とある百合エロアニメの悪役令嬢として転生してしまったんだが?~転生悪役令嬢は、死亡フラグをへし折りたい~   作:霧夢龍人

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心配

白狼との死闘から数日後、“空間侵削(ホロウグリンド)”による魔力の欠乏によって、俺は物の見事にベッドの上でミノムシになっていた。

明らかに無茶な動作で身体を動かしていたため、全身の筋肉痛が半端なく、魔力の欠乏and重度の筋肉痛というこの世の地獄を現在体験中だ。

 

ちなみに魔力欠乏は、かなり重い貧血がずっと続いてるような状態だ。ぶっちゃけ死にそうである。

 

回復術氏の元へ運ばれ、現在療養中のお父様とお母様に会いに行こうとベッドを抜け出そうと何度も試みるも、フィアに捕獲され失敗。

 

そのため俺は、死にかけのミノムシのような体勢でベッドの上から動かず(動けず)じっとしていた……のだが。

 

「ね、ねぇフィア……?」

 

「はい?なんでしょうかお嬢様」

 

「い、いやなんでしょうじゃなくて……」

 

フローラルが香るベッドの上、そこで俺はフィアから───バックハグされていた。

 

「フィア……なんでハグしてくるの?」

 

「?、なにか不満でもありましたか?」

 

俺が問いかけても、不思議そうな顔を浮かべて顔を傾けて微笑むだけのフィア。

 

駄目だ、話が通じない。

だがこの抱擁も、筋肉痛を刺激しない程度に優しく、しかし逃がさないようにがっつりと抱きしめられているため、嫌ではない。

 

そう、嫌ではないのだ。

 

というかもう、背中に当たる幸せな感触にそのまま体重を預けてしまいたいくらいである。

 

さすが公式で巨乳美少女と謳われたメイド、胸囲の戦闘力だぜ……なんて巫山戯ていると、今度は頭を撫でられた。

 

「……なんか、ペットだと思われてない?」

 

「そんなことはありませんよ?ただ……また、お嬢様が無理をしてしまうのではないかと心配で心配で……つい、こうしてしまうのです」

 

「うっ。ご、ごめんなさい」

 

ぐうの音も出ない正論に、思わず縮こまる。

ああしないとお父様とお母様を助けられなかったとは言え、俺は生き残れた。これは結果論だが、確かに俺はこうしてフィアに抱きしめられて、人肌を感じることが出来ている。

 

この身体はレイラのものだし、あまり傷つけるような行動はしたくないが……やるしかない。

 

俺がレイラの死亡フラグを折り、最良の結末(ハッピーエンド)へ導く。

俺はレイラの意識を乗っ取っているのか、憑依しているのか判断しかねるが、いつかレイラが戻ってきた時。

 

俺は彼女の居場所を作るのだ。

 

それがこの世界で俺が成す目標である。

だからレイラを死なせることはしないし、絶対に勝てる戦いしかしないつもりだ。

 

俺はフィアの柔らかな双丘に埋もれながら、今後のイベントをどう回避していくか計画を立てる。

 

「お嬢様、口を開けてください」

 

「あーん」

 

「っもう、指まで食べなくていいんですよ?」

 

「うへへ、ごめんなさい」

 

だから……決して、フィアの胸が心地よくて離れたくないとかではないのである。

うへへなんて、レイラでなければかなり気持ち悪い笑い声も、レイラがすればきゃわいい笑い声になる。つまりレイラは正義。

 

そして13歳でママの風格を漂わせているフィアも正義だ。ママと呼びたい、いや呼ばせてください。

それと決して下心はないが、もう少しこの感触を味あわせてください。

 

ちなみに余談だが、俺はこの世界でレイラの居場所を作ると言ったが、レイラには好きな人とくっついて欲しいため、今のところ誰とも恋仲になるつもりはない。

 

まぁ?百合エロゲーの世界だからといってそう簡単に好きになってくれるチョロインなんて出てくるわけないんだけどな。

 

と、少なくとも俺は、この時まではそう思っていたのだ。

 

───

──

 

「お母さま」

 

「ダメです」

 

「お願いします」

 

「絶対にダメです」

 

「フィアを守るためなんです!」

 

「そのフィアを危険に晒したのは誰かしら?」

 

本日二回目の正論。

俺はフィアに介抱されながら、お母様にとあるお願いごとをしている。

それは……。

 

「でもどうか、私に戦闘の師をつけてください!」

 

「ですからダメです!」

 

戦闘において未熟な俺に、師匠をつけて貰うことだった。

結果論でしかないが、俺は白狼を倒した。それは相性によるモノもあったし、闇魔法という出鱈目な性能をした魔法のおかげだ。

 

白狼を倒す過程で、確かに俺はフィアを危険に晒した。

 

だがそこに勝算はあったし、負けないだろうと思っていたからこそ俺はお父様とお母様を助けに向かったのだ。

それでも危険に晒したのは間違いない。

 

独学で覚えるしかないか、と半ば諦めかけていた時、救いの女神様が現れた。

 

「奥様、どうかレイラお嬢様のお話を聞いてくださいませんか?」

 

「っ、貴女……この子は貴女を危険に晒したのよ?結果的に私達はレイラに救われる形になりはしたけど、もし失敗していたら……この子は、こうして貴方に抱きしめられていないわ」

 

「お母様……」

 

「……存じております。ですが私はそれでも、レイラお嬢様を信じたいのです。決して奥様の危惧するようなことは起こさせません」

 

「分からないわ、もしかしたらまた無茶をしてしまうかもしれない。誰かを救うために、自分を犠牲にするかもしれない……それが怖いのよ、私は」

 

……俺は今も、フィアに転移してもらって両親を助けたのは後悔していない。それはフィアが闇落ちを回避するために必要な布石だったからだ。

でも親として、母としては俺の行動は危ういものに写ったに違いない。

 

ゲームやアニメと違って、死んでしまえばそれまでだ。

 

俺の命は、もはや俺だけの命では無い。

当たり前だが、レイラの命もまた俺の命だ。

 

ここはゲームじゃない。

 

リスタートもリセットもコンティニューも出来ない。

 

だとしても───「だとしても、私は師を請い学びたいです」

 

「……分かったわ、認めてあげるわよ。フィアもこうして言っているからね。けれどまた、今のように無茶をするようなら止めますからね」

 

「ありがとう、お母様」

 

「……貴方たちが無事で本当に良かったわ。もう二度と、無茶はしないで頂戴。勇気と無謀は違うのよ?」

 

「わかり、ました……」

 

あぁ、本当に。

レイラの家族は素晴らしい人達だ。レイラのことを第一に考え、フィアのこともこうして気にかけてくれている。

なら俺も、この思いに答えるべきだろう。

 

今日この日、俺は誓った。

無謀な真似はしないと。

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