リムル達がドワーフ王国に向かって早数週間。見知らぬおじさん4人を連れて帰ってきた。恐らくあの人達がドワーフなのだろう。人間とそう変わらないような感じだけど、ゲームのイメージ通り“鍛冶師”って感じだ。
(おかえり、リムル)
「おう、ただいま。元気にしてたか?トラブルとか無かったか?」
(あ、そのことなんだけど…)
私はドキドキしながら先日ここにやって来たゴブリン達のいる所に案内した。
あの後、各村の族長であるゴブリンが自分の村に帰って数日後、住民を引き連れてまた戻ってきた。その数およそ500名。自分から言ったことなのでもう後戻りは出来ないと思い、リムルの許可無く名付けをしていった。そして昨日名付けが終わったばかりだ。
そのことを話したらリムルにため息をつかれた。
(か、勝手なことをしてごめんなさい……)
「いや、いいんだ。ヴェルドラの消失は俺も原因があるし、なにより俺は嬉しいんだよ。セレンが自分で考えて行動してくれたことに」
(そ、そう…?)
「ああ。これからも積極的に自分から行動してみるといい。まあ、行き過ぎたものだとさすがに怒るけどな」
(うん…ありがとう。……ところで、そちらの方達は?)
置いてけぼりになっているドワーフ(仮)4人を見て自己紹介を求めた。
「ああ、紹介するよ。左から順にカイジン、ガルム。それからドルドにミルドだ」
(セ、セレンです。よろしくお願いします…!)
「この子が旦那が言ってたセレン嬢ちゃんか」
「聞いた通り綺麗だな!」
「よろしく!」
「(コクコク」
(き、きれっ……)
そんなこと言われたことないから思わず赤くなる。まあでも、前世と全然違うこの容姿も私視点から見ればかなり美人だ。自分で言うのもなんだけど。あとミルドさんは何で喋らないんだろう…
「…おい、セレンはやらんぞ。それはそうと、ゴブリナ達の服はセレンが作ってくれたのか?」
(あ、うん。せめて女の子達だけでも…って思って。人口が増えたからまだ作ってる途中だよ)
「そうか、ありがとな!…てわけで、ガルム、ドルド。早速だけど服の作成を手伝ってくれないか?俺は他にやることがあるから」
「もちろんだ!よろしくな、セレンの嬢ちゃん」
(こ、こちらこそよろしくお願いします!)
さすがに私も家を建てることは出来ないので、外で服を作っている。完全にサバイバルだ。殺風景の中に立派な織り機があるってすごい違和感があるけど。
その織り機を見せたら、ドルドさんに
「これセレンの嬢ちゃんが作ったのかい?」
と聞かれてうんと言ったら驚かれた。まあ私もここまで立派なものが出来るとは思わなかった。これは自慢してもいいのではないだろうか。
「器用なもんだなぁ」
「な。カイジンさん並にすげぇ」
(ありがとうございます…)
そんなに褒められると何だか恥ずかしい。嬉しい気持ちが勝ってるけども。
気を取り直して、早速衣類の作成に取り掛かった。ゴブリナ達も手伝ってくれているので早く終わりそうだ。特にハルナは器用だから、こういうのにはすぐに上達するかもしれない。
「セレン様、ここ数日ずっと服を作ってくださっているのでそろそろ休んでください」
「そうですよ!」
(でも、私…)
何か言おうとする前に裁縫セットを取り上げられてしまった。どうやらしばらくお預けらしい。
(すみません、ガルムさん、ドルドさん…)
「いいってことよ。大切にされてるんだな、セレンの嬢ちゃん」
「あとは俺達に任せな」
(はい…)
その場を後にして、私は村を歩き回る。
「はい!じゃあまずオイラがお手本見せるっす!よく見ておくっすよ」
歩き回っている途中、ゴブタが複数のゴブリンを連れて何かしていた。力を溜めるように声を出した後、なんと影から
「こんなカンジっす!皆もやってみるっすよ!」
(……リムル、ゴブタ何やってるの?)
