誤字報告、ありがとうございます。助かります。もし誤字を見つけたら、また報告お願いします…
ゴブリン村に招かれ、私達は一番マシな建物(?)へと案内された。出されたお茶みたいなのは苦い。リムルは味覚が無いから大丈夫みたいだけど。
しばらく待っていると、村へと案内してくれた赤いバンダナが特徴的なゴブリンが、シワが目立つ老人(ゴブリン)を連れてきた。バンダナの子に支えられているので、歩くのもやっと、っていう感じがする。
「大したおもてなしも出来ませんで申し訳ない。私はこの村の村長をさせて頂いております」
「あぁ、いやいや。お気遣いなく。それで?何か用があるから自分達を招待してくれたんですよね?」
リムルがそう言うと、バンダナの子は跪き、村長に至っては土下座までした。居心地が悪い……
「あなた様方の秘めたるお力、息子から聞き及んでおります。我らの願い、何とぞ聞き届けては貰えませんでしょうか」
リムルは一拍置いてゴブリン達の願いの内容を聞いた。
話の内容はこうだった。
ひと月程前にこの土地を護る竜の神…恐らくヴェルドラが消えて、縄張りを求める近隣の魔物がこの村に目を付けたらしい。
中でも牙狼族という魔物は強力で、1匹に対してゴブリン達は10匹で挑んでも苦戦するようだ。牙狼族は群れで100匹程であり、ゴブリン達は雄と戦える雌を含めて60匹程。絶望的な戦力差である。
「牙狼族が100匹程っていうのは確かなのか?」
「それは確実です。…リグルが、牙狼族との死闘を経て手に入れた情報ですから」
「リグル?」
「リグルは私の兄です。さる魔人より名を授かった村一番の戦士でした。兄がいたから、我らはまだ生きているのです 」
「…もういないのか?リグルは」
「…自慢の息子でした。弱き者が散るのが宿命だとしても、息子の誇りにかけて我らは生き残らねばなりません」
……そっか、ここは弱肉強食の世界。もう普通の世界じゃないんだ。弱き者が強き者の餌食になり、弱き者を犠牲の上に強き者が栄える。
(どうするの?リムル。私は助けたい。それにヴェルドラが消えたのは私達の責任でもあるし…)
(そうだよな……)
それに私は頼まれ事を断れないタイプだ。それが皆の役に立つなら、って思って。まあそんな私を目に付けた女子達が面倒事を押し付けられることが多かったんだけどね…
「村長、一つ確認したい。俺達がこの村を助けるなら、その見返りはなんだ?お前達は俺達に何を差し出せる?」
二人は顔を見合せ、意を決したようにリムルを見た。
「強き者達よ、我々の忠誠を捧げます!」
…これもしかして私も含んでる?思い返すと私何も喋ってないけど、強き者に入っちゃってる?リムルも俺“達”って言ってたし。
ウォォーーーンン…
すると狼の遠吠えが聞こえた。いつの間にかこの建物(?)に集まっていたゴブリン達が騒ぎ出して牙狼族の遠吠えと言っていたので牙狼族で間違いないのだろう。
ゴブリン達は牙狼族の遠吠えを聞いて恐怖に染まり、パニックに陥った。
「逃げようよ!」
「どこへ!?」
「行くとこなんてないよ!ケガ人や女子供だっているんだぞ」
そんなゴブリン達を私は安心させるように頭を撫でる。私より背が低いから撫でやすい。頭を撫でられると緊張感がほぐれたり、リラックス効果があるって聞いたからね。
(大丈夫だよ。安心して、皆)
ゴブリン達は落ち着いたのか、私に注目した。自分からやったことだけど、注目されると恥ずかしいな。
…あれ、私ゴブリンと出会ってから何気に初めて喋らなかった?あと反応してたから念話で話すことも出来るみたいだね、よかった。
「そうだ、怯える必要はない。これから倒す相手だ」
「では…」
「いいだろう!その願い、暴風竜ヴェルドラに代わり、聞き届けよう!」
すると一斉にゴブリン達は膝をつき、平伏した。
「「我らに守護をお与えください。さすれば今日より我らはあなた様方の忠実なるシモベでございます!」」
…とは言ったものの……
「セレン様、俺達は何をすればいいでしょうか!?」
そんなキラキラとした目で私を見ないで!眩しいから!あと私なんかが役に立つとは思わないで欲しいな!大げさに扱うのはリムルだけでいいと思うよ!
