愛屋及烏 / 依依恋恋   作:哀餓え男

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第六十六話 婚約(裏)

 

 

 

 昨日の夜、あたしと小吉は一つになった。

 心も、身体も溶け合っていたと断言できるほど濃密な時間を、あたしと小吉は過ごした。

 あたしも小吉も初めてだったから、上手くできたのかどうかもわからないけど、あたしと小吉は幸せだったわ。

 と、「昨日はどこで何をしていたのか」と、ヨコチンに用意されたあたしの部屋で待ち構えていた地華と歌に説明したら……。

 

 「まさか、初めてが外とはなぁ。歌はどう思う?」

 「私的には、気持ちが盛り上がったのなら場所は関係ないと思いますけど、さすがに、足場の上はちょっと……。背中とか、痛くなかったの?」

 

 と、憐れみに呆れを加えて割ったような顔して言われたから……。

 

 「そっちは気にならんかった」

  

 と、返した。

 でも、本当に背中の痛みは気にならなかった。

 だって、下半身の痛みが尋常じゃなかったんだもの。

 今だって、股に風穴が空いたようなスカスカ感がしてオマケにヒリヒリしてるし、何故か内股が筋肉痛になってる。

 そんなだから、お尻を上に突き上げた状態でうつ伏せになってるわ。

 

 「で、だ。実際どうだったんだ? やっぱ、痛いのか?」

 「あたしの格好見てわからん?」

 

 わかってよ。

 この体勢が楽だと思うくらい、後遺症が酷いの。

 

 「ま、まあ、小吉お兄ちゃんのアレが相手じゃあねぇ。私だったら、絶対に体が裂けてると思うもの」

 

 うん、歌はやめた方がええ。

 あたしでさえこんなになっちゃったんだもの。

 まだ子供で身体も小さい歌じゃあ、最悪死んじゃうわ。

 

 「それはそうと、そんな状態で兄ちゃんと戦えるのか?」

 「兄様が来るまで、あと二週間もあるんじゃけぇ大丈夫じゃろ」

 

 あたしって、怪我の治りが早いし。

 ああでも、この股関節が広がった感じがするのが残ったら、戦闘に支障がでかねないわね。

 

 「小吉の大将が、毎晩求めてきたらどうすんだ?」

 「そりゃあ、相手するに決まっちょるじゃないね。駄目なん?」

 「駄目じゃねぇけどよぉ。そうすると、ずっとそんな状態が続くってことだぞ?」

 「あ……」

 

 それは考えてなかった。

 そうよね。

 小吉は30年も童貞やってたんだから、経験したことでお猿さんになっちゃってるかもしれないのよね。

 それは困る。

 あたし的には、小吉が求めるなら求められるままに身体を差し出すけど、それが原因で兄様と戦えなかったら、元も子もない。

 

 「断らにゃあ、駄目かねぇ?」

 「少なくとも、この一件が終わるまでは断っとけ」

 「でも、でも……」

 「小吉お兄ちゃんのためって思えば、我慢できるんじゃない?」

 「そりゃあ、小吉のためなら……」

 

 我慢できる……気がする。

 ああでも、小吉に抱かれている間は、痛いけどけそれまで経験したことがないほどの幸福感に包まれた。

 アレを経験しちゃった今のあたしにとって、アレを我慢するのは術の修行以上の拷問なわけで……。

 

 「……」

 「ん? どうかしたのか? 歌」

 「いや、少し気になったんだけど、ナナってやっぱり、な、中で……その、なのよね?」

 「あ、あぁ……。そういうことか」

 

 どういうこと?

 肝心なところをボカされたから、何を言ったのかさっぱりわからないんだけど?

 

 「小吉の大将が出す量って、アレだもんなぁ。ん? じゃあ、妊娠してる可能性が高いんじゃないか?」

 「え? そうなの?」

 「ああ、ナナってたしか月の物があったのはここに来る前だったよな?」

 「うん。ちょうど出発する日に終わった」

 「と、言うことはだ。かなり妊娠しやすい時期に、小吉の大将にぶちまけられたってことになる」

 「じゃ、じゃあ……」

 

 あたしのお腹には、小吉との子供が宿ってるかもしれないの?

 本当に?

 

 「ねえ、地華さん。ナナだけ逃がすって、できないのかな」

 「可能だとは思う。暮石には色々と対抗策があるし、四進の姉御に張り直してもらった、対暮石用の結界があるうちに匿えば、とりあえずは安心……」

 「それは嫌」

 

 あたしは、兄様から逃げたくない。

 しかも、あたしだけって言うならなおさらよ。

 

 「あたしは、小吉とずっと一緒になるって決めたの。じゃけぇ、小吉と一緒に戦う」

 「でも、ナナのお兄さん……六郎兵衛さんって、強いんでしょう?」

 「強い。兄様は子供の頃に、父様から歴代最強って言われたくらいじゃけぇね」

 

 だから剣術と体術はもちろん、暮石流術殺法の威力や範囲もあたしより格段に上。

 段外以外の術が使えないあたしじゃあ、相手にすらならない。

 それでも、逃げたくない。

 あたしは、小吉と一緒にいるって決めた。

 小吉と、死ぬまで一緒に生きるって決めた。

 それは、暮石の呪に抗うと決めたのと同じ。

 なのに、暮石そのものと言っていい兄様から逃げたら、暮石の呪に従うのと同じ。

 顔も知らないご先祖様が決めた運命に身を任せるのと同じなのよ。

 

 「でも、あたしは負けん。小吉がおるし、それに地華と天音、歌に、ジュウゾウとチャーなんとかもおるもん。じゃけぇ、絶対に負けんよ」

 

 あたしの言葉に、地華は「しゃ、しゃあねぇな。手伝ってやんよ」と照れながら言い、歌は「私は戦力外なんだけど?」と、呆れながらも微笑んでくれた。

 それが嬉しくて、あたしは二人に抱きつきたくなったのに……。

 

 「じゃあまずは、小吉の大将からナナを守らねぇとな」

 「そうね。お猿さん化してるかもしれない小吉お兄ちゃんから、ナナをしっかり守らないと」

 

 あたしの数少ない友達の二人は、悪魔のような笑顔を浮かべて、あたしと小吉を引き離す宣言をしてくれやがったわ。

 

 

 

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