怪獣の方舟~The Earth of Monster~   作:わいえす!

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毎日投稿しようと思っていたのですが、中々筆が進まず……毎日投稿出来る人達は本当に凄い。
と言う事で第2話です。


第2話「いざ岩手」

2024年 東京 千代田区紀尾井町

 

1944年、この東京という街はゴジラに大穴を開けられて壊滅した。もし、これが他の街であったらあの三年近く続いた戦争はまだ続いていたかもしれない。しかし、残念ながら東京は大日本帝国の首都。しかも、その大穴の写真が日本中、そして世界中にバラ撒かれたときた。

 

 

そんな想定外だらけの後始末を、文字通り廃墟の東京から這い出たばかりの政府のお歴々に押し付けるのは少々酷なものだったろう。しかし、現実はそんな甘い事は言わせない。写真は本物だと認めるわ戦争の継続は困難と漏らすわ、出るわ出るわ失言のオンパレード。政府の醜体を散々見せられた奴らが愛想を尽かして、北日本ってのを立てるのも分かる話だ。

 

 

とは言え、ゴジラの襲撃は悪いことばかりじゃなかった。ゴジラ退治を理由に、国民の負担反らしと敵国アメリカの協力を取り付けられたからだ。

当然、連合国は講和ではなく無条件降伏、武装解除を求めた。しかし、日本はクレーターの写真片手にこう返した。「もし、このクレーターがロンドンであったら。パリであったら。ワシントンであったら。貴国らはどうするのでしょう?我が国は、必ずゴジラと決着を付ける。その為には貴国らの奴隷にもなりましょう。」…僕に言わせれば当時の日本は狂ってた。だけど、その狂気を止める術を誰も持ってなかった。とりあえず、日本統治はGHQが行い、日本軍は連合国の傘下に置いて、ゴジラを殺したら日本軍は解体する。そう落ち着いた訳だけど、まさかその4年後にゴジラがサンフランシスコが壊滅させて、アメリカと日本が同じ狂気に囚われるなんて誰が……

 

 

「前置き長いんで本題入って貰っても良いですか?」

「そんな訳で、こんな都会を離れて田舎に行かないかい?」

「そんなことだろうと思いましたよ……」

そう呟いた後、旗中進二は深く溜息を吐いた。目の前に座るロングヘアの男、門倉はいつも意味深な事を言って無茶をさせる。以前はヒバゴンを探しに中国山地へオンボロの軽で向かわされて、山中を走り回る羽目になったのだった。

「まぁ、それでこっちは番組作れるし、君も目標への経験積めるからWinWinでしょ?」

こちらの内心を知ってか知らずかそう言う。この図太さは小さなネットメディアに過ぎなかった「モンスターQ.net」をテレビ局の1事業部に変えた人間故だろうか。

「ところで、今回はどこへ行くんですか?」

そう旗中が聞くと、門倉はタブレットに表示した地図を指さしてこう言った。

「えーとね、岩手県の岩屋村ってとこ。北上川の上流だね。」

画面には真ん中にポツンと「岩屋村役場」のピンがポツンと立ってるだけ。泊まるところがあるかどうかすらわからない。ひとまず、旗中は彼の評価を2つほど下げる事にした。もはや、いくつ下げたか忘れたが。

 

 

 

数時間後 文京区本郷

 

 

「…それで、取材には行かれるのですか?」

「もちろん。仕事だからな。大学も夏休みだし。」

築30年のアパートの1室、1LDKのリビングで旗中は向かいに座る同居人と鍋を囲む。今は七月なので、夜でも外は30度を超える暑さである。その中で冷房をガンガン効かせた部屋で熱々の鍋を食べるのは同居人たっての希望だ。そんな同居人の名前は河野龍女。年齢は21歳、透き通るような長髪をした、恐らく世間的には「綺麗」「美しい」と呼ばれる人間だろう。そんな彼女が会話を続ける。

「…それなら、吾子姉さまにも私たちが家を空けるって言わないとですねぇ…」

牧吾子。10年前に両親を失った旗中らを引き取った恩人であり、モンスターQ.net(ネット事業部)のあるテレビ局でリポーターをしている「有名人」でもある。それよりも

