異世界に転生したら人魚になりました   作:花時雨

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03話 第一印象は

 

 

【リムル視点】

 

 

 

 

  俺のセレンへの第一印象は「クールそうだな〜」だった。

  青みがかった、腰までの黒い髪に月のような黄金の眼。可愛い、と言うより美人系だ。初めて見た時は神秘的でセレンの空気だけ別世界のようだった。

  俺がヴェルドラの姿を見て怯えていたら姿を現して安心させるように撫でてくれた。落ち着きを取り戻しつつ、俺とヴェルドラがセレンの姿に見とれていたら、沈黙した空気が気まずかったのか俺をゆっくりと地面に降ろして

 

(ごめんなさい…!今から視界から消えるんで…!!後は私抜きでゆっくりどうぞ!!!)

 

  と言った。

  いやあれはさすがに焦った。俺達が沈黙していたのがまずかったな。まあ、あの一言で俺のセレンへの印象はガラガラと崩れたのだが。

 

  一見クールそうに見えるが実際話してみると全然そうじゃなかった。すごい人見知りで、平常心を保とうと必死なだけだった。

  俺とヴェルドラが話していても、セレンはずっと聞いているだけだったり、自分から話そうとしなかったり、目を合わせようともしなかった。感情や反応も表に出しにくいのか、大袈裟な反応をしない。この短時間でセレンの性格はある程度わかってしまった。

 

  コミュ障で極度の人見知り。

 

  こんなんじゃ将来が心配である。

  でも相手を想う優しさは格別だ。セレンもヴェルドラの姿を見た時は怖かったようで、俺を撫でる手は震えていた。それでも俺を落ち着かせるために撫でてくれたから、俺が思う以上にセレンはとても優しい性格の持ち主なんだろう。

  俺に引き止められて、今度は自分が落ち着くために俺を撫でまくったのは少し面白かったが。

  ヴェルドラを封じ込めている「無限牢獄」を解くために、俺がヴェルドラを捕食した時もだ。セレンは自分が何も出来ないことに思うところがあるようで、落ち込んでいた。その様子を見て本当に優しいんだな、と改めて認識した。

 

  そしてヴェルドラを捕食した後、俺はセレンに抱えられる形で洞窟の出口を目指した。

 

  ぺたぺた…

 

  セレンの足音が洞窟内に響き渡る。それ以外では水がピチョン…と零れ落ちる音だけ。…静かだな…

 

(そういえば裸足だけど痛くないのか?)

 

  足音で気づいたが、セレンは靴を履いておらず、裸足だった。そんなんだと怪我でもするんじゃないのか?

 

(…ん?あれ、そう言われてみれば痛くないかも…)

 

(おいおい…)

 

  一見真面目そうだが、変なところで気が抜けてる所がある。セレンは結構マイペースのようだ。

 

  しばらくすると、俺の頭の上にぽよん、と何かが置かれた。

 

(うおっ!?)

 

(あ、ごめん)

 

  え、俺の頭に何か落ちて(?)きたんだけど。敵襲か?と思ったら違った。

  セレンは一度俺を地面に降ろし、その際にスルッと俺の頭から何かが落ちる。コロッと地面に落ちてきたのは靴だった。どうやらスキルで靴を作ったようだ。

 

(靴か?それ……って、足怪我してんじゃねーか!!大丈夫なのか!?)

 

  靴を履く際に見えた足の怪我。

  やはり裸足で洞窟内をウロウロしていたせいか、セレンの足に切り傷や擦り傷などが所々出ていた。見ていてとても痛々しい。けれどセレンは平然とした顔で

 

(「痛覚無効」っていうのを持っているから痛みは無いし平気だよ)

 

  と言った。

  その言葉を聞いて、俺の小さな怒りがフツフツと湧き上がった。

 

(バカヤロー!!痛みはともかく、俺と違って再生するわけでもねーから自分の体は大事にしろ!)

 

(うっ…はーい…)

 

  ったく……セレンは俺が見ていないと大怪我でもしそうだ。だから俺がちゃんと見ておかないとな……何だか保護者になった気分だ。

  子を持つ親は皆こんな感じになるのか?一応セレンとは同格の名前を持っているんだし、家族…になるのか?…いや、40近いおっさんに家族って言われても嬉しくないだろう。セレンは言動が時々子供っぽい部分もあるから、高校生辺りだろうか。

  …うん、現実的に考えると普通に犯罪である。この話はやめよう。何だか悲しくなってきたから。

 

(そういえば「痛覚無効」持ってるんだな。俺も持ってるぞ)

 

(そうなんだ)

 

  ピチョン…と水が落ちる音がして、また静かになった。

 

(……………)

 

(……………)

 

  ……か、会話が続かねぇ…え、今どきの女子高生(仮)って何が好きなんだ?3回告白して全てフラれた俺にとって女の子との会話は難関に近い。というか等しい。

  ましてや女子高生(仮)が好きな話題なんぞわからん。セレンは反応が表に出にくいから、楽しいのか楽しくないのかもわからん。

  …え?こんなんで俺、これからセレンと上手くやっていけるのか?……ヤバい、何だか不安になってきた。

  このままじゃ気まずいし後が辛いぞ……これじゃあ振り出し(出会った頃)に戻っているではないか。何か……話す話題……話題…

 

(……リムルも、生前は日本人だったんだよね?)

