シ~ン…と沈黙が流れる。
考えてみればいきなり出てきてスライムを撫でたかと思えば普通に挨拶してきた私はかなり怪しい。私が反対の立場だったら絶対誰おま状態になる。
どうしよう、会話とか苦手だから何を話題に話を広げればいいのかわからない。私は話しかけられないと話さないタイプなんだよ。自慢ではないが、未だに自分から誰かに話しかけたことがないのだ。
いや、そもそも突然出てきた私が二人(正確には竜一体とスライム一匹)と話してもいいのか?
…ん?待てよ?竜は私の存在に気づいてたんだよね?だったら普通に話してもいいのか?
そうなのか?という感じでチラッと竜を見てみるが、
(…………)
じっとこちらを見ているだけだった。目が合いそうだったから思わず目を逸らしてしまった(全力で)。こわい。
…ハッ!それとも念話が届いてなかったとか!?
《解。念話は届いています》
あ、よかった。でも反応が無いのはおかしいな…沈黙が一番辛いのに。
もう誰でもいいから何か喋ってくれ。……ヤバい、泣きたくなってきた。まあこんな空気を作ったのは私なんだけどね!!
この空気が耐えれなくなって泣きそうなのを堪え、私はスライムをゆっくりと地面に降ろした。ふぅ…と息を吐いて回れ右。
(ごめんなさい…!今から視界から消えるんで…!!後は私抜きでゆっくりどうぞ!!!)
(ちょおっ!?いやいいから!!ここにいてもいいから!!ちょっとビックリしただけだから別に大丈夫だぞ!!)
(あ、はい……)
スライムの体の一部が伸びて腕を引っ張られ、引き止められた。必死に引き止めてくれるので、何だかこの場を去ることなんて出来ない雰囲気になってしまったから留まった。正直逃げたかった。
とりあえず自分が落ち着くように私は無心でスライムを撫でまくった。竜に怯えているスライムを落ち着かせるために撫でていたのに…立場が逆になったな。
あとさっきは気付かなかったけどこのぷるぷる感凄い絶妙。抱き枕にしたら絶対気持ちいい。
(あと、撫でてくれたの落ち着かせてくれるためだったんだよな?おかげでちょっと落ち着いたよ。ありがとな!)
(あ、うん……大丈夫…)
すると竜…じゃなくてえぇっと、確か…ヴェルドラ、だっけ?
《解。合ってます》
あぁ、ありがとう。
__ヴェルドラが拗ねたように言った。
(む、お前らだけで話すでない)
(あぁ、悪いな)
私は会話が苦手なので基本聞き手だ。なので私は喋らず、ヴェルドラの話やスライムの今までの話を聞いていた。
驚くことに、スライムも私と同じ転生者なのだそう。隠す必要は無いと思い、私も、と続けて言ったら驚かれた。
ていうか人魚になった私が言うのも何だけど、何でスライムに…?
けど私が人魚に転生したって自覚したみたいに驚いただろうなー…RPGで最弱のモンスターとされるスライムに転生したなら尚更だ。私もスライムに転生したら絶対驚く。そして色んな意味で泣く。そう思うとメンタル強いな、スライム君。
(ものすごく希な生まれ方をしたな、お前達。転生者はたまに生まれてくるし、異世界人も時たまやってくるが、異世界からの転生者は我の知る限り事例はない)
(へぇ…)
(異世界人って、自分達以外にもいるんですね)
異世界人はヴェルドラの反応を見るにあまり珍しくないらしい。でも異世界人は珍しくはないけど異世界からの転生者は珍しいようだ。
ヴェルドラが言うには、こっちの世界に来る時に望んだ能力を得るらしい。今私が持っているスキルとかも、死んだ時に望んだ能力なのかな……生憎と海に落ちた後の記憶が無いのでそこはわからないが。
一体何を望んでこの能力を得たのだろうか。やはり世の中には不思議と謎がいっぱいである。
(もしかして俺達以外にも日本人もいるかも。捜し出して会ってみるのもいいな)
(うん、そうだね)
(…そうか、行ってしまうのか)
しょぼん…とヴェルドラはわかりやすく落ち込んだ。
露骨に寂しそう…!
