ウルトラマンX ~怪獣の魂を宿す少女達~   作:火野ミライ

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第3話:復讐怪獣(B)

スケドンが消えたから数時間後、GIRLSでは対応に追われていた。怪獣が壊した建物などの被害規模や、次現れた時の対策、避難所への運ぶ物資の整理。本日夜勤に就てめていたGIRLSのメンバーが忙しなく働く中、巨大怪獣に関せる研究が目的で新たに設置された部署、その名もラボチーム。

 

ラボチームに与えられた一室。本来ならば明日から活動開始の部署のため、ラボと言うよりも必要最低限の物な無い質素の部屋となっている。そんな部屋の中、新品の机とパソコンと向かい合うのは、現状唯一のラボチームメンバー:大空大地。

 

その液晶にはスケドンとの戦闘映像が流れていた。大地はエクスデバイザーで、スケドンの音声解析を試みる。

 

『ガオディクションを、起動します。スケドン、解析中…』

 

【ガオディクション】とは、大地が持つエクスデバイザーいや、エックスが宿る前の状態【ジオデバイザー】に搭載されている機能の一つ。スパークドールズや鳴き声を解析する事で怪獣の感情を知ることが出来るシステム。

 

『解析完了しました』

 

「なんだこれ!?感情ベクトルのほとんどが殺意と怒り。それに…悲しみ」

 

エクスデバイザーに表示された数値。そこに映し出されていたのはまるで住処も何もかもを失ったかのような数値に声に出して驚く大地。さらに画面には大地も知らない未知ななるエネルギー周波数が表示されている。それにいち早く反応したはエックスだった。

 

『これは【マイナスエネルギー】!そうか、だからあの怪獣私たちを無視して……』

 

「なに?分かるように説明してよエックス」

 

『あぁ、すまない。マイナスエネルギーとは言わば負のエネルギー。知的生命体が持つ負の感情、例えば復讐・失恋・不安・絶望などと言った感情から生まれるとされている。そのエネルギーにより生み出された怪獣は通常よりの怪獣よりも強力かつ、生み出したモノを先にどうにかする必要があるんだ』

 

「生み出したモノ。つまりそれって人間………?」

 

エックスの説明を聞き呟かれた一言、それは大地の後ろから聞こえてきたもの。大地が振り返ると考えこむミカヅキの姿がそこに。その手には湯気が立つマグカップが握られている。

 

「ミカヅキ?」

 

「あ、ダイ君これ! あったいココアだよ~」

 

「ありがとう」

 

ミカヅキから受け取ったココアを一口に含む。夜の街ですっかりと冷えていた身体にあったまるのを感じながら、大地は再び画面と向かい合う。

 

「感情ベクトルから考えるにスケドンはマイナスエネルギーを浴びて実体化した怪獣。エックスの光線(ザナディウム光線)でもマイナスエネルギーを払わない限りはスパークドールズに戻すことが出来ない。かと言って先の戦いの影響であの姿にはなれない。スケドンの進行方向には目的の何かがあるはず、それさえ分かれば……」

 

GIRLSに提供された現場付近の監視カメラの映像ファイルを開き、共通点を洗い出そうとする大地。時計はもうすぐ日付を跨ごうとしている。

 

「手伝いたいところなんだけど、明日朝早いから私は仮眠室で寝るから…… おやすみ」

 

先の戦いの傷も癒えぬ中、さらに無茶をしようとする大地を心配しながらも、何もできない無力感を胸に秘めながら部屋を走り去るミカヅキ。その目に涙が浮かび上がっている姿を物陰から書類を持つエレキングが見つめていた。

 

 


 

 

翌朝……

怪獣が昨日出現したとは思えないほど、いつもと同じ日常を過ごしている町の人々。その様子を眺めながら歩く一組の男女がいた。片方はレンタルスーツに身を包む大地。その様はスーツを着ているというより、着せられている。

 

それもそのはず、なぜなら大地の年齢は20。普通ならまだ大学生なのだ。そんな彼の横を歩く女性。大地より年下だが、きっちりとスーツを着こなす彼女こそGIRLS調査課でエレキングの怪獣娘【湖上(こじょう)ラン】。

 