 

  話す話題を必死に考えていたら、なんとセレンから話しかけてきてくれた。そのことに俺は嬉しくなった。

 

(そうだぞ。一応大手と言われているゼネコンに勤めてたんだ。けど通り魔に刺されて死んで、目が見えないわ、スライムになるわで大変だったよ)

 

(サラリーマンだったんだ。目が見えないのは大変だったね…私は高校生になったばかりで、合宿の時に海に落ちて溺死しちゃった)

 

  え、本当に高校生だった……ていうか、高校生になったばかりってことは、15か16で死んだのか?それはあまりにも若すぎないか。

 

(な、中々ハードだな…)

 

(泳げなかったし…)

 

(そういうことじゃねーよ…)

 

  高一で死んだのがあまりにも衝撃的だったので、今世はセレンにとって楽しい人生を送れるように先輩の俺が頑張らなきゃな。何を頑張ればいいのかはまだわからないが。

  するとセレンはぎゅっ、と俺を強く抱きしめた。どうしたのだろうか。

 

(…あの、私…すごく人見知りで)

 

(うん)

 

(相手に迷惑かけちゃダメって思うと、人と接するのが怖くて…友達とかいなかったの。けど、本当は寂しかった)

 

(…うん)

 

(だから、リムルや…ヴェルドラが友達なってくれたの、すごく嬉しかったし、何だか一緒にいると安心するの。…ありがとう)

 

(…俺も、セレンに会えてよかったよ)

 

  もちろん、ヴェルドラとも。「大賢者」で話し相手が出来たとはいえ、やっぱり寂しかった。目も見えず、何も聞こえなかったあんな孤独はもう味わいたくないな。

 

(人は変われる生き物だから、人と接するのも少しずつ慣れていこうな)

 

(うん。っていっても、人じゃなくて人魚になっちゃったんだけどね)

 

  そして再びお互い無言になり、静かになる。先程の気まずさとは違い、とても穏やかな静寂だ。心地いい。

 

  ……ん?

  しばらくすると、俺はある違和感に気がついた。セレンの歩くスピードが遅くなっているのだ。

 

(どうした?セレン。足、痛むのか?)

 

  何をしたのかは知らないが、セレンの足は既に治っていた。俺みたいに「自己再生」を持っているわけじゃないみたいだから、本当に何をしたのかは知らないが。もしかしてまだ足が治ってなかったとか…?それとも……

 

(もしかして俺を抱っこしているからか?辛いなら俺も歩くぞ)

 

(いや……そうじゃなくて…)

 

(どうした?遠慮しなくていいから言ってみろ)

 

(…………眠い)

 

  ……あ、そっか。セレンは俺と違って睡眠が必要なのか。これは俺の配慮が足りなかったな。

 

(寝ててもいいぞ?俺が見張っとくから)

 

(でも……)

 

(いいから子供は寝てろ)

 

(私子供じゃない…)

 

  俺からすりゃ、高校生なんてまだまだ子供なんだが。

  その後、寝てろ、寝ない、と口論が続き、遂にセレンが折れて寝た。というより、口論している最中に睡魔に負けて寝たんだが。急に寝るからびっくりしたよ、全く……

 

(…改めて見ると、綺麗な顔してるよな…)

 

  ……って、何言ってんだ俺!相手は高校生だぞ!

 

  ゴホン……気を取り直して、俺は周囲を警戒した。とは言ってもこのまま何もしないというのは時間がもったいない。効率的に時間を使おうということで、スライムの俺がまともに戦える方法を考えた。戦えなきゃセレンを守れないしな。

  そして考えること数十分……俺は思いついた。

 

  水を撃ち出せるのであればウォーターカッターみたいなのが出来るんじゃね?

