多分、前回の更新時に章分割ミスでネタバレしていますが…
『冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになっていた』の世界観から始まります…
原作分からない方はホントに申し訳ない
六話 「私は本当に運が良い」
「………帰って来ないなあ」
と、言いながら待ち人を村の門で待っているベルさんに私は慰めるように「急用が出来ちゃったんじゃないの…」と言うのが数日間続いたがそれでも体を壊したのかや途中で亡くなったんじゃないかとか不吉な事を言っているけど、旅の行商人が来た時に手紙でモンスターの討伐で暫く帰れない事が伝えられ少しガッカリしているようだけど、理由が分かって安堵していたようで良かった。
私もベルさんの娘さんと会える日を楽しみにしてたんだけど…冒険者ランクSの強さを見てみたかった…
ベルさんこと本名ベルグリフさん…立派な顎鬚と赤髪と優しい笑顔が印象的な人で瀕死の重傷だった私を保護してくれた事は本当に感謝だ。
元冒険者だけあって知識も豊富で山の薬草採りや魔獣退治の戦術はとても役に立っているし、剣の腕も凄くてリハビリでよく稽古してもらっているけど剣を当てた事は一度も出来ていない程強い。
それ以上にベルさんが凄いと思うのは…
ある事故で右足を失っていて義足を付けていてのこの強さで、自己評価が低いのは少し納得はできないよね…
しかも村でもかなりの人望を持っていてこの人が本当のお父さんだったらいいなと本気で思う程だ。
私がこの村でお世話になって二年か…まあ…半年は寝たきりだったからけど、ベルさんや村の皆のおかげで自主鍛錬出来るほどに回復できたのは感謝しかない。
…私が発見した時にベルさんが「血塗れでボロボロになった服装でうめき声上げて歩いていたから、遭難者のアンデットと勘違いしたが、『助けて』の一言で遭難者だって気がついてよかったよ」とあまり私を不安にさせないように笑って話してくれて、今では居候させてもらっていて村の雑用をして暮らしてるけど…
私って何で森の中でボロボロになって迷っていたんだろ?
実は私は…自分が誰だかわからないし、どこに住んでいたかもわからない記憶喪失になっている。
ベルさんが言うには頭の打撲による衝撃のせいだと言われたが、おでこに火傷のような痛々しい傷が残ってしまっていて、その他にも体中に酷い痣や擦り傷酷く、当時は助からないんじゃないかと言われたが、此処の村人の皆のおかげで此処まで回復出来たのは本当に感謝しかない。
私の持ち物から冒険者だったのではないかと推測されたけど何もわからない…
怪我の治療の時にボロボロになった服のポケットから手紙みたいなものがあり、そこから行方が分かるのではと期待したが、汚れが多く読みにくくなっていて、私が意識を取り戻し完全な記憶喪失だと分かった時にベルさんから手紙を渡された時にこれが大事なものだという事は知っていても内容がどんなものだかかは分からず最低でも名前が分かればいいと思っていたけど…此処で私が何者なのかの手がかりが無くなったと思っていた。
他の持ち物は腰にあった剣の鞘と背中に背負っていた剣のみ…後々で森で剣が発見されてそれが腰の剣だと分かりベルさんからは何かしらのトラブルに巻き込まれ重傷を負ったのではないかと言われたけど…ごめんなさいベルさん本当に思い出せません。
無理に思い出すことは無いと慰められ、思い出すまで此処に居ればいいと歓迎されベルさんに家族として迎え入れられ楽しく暮らさせてもらっている。
村の皆との生活も楽しくていっそこのまま此処に居てもいいかなと思った事はあったけど、私の両親や兄弟や姉妹がいたら心配してくれているのかな…と思うと悠長に此処に居てもいけないと思い、冒険者になって自分探しの旅に出ようとしている為、リハビリで剣の稽古をベルさんに頼み込みしてもらって森に薬草摘みに行くときは薬草の知識や気配察知のコツなどを丁寧に教わっている。
でもベルさん…本当に冒険者ランクEなの?
