涼宮ハルヒの憂鬱は俺の憂鬱でもあるのだから、如何にして歓喜に変えるのかというのは正に他人事ではなく、つまるところ幸福へと至るために俺がするべきことは彼女のご機嫌取りなのだろう。 作:おっぴろげ
原作の話に触れているので描写をいくつか簡略させるつもりです
オチは一緒でしょうけどね
色々な表現を行っていきたいです
最後のほうを変えるかも
※追記・圭一さんは普通の人だった→館の主、圭一さんは~へと修正。
場面転換後であり、誰なのかが判り辛いだろうと思えたため。
ここの話は書きなおす可能性が大
古泉当たりの描写をいれときたい
孤島症候群ももうそろそろ終わりです
※明かすと、十話でお気に入りが30もいかなければやめちまおうと思っていたのです。まあ、評価ポイントもUA比も悪いしね
「言」の幾つかを直す予定です。
次でラスト
「惨劇館とか恐怖館ってのはどうかしら?それでもって部屋の一つ一つにコジャレタ名前を付けるのがいいわ。血吸いの間とか、呪縛の間とか」
「わかったわ」
「なにが」
「犯人よ」
↑原作から引用
※追記 利き手→聞き手。高騰していった→高揚していた
また時間がないのでそれ以降に間違いや不適切な表現があれば後々に訂正します。
涼宮は、裕さんとの対面からずっと猫を被った少女でいて、それは多丸圭一さんの時も同じだったけれど、耳にしていた性格とはやけに違うことから戸惑われたため、すぐに居直り奇矯な趣味を最後には暴露していた。
個人的にはそちらのほうがありがたい。見聞していて涼宮のあれは非常に気色の悪いものだったしな。古泉は圭一さんにフランクな人間だと教えていたらしいが、なんか妙だった。恐らく頭の螺子が数本とんだイカレ女と本当は教えていたんだろう。
何をオブラートに包む必要がある古泉。
その通りじゃないか。
あと館の主である圭一さんも普通人であった。終末ゴルフでもしていそうなデブオヤジ、そんな感じ。
島についての来歴も特にはないらしい。館も先日完成したばかりだから同じく。この調子だと涼宮が期待する出来事は起きなさそうだ。
「さあどうぞ。中へ」
圭一さんが懐の深さを見せつけるように腕を広げ、高校生一行を迎え入れる。靴は脱ぐ必要はなく、洋風だからだそうだ。
俺達の部屋は二階、主人であるところの圭一さん裕さんは三階、執事とメイドの新川さん、森さんは一階にある。
二階へ案内される道中、またしても団長が好奇心を抑えられなかったようで、
「この館の名前はあるの?」と質問している。
返答は無名とのこと。考案中でもあり名を募集しているとのこと。
涼宮が提案した。
「惨劇館とか恐怖館ってのはどうかしら?それでもって部屋の一つ一つにコジャレタ名前を付けるのがいいわ。血吸いの間とか、呪縛の間とか」
「あーそれと一斗館とかもいいよな」
「「「…………」」」
古泉が首を振ってキョンは貶めの視線を送り、涼宮は眉をヒクつかせ、朝比奈さんは把握できずにいるのに対し、長門は理解したのかしていないのか定かではないが、冷たい瞳で俺を見つめていた。
そしてただ一人、圭一さんのみが笑っている。
「はっはっ、まあいいじゃないか。わたしは好きだよ」
中年オヤジに好きだと言われてもオヤジ度が増すだけで嬉しくないね。にしても、涼宮の名前も散々なモノじゃないか。誰も訪れないぞ、そんなところ。
「さあここだ」
ロビーを抜けた後、二階に到達した俺達。長い廊下にはずらっと部屋が並んでいる。どこでも好きなところを使っていいらしい。それはつまり今日はこの部屋で明日はこの部屋、なんて具合に王子様気分を味わってもいいってことだろう。
迷惑そうなので遠慮しておくけどさ。
合宿のための合宿にも部屋割りは行われ、ツインまでしかない寝室に男三人女三人ではつり合いが取れないことから、一人一部屋となった。
例によって古泉案である。
「鍵はあるからね」
と圭一氏。
プライベートな時間を重視する俺にとってそれは朗報だった。別に一人でやましいことをするつもりはない。ただ先日購入したばかりのゲームソフトを消化したいのさ。それと少し絵を描いてみたい。幸い風景だけは間違いなく恵まれているところだからな。
