「場所は用意してやるから、さっさとヤることヤっちまえ」
と、地華に言われて用意された場所に着いても、あたしは覚悟を決めかねていた。
その覚悟とは、小吉に抱かれる……のは、むしろあたしも望んでいたから覚悟するほどのことじゃないか。
覚悟しなきゃいけないのは、見た者全てを恐れさせた小吉のアレを受け入れること。
あたしは小吉に抱かれたい。
でも、アレをねじ込まれるのは怖い。
二つは同じ行為なのに、あたしの心は相反する感情で板挟みになっていた。
それでも……。
「あ、あの……。ここで寝るん……よね?」
「う、うん、そうみたい……だね」
いかにも、二人で寝ろと言わんばかりの広さを持つベッドを見たら、「あそこでするんだ。あそこで小吉と一つになるんだ」と、恐怖よりも期待の方が大きくなった。
うん、今なら大丈夫。
今なら、小吉のアレも受け入れられる気がするわ。
「と、とりあえず座らない?」
「そ、そうじゃね。ここでつっ立っちょってもしょうがないし」
小吉もその気かな?
だってソファーがあるのに、わざわざベッドに腰かけたもの。
ああでも、今日はかなり暑かったし、ここに着くまで結構な距離を歩いたから汗をかいてるのよねぇ……。
「そう言えば、刀はどうしたの?」
「か、刀?短刀以外は、全部トランクに入っちょるけど……」
「へ、へえ、そうなんだ」
だから、ヤるならお風呂に入ってからが良いなぁ……と、考えてる最中に話を振られたもんだから、それ以上会話を続けられなかった。
これ、どう考えてもあたしが上の空だったから、会話が止まっちゃったのよね?
だったら、悪いことしちゃったな。
せっかく、小吉がこの張り詰めた空気を和らげようと……したのよね?
なのに、あたしが話を終わらせちゃったんだから、今度はあたしが……。
「しょ、小吉!」
「は、はい!」
「あ、あたしとその……。したい?」
「し、したい……とは?」
いや、聞き返さないでよ。
この状況で『する』ことなんて、小吉のアレをあたしのアソコにナニすることしかないでしょ?
あ、もしかしたら、小吉は童貞だからわかんないのかも。
でも、処女でオマケに知識が片寄ってるあたしが知ってるのに、一回りも歳上の小吉が知らないなんてことがあるのかし……あ、察したみたい。
本人は気づいてないんでしょうけど、股間が少し盛り上がってるからすぐにわかったわ。
でも、遠慮してるのか度胸がないのかはわからないけど、あたしに手を出そうとはしてくれない。
だったら、あたしが背中を押してあげようじゃない。
「あたしね、小吉じゃったらええよ。でも、あの……汗とかかいちょるけぇ、できればお風呂に入ってからがええ……。ダメ?」
「うん、ダメ……いやいやいやいやいや!ダメじゃない!ダメじゃないよ?うん、やっぱ、そう言うのは風呂に入ってからだよね!」
今、ダメって言った?
言い直したけど、確かにダメって言ったよね?
どうしてダメなんだろう?
もしかして、あたしの匂いを嗅ぎたいの?
今の汗臭いあたしを嗅ぎたいからダメって言ったの?
そうなら、理解できる。
その気持ちは理解できるわ。
お風呂上がりの匂いも嫌いじゃないけど、やっぱり日中に凝縮された匂いを嗅ぐ方が楽しいし興奮できるもの。
「じゃあ、小吉も風呂に入らんで。そのまま、あたしを……」
「え?僕は入るよ?」
「ど、どうして?」
そうなるの?
それじゃあ、今の小吉の匂いが落ちちゃうじゃない。
まさか、自分だけあたしの匂いを楽しんで、あたしには楽しませないつもり?
それともまさか、あたしを抱きたくないから遠回しに断ってる?
あ、その可能性が大。
だって縮んでる。
小吉の股間が平静を取り戻してる。
あたしは心も身体も準備できてたのに、小吉はあたしの覚悟を踏みにじった。
恥をかかされたような気分だわ。
「小吉の……ド阿呆!もう知らん!」
それが許せなかったのか、あたしの身体は吐き出した言葉に導かれるように、足元に置いていたトランクを小吉の顔面に叩きつけていた。
しかも、角を。
「しょ、小吉?大丈……夫?」
じゃ、ないわね、これ。
死んじゃいないけど、白目を剥いて鼻血を盛大に流している。
そのせいで真っ白なシーツが、真っ赤に染まっていってるわ。
「これじゃあ寝れんなぁ……」
案内の爺さんに頼んで交換してもらう?
いや、それは駄目ね。
小吉は鼻に詰め物でもしとけば大丈夫でしょうけど、この小吉を見られたら大事になりかねない。
「あ、じゃったら……」
部屋ごと変えてもらおう。
あたしも小吉も、荷物は手荷物だけだから部屋さえ用意してもらえれば移るのはすぐ。
あたしが交渉すれば、小吉を見られる心配もないわ。
「よし、そうと決まれば……」
さっそくお願いしに行こうと思い、隣の部屋を用意してもらったんだけど……小吉が見た目より重くて、あたしの細腕じゃあ小吉を移動されなかったのよね。
だから仕方なく、小吉はそのまま寝かせてあたしだけ部屋を移ったんだけど……。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」
翌朝、それが失敗だったと、甲高い女の悲鳴に教えられた。