そう思うのは理由がある。
まず、剣術に関しては相手の攻撃を的確に捌き、隙が出た所をカウンターで攻撃する戦法を得意としているけど、稽古時の撃ち込まれた剣の重さは変わらず凄いし、私の癖を見抜いての攻撃も多く洞察力も凄い。
それに義足なのかと思う程に足さばきも良すぎて本当に弱いと思っているのが嘘だと思えるほどだ。
夏のある日に村の子供達を山へ連れて行って冒険者時代の知識を教えているんだけど…水源の推定や確保、薬草の採り方を教えていた時に子供が魔物に襲われた時に一番早く反応して退治していた…
その時に助けた子供を脇に抱えてグレイハウンドと呼ばれる狼みたいな魔物を剣で真っ二つにして倒した事は凄いと思う反面、全く気が付かなった私自身も反省しなければいけないと思った事だ…
まあ…ベルさんもグレイハウンドを倒した後に義足で着地した場所が悪かったのか盛大に転んでずぶ濡れになりながらも助けた子供をあやしながら「恰好が付かんなあ…」と苦笑いしてたけどね。
剣術も知識も勘も凄くて子供の面倒見も良くて村人からも信頼されてるって…こんな人がお父さんだったらよかったのにと、何故か少し怒りが込み上げるのは何でだろう?
その娘さんのアンジェリンさんが冒険者Sランクの剣士だという事で、暇があれば手合わせしてもらいたいと思っていたけど、拠点としている大きな町の周辺の魔物騒ぎが多く何かと帰れない事が多くなっているみたいだ。
手紙が三回届きどうやら私の事も報告はしてあり、直接会えるのを楽しみにしてるとは書かれていたらしいけど少し悪寒がしたのは気のせいかな?
そう言えば少し前に来たAAランクのサーシャさんとの模擬戦闘は本当に凄かったな。
アンジェリンさんが二度目の帰郷の途中で盗賊に襲われたのだけど、助けを呼ぶ声が聞こえて駆け付けると人質の女の子がいて盗賊達はあっけなく討伐されたが…救助された女の子は離れた町の領主の娘で父親が危篤と言う事で数人の護衛のみで向かったけど、盗賊の襲撃で移動手段を失い父親の死に目に会えない事を悔やんだそうだけど、アンジェリンさんは帰郷を中止して同行していた商人にその街に行くように言った事で間に合ったそうで、その感謝の言葉と謝礼のお金を届けに来たのがその助けた貴族の二人いるお姉さんの1人のサーシャさんだ…
アンジェリンさんはベルさんの事を尊敬しているのか『赤鬼のベルグリフ』なんて勝手に異名を付けて広めているみたいでサーシャさんもそれを信じて模擬戦をしたみたいだけど…ベルさんこれだけ戦えて自分は大したことは無いですよは説得力無いですね~
サーシャさんも色々何か言っていたけど、多分半分正解かなと思うような事は私もあったのよね。
まず、冒険者を辞めてからずっとこの村に籠っていたというけど、剣術の鍛錬を怠らなかった為に少し前に大熊を討伐しておいて「作戦勝ちだよ」と笑って話していたけど、的確に催涙玉を使って怯ませた後に背後から心臓を一突きで仕留める事が出来るのは、冒険者時代の時に事前準備が的確で、私にも「冒険者は命あっての物種だから絶対に無茶してはいけないよ」と教えてくれてるし、義足になったのも未知の魔物に遭遇してしまった為に仲間を庇っての事で、パーティーの皆は残って欲しいと懇願してくれたみたいだけど、逃げるように隠居状態になった事を後悔してるようだった。
それにしても、ベルさんと一緒に魔物狩りに同行した事あるけどさ…本音を言えば私っていらなくない?と思うくらいに何も出来なかったよ…
バックアタックを警戒し対応した慎重さが前に出て戦わない臆病者と罵られ、パーティーのお荷物状態ですぐにクビになっていたみたいだけど、その当時の冒険者達って本当に観る目が無かったわね。
そう思えば…今の状態の方が強いんじゃないかな?
