異世界に転生したら人魚になりました   作:花時雨

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内心は騒がしく、口調も崩れて普通に喋れるけど、いざ口を開いて誰かと話すとなると言葉が詰まってあまり喋れなくなりますよね。ちなみにオリ主はこのタイプです。




04話 眩しい太陽

(お、鉱石発見。食ってもいいか?)

 

(うん、いいよ)

 

  リムルは鉱石を見つけ次第片っ端から食べている。味はするのだろうか。と思っていたら、心を読んだかのように

 

(味はしないよ)

 

  と、絶妙なタイミングで言われた。読心術でも持ってんのか、コイツ。

  リムルは鉱石を食べ、ある物に目をやる。私もそちらを見た。

 

(さて…と)

 

(どうする…?この扉…)

 

  私達が目を向けた先には、人工で作られたであろう古くて大きな扉。天然物の洞窟内で人工物があるというのはかなり怪しいが、ここを突破しなければ先に進めないので、どうにかして突破しなければいけない。

 

(「水刃」で切り刻むか、それとも「捕食者」で食ってしまおうか)

 

(…そもそも食べれるの?これ)

 

(さあ?)

 

  …いや、この扉の何倍もあるヴェルドラを捕食出来たんだから、それに比べてこんな小さな扉は簡単に食べれるのではないだろうか。

  それとも…

 

(私のスキルでハンマーでも作って壊すとか…?)

 

(…お前、意外とダイナミックだな…)

 

(そう?)

 

  ねぇ、「理解者」はどうすればいいと思う?

 

《…告。扉側に3つの気配を察知。ここから離れることを推奨します》

 

  えぇっ!?いや、急に言われても…これって隠れた方がいいのか?けど何処に隠れれば…

 

《解。左斜め後ろに隠れる場所があるのでそこが最適かと》

 

  おぉう、ありがとう!

 

(リムル、隠れるよ!)

 

(えっ!?)

 

  そして私が岩陰に隠れたのと扉が開いたのはほぼ同時だった。

  あ、ちゃんとリムルは抱えているから大丈夫だよ。

 

「ふぅ、やっと開きやしたぜ。鍵穴まで錆びついちまってんだから」

 

  男の声と共に、ギギギ…と、扉が開く音がする。古くて錆びているからか、扉は重い音がした。

 

  入ってきたのは三人の人間だった。

  私と同じくらいの年の金髪の女の子と茶髪と茶色がかった黄色の髪をした中年男性の二人だ。

  冒険者…かな?同じメンバーだったら女の子との年がかなり離れている気がするけど……大丈夫なのか?あれ。

 

「まぁ仕方ないさ。300年も手入れされてなかったんだ」

 

  …ということは、ヴェルドラは本当に300年間ずっと一人であそこにいたんだ…確かに暇だと思うけど、それはあまりにも寂しすぎないか。

 

「でも、封印の洞窟を調査しろだなんて、ギルドマスターも無茶ぶりよねぇ」

 

「安心しろって。竜なんて所詮大きなトカゲだろ?」

 

  竜…といったら今はヴェルドラしか思いつかないから、ヴェルドラのことだろうか。……フッ…安心して、想像よりずっと大きいから。

 

(…どうする?接触してみる?私一応姿は人間だよ)

 

(うーん…でも、ヴェルドラみたいに念話が通じるとは限らないぞ?それに、ヘタしたらセレンはともかく俺が狩られる)

 

  狩られる。

  でも普通に考えると、300年も人が出入りしてないこの洞窟に、姿が人間である私が扉の内側から元気にこんにちはしたら中々怪しいのでは……?

 

(……じゃあ、今はやめておく?)

 

(あぁ。人前に出るのはせめて喋れるようになってからだ)

 

  喋れるように……か。私は人間になる代償として声を失う呪いがかけられてるみたいだけど…思ったけどこれって解呪出来ないのかな?「理解者」、出来る?

 

《解。「人魚姫の呪い」の解呪を試みます……失敗。再度実行します……失敗。解呪を中断し、解析を実行します……失敗。

  …告。何らかの原因により解呪、及び解析が出来ません》

 

  そっか……じゃあ、呪いを解呪出来るようにもっと強くならなきゃね。

 

「んじゃ、そろそろ行きますか」

 

「お二人とも、もっと寄ってくださいよ。あっしの隠密技術(アーツ)を発動させやすから」

 

(隠密技術(アーツ)?)

 

(スキルとは違うのかな?)