「あの湖上さん、俺まだ解析の方が………」

 

「徹夜でやってあまり進展がないなら、いつまでやっても一緒よ」

 

目の下に隈が出来ている大地の意見を一蹴、そのまま歩みを進める。そんなランの後を慌てて追いかける大地なのであった。

 

「それで大空博士、どこまで解析できたのかしら?」

 

「あの、名前で読んでください…… 昨日のスケドンはとある人物の感情、特に復讐心に同調して暴れた可能性が高いです。その復讐相手である人物もしくは集団と、スケドンに同調している人物本人の発見が早急に必要です。ですが監視カメラでは人物の特定が………」

 

「…そう」

 

大地の説明を受け、考え込むラン。そんな彼らの元に言い争う声が聞こえてくる。二人は目を合わせ、声の聞こえてきた方角に向けて走り出す。道の先で広がっていたのは小さな公園で一人の少年が男女4人組に暴力を振るわれている光景だった。

 

「やめてよぉ………」

 

「学年1位の俺に歯向かうなよ、この貧乏人!!」

 

「こいつ泣いてる。だっせぇ~ww」

 

「反撃もしないんて女っぽい」

 

「ゆうか言ってやるなよ。まぁ、私も同意見なんだけどね~」

 

「おい君達、何やってるだ!」

 

男女が2人づついるグループに注意しながら近づく大地。

 

「やっべ、逃げろ!」

 

その姿を見た中学生ぐらいのグループは近くに置いていた荷物を手に取り一斉に離れる。逃げ足の速い彼らの背中を横目で見ながら頭から血を流す少年_優待の肩を担ぎベンチの元へと運ぶ。後から追いついたランも優待の肩を支える。

 

「大丈夫?」

 

「はい…… ありがとう、ございます」

 

ランがたまたま持ち合わせていたGIRLSとのタイアップ商品である絆創膏を少年の傷口に張り手当てする。手当てを受けた優待は礼を言うとすぐさま走り出し、この場を去っていく。

 

「イジメか… どの宇宙でも変わらないんだな……」

 

去り行く背中を見つめながら先程の光景を思い出し呟く大地。その声は風に遮られ誰の耳に届くことなく消えてゆく。

 

「さ、仕事に戻るわよ」

 

「はい」

 

優待の手当の際に使った品々を鞄にしまったランを追う形で調査に戻る大地。

 

『む? この波長は………』

 

その時、エックスが感じた小さな違和感にも気が付かずに…………

 

 


 

 

「はぁ~………」

 

一方その頃ミカヅキは、とある施設の一室でため息をついていた。

ここは【大怪獣ファイト】の控室。そもそも大怪獣ファイトとは怪獣娘たちが持つ闘争本能の捌け口であり競技。さらに怪獣の力を身に宿した少女達が恐怖の対象ではなく、近しい隣人であることを世間の人々に対して説明する為の娯楽番組の一つでもある。

 

そんな大怪獣ファイターの一人がゴモラことミカヅキ。彼女は持ち前の明るさと戦闘時の力強さで一定層のファンを獲得している若手ホープ。そんな彼女だが今は普段の明るさは見受けられず、どこか暗いオーラを放っていた。

 

「どうしたのゴモラ?」

 

そんな彼女に語り掛けるは同じ控室を使用している大怪獣ファイター。彼女が身に宿すのは【硫酸怪獣ホー】の怪獣ソウル。勝率は決して高くは無いが本人もファンも気にしておらず、表情表現が苦手な彼女が時たま見せる笑みが一押しだとネットで囁かれている。得意技は七色に輝くの光線。

 

「……ホーちゃん、何でもないよ」

 

「嘘」

 

「え?」

 

普段と変わらない軽快な笑みを浮かべるミカヅキを一蹴し見つめる。今度は困惑の笑みを浮かべ視線を左右に泳がせていたミカヅキだったが、ホー視線に根を上げポツリと話し始めた。

 

「いや~ 今日の試合、見てほしい人がいたんだけど仕事が忙しいみたいで……」

 

「そっか」

 

「うん」

 

「「…………」」

 

二人しかいない控室に静寂が訪れる。普段場を盛り上げる立場のゴモラは先の話もあり話だしずらく、ホーは自ら会話を始める性格ではない。

 

