涼宮ハルヒの憂鬱は俺の憂鬱でもあるのだから、如何にして歓喜に変えるのかというのは正に他人事ではなく、つまるところ幸福へと至るために俺がするべきことは彼女のご機嫌取りなのだろう。   作:おっぴろげ

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追記
始めのスマフォの下りを修正しました。
一行目の重文と二行目への文脈を変更。

※飯の下り・相手は一人のため、「友人たち」を「友人と」に変更
※母親により作られた弁当を妹によるものへと修正。(読み返すまで気付かなかった。すいません)

※追加・団と言っておきながら我が部活動とハルヒが言っている点を修正
   ・心無い組織についての独白を加筆。
   ・涼宮は、勢いよく目の前にあるオフィス机に両足を乗せて立った
    ↓/変更
    涼宮は、勢いよく目の前にあるオフィス机に足を乗せる。
    ↓さらに変更
     読点の位置修正、オフィス机をデスクへ
    



第二話・UMAといえばモケーレ・ムベンベはいるとハルヒは思っているらしい。一応、分別というのはつけれているようだ

 

【挿絵表示】

 

 

人間は案外、話しの話題は尽きないものである。

 日々訪れる昼食での友人間における談話がそれを証明している。

 ただ最近では、どの生徒も片手にスマートフォンをもち、誰とも知らない相手にゲームやらチャットやらと熱をあげている。今そこにいる友人より、性病を患っているかもしれない人間を大切にしているらしい。昨日仕入れた話も、右から左へと流れ出ることが多いようだ。

 俺は違うがな。

 俺は今もこうして友人と机を合わせ、手作り感あふれるスーパーの惣菜と残飯のみで「妹」により構成された手作りもどき弁当を口にしている。

「昨日のUMA特集みたか?」

「あー昨日なんかあってたな」

「おう。それだそれ。見てないのか?」

「見てないな」

「かぁーっ!なんでだよ!」

 なんだ?いつからか俺の家にあるリモコンの所有権はお前にあったのか?

「UMA自体は好きだけど、UMA特集をしている『番組』は嫌いなんだよ」

「……なるほど、そりゃちょっとあるな」

「隊員が目にしたものとは。なんて煽りで引き延ばしたりするだろ?あれがウザい。あと特集と言っているくせに生態についての情報ではなくタレントの冒険活劇みたいになってるのもうんざりだ。最悪なのがお涙ちょうだいシーンを入れるものだな。本気で聞きたいんだが、テレビ番組のああいった演出をありがたがっている連中はいるのか?」

「UMAなんて非現実的を好きと言っている奴の台詞じゃねえな」

「非現実と非現実的とでは違うからな」

「じゃあ今晩のUFO特集は見るのか?あれはタレント派遣なんてやらないからいいだろ」

「まあ、まだマシだな。けどたぶん見ない」

「生物は好きで飛行物は嫌いか?」

「中に居るだろう搭乗生物含めどっちも好きだぞ。これはさっきの話でも言えることなんだけど、タレントたちの大仰な反応が嫌なんだよな。白々しい。何度も公開された映像にも同じ反応だろ」

 うんちく垂れるタレントが最近は増えたと思う。

大抵は裏方の人間だった奴らだ。トリー加藤なんてのがその筆頭で、奇抜な帽子と眼鏡をつけて毎回ちょっとしたことに自己経験から基づく豆知識、つまりは根拠のない知識をしたり顔で空気を読まず話す。

 その度にテンポが崩れ、敏腕お笑い司会者のたんこぶになっているのはテレビ越しにもなんとなーく伝わってくる。

「UMAもUFOもESPも……詳しくはないが好きだ」

「変な奴だな。俺が見てたのはただ単に暇だったからだな。あんなの居るわけねえ」

「あのな、そっちのほうが面白いだろ?いるんじゃないかって考えたほうがさ」

 友人、山本が、俺の額に手を当てた。

「熱はないな」

「夏場に少しでもそうなら早退を?……おっ!」

 いつの間にか隣に涼宮ハルヒが立っていた。

 いつからいたのだろう、まさか話し始めというわけではあるまい。

「な、なんだ」

「……」

「ごちそうさん。ちょっと俺飯買ってくるわ」

 自主的教室移動の常套句だがこの時ばかりは矛盾を抱えたお粗末なものとなっていて指摘しようものなら反論なく説き伏せることが出来るのだけれど、山本はそそくさと、あっという間に、弁当を片づけることなく去っていったため無念に終わる。

「お、おい!」

 飯は今たべたばかりじゃないか……。

「……」

 隣を見る。変わらず巨塔のように轟然と涼宮が直立している。

「あんた名前は?」

 クラスメイトの名前を憶えていないらしい。

「同じクラスだろ、川端だ」

「普通ね。あんた宇宙人信じてるの?」

 普通?いや、それより宇宙人?