(…ヴェルドラはここから動けないの?)
よし!よくやった、自分!!自分から話しかけたの初めて!!(※中身は高校生です)
しかし、このコミュ障をどうにかしなければ。こっちの世界に転生した機にこのコミュ障を治してみるのもいいかもしれない。…死んだ後にコミュ障を治すって意気込むのもかなり変だけど。
(うむ。300年前に勇者に封印されて以来このままよ)
へぇ、勇者もいるのか…ますますファンタジーだな。
それにしても、300年も何も出来ないんじゃ確かに暇である。私もスキルとか持っているとは思ってなかったから、ひたすら泳いでたし。
…うん、そう思うとかなり暇だったな。ヴェルドラに激しく共感するよ。
(勇者は強かったぞ。見た目は可憐な少女といった感じだったが、ユニークスキル「絶対切断」と「無限牢獄」を駆使し、我を封印せしめたのだ)
(…もしや見とれて負けたんじゃ…)
(ばっ…そんなわけなかろう!)
スライムに痛いところを突かれたのか、ヴェルドラは焦った声で否定した。だが…
(やや小柄でほっそりしていて、白い肌に、黒銀の髪を一つにまとめていて、真紅の小さな唇…)
やけに詳しくその勇者の特徴を述べていくヴェルドラ。ガッツリ見てんじゃん。
それにしても、勇者は女性なのか。生前読んだ漫画やラノベだと男性の勇者が多かったから、何だか珍しい気もするけど…この世界じゃ女性の勇者は珍しくないのかな?
ヴェルドラは300年程前に大暴れしたことが原因で勇者に封印されたらしいけど、私は全然悪い竜には見えない。むしろ人間が好きっていう印象がある。やっぱり見た目で判断しちゃダメだね。中身もちゃんと大切だ。
(よし!じゃあ自分…いや、俺の友達にならないか?もちろんお前も!)
(え…いいの?)
(いいに決まってるだろ!)
なんとスライムがヴェルドラにだけでなく、私にも友達にならないか?と誘ってくれた。このスライムのコミュニケーション能力は一体何なんだ…私も見習いたい所だ。
そういえばヴェルドラが反応しないな…よし、聞いてみよう。頑張れ私!!さっきも出来たからいける!!
(あ、あの……ヴェルドラは、どう?)
(…ス、スライムと人間の分際で、この暴風竜ヴェルドラとトモダチだと!?)
(い、いや、嫌ならいいんだけど…)
(そっかぁ…)
(ば、馬鹿お前!誰も嫌だと言っておらぬだろうが!!)
(え、そう?じゃあどうする?)
(そうじゃなぁ…どうしてもと言うなら、考えてやっても…)
ちらっ、と意味ありげにこちらをチラ見するヴェルドラ。
スライムはぽよん、と私の腕から離れ、清々しい笑顔(多分)で言い放った。
(どうしても、だ。決定な!嫌なら絶交、二度と来ない!)
(ちょっ(汗))
そう言うなりスライムはフイッとそっぽ向いて何処かに行く……フリをした。
ヴェルドラはその様子に焦ったのか、慌てて言葉を発した。
(し、仕方ないな。我がお前らの友達になってやるわ)
スライムよ、そのコミュニケーション能力、少し分けてくれ。
(おう!よろしくな)
(……嬉しい)
握手するようにヴェルドラとスライムと私でちょん、と互いの手を触れた。少し照れる。地球にいるお母さん!私、死んだら友達が出来たよ!!(歓喜)いやそう言ったらかなり悲しいけど。
あとヴェルドラの腕と爪スベスベだな。
(さて、じゃあこの封印をどうするか)
(ん?)
