愛屋及烏 / 依依恋恋   作:哀餓え男

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第四十九話 海水浴(表)

 

 

 

 転生前の僕が好きだったアニメや漫画で好きなシチュエーションは二つ。

 ズバリ!

 水着回と温泉回だ!

 いや、これに関しては、今でも見たいと思っている。

 一刻も早く見たいと思っている!

 だから、将来その手の分野で活躍する人たちに偽名で出資したりもしている!

 あ、ちなみにラッキースケベも好きだったんだけど、ナナさんとリアルにラッキースケベを経験しちゃったせいで心臓への負担が半端ないと知って苦手になっちゃった。

 そして今回は水着回である。

 もう一度言おう。

 水着回である!

 今日は舞鶴鎮守府での用事があらかた終わったから、みんなをリフレッシュさせるために鎮守府の砂浜で海水浴をすることにしたんだ。

 再度ちなみに、この時代にも水着はちゃんと存在している。

 けっして、サラシに下帯やフンドシなんてスタイルじゃないんだ。

 でも残念ながら、日本にはビキニはまだない。

 それと言うのも、ビキニとは1946年7月1日にマーシャル諸島のビキニ環礁で米国によって行われた第二次世界大戦後初の原爆実験である、クロスロード作戦の直後である1946年7月5日にルイ・レアールがその小ささと周囲に与える破壊的威力を原爆に例えて、ビキニと命名して発表したのが最初なんだ。

 もちろん米国で普及し始めたばかりだから、まだ日本では普及していない。

 だがしていないだけであって、僕はとある筋……まあ、富岡君なんだけど。の、伝手(つて)でビキニを手に入れることに成功した。

 そして手に入れたビキニを……。

 

 「あの、小吉様。これはさすがに……」

 「恥ずかしいのかい? じゃあ、腰にパレオを巻いたらどうだろう」

 「まあ、これなら多少は……」

 

 多少どころか却ってエロい。

 そう、僕はビキニを四人に配った。

 天音君に渡したのは上下白のビキニと、恥ずかしがると予想して用意しておいた同じ色のパレオ。

 さらに駄目押しとばかりに、大きめの麦わら帽子とサングラスだ。

 うん、さっきも言ったけど却ってエロい。

 胸元は爆発したように開き、パレオを装着したことで気が緩んだのか、パレオが揺らめく度にチラチラとトライアングルゾーンを見せてくれる。

 もし僕が巨乳好きだったら、彼女が僕の前に来た時点でルパンダイブをしているだろうね。

 

 「なあ、大将。どうして俺だけ、水着の上から短パンをはかされたんだ?」

 「それが、君に似合うからさ」

 

 と、フォローした地華君に渡したのは赤いビキニ。

 さらに追加装備として、富岡君に作ってもらったデニムの短パンも渡した。

 うん、やっぱり思った通り、地華君の短パン装備は大正義だったな。

 際どい部分は見えないものの、それが逆に、彼女の健康的で長い足を際立たせているし、ベリーショートからボブカットと呼べるまで伸ばした髪型にも良く似合っている。

 

 「これならぁ、六郎ちゃんも私だけを見てくれるようになるかしらぁ」

 「うん、間違いない。僕が保証するよ」

 「あなたに保証されてもねぇ……」

 

 と、言いながら疑いの眼差しを僕に向けている四進君が来ているのは、後にフレアビキニと呼ばれる物。

 色はピンクだ。

 フレアビキニとは、簡単に言うとトップ側をフリル状の布で覆った物でアンダー側の有無は問われないんだけど、今回はフリル有りにしてみたよ。

 うむ、我ながらナイスチョイスだ。

 龍見姉妹と比べるとボリューム不足だがしっかりと出るところは出て引っ込むところは引っ込んで、龍見姉妹とは違ったムチムチ感を醸し出している四進君に恐いくらいマッチしている。

 

 「ね、ねぇ、小吉。似合う?」

 「とっても似合ってるよ。ナナさ……ごほぁ!」

 「小吉!? なんで吐血したん!?」

 

 何故僕が、上下黒のビキニに身を包んだナナさんを見た途端に吐血したのか。

 まあ、吐血と言っても鼻血が逆流しただけなんだけどね。

 そんなの簡単さ。 

 ヤバイんだよ!

 破壊力が物凄いんだよ!

 小さな布だけで大事な部分を隠されたナナさんの身体は僕の想像力と妄想をこれでもかと刺激し、黒色が、見えないのに見えている時よりも淫靡で艶やかに彼女を魅せている。

 ああ、やっぱり黒は良い。

 どこかのパン屋の女将さんが言っていた通り、黒は女性本来の美しさを極限まで引き出す究極の色だ。

 それだけじゃない。

 艶やかな黒髪をポニーテールにしたことで、普段は見えないうなじが見えて色気が増している。

 許されるなら、今すぐあのうなじにしゃぶり付きたいよ!