最後に自由散策を許可して圭一さんは新川さんたちのところへと向かった。
その新川さんたちはクルーザーから降りた後、裕さんと共に食糧運びを館まで行っている。もう終わっているかもしれないが、今からでも手伝ったほうがいいんじゃないのかな、なんてことは流石に思わないけどね。
圭一さんの印象を涼宮は怪しくないところが怪しいと言う。すぐにキョンが見るからに怪しければどうなるんだと問えば、見たまんまと返した。つまり涼宮の主観ではこの世には怪しくないものは無いということになる。
なんだろうね。こいつの死生観みたいなのを本にして売っちまえばホームセンターのお縄が売れることはなくなるんじゃないかな。電車も止まることはなくなりそうだ。
俺達は各自の荷物をそれぞれの部屋に置き、ツインルームである涼宮の部屋に集合していた。確かに一人部屋とも出来るが、それならシングルでいいだろうに。問いただしたいが、その相手である彼女はベッドの上でバウンド中だ。
答えてくれそうにはない。
それからもう一つのベッドには朝比奈さんと長門が横並びに座っている。珍しい光景。朝比奈さんは何処か長門に恐怖を抱いている節があるからな。
中途半端に残った時間をどう過ごそうかと思案していると突然、
「わかったわ」
何が分かったんだろうね、この団長様は。
キョン聞いてくれよ。
「なにが」
「犯人よ」
一瞬にしてクエスチョンマークが一同の頭上に生まれ、三回旋回したのちそれらは全てそうなるのが決まりのようにキョンへと向かっていった。キョンは不幸な役目に従事し、皆の代弁者として涼宮の言動を明確にしようとすると、犯人は館の主人であることが判明。それから涼宮は犠牲者として朝比奈さんの名を挙げた。
「やめろ、朝比奈さんが怖がってるじゃないか」
長門のスカートをぎゅっと悲哀を醸し、握ってらっしゃる姿を見ろ。キョンじゃなくても守りたくなってくるだろうが。
あと長門、無感動ならその立ち位置を交代してくれよ。人類がいまだ成し得ない表情をしてやるからさ。
「みくるちゃんについては冗談よ。大体そんなこと、この私がさせるわけないもの」
自分で言い出しといてなに誇らしげなんだこいつは。というか、圭一さんが犯人であるってのは変更なしなのか。
「お前は名探偵をやりに来たんであって、予言者をやりに来たんじゃないだろ」
「まずは海ね」
都合が悪くなると話の矛先を変えるのは故意的なのかどうかをいずれ吐かせてやろうと涼宮に対し、たった今、心の奥底で決めた。
先述の発言通り、涼宮ハルヒの身体にはまだまだパワーが残存しているようでSOS団全員に水着をもって海辺に集合と指令が下った。キョンは疲れたと言うが絶対命令の前になす術はない。朝比奈さんもちょっとためらいがちではあった。長門はいつも通り。古泉は涼宮と同じく体力が残っているようで相も変わらずの微笑を浮かべていた。
俺?俺も問題はない。流石にまだ動ける。所詮船の上で数時間揺れていただけだしな。また交流を深めると掲げた以上は、積極的に動きたい。だからここは涼宮の道楽に付き合っておこう。なにより朝比奈さんの水着姿を目に出来るのに断るなど馬鹿がすることだ。俺は馬鹿ではないのでそんな馬鹿な真似はしない。
しないのだ。
揺れに揺れていた。
たわわに実った南国のフルーツが。
朝比奈さんと涼宮が動くたびに浜辺で俺たち三人は生の魅力を噛みしめていた。
「生きているって素晴らしいね、古泉君」
「正に眼福といった具合かと」
「川端、分かってると思うがその写真のデータは」
「分かってる分かってる。複製して二人にやるよ」
女性陣の水着は涼宮が選んだらしいが、これがまた実に似合っている。朝比奈さんのわがままボディを活かすべくあえてゆとりを持たせたトップスとお尻を魅力的に映す小さめのパンツは、家から持ってきた高性能カメラの恩恵を感じさせるには十分であった。また涼宮自身も良く似合っている。中身はまんま子供だか、体は随分と大人で、ウエストのくびれなんかがまたもうね……。
