怪獣の方舟~The Earth of Monster~ 作:わいえす!
その名の通り、岩屋村に奉られている神、婆羅陀魏山神に捧げる神楽である。その歴史は古く、安土桃山時代には奉納されていたと言う記録から、最低でも400年以上前と言うことになる。
神楽は大きく分けて4種類あるとされ、主に巫女が舞う巫女神楽、演劇が主体である
古くよりこの地には婆羅陀魏山神に仕える巫女が存在していたとされ、彼女らが行う神事の1つにこの神楽の源流があったと思わる。その神事がいつしか神楽という形に変化する中で、地域伝承や獅子舞神楽の1つである山伏神楽が取り入れていくことにより、今の婆羅陀魏神楽が形作られていった。しかし、明治維新による欧米化の影響を受けて巫女神楽が衰退、ベースが巫女神楽であった婆羅陀魏神楽も事実上の断絶と言う状態になってしまった。この神楽が復活したのは戦後、残っている資料を元に再現の試みがなされ、1970年代にようやく婆羅陀魏神楽は復活した。こうして復活を遂げた婆羅陀魏神楽であるが、経済成長に伴う東京や関西と言った都市部への流入や、村の高齢化に伴い演者が減少、今では地域の学校の生徒が舞や演奏を授業の一環として手伝いをしている状況という。
魚崎からそんな説明を受けながら、彼の運転する車は市街地を抜けて山の方へ向かっていく。車窓からはビルの姿は消え、畑と点在する家々が映るようになる。
「昔、ウチの村が合併されるって話があったんです。」
婆羅陀魏神楽の説明が一通り終わったのか、魚崎がこんな話を始める。
「若い世代は学校を卒業したら大体は都会の方に行ってしまう。当然、残りたいって人は残るけど、それでも出て行く人間の方が圧倒的に多い。気づくと、村は爺様婆様が増えるばかり。あの村に将来はない。だから、他の街と合併させてしまおう。周りはそう思ったんでしょう。」
赤信号なのか、車が一時停止する。一瞬の沈黙の後、再び魚崎が口を開く。
「でも、ウチの村の人達は違った。俺達の村は俺達のだ。余所者にとやかく言われる筋合いはねぇ。」
「余所者……」
魚崎の言葉に龍女がピクリと反応する。彼はそれを気にせずに話を進める。
「そんなこんなで、合併話はお流れ。村も高齢化へまっしぐらって訳です。まぁ、例え合併しても今の状況は変わらなかったと思いますけどね。」
これ流します?と苦笑いしながら言う魚崎と、同じく苦笑いしながら局長次第ですね、と返す西部を尻目に、旗中は横に座る龍女をチラッと見る。車窓を眺めていた彼女はすぐに視線に気づいたのか、こちら見るとニコリと微笑みを浮かべる。しかし、旗中にはその一瞬前、彼女がどこか遠くを見る表情が脳裏に焼き付いて離れないのであった。