 

 「おいおい、ナナにだけそんな反応をされるとさすがに傷つくぜ?」

 「地華の言う通りです。私たちの方が小鬼よりも実ってますよ?」

 「七郎ちゃんはぁ、もうちょっとお肉を付けた方が良いわねぇ」

 

 いやいや、確かにナナさんは君たちと比べたら貧相と言わざるを得ない体型だよ?

 でも、それが良いんじゃない!

 もし仮に、ナナさんが龍見姉妹並みの巨乳だったらバランスが悪いし、四進君みたいに肉感的だったら違和感がある。

 ナナさんは、スレンダーと言う言葉を具現化させたようなこの体型が最も似合ってるんだ。

 

 「小吉が太れって言うなら……」

 「ちょっと待て。それじゃあ、オレらが太ってるみたいじゃねぇか」

 「心外ですね。この胸もお尻も、龍見家に伝わる男性篭絡法に従った結果であって、決して太っているわけではありません」

 「龍見家ってぇ、そんなのを伝えてるのぉ? どんだけ男を捕まえるのに必死なのよぉ」

 

 それを四進君が言うか。

 確か君って、男を拉致るために100人くらい操って僕らを皆殺しにしようとしなかったっけ?

 

 「油屋大将。久々に、泳ぎで一勝負どうですか?」

 「良いけど、負けないよ?」

 「それはこちらの台詞です。今日こそは勝ってみせます」

 

 四進君の余計な一言で口喧嘩を始めた三人を相手にしたくないのか、それとも飛び火するのを恐れたのかはわからないけど、僕は沖田君の提案を受けることにした。

 これが剣道の試合とかなら受けなかったんだけど、水泳なら話は別。

 だって僕は、幼少時代は河童の小吉と呼ばれたくらい泳ぎが得意なんだ。

 あ、それと、誰も知りたくはないだろうけど、僕と沖田君の水着はフンドシだ。

 

 「小吉って、泳げたんじゃね」

 「そりゃあもちろん。これでも、海の男だからね」

 「へぇ……」

 

 そう言って、沖田君との水泳勝負を10馬身差を付けて圧勝した僕を出迎えてくれたナナさんは、何故か後ろ手を組んでモジモジして恥ずかしそうにしている。

 その後ろでは龍見姉妹と四進君が、「言う方に今夜のオカズ一品」とか「では、私は言えない方に。四進さんは?」とか「私はぁ、言えないで逃げるのに賭けるわぁ」などと、明らかに何かを吹き込んで賭けに興じているのがわかる会話を悪びれもせずにしていた。

 

 「あの、あたし……」

 

 よほど言うのが恥ずかしい事なのか、ナナさんはそこまで言ってうつむいてしまった。

 これは、助け船を出した方が良いかな。

 このままだと最低でも天音君。

 最悪、四進君の予想通りの結果になってしまいそうだ。

 

 「ナナさん。泳ぎ、教えようか?」

 「え? どうして、あたしが泳げんって……」

 

 知ってるの? って、言いたかったのかな。

 もちろん、僕はそんなこと知らない。

 ただ単に、この状況で三人に入れ知恵をされたナナさんが僕に言いそうなことを予想しただけだ。

 でも……。 

 

 「ナナさんが泳げないなんて、意外だね」

 「お、泳げるんよ? 泳げるんじゃけどぉ……。川の流れに身を任せて沈まんようにするくらいしかできんくて……」

 

 それは泳げるとは言えない。

 ただ流されてるだけじゃん。

 とは、決して言わない。

 だって、泳ぎを教えるとなれば手を繋いでのバタ足から教えるのがベター。

 つまり、合法的にナナさんに触れられる。

 しかも僕も海に入った状態だから、下半身の主砲が暴走してもバレない。

 なので……。

 

 「ね、ねえ小吉。沖に来すぎじゃない? あたし、足がつかんのじゃけど……」

 「僕の足はついてるから、手を離さなければ大丈夫だよ」

 

 なんなら、鎖骨のあたりまで海に浸かった僕の首に両手を巻き付けた今の状態を維持し続けてくれてもいいよ?

 ナナさんの胸の感触を、僕は鳩尾(みぞおち)で存分に堪能するから。

 

 「離さんでね? 絶対に離さんでね?」

 「うん。絶対に離さないよ」

 

 離した~い。

 僕に両手を引かれてバタ足を続けてるナナさんの手を離した~い。

 ああ、まさかこの歳になって、好きな子に嫌がらせをして気を引きたがる子供の気持ちを理解するなんて思ってなかったなぁ。

 などと、嗜虐心と平常心の狭間で揺れ動きながら、僕はナナさんとの海水浴を楽しんだ。

 

 「それが、もう二週間も前か」

 

 今、僕の目の前にあるのは、そんな日常とはかけ離れた非日常。

 いや、人の枠に収まらない技能を収めた天音君と地華君の初撃を左手と背中の刀を少し抜いただけでなんなく受け止め、返す刀で川へ叩き落としたこの状況は、超常と言っても過言じゃないだろう。

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