「まあ、宇宙は広いしな」

「未来人は?」

「未来人……いるかもしれない、いないかもしれない。個人的にはいてもいいとおもう」

「ふーん」

 もし。

 もしこれが部活の勧誘活動だとしたら俺は世で最も酷い勧誘を受けたことになる。

 涼宮は踵を返し窓際の、自分の席へと戻っていった。

 触らぬ神に祟りなし、しかし向こうからやってきた場合どうすればいい?

 答えは、どうしようもない、だ。

 

 テスト期間なので半ドン授業の本日は、昼休みの後HRを迎え終了となった。部活動もほとんどが休部となっている。活動しているのは頭の固い顧問がいる運動部で、主張が「普段から勉強していれば休む必要はない」といった正論なので誰も逆らえない。昔、ある保護者がこれに意見して返り討ちにあったらしい。

 俺は思うのだけれど、そうまでして部活動の成績がいまひとつなのことに関してまずなにか言及を行うべきだ。顧問も部活動生がお前の教え方に問題があると思いながら毎日身の入らない運動をこなしていると想像できないのだろうか。

 ちなみにその顧問とはうちの担任である岡部だったりする。

「明日もテストとなるとぶっちゃけ微妙だよなあ」

「お前は勉強をしないじゃないか」

「寝るちょっと前ぐらいにはするさ」

 山本は典型的な駄目人間らしい。どうせ参考書を買うだけ買って何もしない口だろう。

 俺もだけどな。

「川端、お前は歩いて帰るんだろ?」

「俺はバイク通学の条件を満たしていないからな、ていうかそれはお前もだろ」

「いやいや、俺はちょっと用事があるから先に帰らせてもらうってことだ」

「なんかあったっけ?」

「今日は週刊少年『跳躍』の発売日だろうが」

 ああ、そういえばそうだったな。

「読み終わったら俺にも貸してくれ」

 先週号で味方の裏切りが発生して終わった漫画の続きが気になるからな。

「おうよ、じゃあな」

 山本は本当に振り返ることなく去っていった。

 それはそれでちょっぴり悲しい。

「俺もさっさと帰ろう」

 なんだかんだ最後の悪あがきはしておきたいしな。

 生徒がまばらになってきた放課後の教室でそんな事を呟いた俺に、声をかけたのが、涼宮ハルヒだった。

「ねえ」

 後ろからの声だったので必然的に振り向く。

「……なに?」

「あんた、これから暇?」

「あんたって……名前は教えたはずだろ」

「うるさいわね、みみっちいことを気にしてんじゃないわよ」

 見上げる涼宮は確かに煩わしさを感じているようで、口やら眉をそれぞれ歪めてみせた。

「で、暇?」

「明日もテストがあるから暇じゃない」

「なに嘘ついてんのよ、どうせあんたは帰っても勉強しない口でしょ、せいぜい寝る直前。買った参考書を山積みに終わらせるタイプね」

 分かっているのなら予定を訊ねないでほしいね。

「というわけで」

 なにが、というわけ、なんだろう。

「これから私についてきなさい」

「これからってどこに?」

「どこって……鈍いわね。放課後の学校で行くところなんて部活動以外あるわけないでしょ?想像力を鍛えなさい。じゃないとこうなるわよ」

 と、涼宮が指さしたのは彼女の斜め後ろに嫌々たっている様子のキョンだった。

 想像力欠如の人間として指名されたことで彼の不満は一層強まったらしく、キッと涼宮の後頭部を睨みつけている。

 それを知らない涼宮は快活に話しを進めた。

「それじゃ、レッツゴー!」

 右拳を宙にかざし、もう片手で俺の腕をとる涼宮。

「え、いやちょっと」

 この乱暴な引率にこれから降りかかる何かしらの危険を感じ取った俺はキョンに救助の眼差しを送るも、首を振られるだけに終わった。

 文化部部室棟、二階から三階への踊り場を拉致気味に通ったところで、気が付いた。

 俺はあの涼宮ハルヒと会話を成功させてたいたのではないか?と。

 いや待て。先ほどのあれは果たして会話と言えるのだろうか。まるで人工知能なんて厳しい(いかめ)オプションを備えているくせに限られた会話にしか反応できないショボイロボットみたいではなかったか。一方的である。こちらが送ったボールを捕球せず、懐から出した真新しい野球ボールを延々と投げ続けられていただけだ。

 あれは会話ではない、そう結論づけたと同時に文芸部前に着いた。

 