 

  するとぼやっ、と三人の姿が消えた。けど姿が消えただけで気配は消えていないようだ。足音や声も聞こえるし…あれ大丈夫か。色々と。でも私達がここに来る途中は魔物に遭遇しなかったから多分大丈夫だろう。

  三人が行った後、その隙に私達は扉を通過。心は同じ人間なのに、魔物という概念だけで攻撃されたらたまったもんじゃない…前世であった人種差別に似ているな。

 

(ふぅ、危なかった…)

 

(ナイスだ、セレン)

 

(うん、ありがとう)

 

  それにしても、あの三人は何しに来たのだろうか。調査とか言っていたけど、300年ずっと放置していたのなら、今更何を…?

 考えても仕方ないので先を進むか。

  ……と思った矢先に、

 

  シャーッ!

 

(ひょえっ)

 

  黒い大きな蛇にバッタリと出くわしてしまった。

 

《解。“嵐蛇(テンペストサーペント)”です。ランクA-の魔物であり、この洞窟の守護者でもあります》

 

  え、これが守護者!?でも別に魔物が洞窟の守護者は珍しくないかも…?

  とか思っていたら、口から何か吐き出していきなり攻撃して来た。

 

(うおっ)

 

  女の子らしくない悲鳴()を上げ、避ける。すると、なんということでしょう!さっきまでいた所がドロドロと溶けているではありませんか!

  ってそんなビフォーアフターいらねーよ!!とんでもねーな!!何あれ!?

 

《解。嵐蛇(テンペストサーペント)が持つ“毒霧吐息”です。腐食効果もある強力な毒です》

 

  いやそれは見りゃわかるけど!軽くトラウマになりそうだわ!

  私が小刻みに震えていると、リムルも震えているのがわかった。…な、何か……何か鼓舞しないと…

 

(だだだ、大丈夫だよリムル。ほ、ほほほほら、ヴェルドラとくく、比べればか、かわいいもんでしょ?)

 

  リムルを安心させるようにそう言ったが、先程の毒霧吐息で恐怖を煽られたせいで声が震えた。震えている私の声じゃ全然説得力が無い。あと体も震えているから絶対リムルに振動が伝わっている。…説得力ゼロじゃねぇか!!

 

(そ、そうだな!そう言われてみればそんな気がしてきた。……よし、ここは俺に任せろ)

 

  ぽよん、とリムルは私の腕の中から抜け、地面に降りた。

  そして大きく飛び上がり、口から「水刃」を放ち、スパァァン!!と、嵐蛇(テンペストサーペント)の首を斬った。嵐蛇(テンペストサーペント)は抵抗もなく一撃で首を刎ねられ、地面に倒れた。ピクリとも動かないので死んだのだろう。切断面がちょっとグロい。

 

(ほら、もう大丈夫だ!)

 

(うぅ、リムルは凄いね…)

 

(そ、そうか?)

 

  くるっと何事も無かったかのようにリムルはこちらを見て今度は私を安心させるように言った。そして素直に褒めたら照れた。中身はかなり年上なのに可愛く見える。いや、見た目がスライムだからか?

  するとリムルは嵐蛇(テンペストサーペント)を捕食した。何で?

 

《解。対象を捕食し、その対象が保持しているスキルを解析することでそのスキルを得ることが出来るからかと》

 

  なるほど、そんなことができるのか。リムルの「捕食者」は中々便利だな。敵が持っているスキルを習得するっていうのはかなり強力だぞ。けど捕食しなきゃダメのようだ。

  …あ、私も相手の解析が終わってたら「記録再現」で相手のスキルを習得出来たりする?

 

《解。出来ます。嵐蛇(テンペストサーペント)の解析は完了しています》

 

  おぉ、私の「記録者」も中々便利だな。…っと、「理解者」とばかり喋ってたからリムルを置いてけぼりだな。

 

(リム____ひぇっ)

 

  シャーッ!

 

  そろそろ行こうか、と言おうと後ろを見たら先程の蛇が。

  なんで!?

 

《解。嵐蛇(テンペストサーペント)に擬態化したリムル=テンペストです》

 

  え、そうなの?……あ、でもさっきの蛇とはちょっと雰囲気が違う気がする…

 

(び、びっくりさせないでよ、リムル…)

 

(ありゃ、バレたか。中々鋭いな、セレン)

 

(バレたか、じゃないよ……何やってるの)

 

(いやぁ、コイツ捕食したら擬態出来るって言うもんだから、試しにやってみたけど…再現度結構高かった)

 

(高すぎでしょ)

 

  いやほんとびっくりしたわ。本物そっくりじゃん。

  するとリムルは、キーキーと鳴いているコウモリが飛んでいるのを見て何かを思いついたのか、その姿のままでコウモリに攻撃を仕掛けた。そしたらドロッとコウモリの体が溶け出した。

 

  トラウマ、再び。

 

(いやいやいや!「毒霧吐息」使わないでよ!あれ若干トラウマなんだから!)