(だって友達を放って行けないだろ)
スライムはそう言うなり黙り込んでしまった。どうしたのだろうか。…もしかしたらこのスライムにも「理解者」みたいな会話可能なスキルを持っているのだろうか。
スライムが黙り込んでしまったのでヴェルドラは私の方を見て話しかけてきた。ひぇっ。
(時に人間よ、何故念話で話しているのだ?)
確かに不思議に思うだろう。私は人魚とはいえ今は姿形が人間だから念話を使って会話しているのも不自然に思うはずだろう。
(えっと…私、人間じゃなくて本当は人魚なんだ。固有スキルの「人間化」で人間になってるんだけど、その代償なのか声が出せなくて)
(む、人魚だと?人間ではないのか)
(うん)
スライムの話を聞いてばかりだったが、私のことも興味があるようだ。
質問をされたら答えることは出来るので、内心オロオロしながらも質問に答えた。
するとヴェルドラはピタッ、と動きを止めてこちらをじーっと見てくる。
(ヴェルドラ?)
(…さっきから気になるのだが、何故我と目を合わせて話さぬ!)
(えぇっと……)
(我が怖いのか?)
そう言いながらヴェルドラは顔を近づけてきた。何となく、落ち込んでいる気がするので迫力を感じない。
(いや、怖いっていうわけじゃなくて……目を合わせて会話をするのが苦手というか…)
(む、そうなのか)
(うん…)
何だか恥ずかしいんだよね…
(我は許すが、いつか目を合わせて会話出来た方がいいぞ)
ヴェルドラに指摘されちゃった……
まあ、そんなやり取りはあったが会話は続く。私も時々質問してこの世界のことを聞きながら会話に花を咲かせていると、スライムが動き出した。どうやらスキルとの会話を終えたようだ。
この短時間でわかったことは、ヴェルドラは意外と話し&聞き上手だということ。いや、元々お喋り好きなのだろうか。
(「無限牢獄」の内と外から解析できれば解除できるかもってさ)
(む、しかし我のスキルは我と共に封印されて使えぬぞ)
(ヴェルドラは情報を寄越してくれればいい。解析は俺の「大賢者」がやるらしいから)
(それには時間が掛かろう。お前らは早くここを出発して他の同郷の者に会いに行きたいのだろう?)
(うん、だから提案だ。ヴェルドラ、お前俺の胃袋に入る気ない?)
…………い、胃袋??え?どゆこと?胃袋ってあの…身体にあるやつのこと?(困惑)
《解。スライムの言っている胃袋とは、捕食対象を収納、また、解析により作成された物質の保管が可能出来るスキルの一つです。分かりやすく言えば青いた……ネコが所持しているポケットのようなものです》
あ、胃袋ってそういう……うん、すっごいわかりやすい解説をありがとう…あとたぬきって言いそうだったから言い換えたでしょ。
《否》
……「理解者」って、もしかして自我あったりする?
《否。理解不能。そのようなことは決してありません》
嘘付けェ!!!
(クハハハハハハハッ!!)
ビクッ
び、びっくりした…
「理解者」の話を聞いてたら急にヴェルドラが笑い始めたので思わず肩が跳ね上がる。どしたん、急に笑い始めるの地味に怖いよ。
(面白い、ぜひやってくれ。お前に我の全てを委ねる!)
(おいおい、そんなに簡単に信じていいのか?)
(無論だ。ここでお前達の帰りを寂しく待つよりも、共に「無限牢獄」を破る方が面白そうだ!)
ヴェルドラ今寂しくって言ったよね。つまりそれは実際に寂しいってことでは…けどスライムと一緒に、か……それって私の出番は無いってことだよね…
(そっか…じゃあ私は何も出来ないね…)
体育座りをして顔を埋めた。精神年齢は大人(高校生)なのにこんなのまるで駄々をこねる子供じゃん…
(そっ、そう落ち込むなよ!)
(そ、そうだぞ!そこのスライムが自分のスキルと話している間に我と話してくれたではないか!楽しかったぞ!)