「勝とう」

 

「………へ?」

 

「勝って、良い知らせを真っ先に伝えれば良い」

 

「うん!」

 

会話が苦手な彼女のエールを受け、闘志を燃やすゴモラ。その姿を優し気なまなざしでホーは見つめていた。本日行われる試合は3対3のチーム戦、多く勝利を掴んだチームの勝ち。相手のメンバーは【ゴルザ・ガラオン・サタンビゾー】の3人。

 

対するこちらはゴモラとホー、そして新人ファイターの【ミクラス】。苦戦は免れないだろうが勝てない相手ではない。問題があるとすれば、いつまで経っても来ないミクラスだろうか… 大丈夫。試合開始まであと30分はある。だからきっと、チームメイトの闘志が無駄になる事は無いだろう。

 

脳裏に浮かび上がった不安を流し込むかのように水でのどを潤すホーであった。

 

 


 

 

調査を続けていた大地とラン。既に夕日は沈み夜の街をネオンサインの輝きが照らす。星が輝かぬ夜空を見上げながら調査を切り上げようかと思考し始めるラン。その近くに偶々、三原優待が住まう年季が詰まったアパートがあった。ベットの転がり込む優侍。その瞳はひどく濁っており、傷口に張られた怪獣娘の絆創膏を見つめる。

 

(力が欲しい… アイツらを殺せる力が! もうこんな虐められるだけの人生なんて嫌だ。世界なんて滅んでしまえばいいのに!!)

 

その心から溢れるドロドロとした感情。その感情に呼応するかのように彼の部屋に置かれた一つのソフビが紫の輝きを放つ!

 

「な、なんだ?」

 

優侍がソフビの異変に気が付いたころ、独りでに浮き上がり幽霊の様に窓をすり抜ける。そして大きな爆発音と共にソフビと全く同じ姿の怪獣、悠然怪獣スケドンへと変わり方向を上げた。

 

「ハハハハハ!」

 

その様を窓から見つめていた優侍は歓喜に震え笑みを浮かべる。

スケドン只々、日が沈むまで遊んでいたいじめっ子グループの元へと進む。その最中、障害となるビルを砕きながら。

 

「どうして急に…… いえ音もなく消えるのであれば、音もなく表れるのが自然」

 

「この波長か!」

 

ラン達にとって何の前ぐれもなく出現したように見えたスケドン。そのことに疑問を浮かべるが昨日の様子を考えすぐに自己解決したラン。一方の大地はスケドンの放つ波長と同調する波長を発見。すぐに場所の特定を始める。それから避難誘導を駆け付けた警察に任せ二人は波長の持ち主、優侍の家へと向かう。

 

「ガァァアアアア!」

 

しかし彼らの行動を野生の勘で感じ取ったのか、何の前ぐれもなく腕を大きく振るいビルの瓦礫を大地たちの方へと吹き飛ばす。

 

「うわっ!?」

 

「きゃっ!」

 

吹き飛ばされる大地とラン。幸いな事にけがは無いが完全に分断されてしまった。

 

「大地博士!」

 

「俺にかまわず湖上さんは行ってください!」

 

「分かったわ。ソウルライド、エレキング!」

 

大地から送られた住所に向かうためその姿を怪獣娘の物へと変える。頭部に就いた三日月上のアンテナ、白に黒のラインの服に盾と鞭を手に持ち、常人離れした身体能力で一気に向かう。

 

「行くぞエックス!」

 

『あぁ!』

 

そして大地は人通り無い道へと向かい、手に持つエクスデバイザーを展開。出現したエックスのスパークドールズを手に取りライブサインをスキャン天へと掲げる!

 

『ウルトラマンエックスと、ユナイトします』「エックスゥゥーーーーー!!」

 

『エックス、ユナイテッド』「イィィーーーッサァーーーー!」

 

眩い光の中からエックスが姿を現し、地面へと舞い降りた。身体を回転しながら着地する【スパイラル着地】を決め土煙を上げるエックス。

 

「エーックス!」

 

「ガァァアアアア!」

 

エックスとスケドンの戦いをビル群の明かりがライトアップ。とあるビルの一室に置かれたテレビに映る番組、大怪獣ファイトのコングが鳴ると同時に互いに肉体をぶつけ押し合う両者。その激戦の余波で大地が揺れるをものともせずエレキングは走る。

 

 


 

 

悔しい、憎い!

