没になった遊戯王小説とオリカをとりあえず短編ということで紹介する(仮)   作:ダーク・ホルス・ドラゴン

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没理由
●モチベーションの低下
●主人公の設定が纏まらなかった


ARC-V
ARC-V 記憶を刻む振り子


 この世界は4つの次元に分かれている。

 「融合次元」、「シンクロ次元」、「エクシーズ次元」、そして「スタンダード次元」。4つの世界は「デュエルモンスターズ」と呼ばれるカードゲームを中心に成り立っており、それぞれの次元で独自の発展を遂げていた。

 

 だがある時、融合次元のデュエリスト達が、他の次元へと侵攻を始めた。

 最初に狙われたエクシーズ次元は瞬く間に滅ぼされ、僅かな住民を除いて殆どの者がカードの姿へと変えられてしまう。

 それを皮切りに、シンクロ次元とスタンダード次元にも侵攻が始まり、次元を超えた争いが幕を開けるのだった。

 

 

 

 

 

 そして舞台はスタンダード次元。ここでは今、舞網チャンピオンシップと呼ばれる大会が開かれている。この大会はプロデュエリストへの登竜門とされ、優勝を目指して多くの若きデュエリスト達がしのぎを削っていた。

 だがこの大会の本当の目的は別にある。それは「ランサーズ」と呼ばれる融合次元からの侵略に対抗するための部隊を選定することである。この大会を開催した「赤馬零児」は、融合次元のトップである父「赤馬零王」を打倒すべく、そしてスタンダード次元を守るべく密かに活動していた。

 だが3回戦のバトルロワイヤルで事態は大きく動き出す。融合次元の侵攻部隊「オベリスクフォース」が遂にスタンダードへの本格的な侵攻を開始したのだ。それにより、スタンダード次元のデュエリスト達も混乱に巻き込まれていく。

 

 

 

 

 

 レオ・コーポレーションの一室。そこでは今さまに行われているアカデミアからの侵略の対処のため慌ただしい空気が流れていた。

 正面のモニターには、大会参加者とオベリスクフォースのデュエルの様子が映し出されているが、戦況は芳しくない。娯楽のためのデュエルを発展させてきたスタンダードのデュエリストと、精鋭である融合次元のデュエリストでは、どうしても実力に差が出てしまうのだ。

 敗北し、徐々にカードの姿に変えられてしまうデュエリスト達。対抗出来ているのは数える程度しかいない。

 そんな状況に零児は危機感を募らせていると、急にけたたましい警報音が室内を包んだ。

 

「何が有った!」

 

 冷静な声で問い掛けられた部下は、緊張した様子で返答する。

 

「ジャングルエリアで巨大な召喚反応が検知されました! これは、ペンデュラム召喚……いえ違う!?」

 

 デュエリストがモンスターを召喚すれば、大なり小なりエネルギーが発生する。だが警報が鳴り響くほどの巨大なエネルギーを発生させられるのは、各次元のデュエリスト達が進化させた召喚によるもの、あるいはペンデュラム召喚という新たな召喚方法を生み出した特異点とも言える少年「榊遊矢」くらいしか無い。

 だが、その遊矢は現在ジャングルエリアには居ないことが確認されている。またペンデュラム召喚による反応であるならば、他の次元のデュエリストであるという可能性も消える。

 では一体誰が? その疑問を解き明かすべく、モニターに反応が検知された場所が映し出される。

 

―Gyaooooo!!―

 

 そこに居たのは、榊遊矢のエースモンスターに酷似した、二色の眼を持つ竜とそれを使役する一人の少女だった。

 

 

 

 

 

 「はぁ……」

 

 時は遡り、場所はジャングルエリア。

 リアル・ソリッド・ビジョンという質量を持った特殊な映像によって投影された森林。そこに一人の少女が木にもたれ掛かりながら溜息を吐いていた。

 彼女は大会の参加者では無い。偶然、ここへ辿り着いてしまっただけだ。

 そんな彼女は辟易としていた。彼女の足元に転がるのは、仮面を付けた謎の男達。それはオベリスクフォースの兵士だ。彼女が彷徨っていると、急に彼らが現れデュエルを仕掛けてきたのだ。その姿に彼女は忌まわしい過去を思い出しつつ、瞬く間に彼らを打ち倒して見せた。オベリスクフォースは融合次元でも指折りの実力者が揃っている精鋭達。それをあっという間に倒して見せた彼女の実力はかなり高いことが伺えた。

