怪獣の方舟~The Earth of Monster~   作:わいえす!

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ちなみに岩屋村の位置ですが、盛岡市の北にある設定です。


第3話「岩屋村」

岩手県 滝沢市

 

盛岡市の北西に位置し同市のベッドタウンとなっているこの市は、一見すると分からない静かな緊張感を持った1日を迎えていた。その元凶である、この街の東端にある北上川の川辺は警察が封鎖し、その中を多くの防衛隊員達が行き来していた。

そこへワゴン車が一台やって来る。警官がそれを止めるが、何回かやりとりをした後に後部ドアが開き、男が出てくる。彼は規制線をくぐった後、防衛隊の責任者と思われる男に声をかける。

 

「ここの責任者の方ですか!?」

防衛隊と思しき迷彩柄のヘリが上空を飛んでいった為に声が大きくなる。

「そうですが!貴方は?」

「T大の山根と言います!内閣府の要請で現地調査に来ました!」

山根と名乗った男は三十代前半だろうか。どこかはつらつとした表情で答えた。

「陸上防衛隊の小杉です!こちらへ!」

そう言って小杉は山の方へ歩を進めた。

 

 

現場へと向かう道中、彼らは山根に情報の詳細を報告し始める。

「最初に“巨大生物”を発見したのは、東京から来た大学生の男女2名。彼ら曰く、暗がりでよく分からなかったが、自分達よりも遥かに大きな頭部を有して目らしきものが光っていたとの事です。」

「捜索を行っている航空機からの報告によると、土砂崩れが起こった付近から木々が倒れたような後や、足跡らしき穴があると言うことで、地上要員に調査を行わせています。」

「今の所、死傷者や行方不明者は奉告されていませんが、付近の住民からは昨夜はしばらく地鳴りがあった後、ズシンズシンと言う音が揺れと共に聞こえるという通報がありました。また、関連性は不明ですが、付近の牧場から牛7頭と豚8頭が行方不明になっているようです。」

あと足音は私も聞きました、と付け加えた警官の言葉を受けた山根はなるほどと首肯した後、小杉に質問を投げかける。

「まだ巨大生物の姿は確認されていないのですね?」

その言葉に、小杉は僅かに言い淀む。

「……航空機や地上から捜索を行っていますが、姿の確認は未だ出来ておりません。明日はもう少し範囲を拡げて、川の対岸も捜索する予定です。」

「分かりました。足跡や倒された木々はくまなく調べてください。痕跡が僅かでもあれば、報告と回収をお願いします。」

「はい。現場にもそう徹底させます。……っと、到着しました。アレです。」

小杉がそう指差した地点を見た瞬間、山根はその光景に圧倒された。

 

 

なだらかな山の中腹、そこが2、300メートル程下に向かって抉れていた。いや、土の色が違う事から内側から突き破られたと見るべきだろうか。いずれにせよ、自然に出来るものではない。

「……他に似たような穴は?」

「発見できているのはここだけです。」

「分かりました。我々でも調査をしたいのですが、よろしいですか?」

「はい。それでは、こちらに人を残しておきます。」

そう言った後、小杉は部下に何事か言って去って行った。

その背中を見送りながら、山根は内心で確信していた。

(複数の証言、周辺環境への影響、間違いなくこれは…)

人知を遥かに凌駕し、人類を度々危機に陥れる存在。

(怪獣だ。)

そう、山根は再度山の方へ向き直る。山肌が抉れ、茶色い地面が覗かせるその姿は、最初からそうであってように静かに佇んでいた。

 

 

 

同時刻 盛岡市

「いやー、来るのは2人だけって聞いてたもんだから、3人いるもんだから驚いちまったけど、めんこい子が来てくれて良かったよ。これで村にも活気が出るってもんだ。」

「め、めんこい…」

「まぁ♪可愛いだなんて♪ありがとうございます♪」

 

 

盛岡駅を下りて岩屋村へミニバンで向かう道すがら、こんなやりとりから始まる。口火を切ったのはハンドルを握る魚崎という男だ。見た目は三十台後半と言った所だが、岩屋村の村長を努めてるという。村の人を常に支えているからだ、と本人は語っていたが、その努力は並大抵のものではないだろう。

ちなみに西部が助手席で魚崎にカメラを向け、後部座席に旗中と龍女がそれぞれ座っている形だ。あれよあれよと言う間に馴染んだ龍女を横目に、旗中は疑問を投げかけてみる。

 

 

「岩屋村は怪獣を奉る村と聞きました。具体的にはどんな怪獣なんでしょう?」

「うん。怪獣…私達の村では神様な訳だけど、名前を婆羅陀魏(バラダギ)山神と言って、かつて村に現れた外敵達を倒していったらしい」

坂上田村麻呂率いる朝廷軍とか源頼朝率いる幕府軍とか、と魚崎は話を続ける。

「大きさは50メートルくらい、水中や地中に潜れてムササビみたいに空を滑空したそうだ。絵巻物を見ると“バラノポーター”とよく似ているね。」

「バラノポーター?」

「恐竜の一種だよ。大きさはバラダギ様の方が大きいけどね。」

旗中の問いかけに魚崎が答えると同時に、龍女がバラノポーターの検索結果と思しきスマホの画面を見せる。なる程、確かにムササビとよく似ている。

「それにしても、バラダギ様というのはどれ程強いのでしょう?」

ふと、龍目がそんなことを言う。

「そうだねぇ……一概には言えないけど、この辺りの地形を作ったのはバラダギ様だとか、そんな話があるから、もしかすると怪獣相手でも強いかもね。」

ゴジラよりも強いかも、と魚崎は冗談めかしたように付け加える。

「それで、今回の取材はバラダギ様の痕跡を探るのに合わせて“婆羅陀魏(バラダギ)神楽”を撮るってことですね。」

カメラを回し始めてから静かだった西部が口を開く。ある程度は門倉から聞いていたのだろう。こっちには流されてなかったが。

「そう!我らが岩屋村にある唯一の一大イベント、バラダギ祭りの婆羅陀魏(バラダギ)神楽!今年は何人来るかなぁ!」

そう魚崎は今日1番にハツラツとした声で答えた。

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