涼宮ハルヒの憂鬱は俺の憂鬱でもあるのだから、如何にして歓喜に変えるのかというのは正に他人事ではなく、つまるところ幸福へと至るために俺がするべきことは彼女のご機嫌取りなのだろう。   作:おっぴろげ

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特にない

ここの話は今のところあっても無くてもいい話。ただ後半響いてくると思う。

追記・最後のほうを無くしました。
追記・ラスト、訊ねたを訪ねたへ変更

追記・「右から左」はもう使った表現なので端から端へ変更
※せめてもの情けとして端から端と指を滑らせ、捲り、役目を果たさせた。
※のほほんに点を打ちました


第三話・家族

 

【挿絵表示】

 

「ただいま」

「おかえりなさい」

 帰宅すると妹が麻婆豆腐を作っていた。餃子もあり、今晩は中華のようだ。ピリッとした辛さを感じさせる匂いが充満している。

「二人帰ってないのか」

「しばらく帰ってこれないんだって」

 両親は研究者で家にあまり帰ってこない。一体何の研究かはしらない。なんだか聞き辛くて俺も、妹も、教わっていない。また両親も特別教える気にはならないらしい。

「それにしても遅かったですね。今日は早いって聞いてたのに」

「ああ。部活に入ったんだ」

「えっ」

「その顔は止めろ」

 馬鹿にされてるようだ

「いやだって兄さんの性格からだと想像できなくって」

 温めてあったマーボーを妹が置き、俺が餃子と白飯を並べた。そして向かい合わせで着席。

「いただきます」

俺たち兄弟は出来る限りこうして二人そろって食事をするようにしている。

「それにしても部活ですか」

 部活ではなくて団よ!団!と涼宮の怒鳴り声が幻聴になって現れる。

「なんて部活なんです?」

「SOS団」

「え、えす?……それは一体何をする?」

 何をするか。

 それは俺が一番知りたいね。

 涼宮はああ言っていたが、まさか本当に異人種たちと交友を繰り広げるのが目的ではあるまい。

 きっとそうだ。そのはずだ。そう信じたい。

 だけどどこかで期待してしまっている自分がいるのは何故だろう。

「わからん。まだ入部して初日だからな」

「わからんって分からないのに入ったんですか。阿呆ですね」

 可哀相な動物を見る目。

 少しだけムッときた。

「分かった。正直に話すからよく聞け。そして先に言っておくが作り話じゃないからな」

「はあ」

 俺は、ことの顛末をわざわざ涼宮の自己紹介から始め、それからのSOS団による様々な珍事、噂を含め懇切丁寧に説明した。

 特に如何に異質で、異常であるかを地動説を説くガリレオのように入念に伝えた。

 甲斐あって妹からは

「そんなところに入ったんですか。阿呆ですね」

 と、同じ評価を下された。

 

 教師が予告したページをざっと眺めるだけに終わらせ、スマートフォンのメールチェックをし、ベットで仰向けになる。

 人の顔に見える染みなんてない涼宮とは無縁で健全な天井。味気がないので高校生らしく興味もないアイドルのポスターでも貼ってみようか。

「妹に破り捨てられるのがオチだな」

 先ほどのSOS団の話。妹は信じてくれたがその代償として俺は阿呆のレッテルを張られた。怠惰で阿呆、救いようがないですね、とまで言われた。

 トータル的に見なくともマイナスだ。

「明日も来いと言っていたな。まさか毎日あるんじゃないだろうな」

 仮にそうだとして一体何をやるんだ?今日なんてずっと古泉と延々ボードゲームをやっていただけだったぞ。あれが日常なら奴らは公民館に集う老人たち以下の活発さで時間を消費しているということになる。

 かといって、バニー再びとなってもなんとも言えないが……。

「なにがSOS団だ。全然世界を盛り上げてないじゃないか。馬鹿馬鹿しい」

 そうして電気を消し、寝た。

 翌日。

 この世全ての物理法則を呪いながらテストを終え、帰巣本能ばりの速さと自然さで文芸部室を訪ねた。

 なぜまた来ているのだろう。わからない。

 

 期末テストが終わりいよいよ終業式を間近に控えた多くの学生は早くも連休モードに入り、いまだ休み時間を削ってまで勉学に勤しんでいる連中は有名大学志望のガリ勉君だけとなった。

 そのガリ勉君も七月の暑さには苦しんでいるようで、額から滴る汗を何度も拭っている。

 そして俺も消化的授業を受けながら汗を流している。

「夏休みの過ごしかたね……こんなの高校になってまで必要あるのかね」

 小学生辺りには受けそうなのほほん(・・・・)とした絵が表紙の冊子は家に持ち帰ったが最後、一切の目を通すことなくゴミ箱行きになることは請け合いなので、せめてもの情けとして端から端と指を滑らせ、捲り、役目を果たさせた。