 

「ほう、雑兵相手とは言え中々やるじゃないか」

 

 そんな彼女に対し、物陰から声を掛ける者が居た。

 またかと思いつつも、少女が視線を向けると、オベリスクフォースとは異なり、鋭い犬歯を見せながら笑みを浮かべた一人の男が姿を現す。彼の名はアレックス。オベリスクフォースの隊長格である融合次元のエリートだ。

 

「手応えの無いデュエリストばかりで飽き飽きしていたんだ。少しは楽しませてもらおうか」

 

 そう言って男はデュエルディスクを展開する。少女からすれば面倒なことこの上ないが、デュエルを挑まれたのなら応じないわけにはいかない。さっさと片付けようと、少女もデュエルディスクを展開した。

 

「デュエル!」

「デュエル……」

 

 

 

【アレックス】

LP4000デッキ:35枚手札:5枚
モンスターゾーン
魔法・罠ゾーン
Pゾーン
フィールド魔法

 

【少女】

LP4000デッキ:35枚手札:5枚
モンスターゾーン
魔法・罠ゾーン
Pゾーン
フィールド魔法

 

 

 

「先行は俺からだ。俺は『レッドアイズ・インサイト』を発動! デッキから『真紅眼の飛竜(レッドアイズ・ワイバーン)』を墓地に送り、デッキから『真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)』を手札に加える!」

 

 アレックスは自身の戦術の黄金パターンを慣れた手つきで実行していく。

 

「そして手札に加えた『真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)』を発動! デッキの『真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)』と『真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン』を素材として融合する!」

 

 デュエルディスクに収められたデッキから飛び出した2枚のカードを墓地へ送り、アレックスは両手を広げ宣言する。

 

「紅き瞳を持つ竜よ。星の力をその身に宿し、新たな可能性を掴み取れ!」

 

 ソリッドビジョンによって浮かび上がった2体の竜は光の渦に呑まれ、新たな姿へと生まれ変わる。

 

「融合召喚! 出でよ、レベル8! 『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』!!」

 

 そして現れたのは、炎を纏った巨大な体躯を持つ竜。その咆哮は木々を揺らし、ここから離れた場所に居るデュエリストすら驚かせるものだ。

 

流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン融合・効果レベル8ドラゴン攻3500守2000

 

「俺は融合召喚した『メテオ・ブラック・ドラゴン』の効果発動! デッキから『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』を墓地に送り、その元々の攻撃力の半分のダメージをお前に与える!」

 

 男の宣言と共に巨竜は口から業火を少女目掛けて放つ。少女はそれを回避するものの、あまりの衝撃に倒れ込んだ。

 

少女:LP 4000→2600

 

 モンスターの攻撃が出来ない先行1ターン目にも関わらず、少女はLPを1/3以上も削られた。しかしそんなことは気にしていないかのように、その瞳はアレックスだけを捉えている。

 

「ふん、中々肝が据わってるみたいじゃねえか。俺はカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

 アレックスの宣言と共に、次は少女へとターンが回る。

 

 

 

【アレックス】

LP4000デッキ:30枚手札:2枚
モンスターゾーン流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン
魔法・罠ゾーン伏せカード×2
Pゾーン
フィールド魔法

 

【少女】

LP2600デッキ:35枚手札:5枚
モンスターゾーン
魔法・罠ゾーン
Pゾーン
フィールド魔法

 

 

 

「私のターン、ドロー」

 

 少女はデッキから引いたカードを早速使用する。

 

「フィールド魔法『魔術天文時計(マジシャンズ・アストラリウム)』を発動」

 

 彼女がカードを発動すると、背後に幾何学模様が描かれた巨大な時計台が聳え立つ。

 

