とある百合エロアニメの悪役令嬢として転生してしまったんだが?~転生悪役令嬢は、死亡フラグをへし折りたい~   作:霧夢龍人

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転移

「フィア!フィアはどこ!?」

 

 

大声で我が有能メイドの名前を呼ぶのは、豪華でだだっ広い廊下を走り抜ける銀髪のちんちくりん。

 

───つまり俺だ。

 

 

ちなみにフィアというのは、主人公の攻略対象の一人である眼鏡っ娘メイドさんである。

 

仕事も家事も一流であるセルナンド家の中でもとびきり優秀・・・らしい。

 

 

アニメでしか見たことがないためはっきりとした事はわからないが実力はあるらしいし、何より今一番頼れる人物がフィアくらいしか思い付かなかったからである。

 

 

「お嬢様、フィアの名前をお呼びになられてどうなされたのですか?」

 

 

俺の声を聞き付けてか、他のメイドさんが俺に声を掛けてきた・・・が、言えない。

 

父さんと母さんが魔物に襲われる!と本当の事を言ってしまったら、それこそ治療魔法をオススメされるだろう。

 

もちろん頭の。

 

ここはやはり小さい頃から(レイラ)のお付きだったらしいフィアを頼るしかない。

 

 

「えっと、フィア・・・と協力してお父様とお母様にサプライズしたいの!だから何処かにいったフィアを探してるんだけど!」

 

 

咄嗟にでまかせを言った。

 

このメイドさんの親切心はありがたいが、今後色んな意味で考えるとこの事を相談するのはフィアが適切なんだ。

 

「ふふっ、左様ですか。それは旦那様と奥様もお喜びになる事でしょう。では、フィアがいる場所へと一緒に参りましょうか」

 

「い、いや、場所を教えて貰うだけで大丈夫だよ!私、一人で行けるから!」

 

 

怪しまれてしまったら困る。いや、今も十分怪しいとは思うが、変な方向に怪しまれるのが一番困るので出来ればフィアと二人きりで話したいのだ。

 

 

今になって思えば、レイラは頼れる存在が姉のセフィーナかメイドくらいしか居なかったのだ。

 

いくら魔王に操られていたとはいえ、序盤の主人公に対する嫌がらせ(闇魔法で主人公を転ばせる)・・・になっているか(だが、転んだ主人公に手を差し伸べ、キッチリと回復魔法で回復させたあとに謝罪した)どうかは別として、両親が居ないということで、レイラの性格は軽くネジ曲がってしまったのだ。

 

今は俺がレイラの体に憑依している?転生している?・・・かはまだわからないが、もしレイラの意識が覚醒した場合、両親が死んでいたらまた闇堕ちする可能性が高くなる。

 

つまりこの出来事(イベント)の両親の死亡フラグを折ることが、レイラが生き残る上で必要になってくるのだ。

 

 

俺はもうレイラが死ぬシーンは見たくはない。

 

あんなにいい子が、あんなバッドエンドを迎えていい筈がない。

 

そう、全ては俺の推しであるレイラのために──俺は全力で死亡フラグをへし折りにいくのだ──。

 

 

「そう、でございますか?では場所だけをお伝え致します。フィアは今頃中庭の方で寛いでいるか、もしくは厨房にて昼食を取っている最中かと思われます」

 

「中庭か厨房ね!ありがとうメイドさん!」

 

「・・・ふふっ、私のような一介のメイドに敬称は必要ありませんよ?お嬢様・・・私の事は──スフィア──そう、お呼びください」

 

 

素直に感謝を述べると、少し驚きつつも妖艶な笑みを浮かべたメイド──スフィア──は、俺の目線に屈むと諭すようにそう言ってきた。

 

・・・その豊かな胸部装甲が・・・もう少しで・・・見え・・・見え・・・。

 

 

───って、なにやってんだ俺。

 

こんなことしてる場合じゃねぇ!急いで行かないと!