ああ、それと長門はパラソルの日陰で読書中だ。こいつは他にやることはないのかね。露出度も低い水着でちょっとがっかりです。
「なあキョン。あの二人って彼氏はいるのかな」
「いないとしてもお前は見向きもされないと思うぞ」
「誰も俺が付き合いたいとは言ってないだろ」
朝比奈さんは別だけど。
「ただ、あの二人見てくれに文句の付け所はないわけだし、朝比奈さんなんて内実共に素晴らしい女性だろ?何で彼氏の一人もいないんだろうな」
「そりゃ何か……作れない理由があるんだろ」
作らないではなく作れないという表現に引っ掛かりを覚えた俺の隣の隣、つまりはキョンの隣に居る古泉がくくっと笑い、
「彼女は周囲に持て囃される現状を失いたくないために特定の男性と付き合っていないのかも、しれませんね?」なんて朝比奈さんの心象を悪くする発言をした。
「朝比奈さんをそんな不埒な女性にするな。それにな古泉。俺からすればお前のほうが遊んでるように見えるぜ」
「心外ですよ。僕はどなたとも交際経験はありません」
「……本当か?」
「誓って本当です」
ふん、意外だな。こいつなら月曜日から金曜日にかけて日替わり女性を用意していても不思議ではないのに……いや流石にそれは言いすぎだな。せいぜい月から水までだろう。
「お前のほうはどうなんだ」
そうキョンが言う。
分かってるくせに。
「いねえよ。いたら新興宗教にも劣るこんな団に入団もしてないし、魅惑の夏にどことも知れない孤島で野郎二人と並んでない」
「こんな団で悪かったな」
「キョン、何でそこでお前がキレるのか知らないけどな、事実だ。受け止めとけ」
キョンはいつも自分でちんけな同好会だとか侮蔑しているくせに他人がそう口にしたら決まって怒りを見せる。自分はいいが部外者にこの団を馬鹿にされることを嫌っているようだ。勝手といえば勝手だが、まあわからんでもない。けどな、俺は部内者であるわけなんだから想像や偏見だけで言ってるわけじゃないんだぜ。
「好ましいと思える女性はいなかったのですか?」
「そんなことを考えさせないくらいに五月蠅い奴がいたからなあ」
「その話、興味深いです」
「別に色恋沙汰じゃないよ」
「フラれたのか?」
「だから違うって。ただいつも勝負事を持ちかける女の幼馴染がいたんだよ。騒がしさで言えば今、朝比奈さんの胸を鷲掴みにしている涼宮以上かもしれん」
「その女性はよもや我々と同じ高校、なんてことはないでしょう?」
「ないね。あるわけない。そんなことがあれば涼宮が引き入れてる。そしてこの団はもう宇宙人辺りは発見してるぜ。なにより死んじゃった奴に、進学なんて無理だろ?」
それにキョンだけが僅かにだけ驚いてみせた。お人好しのこいつのことだから演技ではないんだろう。間接的とはいえ、知らない奴にまで感傷的になっていたら生き辛いと思うが、これがこいつの良さなのかもな。
「いつごろ亡くなられたんですか?」
意外にしつこいな。この手の話になると人は忌避するもんだと思ってたが、古泉の奴コイバナの延長とでも思ってるのかもしれない。俺は別段気にする性質ではないから構わないのだけれど、俺以外には避けたほうがいいだろうよ。
海馬に伝令を送って記憶を掘り起こさせる。すると用意していましたと言わんばかりにすぐさま映像が流れ始めた。ただ、不思議なことに第三者の目線で、俺の姿が俯瞰的に映っている。
「去年さ。去年の七月七日、七夕だな。交通事故で死んじまった」
なにも俺の目の前で死ぬことはなかったろう。
本当に迷惑な女だ。
そう思う。
涼宮ハルヒとその愉快な仲間たちの合宿初日は遊泳の後、シャワー、花火、肝試し、セレブ風呂で活動を終え、新川さんの絶品フルコースが締めくくった。尚、肝試しなんかについては俺の目標の成果をお伝えするためにも委細に話しておきたいところだが朝比奈さんとムフフな展開をひけらかしてしまえば刑罰が与えられそうなのでやめておく。
涼宮?
