涼宮ハルヒの憂鬱は俺の憂鬱でもあるのだから、如何にして歓喜に変えるのかというのは正に他人事ではなく、つまるところ幸福へと至るために俺がするべきことは彼女のご機嫌取りなのだろう。   作:おっぴろげ

4 / 7
特にはないです。

空行をいれたりしたほうがいいとは小説家になろうのほうでも言われるのですが
今のところする気はありません
せっかくの縦書きが勿体ないです

アニメ版のほうが好き。
また古泉君がメンバーの紹介をするシーンは確か原作のみだったと思います。
気になる人は原作に目を通してください


但し書き

「やあ、新川さん。お久しぶりです」
「わっ見えてきた!あれが館?」
「別荘でございます」
↑原作から引用。






第四話・孤島症候群 前篇

 驚くことに終業式の次の日、つまり夏休み初日に、俺はSOS団の面々とフェリーに相乗りしていた。初日から行動とは涼宮のやる気の良さが窺える。その突拍子もなさが波及して、妹からはいくらかの非難を受けてしまった。

 行先は海の上の孤島で、涼宮はそこにクローズドサークルな展開を求めているぽい。このクローズドサークルてのは俺もその時知ったのだけど、ミステリ用語の一つで舞台装置の呼称だとか。分かり易く言うと、外部との直接的な接触が途絶えた状況、そう説明するのが早い。

 潮風が心地いい。しかしこれもフェリーが止まった後はただのベタつきに変わってしまう。なので今のうちに楽しんどこう。現状を愉快に気楽に過ごすのが俺の特技なのだ。

 そう言った理由から、フェリーの安全柵に肘を乗せ、カモメの鳴き声をBGMに、変化のない景色を楽しんでいると、古泉から声をかけられた。

 団員でババ抜きをするらしい。

 金持ちの知り合いがいる癖にこいつが寄越すのはどれも地味なゲームばかりだが、果たして行き先である館では豪奢なものはあるんだろうな。心配になってくる。そしてよりにもよってババ抜きか。俺の苦手なゲームだ。団長様も参加することから罰ゲームの一つがあるだろう。

 受けたくないなあ。

 結果としては発案者である古泉が最多敗北を決し、全員に缶ジュース一本を奢った。

 ざまあみろ、と嘲笑したいところだけど俺もあと一敗していれば危なかったので素直に同情しておこう。

 タダでもらったジュースを二口で飲み干したのは俺と涼宮で、その涼宮は体調を悪くした朝比奈さんを連れて甲板へと船底から出て行った。

 残されたのは、古泉と長門とキョン、そして俺。しかしキョンはすぐに横になって寝てしまった。確かにここは貸し切りの大部屋だけどせっかくの船旅なんだから涼宮たちと一緒に外にでも出て楽しめばいいのに。

「お疲れなのでしょう」

「あんな団長に付き合わされてたら疲れもするだろうな」

「抜けたくなりましたか?」

「なんだ、抜けてほしそうな言い草だな」

 まさか、と古泉は微笑し

「そんなつもりはありません。それは涼宮さんのスカウト能力に泥を塗ることになりますからね。我々が避けたいことの一つでもあります」

「思うんだけど、お前、説明がくどい」

 こんなこと、そんなつもりはありません、一文でいいんだ。

「すみません」

 苦笑する古泉。何をするにも様になる奴だな。

 部屋の隅では、部室のときと同じく長門が分厚い本を読みふけっていた。ミステリーものかもしれない。これから起こる可能性のある事件の予習とかな。

「長門、船の上で本読んでると酔っちまうぜ」

「……」

 ああ、うん。無視されるのはなんとなく察していたよ。

「彼女は少しばかり口下手なのですよ」

「俺にだけな」

「名案をお教えしましょうか?」

「ぜひ」

 金は結構持ってるからな。いくらか対価として払ってもいい。自慢だが親が毎月金を沢山もらってるのさ。

 古泉は、自分で買った罰ゲームの証を口にしてから言った。それがまたアドバイスとは程遠い訳の分からないものだった。

「素直になることです」

 何を言ってるんだこいつは。

「長門さんは純粋な人で、心を開くには貴方が誠実である必要があります。犬や猫がなつく人間は心豊かな人なんてよく言うでしょう」

 長門、お前犬猫と同じ扱いされてるぞ。

「もしそれが本当なら朝比奈さんはどうなる。一応あの人とは何度か話してるぞ」

 あの人は未だにサンタクロースの存在を信じてそうなくらいに純粋だ。

「我慢しているのかもしれません」

 恐ろしいことを言う。明日から恐怖のあまり彼女と会話できなくなったら間違いなくお前のせいだ。

「冗談ですよ」

「それはどっちだ。長門の下りか、朝比奈さんか?」

「どちらも。そして安心してください。僕も最初は長門さんにはなかなか相手をしてもらえませんでしたからね、今こうして彼女と円滑とは言えないまでもコミュニケーションをとれるのは日々の努力のたまものです」

