とある百合エロアニメの悪役令嬢として転生してしまったんだが?~転生悪役令嬢は、死亡フラグをへし折りたい~   作:霧夢龍人

8 / 9
戦い6、百合4くらいのペースでいけたらいいなぁ。


師匠

レイラって最強じゃん、なんて思っていた時期が俺にもありました。

 

汎用性の塊みたいな闇魔法と、膨大な魔力。並外れた戦闘センスに加え───KAWAII(これ重要)

まさに最強、まさに天才。魔王や主人公を含め、作中の主要キャラ達が束になってかかっても勝てないほど、レイラの強さはぶっ飛んでいた。

 

だが、いるにはいるのだ。

レイラに匹敵しうる、最強の存在達が。

 

「よし、とりあえずお前、一旦私と戦え」

 

「ひぇっ……は、はい……」

 

プルプルと可愛らしく震えるレイラたん()をよそに、黒髪黒目のスタイルがいい美人が、俺から距離を取り離れる。

そして、何も無い空間から恐ろしいほど魔力が込められた金色の剣を取り出すと、俺に向かってこういった。

 

「死ぬなよ?」

 

「無理無理無理絶対無理ッ!?」

 

迫り来る金色の刃を見ながら、俺はゲームオーバーの画面を幻視した。

 

───“花咲く笑顔に百合の花を”。通称花ゆり。

この作品に出てくるキャラクターの個性は多種多様だが、その中でもよりぶっ飛んでる奴らがいる。

そしてそういうキャラに限って、めちゃくちゃ強いのだ。

 

例を挙げるなら、【東方不敗(トウホウフハイ)】や【西方修羅(セイホウシュラ)】、【南方無敵(ナンホウムテキ)】そして【北方最強(ホクホウサイキョウ)】に加えて 【全方覇者(ゼンホウハシャ)】などの東西南北と中央を住処にしている常識外れの化け物たちや、二人でひとつの【絶無(ゼロ)】と【虚無(レイ)】、個人で強い【神無(カンナギ)】、【名無(ナナシ)】などの野生の裏ボス達など、ラスボスである魔王よりも強い奴らは多岐にわたる。

 

あまりにも強すぎて、負けイベントだと思った人達が続出したほどである。

 

ちなみにこいつらに負けると、さすが百合エロゲーというべきか、主人公がばちぼこに陵辱されるシーンが描写される。

かなりえっっっっっなため、わざと負けて主人公の陵辱シーンを見る者も続出した。ちなみに俺もである。

 

さて、そんな頭のおかしいほど強い奴らだが……基本的には、奴らは自分たちの領域(テリトリー)というモノを持っており、そこに入らない限りは敵対されることは無い。

 

絶無(ゼロ)虚無(レイ)神無(カンナギ)名無(ナナシ)のランダムエンカウント裏ボス達を除いて、東西南北の強者たちは自分の陣地から動くことは無いのだ。

 

そう、ない───はずなのだが……。

 

「紹介するわね!この人があなたの戦闘指南をして下さる先生、“エンバー=ノーズ”先生よ!」

 

「ご紹介に預かったエンバーだ。今日からお前……レイラの戦闘指南をさせて貰う」

 

「……なんで?」

 

「どうした、私では不満か小娘」

 

「い、いえ!滅相もありません師匠!」

 

黒髪黒目に草臥れた様な服装と、どこかダウナーな雰囲気を醸し出す美女。原作やアニメを知らない者からすれば、大人な魅力を醸すダウナー系美人にしか見えないだろう。

 

だが、原作を知るものからすれば、俺と全く一緒の言葉を言うに違いない。

「なんで……ここにいるんだ?」と。

 

それもそのはず、彼女こそイカレ化け物キチガイ裏ボス、東の地を征し、ラスボスの魔王をワンパンで沈められる絶対的強者。

 

与えられた二つ名は“東方不敗(トウホウフハイ)───『灰燼の勇者』エンバー=ノーズ。

 

曰く彼女は、強すぎるあまり東の街を灰燼に卸し、龍や悪魔を悉く滅する勇者であると。

曰く彼女は、東の地を侵攻しようとした魔族数万人に対し、たった一人でその殆どを滅し、二度と侵攻できないようなトラウマを植え付けたと。

 

魔族一人につき、終盤まで鍛えた主人公ですら少し苦戦する程度であるはずなのに、それをいとも容易く殺す……否、虐殺してしまう程の実力を持っているのだ。

 

東西南北中央の化け物たちの中では比較的温和な方であるが、それでも腐っても化け物である。それ故、公式からも他の東西南北中央の化け物たちと合わせて、“世界の調停者(ガヴェルネーター)”と言われているくらいだ。

 

話を戻そう。

つまりだ。

 

なんでこんなチート野郎かここにいるんですかねぇ?

おかしくないか?普通におかしくないか?歩く裏ボスなんて揶揄されてる調停者が、なんで普通にレイラの屋敷にレイラの母からレイラの戦闘指南者として紹介されているの?

 

もしかしてバグってるのではないのだろうか?