あいつなら額に懐中電灯巻き付けて率先し前を歩いていたよ。お化けなんて怖くないさとずんずんと歩を進めるあの威勢は、強い生命力を恐れるらしい幽霊共には堪らなかったろうな。その所為かは知らないが出てきたものは爬虫類の蛇ぐらいであった。
涼宮の「きゃっ」なんて悲鳴を聞けないかと期待するだけ無駄だということだろう。
「流石に疲れましたね」
「もう一度俺は風呂に入りたい」
古泉と俺とが話しているこの場はキョンの部屋で、そのキョンは泥酔しベッドで横になっている。なぜ彼が赤ら顔で延々と阿呆な寝言を唸っているのかといえば新川さんが腕を振るった夕食にて、悪意的としか思えない、そりゃもう飲みやすいたらない赤ワインが運ばれてきたからであり、キョンだけではなく俺と古泉と長門を除く面々は、醜態をさらして酔い伏してしまった。
「それにしても涼宮の酒乱ぷりは凄かったな。記録に撮っておけば揺さぶりをかけれるレベルだったぜ」
「そうしたかったのですか?」
鯨飲馬食の長門は置いといて、この爽やか野郎の古泉もまだまだ余裕そうだ。
「まあ……興味はあるよな」
「これはこれは、川端さんに加虐趣味があったとは」
「ないない。そうじゃない」
名誉のために一つ、女性陣の運搬は森さんと長門がやった。笑えることに長門は朝比奈さんを片手で担いで、空いた方で本を開いていた。
筋金入りである。
夢の中でもハルヒの相手をしているキョンの部屋から退出し廊下へと出る。古泉の部屋が左で、俺の部屋が右側だ。本当は女性陣のいずれかの隣室が良かったんだけど、嫌な眼を方々から送られたので断念した。
「川端さん」
なんだ?
「実は女なんですとか男に興味があってと言い出しそうな雰囲気だな。悪いがお前が女でも守備範囲外だし、男なら論外だぞ」
「違いますよ。貴方の幼馴染のことです。さっきは聞けず仕舞いでしたからね」
浜での休憩もとい朝比奈さんの局部鑑賞会で古泉は、懲りずに俺とあいつの関係を探ろうとしていたけれど団長様からの招集命令が下されたため頓挫させてしまっていた。
「何度も言うけど別に恋人だったってわけじゃないんだぜ」
「でも大切な人ではあったのでしょう?」
「言い方はともかくそんな感じ」
「友人関係を探ればおのずと人柄も見えます。僕はあなたを知りたいのですよ」
まだこいつの中で俺は異種生物の嫌疑であるのかね。こうも執拗に迫られるとゲシュタルトでも起こしちまいそうだ。
「ま、いいけどさ。条件もある」
俺もやぶさかではない。高校に上がって以来あの女を話題にする機会は減ったからな。久々に話してみたい。しかし相手は無知の古泉なので話すよりは聞かせるといったほうが正しいか。
「風呂にいこう」
裸の付き合い、といえば聞こえはいいが実際はただ単に同じ湯船に浸かると言うことだ。しかも同性なのでメリット的なのは皆無に等しい。こいつと将来に続く永遠の絆が築けそうならまだしも、それもないし、俺も求めていない。一時だけでよい、そう考える。
古泉の声が浴場に響く。
「それほどの仲とは」
一日になぜ二度も身体を磨かねばならんと意見を合致した俺達は垢を落とすことなく湯に浸かっている。首から上だけを出して、談笑し、頭に乗せたタオルで時たま顔を拭ったりする。垢は既に延々溢れ出る温水に流され、影もない。
極上の気分。
「これだけ話せば満足だろう」
アルコールが回ってきたのかしれない。馴れ初めから話し始めていた。古泉にも責任はある。聞き手の分には申し分なく、相槌のタイミングが絶妙なのだ。内輪話でうんざりしてないかと不安になりかけたところで合の手を入れるもんだから、いつの間にかトントンと弾みがつき、饒舌が止まらず気分も高揚していた。
順を追って行く形となれば必然あいつの命日である七月七日で話が終わる。
「魅力的な女性だったのですね」
「死人の話をネタにするのは道徳的にどうなんだろうな」
「好意的に感じられたので問題ないように思われますが」
「そうかい」
そう言われると助かるぜ。