「ただの根性論じゃないか」

「ですが実際、堅実だと思いますよ」

 と、ここでデリカシーのない会話だと気付く。こういったのは本人の居ない陰で行うべきだ。あとで謝っておこう。

「ついでに聞いておきたいのですが」

「答えれる範囲なら」

「我々に隠していることはありませんか?」

「素直さについての話は終わってなかったのかよ」

「いえ、これこそ本当に純粋な問いですよ」

 僅かだが息苦しさが積もった。閉鎖的なところにいるのが原因かもしれない。

「そりゃ人間なんだから一つぐらい隠し事はあるさ」

「僕が知りたいのは通常の人間では抱えていないだろう特殊な秘密、ですよ」

 そんな芝居がかった口調で言われてもな、俺の身体を逆さまにしたってなにも出てこないぞ。出てくるとしたらハンカチみたいな普通さを兼ね備えた日用品ぐらいだ。

「明かすと異世界人で色々な世界を転々としている、なんていえば満足するのか?」

 キョンの質問を思い出し、そんなことを口走る、と

「異世界人なのですか?」

 古泉が即座の確認をしてくる。

「マジにとるなよ」

「マジな質問をしているのだから当然ですよ」

 いよいよメンバー全員が涼宮に毒されている説が如実になってきたな。一介の高校生一人を捕まえて人間か非人間かを確かめるとは……活動の一環としても目の付け所が悪すぎる。それこそまだそこに居る長門にでも貴方はひょっとして宇宙人ではありませんか?と訊ねたほうがいい。

 ちがうって答えが返ってくるだろうけどね。

「そうですか。違いますか」

「俺は健全な男子高校生だ」

「どうやらそのようですね。すみません。僕も疲れていたようです、忘れてください」

「だいたい知り合って間もない人間にそんなプライベートなことを教えると思うか?」

「ぐうの音も出ません」

 古泉は向かいの壁に背を預けて座ったまま、首を傾げ笑い、両手をあげてみせた。

 それから話は別の話題へと移り、数時間後、俺たち一行を執事とメイドが出迎えた。

 

 

 執事姿が新川さんでメイド姿の女性が森さん。そう紹介を受けた。新川さんは白髪の似合うダンディで、森さんはメイドの名に恥じぬ人当たりの良さそうな微笑を備えている。

 どちらも利発そうだ。

 そしてどうやら両者共に古泉の知り合いらしく

「やあ、新川さん。お久しぶりです」

 と、フェリーから降りるなり持ち前の営業スマイルともつかない顔で我が副団長古泉一樹が言っていた。

 お久しぶり、ね。

 つまり以前どこかで二人に会っているってことだろう。ここに訪れるのは初めてのはずだからな。まあ、メイドと執事だ。過去の会話からこいつが金持ちの知り合いと交友を多く持っているのは明白だし、下手をしたらこいつ自身が富豪の子の可能性だってあるのだから、その縁で面識を済ませているのかもしれない。

 後者の可能性は低そうだがな。

「申し訳ありませんが皆さま」

 死んでください、と新川さんが――言うはずはなく

呆れることに、更にここから半時ほどの移動をクルーザーに乗って行うとのこと。館の主は過去に何かあって俗世に愛想でもつかしたのかな。

 このわずか三十分程度の追加移動に涼宮は一層喜びを露わにした。恐らく文章に起こせば三行ぐらいになるだろうものだったが、集約すれば「謎ぽさが増した」の一言である。

 そんなに謎が好きならミステリィ研究会って絶滅危惧種的部が、我が校にはあるんだから、入ってやればいいのに。ああ云った部はなぜか風貌にまで現れるほどの根暗君たちが集まるから、お前みたいなグラマスで顔立ちのイイ女はすぐに女神様扱いを受け、今以上の下僕たちを多く従えられるだろうよ。

 ミステリ研の連中が聞けば怒り狂いそうな偏見を心の内にて述べたのちにハルヒ伝説その一を思い出す。

 涼宮ハルヒは校内にある全ての部に仮入部をした、というその伝説を。

 つまりミス研は満足いく場ではなかったってことなんだろう。

 それはミス研ひとつに収まらず野球部も含まれるんだろうな。野球部に涼宮が一体何を望んだのかは知れないがお門違いも甚だしく、本人達も迷惑だろう。どうせこいつのことだからマネジじゃなくプレーヤーのほうに出しゃばってきたんだろうからな。 

 これは確信と言っていい仮説だが、SOS団を発足させた理由は理想となる部活動がなかったからってところだろう、涼宮が涼宮自身で考えた結果ならば、まあいいけど、もし、誰か第三者の入れ知恵による団体設立だったのなら俺はそいつになんてことをしてくれたんだって詰問するね。

 確かに面白い部もとい団ではあるけど、もうちょっとこう……。

 波は穏やかで快晴。台風の気配は微塵もなく、意中の女性と一緒ならばそれはそれはとても良い雰囲気を得られそうな海を移動中にも涼宮は、謎に謎な好奇心を募らせクルーザーを運転している新川さんへ矢継ぎ早に質問を投げかけていた。しかしどれも否定の言葉で終り、一瞬嫌な沈黙が生まれたけど彼女、涼宮は気にすることなく謎談義を再開。