…そう、リムルとは別行動になり、複数のゴブリンを置いて夜に備えて何かしてくれと頼まれた。え…?丸投げ…?と何度思ったことか。
リムルは負傷者を治すべく、村長と一緒に別の建物に行った。私もそっちがよかった!こっちだとゴブリン達と会話しなきゃいけないじゃん…!(それが狙いです)
でも助けたいって最初に言い出したのは私だから、責任持てよってことなのかな…(違います)。
《解。そう深く考えなくてもいいかと》
あ、そう……?まあ、「理解者」がそう言うなら…
…よし、現実逃避はやめだ。いい加減今の現状と向き合わなければ。とりあえず、こういう襲撃に備える為には…
(えーっと…じゃあ、まずは「柵」を作ろう…かな。木材ってあるかな?)
「木材は無いですね…よろしければ家を壊して材料を調達しましょうか?」
(ファ!?それはダメだよ!寝床が無くなっちゃうから!)
魔物の考えはよくわからん…!普通柵を作る為に住んでる家を壊すかな!?…って、何でそんなキラキラとした目で見るの!?私まだ何もしてないからね!?
でも私達の周囲にある、お世辞にも綺麗とは言えないボロボロな建物(?)を見てちょっと迷ってしまった自分がいる。ごめんなさい…!
(ざ、材料は私が作るから、一緒に柵を作ろうか)
「生成者」で木材と縄を作り、「理解者」からアドバイスを頂きながら柵を作り始めた。人数も多いし、ゴブリン達も手先が器用だった為すぐに村を囲う柵が出来た。けどちょっとミシミシと音を立ててるから、強度は不安だけど。私も初めて作ったし仕方ない。
(こんなものかな…)
「流石はセレン様です!このような柵を作る知識があるとは…!」
いやほんと、私を上げるのやめて欲しいな…柵作っただけなのに…
(…武器はある?)
「無いです…ボロボロなものならありますが…」
(じゃあ、武器も作ろうか)
…っと、その前に……
シュルッ…
「粘糸」で柵を補強する。けどこれだけじゃ不安だな……
そう思い、自分が納得するぐらいに数回糸を張った。
(お待たせ。…じゃあ、武器を作るか)
作る武器は剣と弓矢。それから槍…かな。こんなサバイバルみたいなの経験したことないから、上手く作れるか不安だけど。
「どうですか?」
(う〜ん…もう少し糸を張った方がいいかも)
「わかりました!」
「セレン様ー!糸が上手く結べません!」
(はーい)
…なんか、クラフト教室みたい。夜に牙狼族がこの村を襲ってくるとは思えないぐらいほのぼのしてるんだけど。これ大丈夫か。…けど、これで恐怖や緊張が吹き飛ぶならいっか。
「よう!セレン」
(あ、リムル)
ゴブリンに糸の結び方を教えていると、村長と共にリムルが姿を現した。元気によう!って言う辺り負傷者達は無事に治せたようだ。
「どうやら上手くやっているようだな」
(うん。けど大げさな扱いはやめて欲しいかな…)
「ははっ、俺も同感だ」
大げさな扱いはリムルだけでいいんだよ、リムルだけで。私は何も凄くないんだから。
「結構いい感じに出来てるな、柵」
(うん。初めて作ったから不安だったけど、上手く糸を張って補強したよ)
「じゃあ、夜の備えはこんなもんか。あとは待つだけ…だな。んじゃ、人見知りのセレンは頑張ったし、たくさんゴブリンの相手をして疲れただろうから、セレンは今のうちに寝ててもいいんだぞ?」
(え……悪いよ。私は大丈夫だから)
「備えあれば憂いなしって言うだろ?だから寝てろ」
(でも……)
夜は強いから大丈夫、と言おうとしたら、私の後ろでリムルとのやり取りを見守っていた女の子のゴブリンが意を決して口を開いた。
「あ、あの!私もリムル様に賛同します!セレン様はずっと私達に柵や武器の作り方を教えてくださったので…!」
「俺も!」
「わっ私も!」
「……ってわけだから、寝てろ。夜になったら起こすから」
(う〜ん……わかった)
…でもリムルは優しいから、牙狼族との戦いは先に終わらせて、夜になっても起こしてくれない気がする…あ、そうだ。
「理解者」、夜になったら起こしてくれる?
