマンダの消えた付近を注視すると、すぐさま叫んだ。

 

「マンダの消えた付近に俺を降ろしてください!早く!」




OH-1B観測ヘリ
国産の観測ヘリとして開発されたOH-1に武装能力を付与した機体。固定武装は有しないが、ロケット弾やガンポッドを装備可能で、米国のAH-6リトルバードに近い性質を持つが、兵員の輸送能力は持たない。今回のマンダ戦ではロケットランチャーを装備。

武装:ハイドラ70ロケット弾(M261ロケットランチャーに装備)
M230 30mmチェーンガン(外部搭載)


UH-60JA多用途ヘリ
米国で開発されたUH-60をライセンス生産した機体。日本独自の標準装備として増槽が装備されるなど、高価かつ高性能な機体となった。対マンダ用に際してLRADやM3重機関銃を装備された。

武装:M2/M3 12.7mm重機関銃×2
M134 7.62mmガトリングガン×2
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