 

「ガァァアアアア!」

 

僕の拾った怪獣の人形が本物怪獣になって町中を暴れる。怪獣が進んでいる先は僕をいじめる髪を染めた女の家の方だ。あの怪獣は僕の代わりに復讐をしてくれるんだ! 圧倒的な力に一方的に襲われる恐怖、教えてやれ僕の怪獣!!

 

「イィィーーーサァァー!」

 

ヘッドホンみたいな耳を巨人が僕の怪獣の尻尾を掴み後ろに下がらせる。僕の、僕たちを復習をする奴も邪魔だ。僕の意思をくみ取ったのか僕の怪獣は巨人に向け、手から延ばした光の剣を巨人に向けて振り下ろす。

 

「はは、アハハハ!」

 

僕の怪獣の一撃を受けた巨人は火花を周囲に散らしながらビルを巻き込み倒れる。ハハ、あの会社はいじめっ子リーダーの親が経営する外交会社だ! いつも自慢するをよく聞いてる。偶然だけどザマァ! 巨人が痛みで起き上がれない事を確認した僕の怪獣はショッピングモールに向けて歩く。

 

なんだ? あぁ、あそこにいるのか!

疑問に思った僕の脳裏に僕の怪獣の視界が浮かび上がる。どうやら僕の怪獣は復讐相手を見つけたようだ。全身のトゲを輝かせ、エネルギーをあいつらに向けて放つ怪獣。

 

『キャーーー!?』

 

耳に触る高い悲鳴を上げてその場に腰を抜かすいじめっ子達。あいつらに攻撃が当たる! そう思ったとき、いつの間にか立ち上がっていた巨人があいつらの前に立ち光の壁を作って守ってしまう。

 

なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんでなんでなんでなんで!!!

僕は守ってくれずにあいつらを守るのさ! あんないじめっ子、生きてない方が良いのに!!!

 

「ガァァアアアアーーーーーーッ!!!」

 

僕の怒りに合わせて僕の怪獣が吠え、巨人に激突。その一撃を受け巨人は押されていくもさっきとは違い、胸の輝きが黄色に変わり吹き飛ばせない! むしろ僕の怪獣を受け止め、顎に向けて放たれた膝蹴りをまともに受けてふらつく僕の怪獣。がら空きとなった胴体に次々と巨人の一撃が決まっていく……

 

「なんで? どうして邪魔するんだよ!」

 

「それはあなたが一番分かっているんじゃない」

 

思わず怒りに任せて叫ぶ僕の言葉に後ろから返事が返ってくる。それはおかしい、母親はまだ隣町でパート中だ。何より母さんはこんなに冷たい声じゃない! 驚きに身を任せ、真冬の湖の様に冷たい声の持ち主へと振り返る。そこにいたのは____

 

「昼間のお姉さん……?」

 

「えぇ、そうよ」

 

なんかの怪獣の様な服に身を包んだ、昼間に手当をしてくれたお姉さんだった。

お姉さんの眼が俺を責めるように見つめてくる。やめろ、そんな目で俺を見るな… 怖い。昼間の時と違ってとっても怖い。助けて俺の怪獣!

 

「グガァァ!」

 

俺の思いに答えて怪獣がこっちに来る。そうだ、お姉さんが怪獣娘だとしても僕には本物怪獣が付いているんだ。何の問題もないじゃないか!

 

「イッサァーー!」

 

しかし窓の外に目を向けると巨人が僕の怪獣をこっちに来れないようにしている。僕の怪獣を転倒させると瞳をこちらに向け小さくうなずく。

 

「……エレキング」

 

「へ………?」

 

「自己紹介よ」

 

「あぁ、俺は三原優侍」

 

突然自己紹介を始めたエレキングのお姉さん。思わず名乗ってしまう。こっちが良く分かんない状況になっても僕の怪獣と巨人の戦いは続いており、時たまアパートが揺れる。

 

「復讐を終えたらあなたは何をするの?」

 

「え?」

 