 

「師匠……ほう、いい響きだ。心意気は十分ということだな」

 

「あっ、はい……」

 

「レイラ!頑張るのよ!」

 

「「お母様、たすけ」ちょっとこっちへ来い」

 

両手で握り拳を作りながら俺を応援するお母様に助けを求めるが、エンバーにドナドナされ連れていかれる。

ダウナー系美人に手を繋がれて連れていかれるなんて、前世ならとんでもないご褒美だが……なんで化け物(エンバー)なんだ。

 

「さて、開けた場所まで来たな」

 

「は、はい!」

 

連れてこられたんですけどね、なんて言えずにブンブンと頷く。

もし変になにか言えば、抗うことすら出来ずに即死するだろう。あ、今天国で手を振ってるお父様が見えた……。

 

連れてこられた場所は、騎士達がよく使う模擬闘技場だ。

今は開けた土地のようになっているが、魔力を込めれば自動的に魔力がドーム状に空を覆い、雨風関係なく鍛錬することが出来る。

 

まぁ、それは良いんだよ。

 

「よし、とりあえずお前、一旦私と戦え」

 

「ひぇっ……は、はい……」

 

なんで戦うことになってるんだよ??

こちとら魔法の使い方も素人の可愛い小娘やぞ!なんて言いたくなるが、こういう類の人には何を言っても無駄だろう。

 

即興で闇魔法から再び闇の剣を創り出して構えた。

 

すると、それを見た師匠は不敵に笑うと、何も無い空間から金色の装いが施された剣を取り出した。師匠の身の丈と同じくらいありそうなほどの長さと重厚感、触れたらやばいと思わせるほどのオーラがその刀身を包む。

 

え?やばくね?

あれ『葬滅剣(ソウメツケン)フ=ラガッハ』さんじゃない?

 

絶対に攻撃を外さないチート効果を持った、ストーリークリア後のやり込み要素でしか手に入らない最強剣じゃない?

 

……もしかして俺、ここで死ぬ?

 

数多の疑問が頭を支配し、絶望感を叩きつける。絶対一旦戦うって時に出す武器じゃない。

俺はそう言おうと抗議の眼差しを向けようとした。が、その時にはもう既に、師匠は抜き身の体勢だった。

 

いや待て、まだ俺は死にたくなッ!?

 

「死ぬなよ?」

 

「無理無理無理絶対無理ッ!?」

 

迫り来る黄金の刃にゲームオーバーの画面が幻視する。

闇魔法によって強化された視覚ですら追い切れない、コマ送りのように放たれた剣戟。

 

「おっもっっっ!?」

 

当たる寸前、まさに反応できたギリギリの距離で剣戟を防ぐ。重すぎて、受けとけた剣から伝わった衝撃で、自分の地面にクレーターが出来上がった。

 

……おいおい、おかしいだろ。

俺8歳だぞ?まだ子供だぞ?普通ここまでする「っ!?、あぶねぇ!?」

 

思考の途中で追撃が入る。辛うじて回避したが、剣閃が頬を軽く凪いだ。

当の本人は何処か楽しそうだ。

 

俺は全くもって楽しくないが。

ていうか、なんで白狼戦よりも死の危険を感じないといけないんだよ!

 

「削り取れ!空間侵削(ホロウグリンド)ッ!!」

 

お返しとばかりに空間侵削(ホロウグリンド)を放った。

闇の魔法によって産み出された空間の歪みは、師匠をも侵食しようとその身に迫るが、師匠はこれを難なく回避。

 

そしてそのまま、黄金の眩さを孕んだ剣によって俺の命を狩りとろうと剣を振る───

 

「……なに?」

 

「っはは、引っかかったなぁ!」

 

───えずに、そのままの体勢で硬直した。

それを成したのは、俺が先程放った空間侵削(ホロウグリンド)だ。

 

この魔法は空間を侵食し喰い破る魔法だが、その特性として削られた空間は再生するために、空間ごと移動し再生する形になる。

つまり、空間を小規模に食い破り続ければ高速移動ができるのだ。

 

今回したのはそれの応用。

空間侵削(ホロウグリンド)が攻撃魔法だと思わせて、敢えて回避させる。魔力を注ぐほど空間を削るので、多大に魔力を込めれば、周りのものを吸い込みながら大きくなる。

 

これによって吸い込まれつづけるため、体が引っ張られて攻撃することが出来ないという裏技である。

 

「これで私の勝ちだァっ!」

 

あとはそのまま動けない敵をじっくりと攻撃すれば───「まぁ、この程度なら造作もない」───すれば?

 

「……え?」

 

パキ、ミシミシ、という音ともに師匠の体が動く。

空間ごと移動しているはずだから、絶対に動けないはずなのだが……動いている。

ぴょんぴょん跳ねて、めちゃくちゃ元気そうにしていらっしゃる。

 

「おーまいごっど……」

 

「さて、続きといこうか。まさか、これで終わらないよな?」

 

拝啓、お母様。そして天国で手を振っているお父様とフィア。

わりぃ、オレ死んだ。

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