 

 

「じゃ、じゃあ行ってくるね!」

 

「ふふっ・・・えぇ。気をつけて行ってらっしゃいませ、お嬢様」

 

 

 

───

──

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・中庭ってここだよな・・・」

 

無限に広がっているように錯覚してしまう程の長さの廊下を抜け、アニメの記憶を頼りに中庭らしき場所へと足を進めた。

 

中庭を彩る名前のわからない美しい花ヶや、蜜を運ぶハチ、神々しく舞う金色の蝶などがより一層中庭の美しさや華々しさを引き立たせていた。

 

そして、もう一人の美しい花が、彩花達に負けず劣らず美しく輝いていた。

 

 

「・・・いた」

 

 

間違いない、あの人がフィアだ。

中庭で優雅に紅茶を飲んでいる。

 

本来ならば、メイドが中庭で涼むなどあり得ないことだが、フィアは実は王族の隠し子であり、それを当代のグレイグ=セルナンド(レイラの父)が身請けしている、という過去があるのだ。

 

つまり、表向きはメイドとして扱っているが実質ゲストの様なものであり、メイドという扱いにしてはかなり自由度が高いのである。

 

まぁ、遠目からでもわかるあの美しさはどう考えても高貴な身分であることの証明にしかならないからか、その優秀な能力と雰囲気で同じメイド達にも一目おかれている───らしい。

 

 

「おーい!フィアッ!」

 

 

フィアの纏う雰囲気に一瞬圧倒されるが、そこは俺。遠慮なく呼び掛ける。

 

俺の声を聞いてか、フィアはピクッ、と一瞬体を震わせたかと思うと、飲んでいた紅茶を一旦置き、素早い動きで此方へ向かってくる。

 

 

「どうかなさいましたか?レイラお嬢様」

 

 

かなりの距離を走ってきた筈なのに全く息を切らさないフィア・・・だが、俺は別のモノに注目していた。

 

走る度に大きく揺れるその凶悪な・・・け、結構揺れるモノをお持ちで・・・。

 

 

そういえば百合園って胸大きい人多かったよなぁ・・・と、呑気に思い出す。

 

しかし、フィアって・・・レイラと5歳年が離れてて、今レイラが恐らく8歳だから・・・確か13歳だよな?

 

俺もいずれああなるのはアニメで分かっているが、やはり元男という自覚があるため、かなり複雑な気分だ。

 

 

「あのね、お父様とお母様の事なんだけど・・・」

 

「旦那様と奥様ですか?それなら今頃公爵様のお屋敷へ伺っていると思いまいすが・・・何か伝えたいことでも?」

 

「そ、そう!今すぐ伝えたい事があるの!だ、だからね?お父様とお母様の元に行かせて欲しいんだけど・・・」

 

 

突然だが、この世界は剣と魔法の百合の世界である。

 

もちろん魔法にも幾つか種類があって、火属性、水属性、木属性・・・のような感じで続いていくのだが、これは一般的に属性魔法と呼ばれているモノだ。

 

では俺がなぜフィアじゃないといけないと確信したのか・・・それは属性魔法に属さない、特殊魔法というモノがあるからだ。

 

代表的なモノを挙げるとすれば闇魔法や聖魔法、時間魔法・・・そして、空間魔法だ。

 

因に、闇魔法や聖魔法がなぜ属性魔法に属さないのかについてだが、属性魔法の方には既に、影魔法と光魔法が存在しているためだ。

 

まぁそれはともかく、今この場で俺が必要なのは空間魔法・・・分かりやすく言えば、転移魔法である。

 

 

これを所有しているのが、この国の王であるグラフ=カテーシアと、目の前のフィアなのである。

 

 

「・・・な、なぜお嬢様が空間魔法を知って・・・いえ、今はそれどころではありませんね。わかりました。私が旦那様と奥様までご案内致します」

 

「ほ、ほんと!?」

 

「えぇ、勿論です。それでは、私に捕まって下さい・・・」

 

 

緩和な笑みでそう言われ、メイド服のスカート部分を掴む───が。

 

 

「・・・空間魔法が失敗しては困るので、私がレイラお嬢様抱き上げて差し上げます」

 

「え?・・・あっ、ちょ!?」

 

有無を言わさず、13歳のか細い腕からは想像出来ないような力で胸元まで抱き上げられてしまった。

 

・・・ぐぅ、胸が・・・柔らかい・・・でも息がぁ・・・。

 

 

豊かな胸に顔が埋もれ、一瞬意識が飛び掛けるが何とか空気穴を確保する。

 

 

「ふふふ・・・」

 

 

そこから見えたフィアの表情は何処か妖艶としていて、これが13歳の浮かべる表情なのか・・・?と戦慄する俺だった。

 

 

「それでは───飛びますよ?」

 

 

そのセリフと同時に、フィアの足元に魔方陣らしきモノが現れ、光輝いているのが微かに見えた。

 

───どうか上手くいきますように。

 

そんな祈りを心の中で捧げながら、胸に埋もれた俺は美しい花園からフィアと共に消えたのだった。

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