とある百合エロアニメの悪役令嬢として転生してしまったんだが?~転生悪役令嬢は、死亡フラグをへし折りたい~ 作:霧夢龍人
───悪役令嬢。
この言葉を聞くと大抵の人間は、様々な理由から主人公に敵対し、その行く手を阻む障害となるキャラクター・・・いわゆる、物語の悪役となる令嬢───という認識を持っていることだろう。
かという俺も、そんな認識を抱いていたものだ、
───とあるアニメを見るまでは。
『花咲く笑顔に百合の花を』
このアニメは、五年ほど前に放送されていたものなのだが、今で尚人気は衰えを知らない。
その要因は幾つもあるが、1つ例を上げるとするならば、それはキャラの良さがある。
物語は、主人公である平民の“ライリー=レナス”が魔法の才能を見込まれ、百合の園と呼ばれる、王立白百合学園に入学する───という、極一般的なモノだが、それだけではなく、魔物や魔王と戦ったり、レベリング要素があるなど、良くある普通の百合アニメとは少し違ったアニメだ。
それに加え、キャラ一人一人の性格や個性などが作り込まれており、それ故キャラへの感情移入がしやすい。
感動シーンでは年甲斐もなく、号泣してしまったものだ。
と、ここで最初の話に戻ってくる。
このアニメの悪役令嬢であるレイラ=セルナンドは、序盤は定番の悪役令嬢らしく、主人公の様々な障壁となり立ち塞がるのだが、中盤になると、急に登場しなくなる。
終盤になって、実はレイラは魔王によって洗脳されていた事が分かり、レイラの規格外の適性から放たれる闇魔法によって、主人公はピンチに立たされるのだ。
そして、最後の最後に魔王が瀕死になった主人公達にトドメを指そうとするのだが、レイラが密かに闇魔法で魔王の洗脳を相殺したことによって、洗脳が解除───最期は魔王の一撃を主人公から庇い、そのまま死んでいった。
レイラが涙を流しながら、「貴女が私のライバルで良かった」と言って息を引き取った時の台詞は、百合の園ファン達の間で語り継がれているという。
主人公に攻略されるヒロインという訳ではなく、しかし敵という訳でもない。
そんな立場に居ながらも、百合の園ファン達にレイラが愛されているのは、場面ごとに何処か一つ、レイラの優しさが伝わってくるシーンがあるからだ。
アニメ人気投票では主人公に並び、第二位という結果になっている。
こんな魅力的なキャラにも勝る主人公が流石というべきか、それともそんな主人公と並ぶレイラが流石というべきか───そんな愛されキャラなレイラだが、ゲーム版ではきちんと攻略出来る・・・らしい。
俺はゲームはやったことがないので、どんなゲームなのか分からないが、かなり評判が良かったらしく、ゲームを全くしない俺でも、近々買ってみようと思っていた程である。
───で、だ。
何故俺が急にこんな話をしたのかというと。
「な・・・な・・・なんじゃこりゃあっ!?」
目が覚めたら、百合の花の悪役令嬢になってました。
「何故だ!?」
大人三人が丸々映り込めそうな程、大きな鏡に映る銀髪のちんちくりん。
年の頃は見たところ8才程で、何となく高貴な身分なんだろうな・・・と分かる程度の服装をしている。
手もスベスベのぷにぷにで、前世とは違って───前世
あれ、俺ってどんな顔してたっけ?
そう言えば名前は?
生年月日と年と誕生日は?
───思い出せない・・・。
なんというか、性別とか前世の同僚とか、今覚えていてもしょうがない事しか記憶にない。
後一歩、後一歩で思い出せそうではあるが、現状で思い出そうとしても時間の無駄だろう。
「どうしたのレイラちゃん!?」
どたどたと、階段を駆け上がる音が聞こえてくる。
どうやら俺の叫び声?を聞き付けて、やってきたようだ。
───この声は確か、
何せステファニーの登場シーンはそう多くない。
どんな声をしていたのかだって、うろ覚えなのだ。
「あぁ!良かった・・・何かあったのかと思っちゃったよぉ・・・」
「ふぐぅ・・・」
物凄い勢いで入ってきたかと思うと、そのままの勢いで抱き締められた。
じゅ、12歳にも関わらずなかなかイイモノをお持ちで・・・うっ、柔らかい・・・。
「う・・・い、息が・・・」
「あ、ご、ごめん!大丈夫だった?」
「い、いえ・・・ご馳走さまでした」
えぇ、誠にご馳走さまでした───と、たゆんたゆんと揺れる胸に、心のなかで感謝を告げた。
危なかった・・・もう少しで色んな意味で
「お、お姉さま・・・その、お父様とお母様はどちらに?」
「んもうっ!お姉さまなんて・・・あ、パパとママなら、さっき公爵様に挨拶に行くって馬車に乗って出かけたよ?」
気恥ずかしい台詞を言った甲斐あってか、ステファニー───お姉さまは、頬を染めて恥ずかしそうにくねくねしたかと思うと、事もなげにそう言ってきた。
───っておい待て・・・俺って今8歳だよな?
確かレイラの両親って、レイラが8歳の時に魔物に襲われて死んだんじゃなかったか?
・・・やべぇ、こうしてる場合じゃねぇっ!
「え?あ、ちょ、どこ行くのぉ?」
「お馬さんのところぉっ!」
すまない、お姉さまッ!
男にはやるべきことがあるんだぁっ!
そう言って、俺は階段を駆け降りた。
───両親に迫る死亡フラグを回避するために。