 

(ス、スマン…俺も「毒霧吐息」は封印しようと思う…)

 

  そう言いながらリムルは引き気味でコウモリを捕食した。うわぁ、モザイクかけるレベルだよ、これ…コウモリも可哀想だな…

  私はゆっくり手を合わせるのだった。

 

(ふふふ、ところでセレンよ。なぜコウモリを捕食したかわかるかね?)

 

  なぜコウモリを捕食したか…?コウモリが持っていたスキルは「吸血」と「超音波」だけ……あ。

 

(もしかして「超音波」を参考に声を出せるようにするため?)

 

(うむ、正解だ!)

 

  そしてその日からリムルは発声練習に勤しんだ。私はリムルと違って睡眠が必要なので、私が起きている時は私が(発声練習をしている)リムルを魔物から守り、私が寝ている時はリムルが私を魔物から守りながら発声練習をしていた。

  リムルは危ないからってあまり私を戦わせないようにするけど、他にやることもないからね。それに、リムルに頼りっぱなしじゃダメだ。私も強くならないと。

  魔物を倒した中でもブラックスパイダーから頂いた「粘糸」と「鋼糸」は結構便利だ。扱いは苦労したけど、粘着力の強い「粘糸」で相手の動きを封じ、鋼のように強度が強い「鋼糸」で相手を斬ることが出来る。リムルが「えぐっ…」って呟いてたけど聞こえないな。

  まあ、このスキルを持っていたブラックスパイダーは気持ち悪かったけど…

 

  そして3日目が経ち…

 

「ワレワレハ、ウチュウジンデアル」

 

  遂にリムルは(片言だけど)声を発することに成功した。リムルは私の腕の中で嬉しそうに言った。

 

「ヤッタゾ、セレン!」

 

(うん、私も嬉しい。友達の成長ってこんなに嬉しいんだね)

 

(お、おう)

 

  リムルって褒めるとすぐ照れるんだよなぁ…可愛いからいいけど(ただし中身はおっさん)。

 

(…あ、あの明るい所、出口かな?)

 

(みたいだな)

 

  いよいよ洞窟からも旅立つ時が来たな。

  思えば沢山の魔物を撃退してきたけど、洞窟に出たからって油断は禁物だ。まあ、私もリムルもタイマンなら大抵の魔物には負けない……と思う。

 

《自信を持ってください》

 

  ありがとう、「理解者」。お世辞でも嬉しいよ。

 

《………》

 

  そして洞窟から出た瞬間に広がる緑。どうやら森の中の洞窟だったらしい。

  今はお昼のようで、太陽が眩しい。色々と運がいいな、私達は。

 

(…特にやることもないし、散策でもする?)

 

(ああ、そうだな)

 

  私の提案で周辺の散策を開始した。

  木の実があったので興味本位で食べてみるとめちゃくちゃ酸っぱかった。何これ。

  すると遅れて「理解者」が

 

《告。とても酸味が強い木の実ですよ、それ》

 

  と言った。

  遅いよ!!もっと早く言ってよ!?ていうかなんかすごい流暢に喋ってなかった!?

 

  …とまあ、木の実は迂闊に手を出せないな、と思い、蔦があったのでターザンごっこをしてみた。落ちそうになってリムルに怒られた。リムルさん、ちょっと怖いです。

  リムルも発声練習をしているおかげか、だいぶ流暢に喋れるようになってきた。

  私もスキルの練習として水を自由自在に操り、魚や動物を作って遊んだりした。これ結構楽しい。遊びに近いけど。

 

  ………それにしても…

 

「平和だな…」

 

(うん…)

 

  どうやらリムルも同じことを考えていたらしい。

  そう、洞窟に出てから全くと言っていいほど魔物に襲われていないのだ。洞窟内であれほど魔物に襲われていたのが嘘のようである。

  …いや、そういえば一度だけ狼みたいな魔物に襲われたな。

  スライムと人間(人魚)の姿をしていたからか、私達を睨んでいたけど、リムルが「あ”?」って睨み返したら早々に逃げていった。結局あれ何だったんだろ。

 

《告。魔物の集団を感知しました。その数およそ30体。こちらに接近してきます》

 