《……了》
あれ?ちょっと呆れてる?…まあいっか。ここにはいい目覚まし時計が無いんだし……私って二度寝することが多いし。
(…じゃあ、おやすみ)
「あぁ、おやすみ」
そう言って私は最初案内された建物に移動し、藁の上で眠りについたのだった。
***
【リムル視点】
夜になった。月は綺麗な満月だ。この世界でも月の美しさは変わらないらしい。
綺麗だな〜、なんて呑気に思っていると、見回り役のゴブリンが俺に近づいてきた。
「リムル様、夜になりましたのでセレン様を起こしましょうか?」
「いや、いい。牙狼族との戦いが終わったら起こそう」
「?何故ですか?」
「ほら、疲れてるかもしれないだろ?それに危険にさらしたくないからな」
「なるほど!やはりリムル様はお優しいですね!」
納得!という感じで、ゴブリンは見回りに戻った。
まあ、さっき言ったのは建前で、本音はセレンに血を見せたくないからだ。アイツは実力は俺と同等だが、精神は高校生になったばかりの子供だ。実力を疑っているわけじゃないが…
(………へぇ、私は仲間外れ?)
ギクッ
スライムなのに冷や汗が流れる。後ろを見るとほっぺを膨らませて拗ねているセレンが立っていた。可愛い……じゃなくて。
「い、いや、そうじゃなくてだな。セレンはまだ子供だから、血をあまり見せたくなくて…」
(……リムルが私を想ってくれたってことはわかった。けど私は大丈夫だから、心配しなくていいよ)
「う〜ん、セレンが大丈夫ならいいけど…」
ていうかよく起きれたな…そう言ったらスキルに起こしてもらったらしい。
「おいおい、スキルをそんな使い方するなよ…(呆)」
(私って二度寝すること多いから…)
「まあそれはわかるけども…」
俺的には睡眠が出来るのは羨ましいな…けど今はかえって都合いいから不満はあまり無いんだけどね。ていうかこんなのほほんとして大丈夫なのか?これから生きるか死ぬかの戦いが始まるんだけど。
そう思ってるとセレンが心を読んだかのように
(リムルは強いから大丈夫だよ)
と俺を抱えて撫でながら言った。その言葉を聞いて不思議と負ける気がしなくなった。
(もちろん、私も戦うから)
「ははっ、そう言って貰えると心強いよ。けど無茶はダメだぞ?危なくなったらすぐに逃げるんだ」
(嬉しいけど、ゴブリン達を置いて逃げないよ)
…うん、やっぱり優しいな。それにセレンと話していると何だか肩の荷が降りるな。
「あ!き、来たっ。来たっすよ!」
セレンと話していると、木の上で見張りをしていたゴブリンの一人が牙狼族が来たと声を上げた。俺は前に出て、話しかけた。
「そこで止まれ」
そう言ったが、あっさりと無視されて牙狼族が止まる気配は無い。けど交渉を試みようと話を続けた。
「一度しか言わないからよく聞け。このまま引き返すなら何もしない。さっさと立ち去るがいい」
それでも尚止まらない。こりゃダメだな。
すると柵の近くに来た牙狼族がスパァン!と体が切れた。
「あの糸はさっきの…!てっきり柵を補強したのかと…」
(補強に使ったのは「粘糸」で、あれは「鋼糸」っていうの。一応保険?)