「ああ、
(えっ)
丁度いいしと思ったのか、リムルは土産話としてドワーフ王国で起こった出来事を話してくれた。
ドワーフ王国に入る前のハプニング、それによって捕まって牢屋に入れられたこと、その後に向かった鍛冶屋がカイジンさんのお店だったこと、困っているところを助けたらお礼に一緒に飲んだことなどなど。
リムルからの土産話はとても面白かったが、数日で色んなことありすぎだろ、と思わずつっこんだ私は悪くないと思う。
「そうそう、その時異世界人に会ったんだ」
(え!?)
「いや、正確には見た、か?その人の名前はシズエ・イザワ」
(シズエ・イザワ…)
「カイジンの話によると、伝説の英雄らしい。名前からにして日本人だと思う」
(そっか…いつか会ってみたいね)
「ああ!」
ところで、そんな情報どっから…ていうか見たってドワーフ王国で?
それを聞いてみたが上手くはぐらかされた。
そして話は戻り、シズエさんを見た後、その国の大臣と一悶着があって裁判にかけられたらしいが、国を追放されただけでそれ以上の揉め事はなかったらしい。
(出禁になっちゃったか…当分ドワーフ王国には行けなくなっちゃったね)
「ああ…ほんとスマン。一緒に行くのは当分先になりそうだ」
(ううん、いいよ。リムルも無事に戻ってきてくれたし、世界は広いから行けるところはたくさんあるよ)
それはそうと、ゴブタの話からだいぶ脱線したな。そう言うと苦笑して話を続けた。
とある事情でゴブタは置いて行かれそうになった時、
「それじゃダメっすよ。もっとこう…ぐぐっ…ときて、ふわぁ〜~~~っぽん!ってカンジっす!」
教える方の才能は無さそうだけど…(苦笑)
「おーい、リムルの旦那ー。移動先の伐採はとりあえず終わったぜ。あとは移ってからボチボチ開拓するとしようや」
「そうか」
(早いですね、仕事が)
「俺の打った斧だからな、当然よ。それに早く全員の寝床を確保しなきゃならんしな」
「ははは…」
…そう、元々この村にいた住民達だけならここに住んでもいいのだが、人口が約500人以上増えたのだ。今のスペースじゃ全員住むのは不可能。というわけで、「引っ越すか!」というリムルの案で引っ越すことになった。
(うぅ、すみません…)
「いいってことよ!セレンの嬢ちゃんはもう少しわがままを言ってもいいと思うが」
「そうだよな?カイジン。お前もそう思うよな?俺は遠慮はいらんって言ってるのに、いっつも遠慮気味で…」
(ちょ、リムル…!……あ、ランガおかえり!)
リムルの話を遮ろうとしたらナイスなタイミングで測量を終えたミルドさんをランガが連れてきた(泡吹いてるけど)。
これでそれぞれの準備は整った。
「…さてと、出発するか」
(うん)
いざ、新天地へ!
___数日後。
ガルムさんとドルドさんのお陰で服作りもほとんど終わり、本当にやることがなくなった。仕事をしようにも皆から「大丈夫です」なんて言われるので何も出来ない。わがままを言う訳にもいかないし…
……はあぁぁ…まるでブラック企業に勤めている社畜が休暇の日に何をすればいいかわからない感じだよ…社畜どころかまだ社会人にもなってないからそんな大人の気持ちはよくわからんけど。
何か起こらないかなー。
そう思っていた時、黒い稲妻が一瞬見えたかと思えば、離れたところで落ちた。
えっちょ、今のって「黒稲妻」だよね!?(使ったことある)何で…
《解。個体名:リムル=テンペストが使用したと思われます》
え?リムルが?いや冷静に考えてみればそうか。私が洞窟内で出会った魔物のスキルを持っていると同じように、リムルも捕食してその魔物のスキルを獲得しているんだし。
そう思っていたら、ちょうどリムルから思念伝達が届いた。
(セレン、客人だ。食事を出すから食材持ってきてくれるか?)
(!わかった!)