「このカードの発動時、デッキから『魔術師』永続魔法カード1枚を手札に加えることができる。私は『魔術師の花時計』を手札に加え、そのまま発動」

 

 時計台の隣に、今度は色とりどりの花が円を描くように咲き誇った。

 

「このカードの効果によって、私はデッキから闇属性の『魔術師』ペンデュラムモンスターを手札に加えることができる。私が手札に加えるのは、『極夜の魔術師』」

 

 目当てのカードを手札に加えた少女は、そのカードともう1枚のカードを掲げる。

 

「私はスケール3の『極夜の魔術師』とスケール6の『白夜の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

 少女がデュエルディスクの両端にカードをセットすると、青い光の柱に包まれた二人の魔術師が姿を見せる。片や漆黒の外套に身を包み、片や純白の法衣を着込む。色こそ真逆だが、雰囲気はどこか似ていた。

 

「これでレベル4・5のモンスターが同時に召喚可能」

 

 そして天から巨大な振り子が現れると、二つの柱を巡るように揺れながら円を描く。

 

「震えろ、記憶を刻む振り子。時空を超え新たな舞台の幕を上げろ。ペンデュラム召喚!」

 

 少女の口上と共に、振り子が描いた円から二つの光が舞い降りる。

 

「レベル4『午砲の魔術師』、レベル5『月虹の魔術師』!」

 

 降り立ったのは、大砲を携えた軍服に似た服を来た魔術師と、儚い光を帯びたマントを纏った魔術師。

 

午砲の魔術師効果レベル4魔法使い攻1600守1000
月虹の魔術師ペンデュラム・効果レベル5魔法使い攻2100守1100

 

 一度に2体のモンスターを召喚したことにアレックスは驚愕の表情を浮かべるが、どちらの攻撃力も彼のメテオ・ブラック・ドラゴンには敵わない。

 

「その程度のモンスターをいくら並べようが無駄なことだ!」

 

 アレックスは少女を煽るが、彼女の表情は変わることは無い。既にメテオ・ブラック・ドラゴンを倒す算段は付いていた。

 

「まずは『魔術師の花時計』の効果発動。自分フィールドに『魔術師』Pモンスターが特殊召喚されたことで、魔力カウンターが1つ乗る」

 

魔術師の花時計:魔力カウンター 0→1

 

「私は『白夜の魔術師』のペンデュラム効果を発動。このカードをレベル4のモンスターとしてエクシーズ召喚の素材とすることができる」

「エクシーズ召喚だと!?」

 

 エクシーズ召喚。それは融合次元が侵攻した世界の一つ、エクシーズ次元で発展してきた召喚方法。同じレベルを持つ複数のモンスターを素材としてエクストラデッキから新たなモンスターを召喚する。

 

「私は『午砲の魔術師』とペンデュラムゾーンの『白夜の魔術師』でオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

 アレックスが行った融合召喚とは異なる、黒い渦に2体の魔術師は光となって飲み込まれる。そして2体を飲み込んだ渦の中心から光の爆発が巻き起こった。

 

「悲しみを秘めし黒き竜。嘆きと共にその鋭き牙を突き立てろ。エクシーズ召喚!」

 

 アレックスのメテオ・ブラック・ドラゴンに対抗するように叫びを上げながら姿を現したのは、全身に光のラインが刻まれた細身の竜。どこか刃物のような鋭さを感じさせるその竜の名を少女は高らかに宣言する。

 

「ランク4! 『ダーク・リベリオン・エクストラ・ドラゴン』!!」

 

ダーク・リベリオン・エクストラ・ドラゴンエクシーズ・効果ランク4ドラゴン攻2500守2000

 

「まさかスタンダードの奴もエクシーズ召喚するとはな……だが俺はエクシーズ次元でも多くのデュエリストを倒してきた。その程度で勝てると思うなよ!」

 

 アレックスの言葉に従う様に、メテオ・ブラック・ドラゴンも咆哮を上げる。

 しかし少女は怯むことなく、自らの竜の効果を発動する。

 

「私は『ダーク・リベリオン・エクストラ・ドラゴン』のオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動! エクストラデッキから特殊召喚された相手モンスター1体の攻撃力を半分にする! 放て、サッドネス・ディスチャージ!!」