良く分かんない質問、でも問われた僕に答えは出すなかった。僕の答えを待つエレキングのお姉さん。しばらくしてようやく僕は口を開いた。

 

「そんなの普通に暮らしていくに決まっている。あいつらがいなくなって、僕の学校生活は穏やかになるんだから」

 

「どうして復讐を終えたら穏やかな学校生活を送れるのかしら?」

 

「いじめられなくなるから」

 

「なぜいじめられなくなるの?」

 

「あいつらが死んでるから」

 

良く分からない質疑応答が繰り返されていく。

 

「あなた言うあいつらがいなくった学校は本当にいつも通りなのかしら?」

 

「え……?」

 

「これはある怪獣娘の話よ」

 

エレキングのお姉さんによって語られた話。それは救いのない復讐の物語だった。

いじめられた怒りで覚醒した彼女は憎しみに身を任せていじめっ子の命を絶つ。しかし彼女の不幸はそこからだった。いじめっ子の親に我が子を返せと責められ、周りからは人殺しと陰口を言われる毎日。親にも相手にされなくなり精神を病んだ彼女は次第に幻覚を見る事になる。それに耐えきれなくなった彼女はそのまま自らの命を絶った。

 

「___まぁ、あなたの場合は代理がやってくれてるみたいだけど」

 

エレキングのお姉さんが視線を窓へと向けるのつられ、俺も外を見る。巨人が胸の輝きを書かく点滅させ周囲に警告音が鳴り響く中、俺の怪獣はあいつらへと向け歩む。俺の怪獣と視界を共有すると怯えるあいつらの近くには知らない人も、学校ですれ違う子もいた。

 

そんな彼らを守るかのように立ちふさがる巨人は矢尻型の光を俺の怪獣に向けて放つ。迫る光を腕に生成した光の剣で弾くとそのまま巨人に切りかかる。その一撃を受け止める巨人は俺の怪獣を投げ飛ばしショッピングモールから遠ざけた。

 

「もう一度聞くわ。あなた復讐を終えたら何をするの?」

 

その質問に僕は答えられ無かった。ただ人を殺した罪悪感に押しつぶされるそんな自分の未来が見えた気がして膝から崩れ落ちる。

 

「僕は、俺はあいつらを怪獣に殺させて、関係ない人を巻き込んで、殺して……」

 

「大丈夫。そんな事にはならないわ」

 

崩れ落ちた俺に視線を合わせると力強い言葉を言う。そして立ち上がり窓のふちに手を乗せ身を出すと巨人に向けて叫ぶ。

 

()()()()()()!」

 

エレキングのお姉さんの声に反応した巨人がこっちに振り向く。……ところでウルトラマンとはあの巨人の事なのかな?

 

「怪獣を、スケドンを止めて上げて!」

 

巨人はエレキングのお姉さんの言葉にゆっくり頷くと立ち上がり、腕を顔の上でクロスさせ一気に振り下ろす。

 

 


 

 

エレキング、湖上ランの声に呼応してエックスのインナースペースに立つ大地の懐が輝く。その輝きの正体、【サイバーエレキング】のカードを取り出す。色を失いモノトーンになっていたそれは鮮やかな色を取り戻した!

 

「今度はエレキングのカードが!」

 

『行くぞ、大地!』

 

「あぁ!」『サイバーエレキング・ロードします』

 

力を取り戻したエレキングのサイバーカードをエクスデバイザーに装填、込められたデータをリードする。するとエックスの身体にサーバーアーマーが装着されていく。銀と黄色のの鎧、右腕に特殊アームに刻まれた[E]の文字、左肩にエレキングの頭部。

 

『サイバーエレキングアーマー・アクティブ』

 

【エレキングアーマー】を身に纏うエックスが夜の街に再誕した!