まあ…結構お歳の事も気にしているみたいだし、サーシャさんが去った後にギリギリだったと言ったので、回復魔法を使って痛みを和らげてあげながら今、お世話になっているベルさんに恩を返しているのだ…
私って誰なんだろう?
私はリッド…あの手紙からかろうじて読めた名前であろう文字を繋いだかりそめの名前…
あと数年したら私は自分探しの旅に出る。
その時まで、私は此処で強くなろう。
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ベルグリフは二年前に保護した少女リッドに回復魔法をかけられながら当時の事を思い出していた。
森で不審者がいるとの事で偵察及び敵対するなら討伐の依頼を頼まれた時に発見されたリッドと名付けられた少女の出会いは衝撃的だった…
衣服は所々破れ血が滲み、額の出血と重なって生気のない表情はアンデットとなってしまった冒険者だと思っていたが、かすかに聞こえる「助けて」の一言で遭難者と判断し保護できた事は今でも忘れられない。
一刻も早く治療しなければならなかった。
知り合いの薬草に詳しいカイヤばあさんや衣服を脱がす為に村の女性に頼み治療をしてもらっていたが、体の打撲や額の怪我が酷く助かるかどうかも分からないと言われるほどの重傷で、治療後に二か月間意識が戻らない状態だったが奇跡的に助かり話せるまでは回復はしたが、問題はこの後だった…
額の怪我の後遺症で全記憶を失っていて自分が誰だかわからない事と、村を訪れる行商人に行方不明となっている冒険者はいないかと調べてもらった結果は該当者はいないそうだった。
発見したその後に、ベルグリフを含めた数人で少女が持っていたであろう剣の探索をし鞘に合う剣を発見しその近くにその剣で切られたであろう太い木の枝が発見された。
だが、身元が分かる物は何も無く唯一の手掛かりだったズボンのポケットに入っていた手紙は損傷が激しく一部しか文字が特定されなかったが、誰一人読める人はいなかったが…その少女は読めたのだ。
しかし、自分自身の名前は読みにくくなっていてかろうじて読めた文字を繋ぎ合わせ、自身をリッドと名乗る事で解決はしたが、問題はこの後の事だ。
ベルグリフは身元が分かるまで此処に居るといいと言ったが、リッドは体調が戻り次第自分探しの旅に出ると言ったので、せめて自分の娘であるアンジェリンが帰郷するまで待ってほしい事を伝えた。
何故こんな提案をしたのかと言えば、アンジェリンは冒険者で拠点としている町オルフェンで行方不明者やその伝手を頼る事が出来る為と、二か月間意識不明でその後は寝たきりだった事で体力の低下があるので鍛え直してみたらどうかと言った事だ。
リッド自身もその提案を受け入れ、体が動かせるようになってからは走り込みや剣術の稽古を開始したが、剣術は基礎がしっかりしていて怪我をしなければ今さっき模擬戦をしたサーシャと同格ではないかと驚く実力の持ち主だった事や、回復魔法も自在に使える事でさらに謎が増えたのだが…
リッドはそんな事を気にせずに穏やかに過ごしていた。
腰まで伸ばした髪は金髪だが肩から下が白髪であることから人族ではなく他の種族の混血ではないかと思っていたが、リッドはよくわからないと言ってはぐらされている。
少なくとも人懐っこく世話好きな性格で剣術に関しては熱心に鍛錬する姿は好意的に受け止めており、本当に何かしらの事故で記憶を失っているのは確か…なのだが一つの疑問があった。
額の怪我の原因が不明だからだ…
剣の回収時に切り落とされた枝を確認したが血痕は無く、まさかとは思うが何者かに襲われた可能性もあった。
その心配でベルグリフは面倒を見る事にしたが、今では考えすぎかと思っていた。
それよりもいつ帰ってくるかもわからない娘をどうやって迎えようかと考えながらリッドの回復魔法を受けていた。