 

ダーク・リベリオン・エクストラ・ドラゴン:ORU 2→1

 

 黒竜が放つ雷撃がメテオ・ブラック・ドラゴンを穿ち、その力を減衰させる。

 

流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン:攻撃力 3500→1750

 

 しかし巨竜を痺れさせてなお、雷撃は収まる気配を見せない。それはまだ黒竜の効果が続いていることを示していた。

 

「さらにこの効果で変動した数値分のダメージをあなたに与える!」

「何だと!?」

 

 巨竜を貫いた雷撃はそのままアレックスを襲い、先程少女に与えたものよりも大きなダメージが与えられた。

 

アレックス:LP 4000→2250

 

「そしてバトルフェイズ! 『ダーク・リベリオン・エクストラ・ドラゴン』で『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』に攻撃! 反旗のライトニング・ヴァイオレイト!!」

「ぐっ、ぐおおおっ!?」

 

 そして今度は雷を纏ったダーク・リベリオン・エクストラ・ドラゴン自身が、その鋭い牙で巨竜へ突進する。本来の状態ならともかく、弱体化した身のメテオ・ブラック・ドラゴンは、抗うことも出来ず腹部に風穴を開けられ爆散し、その衝撃がアレックスにも伝わった。

 

アレックス:LP 2250→1500

 

「だが《流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン》が破壊されたことで効果発動! 墓地の通常モンスターを復活させる。これで俺は《真紅眼の黒竜》を……」

 

 本来であるならばアレックスの宣言と共に墓地から真紅眼の黒竜がすぐさま姿を現しただろう。しかし今、その姿は見えない。

 

「何故だ、何故蘇らない!?」

「私の場の『月虹の魔術師』の効果だよ。『エクストラ・ドラゴン』または『魔術師』ペンデュラムモンスターとの戦闘で破壊されたモンスターの効果は無効化される」

「何だと!?」

 

 ただの攻撃力2100の魔法使いモンスターだと思っていた月虹の魔術師にそのような効果が有ることを知り、アレックスの表情から余裕が消える。

 

「私は『月虹の魔術師』でダイレクトアタック!」

 

 アレックスの残りのLPは1500。これを通せば少女の勝利となる。だがそう簡単にはいかない。

 

伏せ(リバース)カードオープン! (トラップ)カード『レッドアイズ・スピリッツ』!」

 

 アレックスの場に伏せられたカードが捲られると同時に、金属光沢を持つ鱗を輝かせた竜が姿を見せた。

 

「こいつは墓地の『レッドアイズ』モンスターを復活させるカード。これによって『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』を特殊召喚する!」

 

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン効果レベル10ドラゴン攻2800守2400

 

 新たに場に現れたドラゴン相手では、月虹の魔術師では歯が立たない。少女は攻撃を中断し、バトルフェイズを終了させる。

 

「私は『魔術天文時計』の効果発動。ペンデュラムゾーンの『極夜の魔術師』を破壊してデッキから『黄昏の魔術師』を除外する」

 

 自分のカードを破壊して発動されたのはデッキのモンスターの除外。それだけ見るのなら何の意味も無い効果だろう。しかし少女の実力を間近で知ったアレックスは、それで終わるはずが無いと警戒を解かない。

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 

 

【アレックス】

LP1500デッキ:30枚手札:2枚
モンスターゾーンレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン
魔法・罠ゾーン伏せカード×1
Pゾーン
フィールド魔法

 

【少女】

LP2600デッキ:31枚手札:1枚
モンスターゾーンダーク・リベリオン・エクストラ・ドラゴン(ORU×1)
月虹の魔術師
魔法・罠ゾーン魔術師の花時計
伏せカード×1
Pゾーン
フィールド魔法魔術天文時計

 

 

 

「俺のターン! 俺は『七星の宝刀』を発動! 手札の『真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)』を除外し、カードを2枚ドローする!」

 

 そしてアレックスは引いたカードを見てにやりと笑う。

 

「喜べ。お前には俺の真の切り札を見せてやる。まずは『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』の効果発動!」

 

