怪獣の方舟~The Earth of Monster~   作:わいえす!

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また時間が空いてしまった……


第11話『CLEARED HOT 後編』

<CP。こちらアタッカー1。新たな巨大生物を視認。当該生物はマンダ型と推定。現在フランケンシュタイン…もとい人型巨大生物と交戦中。送れ。>

 

<アタッカー1。こちらCP。了解した。このままマンダ型及び人型巨大生物の警戒監視を実施。状況を報告せよ。送れ。>

 

 

日高川町 町役場

 

「フランケンシュタイン?」

 

「確か、死体を元に作られた、いわゆる人造人間ですね。そう言えば、フランケンシュタインも元は開発した者の名前だとか。」

 

町役場内に設けられた指揮所の中、疑問の声を上げた師団長に黒木が答える。ヘリのパイロットが与えた情報は指揮所内に小さな混乱を生んでいた。

 

「新たな巨大生物が現れてるのに、今は名前の話をしてる場合ではないでしょう。」

 

指補給担当の一佐が声を上げる。弾薬や燃料等を現場に回さなければならない補給部門にしてみれば、名前は後回しにするべき話であった。

 

「いえ、マンダ型が再出現した事により状況は複雑化しています。ここで名前を決めた方が識別を容易に出来ます。」

 

しかし、火砲などの特科で構成される火力調整担当の一佐からそれに異論が上がる。敵か否かを判別し、誤射を避けたい特科にとっては呼称が欲しいところであり、分裂し小型化する巨大生物に取っては今以上にそれが求められていた。

 

「……分かった。これより人型巨大生物を“フランケンシュタイン”と呼称。分離した個体に関しても同様とする。直ちに各部隊にこれを伝達し徹底させよ。」

 

僅かな間を置いて師団長は命令を指揮所に発した。火力調整担当の意見が通った形だが、決定が早かったからか補給担当からの異論は上がらなかった。しかし、命令を発した師団長はもう少し短い名前はないだろうか、と僅かに思案するのであった……

 

 

 

同時刻、紀伊山地

 

龍女と別れ、2体の“巨人”から逃れようとする旗中であったがじわじわと追い詰められつつあった。山の斜面や木々は彼らの巨大な体の動きを阻害させてはいたが、それらを強引に突破し距離を詰めてくる2体は、逃げることしか出来ない旗中の退路を確実に潰しているのであった。

 

(龍女に一体だけでも倒して貰ってた方が良かったかな……)

 

旗中の脳裏にそんな考えが浮かぶが、かぶりを振ってその考えを捨てる。

 

(これは俺が引き受けたんだ……しっかりやらないと親父とお袋に笑われる。)

 

そう思った時、左手で握りしめていた無線機から音声が流れる。

 

 

<旗中君、聞こえるか?今、攻撃ヘリがこちらに来てる。こっちが合図を送ったら全力で麓まで降りてきてくれ。航空支援の間にこのヘリで君を乗せる。>

 

「乗せるって……」

 

どうやって、と口を動かした直後、さらに木々を揺らす音が別方向から聞こえる。見ると、もう2体の“巨人”がこちらへ向かって来ていた。

 

 

時間が無い、冷や汗と共に流れた旗中の懸念と共に無線機から別の声が聞こえる。

 

<こちらアルバトロス。こちらが10秒数えたら麓まで走ってくれ。>

 

「……わかりました。」

 

同行していたヘリからの指示に、旗中は僅かに息を吸い込み答えた。

 

<10…9…8…7…>

 

淡々とカウントが始まると、旗中は麓の方へ体を向けると目を閉じた。視界が暗闇に包まれると共に木々や草むらをなぎ倒しながら近づく巨人の音、付近を飛ぶヘリの音がカウントと共に彼の空間を支配する。

 

<6…5…4…>

 

巨人の音がこちらにさらに近づいてくる。殆ど目前であろう。それと同時に微かに新しくヘリの音が聞こえてくる。これが攻撃ヘリの音かもしれない。

その思考が脳裏によぎると旗中はそっと目を開ける。木々が生い茂りながらも麓までの道が見える。

 

<3…2…1…今!>

 

その声と共に走り出す。坂道を下ることも相まって、一気に加速する。固まっていた獲物が急に走り出し呆気に取られたのか、背後にいる巨人の反応は緩慢でどんどん音も小さくなっていく。

振り切った。旗中が斜面を下りきった瞬間、不意に視界が暗くなる。咄嗟に上を見上げると、はるか後ろに居たはずの巨人が頭上を覆っていた。

 

「!?」

 

咄嗟に旗中が真横に飛ぶが、巨人が落下した衝撃波をもろに食らい大きく飛ばされる。転がるように地面に落ち全身を打ち付ける。激しく痛む体を何とか起こした旗中の目の前には巨人の姿があった。ジャンプして彼を潰そうとしたであろうその顔がこちらへ向く。今度こそ助からない。そう思った瞬間、不意に巨人の体が後ろへ仰け反る。呆気に取られた旗中だったが、仰け反る巨人の背後にもう一体の巨人がいることに気付く。

巨人が巨人を羽交い締めにしようとしている。予想外の事態に旗中は思わず呆然とする。

 

<旗中君!早くそこから離れろ!>

 

無線から聞こえた山根の叱咤を受けて、旗中は無理やりに体を歩かせる。10メートル、20メートル、30メートル……おおよその距離であったが安全であろう距離まで歩き続けた彼は背後を振り返る。仲間割れなのか、羽交い締めする巨人と抵抗する巨人、不意にその背後の巨人と旗中の目線が合う。

 

 

『早く逃げなさい。』

 

どこかで見た目、その目を見た瞬間に声が再生された。ずっと昔に聞いた声……

 

「お袋……?」

 

旗中がそう呟いた瞬間

 

<CLEARED HOT>

 

アルバトロスの無線と共に、多数の小さな爆発が二体の巨人を包む。機関砲?咄嗟にその方角を見ると、点のようではあったがアルバトロスに似たヘリコプターが機首の機関砲を巨人に放っていた。3秒ずつ連射されるそれは土煙と共に巨人を2体ごと撃ち砕いていく。やがて、射撃が止むとそこに巨人のいた痕跡は無く、無数の穴の空いた地面といくつかの肉片が散らばるのみであった。

 

「何で……」

 

旗中は呆然と呟く。何であの巨人はもう一体に攻撃した?何で俺はお袋の声を思い出した?何で……

不意に左頬を濡れたものが伝う。

 

「何で俺は泣いてるんだ……」

 

旗中は左の掌でそれを拭う。その時、背後に強風を感じる。恐らくは山根達の乗るヘリであろうか。しかし、その気配を感じても彼の目線は巨人のいた場所から動くことはなかった……

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