話題も尽きるとなんだか気恥ずかしくなった。気にしないでいたがやはりどこか俺はあいつが居なくなって寂しかったのだと思う。
口元まで沈める。空気を吐いて泡を作った。庶民の風呂場には不潔感があるのにセレブの浴場には清潔感しかないのはなんでだろうね。どちらもレジオネラ菌は多くいるだろうに。
「これは僕個人の観察によるものなんですが」
言ってみろ。
「貴方も大分我が団に馴染んできたなと」
冗談だろ。あと二年は振り回されそうな気がする。
「おや?少なくとも二年はご一緒できるんですね」
迷惑だとでも言いたいのか。
「まさか。喜ばしいことですよ」
お前は話し手になると急に胡散臭さが増す。
「彼にもよく言われます。どうしてでしょう?」
さあ?なぜだろうね。
彼とはキョンのことだろう。そう言えば団員で唯一キョンと愛称で呼んでいない人間が古泉だ。誰か一人ぐらい、本名で呼んであげればいいのだろうけど、団長様がそれを許さないからな。
「貴方にはぜひ、この団の感想をお聞きしたいです」
ヘンテコ。
「……できればもう少し」
目的を見失ってる団だな。涼宮の奴、もう宇宙人とか未来人とかどうでもいいんじゃないか。ここに来て特にそう感じたぞ。
「興味深い意見です」
船の上では奇天烈な発言ばかりだった涼宮も上陸してしまえばそんじゃそこらの高校生が考えるような過ごし方しかしていない。俺は正直、島内探検だとか、人跡未踏の海底遺跡発掘だとか、クルーザーで巨大イカ対決なんて言い出すんじゃないだろうと期待してたよ。この分だと明日も平穏無事に終わりそうだぜ。
「涼宮さんほどではないにしろ貴方も非常識な方だ。我々は驚いていたのですよ、涼宮さんがもう現れないだろう新団員を引き連れてきたことに。満足していると思っていたのですが、どうやら自惚れだったようです。力不足ですね」
自覚が遅い。もう巻き込まれちまった。
「後悔はしていないのでしょう?」
俺は後悔をしない主義だからな。
「くっく、それが事実ならなりよりです」
事実さ。こんなことで一々嘘はつかない。嘘ってのは使えば使うほど効果的じゃなくなるからな。だから、ここぞって場面まで温存しておくもんなんだぜ。
「涼宮さんが貴方に何を期待しているのかはわかりませんが予想は付きます」
それは初め涼宮が言っていたじゃないか。やる気のある人材だとか。
「ええ。ですがそれだとさっきの考えと矛盾します。貴方の言うには涼宮さんは異常性を重要視しなくなってきている。にもかかわらず貴方がやってきたのはほんの少し前、時期が合いません。今更といった感じです」
俺の考えが間違っているだけかもしれない。
「その可能性もあるにはあるのですが……そうですね、僕も貴方に習っていくつか明かしましょう」
古泉の舌のエンジンが躍動し始めているのを感じる。
「実を言えば、我々も貴方と同じ印象を涼宮さんに抱いています。だからといったわけではありませんが、貴方の意見は的を射ている、そう思えるのですよ」
確証に欠けるな。
「ならこう言いましょう。そもそも貴方はやる気のない人材。彼女が見誤った可能性もありはしますが、ごく僅かです」
何でそうキッパリと言える。洗脳か?
「我々が選ばれたからですよ」
訳が分からん。分かるように説明してくれ。俺はキョンとは違って勉学方面だけでなく全方面的に馬鹿なんだ。日々これを自覚しないように生きているのに、そうまざまざと実感させる説明は止めろ。
嬉しそうに、今度は手のジェスチャーを交えて説明を始めた。それでわかると思っているのか古泉?俺の低能加減をあまり舐めないほうがいい。
「まず明確にしておきたいのが貴方の属性と立ち位置です。前者と後者どちらをお聞きになりたいですか?」
どっちでもいい。
「ふふ、では後者を先に。そうですね、簡潔に言うなら貴方の立ち位置は涼宮さんの「反証」だと思われます。これについてはまたあとで」
反証的存在と聞いて俺は、心中でなぜだかそれは違うだろうと確証もない確信を持っていた。明確な理由はない。だからこそ不安に駆られる。この確信は何処から来ている?