お客さんかー…どんな人だろう。いや、人間がこの森に入ることは滅多に無いって「理解者」が言ってたから、またもやゴブリン?でもそれヴェルドラがいた時の話だから、今は人間も出入り出来るのかな?
途中でリグルドとハルナに会い、食材を運ぶのを手伝ってもらった。申し訳なかったが何故か嬉しそうだったので良しとしよう。
そして目的のテントに入ると、そこには以前洞窟内ですれ違った冒険者3人と日本人を連想させる黒髪の女性がいた。
…食材だけ置いて出て行くのもどうかと思うので、挨拶しようかな。
(…は、初めまして……セレンといいます)
「うわぁ!すっごく綺麗!私はエレンっていうの!よろしくね!」
(よ、よろしくお願いします…)
「気持ちはわかるがセレンさんが驚いてるだろ…あ、俺はカバルだ」
「あっしはギドでやす。あそこで座っているのが
シズさんでやす」
「よろしくね」
(は、はい…!あの、皆さんお腹空いてますよね?今から食事の準備、しますね…)
「それは悪いでやすから、あっしらの飯は自分達で作るでやす」
そう言うので、食材を渡すとそれぞれ自分達で肉を焼き始めた。コンロではないので火の加減が出来ないのがもどかしい。いつか作ってみたい。
じっ…と3人がそれぞれ焼いたお肉を見ていると、ひょいっとギドさんがお肉を食べた。
「あーーーっ!!ギド、ひどーい!よくも私のお肉を!!」
「食卓とは戦場なんでやすよ、エレンの
「いいわよぅ、じゃあカバルのもらうから」
「ギャーーー!!丹精こめて育てた俺の肉がーーーー!!」
……う〜ん、なんか親戚達とのおかず争奪戦を思い出すなー…私は参戦したことないけど。
それにしても、賑やかなこと。冒険者だろうから、あのパーティだととても楽しそうだ。洞窟では年齢の差に不安を感じていたが、そんなのは杞憂だったようだ。
(シズさん、お肉いる?)
「うん、貰おうかな。ありがとう」
「…にしても、賑やかな連中だな」
「スライムさん、スライムさん」
ん?
「焼けた鉄板触れてるよ?」
(えっ!?)
シズさんの言葉に私は驚いてリムルを見た。だがリムルは溶けず、誤魔化すようにゴクゴクとお茶を飲む。味覚無いのに…
「溶けるかと思った」
「そうならなかったとこみると、熱に対する「耐性」があるのかな?」
「「耐性」?」
「異世界から渡ってくる者は、その際強く望んだ能力を得る。それが「スキル」だったり「耐性」だったりするの」
…ん?異世界の話をしているってことは……シズさんはやっぱり日本人なのか。ていうかシズさん仮面付けたままなのにどうやってお茶飲んでるんだろ。
(私は溺れて死んだから熱の耐性は無いけど…リムルは刺されて死んだから感じ方が違ったのかな?)
「(溺れ……刺されて!?)」
「あー…そうかもな。刺された時、背中が熱いとか血が抜けて寒いとか考えてたから、それで手に入れたんだろうな」
「そっか…大変だったんだね」
「まぁな」
ずず〜…とお茶を啜る音が響く。エレンさん達が騒ぐ一方、こちらは静かな空間が出来ていた。というかエレンさん達は見ていて飽きないな。
「シズさんも色々苦労したんじゃないのか?
「…いいえ、違う。炎は私にとって呪いだから」
(どういうこと…?)