どうやらセレンが仕掛けたトラップが上手くいったようだ。そして止めを刺すようにヒュンッと矢が牙狼族に降り注ぐ。一緒に作った弓矢も上手く機能しているな。セレンは物作りの才能があるようだ。
牙狼族は柵ばかりに気を取られていたのか、糸の仕掛けを予想していなかったらしく、苦戦している。まあ、矢と「鋼糸」を避けながら柵に突撃するのは難しいだろうな。仮に辿りついたとしても、ゴブリンが武器で牙狼族を殺る。
チラッとセレンを見たが大丈夫そうだ。こういうの平気なのか…何だか意外だな。
そんなことを思っていると、牙狼族のボスが俺に向かって襲いかかった。
「リムル様…っ」
ゴブリン達から悲鳴が上がるが、俺はボスを見上げた。そしてボスは空中で動きが止まる。
「甘いな」
(……もう、リムル何呑気にしてるの)
セレンが「粘糸」でボスの動きを封じたのだ。俺の呑気さにセレンは呆れていたが、お前なら動きを封じてくれると信じていたからな。多少は大目に見てくれ。
「残念だったな」
スキル「水刃」で牙狼族のボスの首を刎ねる。ゴブリン達からは歓喜の声。牙狼族はボスがやられた事実が突きつけられ、戸惑いが見られた。
「聞け、牙狼族よ!お前らのボスは死んだ!選ぶがいい、服従か死か!」
(………ねぇリムル。狼ってプライド高そうだから、服従よりも死を選んで襲いかかってこないよね…?)
(あっ)
(えっ)
しまった、セレンの言う通りだ。逃げ出してもらうのがベストなのに、うっかりノリで二択を迫ってしまった。確かに一斉に向かってきたらどうしよう。もしそうなったら全面戦争だ。
数だとこちらが負けているし、無傷では勝てないだろう。
せっかく今のところ負傷者がいないのに…負ける事はないだろうけど、出来れば争いたくない。
大丈夫だ、とセレンに言って余裕そうに見せるが、内心ダラダラと汗をかいていると、牙狼族の異変に気づく。
動かないな……?さっきまでの騒音が嘘のような静けさだ。
もしかして統率者を失ったせいで決められないんだろうか。…よし、ひとつ後押ししてやるか。
そう思い、俺は牙狼族のボスを「捕食者」で捕食した。そして「大賢者」に解析をしてもらった。
《牙狼族の解析が終了しました》
「(よしよし…)」
「大賢者」の言葉を聞き、俺は牙狼に擬態した。
「ククク、仕方がないな。今回だけは見逃してやろう」
ふっふっふ、どうよこの迫力。…と、再現度。
やはり擬態は忠実に再現されており、本物の牙狼族に混ざってもわからないぐらいだ。
(……ふふっ…)
おいセレン笑うな。俺の威厳が無くなるだろうが。…まあいっか。セレンもだんだん笑顔を見せるようになってきたし。
「我に従えぬと言うならば、この場より立ち去る事を許そう!!さぁ行けっ!!」
これでビビって逃げ___
((我等一同、あなた様方に従います!))
___るかと思いきや、一斉に平伏された。
どうやら俺達に従う事を選択したようだ。
(とりあえず終わってよかった…何か嫌な予感がするけど)
(まあそうだな)
こうして、ゴブリン村の戦いは終結したのだった。
武器を作るシーンはただオリ主とゴブリンをわちゃわちゃさせたかっただけです。
※ちょっと変えました。