 ……エスオーエス団の部室がまさかここだとか言い出さないだろうな。

「ここよ、入りなさい」

 入りなさい、なんて言っておきながら第一に入室したのが涼宮だった。

「おっまたー!」

 後ろからで分からないが、正面から見ればさぞ眩しい笑顔が拝めただろう。

「聞いて驚きなさい!今日は新メンバーを紹介するわ」

「は?」

「そうね、まずは自分たちから名乗らないとね」

 違うぞ涼宮。

 俺は別に名乗り上げの作法について疑問符を浮かべたのではなく……。

 って聞いてないね。

「あっちのかわいこちゃんが朝比奈みくるちゃんで、こっちの本読んでる子が長門有希、座ってるのが古泉君で後ろにいるのがキョンよ」

 間違いなくもっとも狼狽していたのは俺だけれど、部室に既にいたその四人も及ばずながら俺同様呆気にとられたようで何とも言えない視線を生んでいた。

 うーん。動物園のパンダの気持ちがわかるぜ。

「川端……下のなまえなんだっけ?まあいいや、川端よ。文豪みたいな名前だけど馬鹿のようだから呼び方に遠慮はいらないわ。なんとでもいいなさい」

「おい、いつだれが入部するなんていった」

「みくるちゃんお茶淹れて」

 タッタッタ、と快調に弾みをつけて涼宮は部室の奥にある団長と書かれた三角錐のある机に向かっていく。

 返答はないようだ。

 ふざけた態度だ。ならば俺も無視をしてUターンを決め込もうか。そう考えたが、背後にいたキョンに

「同情もするし、気持ちも分かる。が、ここはとりあえず、な?」

「なにしてるの、さっさと入りなさい。扉しめないと我が活動が心ない連中に知れちゃうじゃない」

 心ない連中にしれたところで、相手にはされないだろうがね。

 放課後に部室に集まって騒いでいる暇な学生としか思わんだろ。そもそもこいつはそういった組織がいたとして敵対するつもりなのか?意外なことに倒せるかもな、学生数人を脅威と感じる間抜け組織だ。恐らくお前たち同様、学生で徒党を組んだ連中だろう。

「ここは何をする部活なんだ」

「はあぁー?」

 本日一番の驚愕は、至極真っ当な質問に対して発生し、その源は団長の涼宮だった。

「嘆かわしいわ。我がSOS団の活動内容を知らない人間がいたなんて」

 素性不明っていうのがこの部に対する一般的な認識だと、俺は思う。

 キョンが後ろで扉を閉め、俺より先に、長机を囲っているパイプ椅子に着席をした。

「言っておくが、ここの部が何をするかだれも知らないと思うぞ」

「誰も知らない?あれだけチラシも配ったのに」

 チラシというのはあのバニーガール事件のことか

「あと部じゃなくて団、SOS団よ!間違えないで」

「涼宮さん、一つ質問よろしいですか?」

 笑みを交えてそう割って入ったのは美少年といった感じの古泉。

「許可します」

 一々言動が大仰な奴だな。

「なぜ彼を?」

 誰もが抱く疑問である。

 涼宮はずずぅーと行儀の悪い音を立て、朝比奈さんが淹れたお茶を一気に飲み干し、その姿は一仕事をやる前のサラリーマンのようで、見る見る気合じみたものが彼女の中で充填されていくのが分かった。

「いい質問ね!古泉君」

 いい質問だったらしい。俺がしとくべきだったかな。

 涼宮は勢いよく、目の前にあるデスクに足を乗せる。

 登壇のつもりなのだろう。

「いい?我が団の」

――先ほどから思っていたが彼女は「我が」という言葉をよく使う。独占欲の高い女に違いない――

「我が団の活動内容は宇宙人、未来人、超能力者、異世界人を見つけて一緒に遊ぶことです。が、嘆かわしいことに『ちょっとまて』」

「なによ」

「聞き間違いか?異世界人たちと遊ぶって言わなかったか?」

「あんたの耳は正常よ」

 当たり前だ、耳鼻科の医者に褒められる自信だってあるね。そしてお前の頭は正常か?

「ん?ということは、もしかして、俺が選ばれたって理由は宇宙人やらを信じているからってことなのか?」

「なによ、分かってるじゃない」

 なんてこった。まさかあの草臥れた面接官でもやらない質疑応答が決め手だったなんて。

「SOS団は活動を始め、いまだ目ぼしい戦果をあげるに至っておりません。そこで必要と思われていたのがやる気のある新人材!」

 それが俺らしい。

 びしっと指を突き付けられているので間違いはあるまい。

 あるとするなら、やる気のある人材として俺を抜擢したことだ。

「俺の、どこに、やる気があるって思ったんだ」

「ああもうっ、うるさいわね。あんた宇宙人とか未来人を信じてるんじゃなかったの?」

「それは……まあ、信じてるけどさ」

「どうして?」

「どうして?どうしてってそりゃ、そっちのほうが面白いからだろ」

 山本にも返した答え。

 それを一様が驚き、中でもキョンが色濃く、またハルヒだけが満足気だった。

 草臥れた面接官が脳内から通達する。

 

 

“採用 ”

      と。

 




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