「私が元の世界で最後に見た光景は、辺り一面の炎。とても怖い音が鳴り響く中、住み慣れた町は紅蓮に染まっていた」
「…もしかして空襲か?」
「多分、そう。東京大空襲って言われているんでしょ?私の教え子…その子も日本出身なんだけど、歴史の授業で習ったらしいね」
(そっか…それで転生してこっちの世界に__)
「ううん、私は死んでないよ」
えっ!?私が言うのもなんだけど若すぎない!?…でも言われてみれば異世界からの転生者って希な生まれ方ってヴェルドラが言ってたし、そうじゃないのも頷ける。私達が特殊すぎるだけか。
シズさんは転生したわけではなく、ある男に召喚されたらしい。けど男が本当に召喚したかったのは別の誰かだったみたいで、気紛れなのか、彼はシズさんに炎の精霊を憑依させた。
それは炎を操る力でもあったが…彼女にとって呪いでもあった。その力…炎のせいで__彼女は大切な人達を失ってしまったようだ。
「だからかな、人と親しくなるのは少し怖かったんだけど…やっぱり仲間っていいね。最後の旅で楽しい人達と出会えたもの。彼らはお互いを信頼してるし、遠慮なくケンカもするし、いい冒険者だよ」
シズさんは笑顔で楽しそうに彼らのことを話した。その後「ちょっとあぶなっかしいけどね」と付け加える。
…うん、私もあの様子を見ると危なっかしいなーって思う。魔物から出された食材をそんな簡単に信じて食べて__いや今私人間だわ。人魚だけど完璧人間だわ。人間が魔物の町にいるならそら信じるわ。でも警戒心が無さすぎるというか…
…それにしても、シズさんの過去が悲しすぎる。戦争を体験して、人違いでこっちに飛ばされて…大きすぎる力で大切な人達までも失ってしまった。
感情移入しやすいせいか、私の方が泣きそうになってしまい、思わずシズさんを撫でた。
「…!」
(…今までよく頑張ったね。いいものを見せようか)
「いいもの…?」
「記録共有」と「植物生成」でシズさんに桜を見せた。日本の象徴でもある桜。シズさんは涙を流しそうになったが隠すように途中で仮面を被った。
リムルも久々に見た桜だからか感動しているようだった。
都合のいいことに、これは私とリムルとシズさんしか見えないようにしているのでエレンさん達はこちらの異変に気づいてない様子。
「…ありがとう」
(ううん)
その後シズさんはリムルの誘いで散歩に出かけた。私はそれを見送り、どうしようかと考えたところ、エレンさんに話に誘われて話の輪に混ざった。その時今まで冒険した話をしてくれた。
シズさんの言う通り危なっかしいことが多くて、聞くだけでもハラハラしてしまう。
(ふふっ、楽しそうですね)
「セレンちゃんは冒険とかしないの?」
(私はここが一番大切な場所なので…簡単に離れる訳にはいかないんです)
一応主ってことになってるし。一応。
皆が私を必要としなくなったら、自由な冒険者になるのもいいかもしれない。幸いなことに「人間化」は妖気を漏らすことなく人間になることが出来るから。
「そっかぁ……それよりも!私達もう友達なんだから、敬語とかいらないよぅ!」
「そうだぜ。気軽に読んでくれて構わないぞ」
「その方が楽でやすしね」
(うん…ありがとう)
シズさんの言う通り、彼らはとてもいい人達のようだ。
「あ、そうだ!よかったらこの町を案内してくれないかな?私、もっとセレンちゃんと仲良くなりたいなぁ」
(うん、私でよければ)
エレンさん…じゃなくて、エレンちゃん達に町を案内しながら、最初に比べれば町と呼べるようにもなってきたかも、なんて自分でも思った。
この町のビフォーアフターを見るためにアルバムなんかも作っていいかもしれない。「記録目視」の応用で町の記録を紙に念写して、写真みたいに…うん、今度やってみよう。皆のおかげで多分暇だし。
そう思った瞬間、突然森の奥の方で火柱が見えた。
《警告。個体名:シズエ・イザワの魔力の増大を感知》
シズさ__え!?シズエ・イザワ!?それってリムルが土産話で言ってた異世界人じゃ…いや、それよりも住民の避難が優先だ。
(リグルド、直ちに住民の避難を)
「はっ!セレン様は…」
(私は様子を見てくる)
「っ!しかし…!」
(私は大丈夫。信じて)
「っ…どうかお気をつけて…!」
リグルドが走っていったのを確認し、不安を胸に、急いで火柱が出た方に向かうのだった。
中身は高校生なオリ主+女の子なので、リムルは夜のお店のことは伏せています。大人の事情ってやつです。