  そんなことを考えていると、「理解者」からそんな報告を頂いた。魔物の集団か…これは戦わなくちゃいけない感じだろうか。しかも30体って結構な数だし。

  そうこうしてるうちに、ガチャガチャと金属のぶつかる音が聞こえてきて、私達の目の前に人型の魔物が現れた。

 

  ゴブリンである。

  こうして見ると改めてファンタジーな世界に転生したんだなぁ…と実感する。まあ腕の中に定番中の定番といえるスライムがいるんだけども。

  改めてこの世界のことを認識して、目の前にいるゴブリン達を見た。体は細く、装備している武器も刃毀れしており、ボロボロだ。

  正直この子達の攻撃でダメージを受ける気がしない。

 

「グガッ、強き者達よ…この先に、なにか用事がおありですか?」

 

  どうやら人間だけでなく魔物の言葉も理解出来るようだ。「理解者」の「言語解釈」は便利だな。

 

「初めまして、俺はスライムのリムルという。こっちは人間の姿をしているが、人魚のセレンだ」

 

  リムルが会話の相手をしてくれた。少しほっとしていると、ゴブリン達が震えだし、一斉に跪いた。中には体勢が崩れている子もいる。日本人としてこの反応はとても落ち着かない。

  どうしたんだろ…

 

「グガッ、強き者よ!貴方様のお力は十分にわかりました。どうか声を鎮めて下さい!」

 

(え?)

 

(え?)

 

  え?今度はどしたん…

 

《解。思念が強すぎたのかと》

 

  あ、なるほど。

  リムルもそれに気づいたようで、小声で謝った。それを聞いて焦った声で謝罪は不要と言われたが。

 

「で、俺達になんか用?俺達はこの先に用事なんかないよ?」

 

「左様でしたか。この先に我々の村があるのです。強力な魔物の気配がしたので警戒に来た次第です」

 

  強い魔物の気配?そんなのいるの?

 

《告。周囲100メートル以内に個体名:セレン=テンペスト、リムル=テンペストを上回る魔素を持つ魔物は存在しません》

 

  「理解者」もこう言ってるし、ゴブリン達が間違えたとか?

 

「我々は騙されませんぞ。ただのスライムにそこまでの妖気(オーラ)は出せませぬ。そしてそれに平然と耐えている人魚もです」

 

  ……あ、え?リムルのことだったのか…いや私のことも言われてるな?

  ゴブリン達が怖気づく程の妖気(オーラ)に私は耐えてるの?別に何ともないけど。

 

《解。個体名:セレン=テンペストはリムル=テンペストと同等の妖気(オーラ)を持っているため耐えることが可能です》

 

  なるほど。

  「理解者」から説明を受けていると、リムルが念話を通じて話しかけてきた。

 

(なあ、何でセレンは妖気(オーラ)が出ていないんだ?)

 

(え?そうなの?)

 

(気づいてなかったんかい…)

 

(いやそれリムルもでしょ…)

 

(………それはそれだ!セレンも妖気を解放してみてくれないか?)

 

  ……というわけだけど、「理解者」、まず何で私は妖気(オーラ)が出てないの?

 

《解。人魚固有スキル「人間化」による効果です。「人間化」は完全に人間になることが可能なので、妖気(オーラ)が漏れることはありません》

 

  このままでも妖気(オーラ)は解放出来る?

 

《解。出来ます。妖気(オーラ)を解放しますか? YES/NO》

 

  なんか不安だけど、YES!

 

「!やはり貴方もその妖気(オーラ)をお持ちでしたか!」

 

  …しまった、リムルより弱い方がよかったかもしれない。そうすればゴブリン達と対等な立場に立てたかもしれないのに。

 

《解。妖気(オーラ)を出す前に個体名:リムル=テンペストが放出していた妖気(オーラ)に涼しい顔で耐えていたので無理があるでしょう》

 

  あー、そっかー(諦め)。でも知らなかったから仕方ないじゃん…

 

《告。エクストラスキル「魔力感知」を使用することを推奨します。「魔力感知」を使用しますか? YES/NO》

 

  何それー…っていっても何となくわかるからとりあえずYESで。あとスキルの管理は「理解者」に任せるよ。よくわかんないから。

 

《了》

 

  その後、ゴブリン達と仲良くなってしばらくゴブリンとの会話を楽しんでいると、話の流れで村へお邪魔することになった。どうやら泊めてくれるらしい。

 

「あそこです」

 

  そう言われて赤いバンダナをつけたゴブリンが指をさした方向には、ボロボロな家(?)が複数建っていたのだった。

 

 

 




オリ主は「理解者」による「言語解釈」を持っているので、最初からゴブリン達の声をクリアに聞き取ることが出来ます。

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