 

  と。

  前回地底湖に落ちた際は、地上に上がるために水を捕食して噴射。だが噴射口が大きく、更に推進力が高すぎて吹っ飛んで失敗した。ま、結果的に地上に出れたからいいけど(よくない)。

  …まあ、心配しなくとも、俺はやれば出来るのだ。通知簿でも、「頑張れば出来る子です」と書かれていたのだから。…いや、まあ…出来なければ困るのだが。

 

(ちょっと失礼しまーす…)

 

  早速試してみようと地底湖に向かおうとしたが、セレンを置いていく訳にもいかないので、スライムボディーを大きくしてセレンを乗せて移動した。もちろん起こさないよう、落とさないように慎重に、ね。

  そして地底湖に辿り着いた。思いのほか近くにあったので時間はかからなかった。

  セレンを俺が見える範囲に寝かせ、改めて地底湖を見る。

  結構大きく広がっており、中々神秘的だ。……おっと、いかんいかん、見とれている場合じゃない。

  

  さて、気を取り直して、早速試してみよう。前回の失敗から学んで、軽く……そう、水鉄砲のイメージで。

  口に水を含み、水鉄砲をイメージして水をピューっと出す。けれど中々出ない。威力が弱いのか?

  そう思って少し噴出口を大きめにして噴射したら勢いよく水が出た。こんなもんか。あとは調整して、練習あるのみだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  特訓を始めてから一週間が経過した。セレンに「戦う手段が出来るまでここに留まっていいか」と聞いたらすぐに了承してくれた。どうやらセレンもある程度強くなるために特訓したいと考えていたようだ。

 

  ビシュン!!!

 

  俺は“水での切断”をイメージし、水を岩に放った。そして打ち出された水の刃が対象の岩を切断した。

 

(凄いね、今の。水が刃になってかっこよかった)

 

(お、おう…)

 

  セレンってド直球に褒めてくるから照れるんだよなぁ…

  すると、“世界の言葉”が頭の中で響いた。

 

《スキル「水刃」を獲得しました。

  スキル「水圧推進」「水流移動」「水刃」を獲得したことにより、エクストラスキル「水操作」へと進化しました》

 

  どうやら一週間の修行(笑)の成果が出たようだ。エクストラスキルは、ノーマルスキルより威力も性能も段違いらしいからな。

  ちなみに「水流移動」は俺が地底湖でプカプカと遊……じゃない。水中を移動する練習をしていた時に獲得した。…べ、別に水中遊泳が楽しくなって遊んでたわけじゃないからな!

 

  これで俺は戦う手段を手に入れる事が出来た。セレンも水の扱いに慣れてきたようだ。

  セレンは人魚なので、俺が先程獲得した「水操作」は固有スキルとして持っていたそうだ。なので俺と同じく水を使っての戦闘法を身につけた。水を自在に操り、氷のように固くしたりして相手を貫くことも出来るらしい。実際に岩を貫いてたしな。いやあれは恐ろしかったな、ほんと。

 

(そういえば睡眠は必要だが食事はしなくて大丈夫なのか?)

 

(うん。睡眠時間はある程度必要だけど、食事は水だけで十分みたい)

 

(便利なんだか、不便なんだかわからんな)

 

(もし種族が人間で、目が覚めたのが洞窟だったら餓死してたかも)

 

(不吉なこと言うなよ…)

 

  セレンも俺相手だとだいぶ喋れるようになった。慣れれば喋れるらしい。会話の広げ方がまだわからないみたいだけど。

  これから色んな人に出会う(予定)のだから、喋れるようにならなくちゃな。

 

  …さて、お互いに戦闘法を身につけることが出来たし、そろそろこの洞窟から出るとしよう。

 

(そろそろ出発するか)

 

(そうだね)

 

  セレンは俺を抱え、歩き始めた。

 

(ようやくだね)

 

(ああ)

 

  本当にようやくって感じだ。ようやくここから旅立つ時が来たのだ。

  不安はある。喋る事が出来ない事だ。セレンも同じく声を発することが出来ない。けれどそれは人間になる代償…つまり呪いによるものだが、人魚になれば声は出るようだ(一回人魚になったセレンを見たが、本当に綺麗だった)。

  意思伝達は念話に頼るしかないが、相手にもよると思う。ましてや人間に念話が届くかどうかも不安だ。

 

  俺だけでもどうにかして声を発せれるようにして、セレンの通訳にならなければ。

  せめて呪いを解ければ、セレンは声を出すことが出来るのだから…と思い、呪いの解呪を試みたが…

 

《…告。「人魚姫の呪い」の解呪に失敗しました》

 

  見事に失敗した。どうやら今の俺には解呪が出来ないらしい。俺が強くなったら呪いを解くことが出来るのだろうか。もしそうだったら、その時は解呪をしてやりたいものだ。

 

  そしてヴェルドラの反応は何も無い。おしゃべりなヤツだったから、ちょっとだけ寂しいが、消えてしまったわけではない事を俺とセレンは知っている。それに、今はセレンがいるから大丈夫だ。

 

  次会った時、笑って話せる面白エピソードを用意しておいてやろう。

 

 

 

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