 鋼の黒竜が雄叫びを上げると、地面が紅く光りだす。

 

「俺の墓地から甦れ、『真紅眼の黒竜!』」

 

真紅眼の黒竜通常レベル7ドラゴン攻2400守2000

 

 レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンは手札・墓地のドラゴン族モンスターを呼び出す効果を有している。この効果で今度こそ真紅眼の黒竜は復活を果たした。

 そして融合次元の名の由来となったカードが発動される。

 

「俺は魔法カード『融合』を発動! フィールドの『真紅眼の黒竜』と手札の『ダーク・ジェネラル フリード』を融合!」

 

 蘇った黒竜とアレックスの手札から姿を現した闇の剣士の姿が光の渦へと飲み込まれていく。

 

「紅き瞳を持つ竜よ。勇猛なる力をその身に宿し、新たな可能性を掴み取れ!」

 

 そして渦の中から現れたのは、鎧を身に纏い、腕には鋭い刃が装着された黒竜。

 

「融合召喚! 出でよ、レベル7 『真紅眼の黒刃竜(レッドアイズ・スラッシュドラゴン)』!!」

 

真紅眼の黒刃竜融合・効果レベル7ドラゴン攻2800守2400

 

 アレックスの場には2体のドラゴンが並び立つ。しかし彼が融合召喚したことで、今度は少女のドラゴンが効果を発動した。

 

「『ダーク・リベリオン・エクストラ・ドラゴン』の第2の効果。相手がエクストラデッキからモンスターの特殊召喚に成功する度に、攻撃力が300アップする!」

 

ダーク・リベリオン・エクストラ・ドラゴン:攻撃力 2500→2800

 

 数値だけ見るならばとても低い値だ。しかしそれでもアレックスのドラゴン達と並ぶ。

 

「バトルフェイズだ!」

 

 だがアレックスは怯まない。それは確実に少女のモンスターを屠る手段が有るからこそだ。

 

「俺は『真紅眼の黒刃竜』で『ダーク・リベリオン・エクストラ・ドラゴン』に攻撃!」

 

 2体の竜はお互いに咆哮を上げながら宙へと舞い、牙と刃をぶつけ合う。その実力は互角。しかしその天秤を傾ける効果をアレックスのモンスターは持っていた。

 

「ここで『真紅眼の黒刃竜』の効果発動! 墓地の『ダーク・ジェネラル フリード』を攻撃力200アップの装備カードとして装備する!」

 

 融合に使用された闇の剣士の亡霊が現れ、真紅眼の黒刃竜へと吸収される。それにより攻撃力は僅かに少女の竜を上回る。さらにアレックスは追撃を仕掛ける。

 

「伏せカードオープン『タイラント・ウィング』!」

 

 仕掛けられていた罠カードが露になると、黒刃竜の翼に力が満ちる。

 

「このカードは装備カードとなり、ドラゴン族モンスターに装備される。そして装備したモンスターの攻撃力を400ポイント上げるのさ! これにより『真紅眼の黒刃竜』の攻撃力は3400となる!」

 

真紅眼の黒刃竜:攻撃力 2800→3400

 

 鎧を纏った黒竜の翼が大きくはためくと暴風が起き、ダーク・リベリオン・エクストラ・ドラゴンの動きを封じる。その隙を突いて、真紅眼の黒刃竜は腕の刃で一閃。たちまち爆発が起き、膨大なエネルギーによって辺りに轟音が響く。少女もさすがにこの衝撃からは避け切れずに地面を転がるが、すぐに立ち直る。

 

少女:LP2600→2000

 

「さらに『タイラント・ウィング』を装備したモンスターは相手モンスターに2回攻撃することが可能! その魔術師にも消えて貰う!!」

 

 今度は月虹の魔術師が黒竜の瞳に捉えられた。獲物を狩るべく、黒竜は上空から勢いよく急降下する。

 未だに残っているレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの攻撃も加えれば、少女のライフを0にするには十分だ。しかしながらアレックスの表情は固い。それは前のターンで少女がデッキからモンスターを除外するというプレイングの謎。そして伏せられたカードの存在。

 