古泉は窺っていた。観察と呼んでもいい。果たしてそれで俺の動揺は読み取れたのかね。
古泉が続ける。
「前者、これは属性ですが、安心してください。幸いにもどうやら貴方は普遍的一般人のようです。この結論を出すのに随分と時間をかけました。大変だったのですよ?」
んなことに時間と手間を掛けるお前が悪い。俺が一般人?当たり前だ。
「僕は清廉潔白で誠実な貴方に習っていくつかお話しすると言いましたね?」
言ったな。この分だとそちらのほうも下らないんだろうな。
「ええ、本当に下らない。とるに足らない些細な事ですよ」
本日最高の微笑みで、
「僕はね、川端さん」
古泉は言った。
「超能力者なんですよ」
と。
「眠い」
……本当に。微睡が浸食する。大きな欠伸が一つ出た。すると更に眠気が増していく。靄かかった思考。それでも巡らすは古泉の告白。保留としたのだからいつかは答えを出さないといけない。悩む。難しい。出ない。悩む。
悩み悩んで悩んだまま――――寝ていた。
目覚めの音は扉のノック音だった。
廊下には新川さんが立っていて、昼食の報せだったが、食欲なしと欠席させてもらった。夕食も同じ理由で断った。すると団長様が嘘の腹痛を今更になって真に受けたらしく整腸薬片手に見舞いにきてくださった。
「はいこれ」
押し売りの様に渡される。
「悪い、心配かけたな。もう大丈夫、治った」
「いいから飲んどきなさい。団員の不甲斐なさは団長の恥でもあるんだからさっさと治してもらわないと困るのよ。再発なんてもってのほか。ま、大方のとこ、普段ありつけない豪華な食事に、消化器官が驚いちゃてるだけでしょうけどっ」
こういった時の涼宮の嫌味は照れ隠しから来ていることはなんとなくわかっている。なのであえて、真剣に返した。
「ありがとな」
涼宮は、誰もいないだろう廊下に向かって「ふん」と鼻を鳴らし、唇を曲げ不機嫌を装う。その横顔は相変わらず端正なもの。
素直でないところが長所でもある涼宮だけど、キョンとの仲が進展しない要因でもあるので程ほどに柔軟さを持たせてほしい。そうすれば変人ばかりの友人関係にも広がりが見られるだろう。
「とにかく明日にまでは治しておくこと。いいわね?」
治ったと言っているのに……苦笑してしまう。
「ああ」
涼宮は最後に、指を突きつけて去っていった。その時の足音や肩の揺らしが実にわざとらしいもので、相反した感情が見え隠れしていた。つまりは不機嫌さなんてないんだろう。
「分かりやすいけど、めんどくさい奴」
この日もう一度だけ、俺は笑ってから、扉を閉め、ベッドに横たわった。
あれだけの惰眠は一切の阻害なく、眠気が生まれる。
団長のおかげかもしれない。
翌日
多丸圭一が死んだ。
嵐は、ピークを越えたようで僅かに弱まっていた。
しかし外出できるほどではないので、一同、屋内活動に徹する。
新たな被害者を出すことなく一日を終える。
尚、古泉に返事はしていない。特別理由は無し。
なんとなくだ。
最終日
快晴。
事件は解決。
SOS団、合宿のための合宿終了。
現在
帰路のフェリー。
寂寥感らしきものモノが立てるキリキリとした音を感じながら離れていく島を眺める。そこからパノラマ写真のように視線を流すと、看板には、数日前にこのフェリーで相乗りした同乗客が居て、再会の喜びに至らないまでも嬉しさとなつかしさがあった。
船首のあたりで古泉とキョンが二人で話をしている。内容までは聞き取れない。知る気もない。
朝比奈さんたちは女子三人で白く安っぽいテーブルについている。いつものごとく涼宮が一人で延々としゃべくっていた。
「古泉」
会話の終わりを計らって呼ぶとすぐにやってくる。
「なんでしょう」
「ふふん」
「おやおや、なにやらご機嫌ですねえ」
「俺はいつだって機嫌は良い。後悔しないからな。それより返事、まだだったろ?」
「待ち焦がれていました。それこそ恋する乙女のようにですよ」
こいつにしては分かりやすい表現だ。だけどその分気持ち悪さが増している。
「いい返事が聞けると良いのですが」
「安心しろ、いい返事だ。信じてやる。お前が変態だってさ、信じてやるよ」
自称超能力者さんは苦笑しながらも「ありがとうございます。助かります」と言って俺と同じように安全柵に身を預けた。それが皮切りとして色々と話すことにした。古泉の能力がどういったものかなんてことをな。荒唐無稽とはこのことだ、と思いながらも相槌を打った。およそ高校生の会話とは思えない内容。馬鹿らしい。 そう思ったが続けた。
理由は楽しかったから。
それだけだ。
読んでくれた人
ありがとです