「やっぱり、付いてくる?」

当然の疑問を旗中が口にする。いや、その答えは分かりきっているのだが…

「無論です!」

「私は貴方様の妻なのですから!」

彼女はそう満面の笑みで答える。出会った当初からなので驚きもしない。

とは言え、そう簡単に付いて来てもらうわけにはいかない。

「…夏休みは予定があるでしょ?」

「キャンセルします♪」

「何か危ないことがあるかもしれないし」

「その前に安全にします♪」

「今回はあの門倉さんからの指示だし」

「たとえ無間地獄に行くとしてもお供します♪」

「今回は野宿かもしれないから」

「一夜城をこしらえます♪」

全て笑顔で答えられてしまった。と言うかなんだ一夜城って。そう旗中は嘆息した後、奥の手を使うしかないと決意した。

「とにかく連れて行くわけにはいかないから。吾子さんも心配するから…」

「それは確かに…」

龍女はそう言ってうな垂れた。彼女自身、吾子には可愛がられているので流石に無下にすることは出来ないのだ。吾子の行為を悪用する形になってしまったが、龍女を傷つけるわけには行かない。旗中は心の中で吾子に謝ることにした。

 

 

 

 

 

出発当日

 

 

東京駅。かつて、ゴジラに破壊されたこの駅も、東北と西日本を結ぶ繋ぎ目として、首都でなくなった東京同様に復旧と開発が進められた、いわば東京の象徴である。今やゴジラによる被害は微塵も無く、南北日本が統一されて以降、北日本のあった北陸の人々を受け入れる聖地になっている。

 

そんな東京駅のホームから新幹線がゆっくりと加速しながら離れていく。その車内の中で

「なぁ、龍女?」

「はい♪」

「どうしてここにいるんだ?」

「偶然です♪まさしく運命ですね♪」

「嘘つけ!」

通路を挟んで2つと3つに別れる座席の内、2つある方の通路側に旗中が座り、その通路を挟んだ隣に龍女がいる。いつからいたのかわからないが、旗中達が座席に座った時、既に彼女が隣に座っていたのだ。

「一応聞くけど、吾子さんは…?」

「ええ。私には果たさなければならない使命があると伝えますと、吾子姉さまはそれはもう泣いて喜ばれまして、無事に帰ってきてねと背中を押して頂きました……」

およよと彼女は袖で口元を隠しながら答える。

「……そっかぁ……」

これはきっと罰なのだろう。そう旗中は考えることにした。

「まぁ、そう言うこともあるよね」

そう、窓側に座る男が売店で買ったサンドイッチを頬張りながら喋る。

「いや、それはないですから」

彼の名前は西部。今回の企画のディレクターであるのだが、どこかマイペースな性格でつかみ所のない人である。決して悪い人間ではないのだが…

「それはそうと、龍女ちゃんはどこまで行くの?」

「私は盛岡駅で降りまして、岩屋村と言う所へと行くんです♪」

「おお!じゃあ僕達と同じだ!」

「ええ♪奇遇ですね♪」

「……頭が痛くなってきた……」

何故、彼は全く疑わないのだろうか。それとも自分が間違ってるのか。旗中がそう考え始めた時、車両の前方から車掌がやってくる。どうやら切符と座席の確認に来たようだ。すると、満面の笑みだった龍女の表情が僅かに引きつる。もしや……

「お客様。こちらの乗車券なのですが、別の車両となっております。ですので、そちらへご移動して頂いても宜しいでしょうか?」

龍女の乗車券を見た車掌が屈みながら彼女に伝える。やはり勝手に座っていたか。

「嫌です!私はここから離れません!」

龍女はそう座席にしがみつく。車掌も困ってしまったのか後ろに控えていた女性乗務員に耳打ちをする。

「お客様。申し訳ございませんが、乗車券に記載されております座席へご移動させて頂きます。」

そう言うや否や、龍女を座席から引き剥がすとそのまま別の車両へ連れて行ってしまった。その鮮やかな動きから、彼女はテロ対策の警備員だったのかもしれない。連れて行かれる時も龍女は何か言っていたようだが、気にしないことにした。

 

「……そう言えば西部さん。岩屋村で何をするんです?」

気を取り直して、旗中は西部に質問をする。これは門倉が内容を場所しか伝えなかった為だ。

「えっとね。怪獣のお祭りを撮るんだって。」

「怪獣の…祭り?」

いまいちピンとこない。

「何でも、岩屋村には数百年前に怪獣が現れて、今でもその怪獣を神様として奉ってるんだって。」

ご馳走様でした。とサンドイッチを食べ終わった西部が手を合わせる。

「怪獣を……奉る村……」

そう呟いた後、旗中は視線を正面に向けた。ふと、自動ドアの上にある電光掲示板が目につく。普段、様々なニュース等を扱う掲示板だが、今は昨日発生したがけ崩れの続報をやっているようだ。

 

 

「岩手県中央部で発生したがけ崩れ 怪獣の目撃情報の受け防衛隊に派遣要請」

 

 

確か、がけ崩れの発生地は岩屋村に近いのではなかったか。旗中の脳裏に不安がよぎった。

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