 豪華クルーザーでそれよりも印象的だったのが朝比奈さんだ。彼女は森さんにメイドの何たるかを教わろうとしているらしく、まさに実地検分といった感じでじっと見つめていた。観察対象者の森さんは、表情をついに崩すことはなかったけど、そこら辺は見習ってほしくないね。たった数日とはいえ、朝比奈さんのせわしない動作や表情といったものがチャームポイント的位置づけにあることは俺にだってわかる。

 それにしても強制だったものが自主性に変貌する様ってのは実際恐ろしいことなんだけどな。

 何はともあれ到着。

「わっ見えてきた!あれが館?」

「別荘でございます」

 我が団にも馬鹿に対して新川さんのようにきっぱりと否定できる人材が欲しいね。

 そして館だろうが別荘だろうがどちらでもいいよ。

 新川さん。

 

「なんか普通ね。勿体ないわ」

 涼宮の遠望からみた別荘への感想がこれだった。

 せっかくの孤島が台無しだと言っている。キョンもコンビニもないところに建てなくてもいいだろうにと捻くれたことを言い、異常を望む涼宮に否定された。

 曰く雰囲気の話であり、おどろおどろしたモノを望んでいるとか。

「あえて共生させることで自然性の均衡を保ち何か見えづらくしてるのかもな」

 適当なことを共生だとか均衡だとかを使って、それぽくを出鱈目に言ってみたらこれが案外ウケて、団長様から賛辞を頂いた。

「それもそうね。川端、良いこと言うじゃない!褒めて遣わす」

 そんな時代錯誤に褒められてもな。

「そういえば合宿に来たんだよな」とキョン。

 合宿のために合宿する合宿を果たして合宿と呼んでいいかは置いといて、確かにその通り。これは、一応は、その体なのだ。

 何をするのかというのは引き続きキョンが訊ねた。

 探検でもするのか?とかね。

 考えていなかったらしい。新案として涼宮に採用された。面白いのはキョンがそれでなぜか嘆いていたってことだ。活動に精力的なのかないのかよく分からない奴。

「誰かいる」

 涼宮がそんなことを言い出した。俺たち以外にも招待客がいたらしい。波止場、分かり易く言えば船着き場の先端のほうにその人あり。手を振っている。

 反射的に手を振っている涼宮にした古泉の説明では、どうやら館の主である多丸圭一の弟にあたる人物らしい。

 館主と同じく人格者と言っているがどうだかね。そもそもこんなところに建造する人間が真人間だとは思えない。古泉の親戚筋、バイオ関係で一山当てたというのも胡散臭いぞ。

「降りた瞬間、懐から銃を取り出して俺達からクルーザーを奪い、館から盗み出した隠し財宝を持ち逃げしようとしているかもな」

「なるほど。ありえなくはないわね」

「いやありえないだろ。建って日も浅いもんにどうして隠し財宝があるんだ」

「あのねキョン。もしかしたら財宝の上に館を建てたのかもしれないじゃない」

「財宝があるんならわざわざそんなことしなくても発見次第持ち帰るなりなんでもすればいいじゃないか。非効率的だ」

「そんなの面白くないわ。きっと何か訳ありなのよ」

 押し問答に負けたキョンが話の種をまいた俺を睨む。口から出まかせを言うなってことなんだろうな。

「そんな目されてもな。可能性はゼロじゃないんだぜ」

「なら一生壁を通り抜ける練習でもしてろ」

「通り抜けるなんて非効率だと思う」

「殴るぞ、おい」

「はっは」

 結局弟さんは、当たり前だが常人で、いい人だった。

 どうやら涼宮は冗談は通じるタイプだが面白い志向を持てたのなら一考するぐらいの人間なようだ。小学生をそのまま高校生にした感じ、とは道理のない例えだが的確だ、と

そう思う。

 

 この後。

 古泉が俺達メンバーを多丸 圭一の弟、多丸 裕に紹介したのが、それがよくもまあ次から次へと美辞麗句を並べ立てられるもんだねとほとほと感心するものであり、必然、俺の紹介を期待してしまった。

「彼は新団員で川端さんです」

 ―――。

「………それだけか」

「十分だと思います」

「他の奴らと明らかに違うだろ」

「長所も短所も知らない関係で上辺を並べてもボロが出て醜いだけかと思われますよ?」

「あーもういい」

 悔しけど古泉の言う通りだ。

 俺はこいつらのことをよく知らない。

 好きな音楽だとかそんなこともだ。

 ………………。

 なにも目的なく言われるまま船に乗り込んだつもりだったが、一つ掲げよう。

 涼宮たちと交流を深める。

 長門が最大障壁になりそうだけどさ、まあなんとかなるだろう。

 たぶん、きっと、絶対に。

 

 

 




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