 

「ガァァアアアア!」

 

「エェーーーックス!」

 

全身のトゲから放たれる攻撃。エックスは右腕の砲門から稲妻の鞭の様に放電し、迫りくる攻撃を全て絡めとると後方上空へと投げ落とす。エネルギーとエネルギーのぶつかり合いで爆発を起こし、エックスの背後で花火が咲く。

 

「グガァァ!」

 

遠距離攻撃だと悟ったスケドンは右腕に光の刃【ブレードスペシャルビーム】を展開しエックス向けて一直線に迫る。その姿を見た大地が言葉を紡ぐ。

 

「ありがとう。君の優しさはちゃんとあの子に伝わった。でももういいんだよ。あの子はもう自分で飛べる。だから……おやすみ」

 

右腕に溜めたエレキングの黄色とエックスの青と緑、二つの力が込められた三色の電撃が砲門からスケドン目掛けて放たれる!

 

『「エレキング電撃波!」』

 

必殺の電撃を受け、静かに倒れるスケドン。その肉体は爆発し光の粒子になると再び一か所に集まり、元のスパークドールズへと戻るのだった。その様子をアパートから見つめていた優侍は小さく「ありがとう」と呟き一粒の涙を零す。

 

 


 

 

エックスとスケドンの戦いから3日後___

三原優侍は湖上ランの勧めでGIRLS東京支部内のカウンセラーを受けに来ていた。いじめを受けていた優侍は人格分裂一歩手前まで追い詰められていたよだが、そのマイナスエネルギーをスケドンがすべて使い切ってしまっていた。

 

だからと言って優侍の精神が安定する訳もなく、ましてや今回の事件の原因となったいじめ問題が解決された訳でもない。いじめ問題に関してはGIRLSの力ではどうにもできない為、メンタルケアに趣を置いた。それでも根本的な解決にはなっていないのだが……

 

「優侍君」

 

ベンチに座りカウンセリングの時間まで時間をつぶしていた優侍に声をかけるのはGIRLSの男性職員制服の上に白衣を羽織う大地。

 

「大地博士!」

 

「はい、スケドンの健康診断は終わったよ」

 

大地から優侍に渡されるスケドンのスパークドールズ。大地はあの戦いの後、スケドンは優侍のそばにいた方が互いに良いと考え優侍に渡していたのだった。最初はやらかした直後なのもあり断った優侍ではあったが、大地の真っすぐな思いを受けてそばにいる事を選んだ。

 

優侍がGIRLS東京支部に来ているのはスケドンの定期検査もかねての事。現状、この世界でスパークドールズに関する知識を持っているのが大地しかいない為である。

 

「ありがとうございました」

 

「どういたしまして。本当はもっと話したいんだけど、仕事が立て込んでいるからまたね」

 

「はい」

 

立ち去る大地の背中を見つめる優侍。そのまま視線をスケドンへ向けていると用を足したくなり、お手洗いの方へと進む。そして曲がり角を曲がろうとしたその時だった。

 

「うぁ!」

 

「っきゃ!」

 

出会い頭にGIRLSの制服に身を包む少女とぶつかる。その時に優侍はスケドンを、少女は手に持っていた書類を床に落としてしまう。

 

「す、すいません」

 

「こっちらこそすいまん」

 

互いに謝りながらも優侍は床に散らばった書類を集めて少女に渡す。

 

「ありがとうございます。これあなたのですよね?」

 

「どういたして …それとありがとうごz……」

 

スケドンのスパークドールズを受け取りお礼を言おうと優侍は初めて少女の顔を見て固まる。

 

「何かついていますか?」

 

頬のあたりに手を当て優しくなでている少女の姿に優侍は只々、見とれていた。

 

「あ、いえ。その僕は三原優侍って言います」

 

「三原君ですね! 私は【夏川(なつかわ)なつみ】、悠然怪獣スケドンって言う怪獣の怪獣娘です。好きに読んでくださいね!」

 

二人の出会いを祝福するかの様に優侍の手元でスパークドールズが震えたのを二人は知らない。ただその日は花が躍る晴天だった。




次回予告

次々と東京に出現する怪獣。それに対抗する為、GIRLSは新たな仲間を東京支部へと勧誘する。そしてやって来たのは色々とユニークな天才怪獣娘「ファントン星人」とその幼馴染で同じく怪獣娘「ベムスター」。自分本位なファントン星人に振り回される中、宇宙人まで現われて町は大混乱。
天才は周りよりも頭が良いからこそ、周りをきちんと見なきゃいけないんだ!

次回、ウルトラマンX ~怪獣の魂を宿す少女達~。「ワン・フォー・オール」
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