「私は伏せカードを発動する」

 

 そしてアレックスの予感は当たった。

 

「罠カード『ブラックバーン・シールド』! 攻撃対象となった『月虹の魔術師』を対象とし、そのターンの戦闘による破壊を無効にする。そして私が受ける戦闘ダメージも半分となる!」

 

 幾重もの曲線が盾のようになり魔術師を黒竜の攻撃から守る。しかしその衝撃は消し切れず、少女へと襲い掛かった。

 

少女:LP 2000→1350

 

「ちっ、やっぱり防御カードを持ってたか。だがライフは削らせてもらうぜ。行け『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』!!」

 

 2体目のドラゴンも月虹の魔術師へ火炎を吐き、少女へダメージを与える。

 

少女:LP 1350→1000

 

「俺はカードを伏せてターンエンド。ここで『タイラント・ウィング』は効果によって自壊する。だが墓地の『真紅眼の飛竜』の効果も発動だ。こいつを除外することで、墓地の『真紅眼の黒竜』を特殊召喚する!」

 

 またもや真紅眼の黒竜が蘇り、アレックスのフィールドには3体のモンスターが並んだ。

 

 

 

【アレックス】

LP1500デッキ:27枚手札:0枚
モンスターゾーンレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン
真紅眼の黒刃竜
真紅眼の黒竜
魔法・罠ゾーン伏せカード×1
Pゾーン
フィールド魔法

 

【少女】

LP1000デッキ:31枚手札:1枚
モンスターゾーン月虹の魔術師
魔法・罠ゾーン魔術師の花時計
Pゾーン
フィールド魔法魔術天文時計

 

 

 

「私のターン」

 

 少女の場には魔術師が1体のみ。対するアレックスの場には高レベルモンスターが3体並んでいる。

 

(この布陣は完璧だ。例え奴が俺のレッドアイズ達を倒せるモンスターを出そうとも、俺がセットしているのは『万能地雷グレイモヤ』。それを除去しようとすれば『真紅眼の黒刃竜』の効果で破壊することも出来る。突破されることは無い!)

 

 真紅眼の黒刃竜は自分の場のカードを対象とするカードの効果に対して、装備カードをコストに無効、破壊する効果を有している。その上で相手の最も攻撃力の高いモンスターを破壊する万能地雷グレイモヤが有るという状況。アレックスからすれば万全の態勢だ。

 少女の状況は絶望的と言わざるを得ない。。だが少女の表情は一切変わらなかった。

 

「私のターン、ドロー」

 

 少女はデッキからカードを引くと、誰にも届かないほどの小さな声で呟いた。

 

「やっぱり、来てくれたんだね」

 

 そして少女は前のターンに発動したフィールド魔法の真価が発揮する。

 

「スタンバイフェイズ時、『魔術天文時計』の効果で除外されていた『黄昏の魔術師』を手札に加える」

 

 ドローと加えて増えたカードは2枚。だがそれは勝負を決めるための切り札を呼ぶためのカードだった。

 

「私はスケール4の『オッドアイズ・エクストラ・ドラゴン』とスケール8の『黄昏の魔術師』をペンデュラムゾーンにセッティング!」

 

 再び2本の光の柱が現れ、そこに真紅の体と二色の瞳が特徴的な竜、そして暁色のドレスを着た女性の魔術師の姿が浮かび上がる。

 

「これでレベル5からレベル7のモンスターが同時に召喚可能。再び震えろ、記憶を刻む振り子。ペンデュラム召喚!」

 

 そして彼女が呼び出すのは、1体の魔術師。

 

「レベル5『極夜の魔術師』!」

 

魔術師の花時計:魔力カウンター 1→2

 

 フィールドに並び立つ2体の魔術師のレベルは同じく5。再びエクシーズ召喚かとアレックスは身構えるが、少女の目的はそこでは無い。

 

「私は2体の魔術師をリリース!!」

「何!?」

 

 わざわざ呼び出した2体のモンスターの姿が掻き消えたかと思うと、光の柱に浮かび上がっていた竜が叫び声を上げる。

 