オロオロとして私を励ます二人。何迷惑かけてるの…私。…まあ、いつまでも拗ねてちゃダメだな。私は子供じゃないんだから
(うん……ヴェルドラ、「無限牢獄」から出たら美味しいものを一緒に食べようね)
(無論だ。我の復活を楽しみにしておるといい!)
(うん、約束)
(うむ!)
私とヴェルドラは「無限牢獄」から出たら一緒に美味しいものを食べる約束をした。些細な約束をした方が、やる気も出るんじゃないかな…って。
(じゃあ今から「捕食者」でお前を喰うけど…)
(おっとその前に)
((?))
言い方はアレだがスライムが喰うと言った時にヴェルドラはそれを制止した。何だろう?やっぱり怖くなったとか?…それは無いか。これ言ったら怒りそうだからやめよう。ていうか言ったらどうなるかわからないから尚更言えない。
(お前達に名をやろう。お前達も我ら共通の名を考えよ。同格ということを魂に刻むのだ)
へぇ、共通の名前かぁ……
(どうする?)
共通の名前を一緒に考えるためにスライムが話しかけてきた。まともに話すのは初めてだからちょっと緊張する。
(共通の名前って、名字みたいなものかな?)
(そうなんじゃないか?何かいい案はあるか?)
…って言われてもねぇ……
(そうだなぁ…せっかくなら暴風竜から取ってみるとか?)
(いいな、それ!じゃあ、暴風竜だから…暴風…嵐?)
(あ、“テンペスト”とかはどう?…さすがに安直かな?)
(この世界じゃ英語は通じないだろうからいいんじゃないか?響きもいいし)
じゃあそれにしよう!と思って、それをヴェルドラに伝えたところ、
(素晴らしい響きだ!)
と、気に入ってくれた。よかった。
(今日から我はヴェルドラ=テンペストだ。そしてお前達には…
お前には“リムル”の名を。そしてお前には“セレン”の名を授ける。リムル=テンペスト、セレン=テンペストを名乗るがよい!!)
……ヴェルドラがくれた名前は私の魂に刻まれた。見た目も能力も変化はないけれど……何だか心が温まった。…なんか、こう……うん…上手く言えないけど。
……くっ、コミュ障な上に語彙力も低下してるなんて…!
…まあ、それは置いといて……そろそろヴェルドラともお別れだ。
(では頼んだぞ、リムルよ。セレン、約束をちゃんと覚えておくのだぞ?)
(うん。友達との約束は絶対に忘れないから安心してよ)
なんせ初めての友達だ。忘れるわけがない。封印を解くのに先は長いだろうに、今からでもワクワクしている自分がいる。
ヴェルドラは私の言葉を聞いて満足そうに頷いた。
(さっさと「無限牢獄」から脱出して来いよ?ヴェルドラ)
(必ずまた会おうね)
(任せておけ!そんなに待たせず、相まみえようぞ。リムル、セレン)
そしてスライム…いや、リムルは「捕食者」を発動させ、ヴェルドラを捕食した。あんなに大きかったのに一瞬で消えてしまうとは。無事に胃袋に収納されただろうか。
そして辺りがしん…と静まり、私とリムルだけが取り残された。まともに喋ったのは名字を決める時だけ。あまり話さなかったから何を喋ればいいかわからない……あれだ。普段喋らない子がいきなりペアになって気まずい雰囲気になるやつ。
(えっと……ヴェルドラをよろしくね、リムル。私は何も出来ないから)
(おう、任せておけ!…心配するな、必ず封印を解いてヴェルドラを外に出す。それとこれからよろしくな、セレン!)
(……うん…!)
(そうと決まれば、ここから脱出するぞ!)
(そうだね)
私はリムルを抱き上げ、出口まで向かうのだった。
ヴェルドラの口調難しいですね…
オリ主がファミリーネーム決めちゃいましたけどよかったでしょうか。