「それにしても暑いな」

 公立校だからか、クーラーといった便利な物は存在しない。ただし職員室にはある。これを小学生ぐらいまでは贅沢だとか横暴だとかなんだと思っていたが、中学に上がる頃には違和感なく受容できた。人間、訴えても無視され続ければ現実をただ受け入れるしかないといった社会勉強なのだろう。従順な下僕というのを小学生のころから作り上げる我が国の教育制度とはなんと偉大たるか……

と、そんな訳の分からない血迷った事を考えているのには理由があって、その出所は誰でもない我が団の団長である涼宮ハルヒその人だった。

 彼女が言い出したのである。

「夏休みは空けておきなさい。活動の妨げになるから」

 示唆するところは団員の夏休みをSOS団がジャックするといった感じで、これについてはキョンがより明確な情報提示を要求していたけれど、つまんなくなるからと一蹴された。

 入団二日目で気づいたのは、涼宮に対して基本的に古泉、朝比奈さん、長門の三人はノーアクションってことだ。あの三人は最後の最後までずっと、涼宮の話を傾聴していた。

 ちなみに俺もいくつか質問をしたが、全て不明確に終り、無視に等しい扱いを受けた。

 国が五六年かける下僕作りを僅か二日で完了させる涼宮閣下、流石である。

「活動ね。昨日はダイヤモンドゲームだったが」

 もしかしたら夏休みの間に開催されるボードゲーム大会にでも出場するのかもしれない。俺は古泉に一度も勝利したことすらないので、白星は免れないだろう。朝比奈さん辺りは時間切れで負けそうだ。

「俺も何か持ってこようかな」

 頭を使わないシンプルかつ一人で没頭できる携帯ゲーム機にしよう、そう思う。

 それならいざあいつらがどこかへ旅行に行こうなんて言い出した際には快適楽ちんの時間つぶしが出来るからな。ま、旅行なんてものありはしないだろうが。

 

 

 

 あってしまった。

 それもどうやら涼宮案でなく古泉案だ。

 SOS団はなんと新入団員を加えわずか数日で合宿を決定してしまった。昨日、実質涼宮ハルヒ一人の発表会だった団内会議で知った。

 泣けるね。

 そして相乗的にもう一つ

 数学・六十七点。

「なけるぜ」

 期末テストの成績が悪かったのは、現在文芸部室にいる俺だけではなく目の前にいるキョンも同じで、二人そろって項垂れている。

「なあ、キョン。あいつ、涼宮は本気なのか?合宿をするために合宿をするっての」

「言わんでもわかるだろう」

 団長様はいつでも大マジ。そしてその真剣さはトルネードのように当たりを巻き込んでいく。問題は誰がその被害を修繕するのか。俺に回ってくることがあればこのキョンに受け渡そう。適任のはずだ。

「俺も一つ聞いていいか?」

 と言ったのはキョン。

「唐突だなあ」

 いいけどさ。

 キョンはいつものマヌケ面とは反した真剣さで、話とは雑談ではなく相談ごとなのかなと予期させるには十分。

 こいつも一応そういった顔を持っているのね。

「お前は一体何者なんだ」

 ……

 …………

 …………………。

「は?」

「とぼけるな」

「とぼけるも何も」

「宇宙人や未来人は既にいるから、異世界人辺りか?」

 蓋を開けてみれば、どうやらそこにあったのは相談事ではなくとんちきな質問だった。

「キョン。俺もいつかはお前みたいになるのかね。他の三人もすでにそうなのか?念のために言っておくが、我思う故に我、川端流だよ。宇宙人でもない一般高校生だ」

 普通のな。

「……本当か?」

「冷めたコーヒーの温度でも元に戻せば信じるのか?言っておくが無理だぜ」

「……」

「……なんだよ」

「いや、もういい。忘れてくれ」

 なんだったんだ。

 キョンはそれから頬杖を立てて窓から外を眺め始めた。その横顔は嫌に険しく冗談ではないことが知れる。つまり忘却願いはとってつけたような逃げ口上だったのだろうと思う。

 とても話しかけるにはつらい雰囲気を纏わせているキョンとこれ以上の相席は胃のあたりに穴が開きそうなので誰か早く扉をノックして入ってきてくれ。何で今日に限って誰もやってこないんだ。貴重な学生の放課後を犠牲にしてまで訪れる団体ではないと悟ったのか?古泉や長門、朝比奈さんならそれでもいいが、全責任を負うべきリーダーが出席しないとはどういうことだ。

 淀んだ空気を変えようと今年の甲子園の話題を振ろうとしたところでやっと念願のノック音が鳴った。

 扉が開く。

「……」

 長門だった。

 せめて会話が成立する奴にしてくれ。

 

 




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