「ペンデュラムゾーンより二色の(まなこ)で人々を魅了する竜『オッドアイズ・エクストラ・ドラゴン』を特殊召喚する!!」

 

 宙から跳び上がり、土煙を上げながら着地したドラゴン。その姿は美しく、同時に雄々しい。

 

オッドアイズ・エクストラ・ドラゴンペンデュラム・効果レベル7ドラゴン攻2500守2000

 

「わざわざ呼び出したのが攻撃力2500のモンスターだと?」

 

 しかし名前が酷似しているダーク・リベリオン・エクストラ・ドラゴンのような効果を持っている可能性は高い。だが一体、どのような効果を持っているのか。

 そんなアレックスの疑問に構わず少女はバトルフェイズへと移る。

 

「私は『オッドアイズ・エクストラ・ドラゴン』で『真紅眼の黒刃竜』に攻撃!」

 

 攻撃力2400の真紅眼の黒竜では無く、アレックスの場で最も攻撃力の高い真紅眼の黒刃竜への攻撃。自爆特攻かと思われる行動だが、この少女が何の目的も無く攻撃をするはずがないとアレックスは考え、すぐさま伏せカードを発動する。

 

「伏せカードオープン! 『万能地雷グレイモヤ』! これでお前の希望を打ち砕いてやる!」

 

 黒竜へと走っていたオッドアイズ・エクストラ・ドラゴンの足元が大きく爆発し、その姿を炎が包み込む。どんなモンスターだろうが粉砕する罠カード。これで自分の勝利が確定した。そうアレックスは考えていた。

 

「……『オッドアイズ・エクストラ・ドラゴン』の効果発動」

 

 それは一時の幻想。

 

―Gyaooooo!!―

 

 まるで脱出マジックのように、真っ赤な炎の中からそのドラゴンは傷一つなく飛び出した。

 

「私のペンデュラムゾーンの『黄昏の魔術師』を破壊し、『オッドアイズ・エクストラ・ドラゴン』の破壊を無効にする!」

 

 最後の罠を防がれ、最早攻撃を止める術は無い。だが攻撃力2500のモンスターで攻撃力3000の真紅眼の黒刃竜を倒し、その上自分のライフも削りきれるわけが無い。それはアレックスの僅かな望み。

 しかし、それすらも少女は摘み取る。

 

「『オッドアイズ・エクストラ・ドラゴン』がエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターと戦闘を行う時、攻撃力は元々の攻撃力の倍になる!」

「……は?」

 

 思わず間の抜けた声を発してしまう。元々の攻撃力の倍。それはつまり

 

「よって攻撃力は5000」

 

オッドアイズ・エクストラ・ドラゴン:攻撃力 2500→5000

 

 その数値はアレックスの切り札を倒すどころか、LPを削り取るのに十分な数値だった。

 

「放て、輪廻のスプリーム・バースト!!」

 

 そして異色虹彩の竜が放つ螺旋状の炎は真紅眼の黒刃竜とアレックスを焼き払うのだった。

 

アレックス:LP 1500→0

 

 

 

 

 

「……それなりに強かったかな」

 

 アレックスを下した少女はジャングルを抜けるべく歩みを進めていた。表情こそ変わらないが、かなり苦戦させられた。もっとこのデッキを完全に使いこなせるようにならないと……。

 

―オォォォォォ!!―

 

 そんな少女の耳に何かの叫び声が聞こえる。それは彼女が使役するドラゴンのそれに良く似た鳴き声……。

 

「……ズァーク、あなたなの?」

 

 ぽつりと呟く少女の声に合わせて、チャリンと少女の首に掛けられた懐中時計が鳴るのだった。




「世界の真実を教えてあげる」

「魔術師の力を、体感せよ」

「私は2体の魔術師でペンデュラムスケールをセッティング!」

「ペンデュラム召喚!」

「現れろ、『オッドアイズ・エクストラ・ドラゴン』!」

「さらに、デッキ強化パックでペンデュラム召喚は進化する」

「遊戯王ARC-V オフィシャルカードゲーム」
「STRUCTURE DECK ミスティック・ペンデュラム」
「×月?日発売」

「ルールを守って楽しくデュエル!」
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