第1話
八幡side
オレは今、家の近くの河川敷でサッカーの練習をしている。もちろん1人でだ。え?サッカーは1人でするもんじゃないって?そりゃわかってるんだよ。オレも1人じゃなくて他のやつともやりたいさ。けど、この腐った目だからって一緒にして貰えなかった。だからこうして1人でドリブルやリフティングやシュートの練習をしている。
八幡「はぁ…やっぱ1人じゃな〜…」
すると…
「なぁ!そこのお前!」
八幡「ん?」
何やら声がしたので、そっちの方へ無理向いてみると、そこには同じ雷門中のジャージに、オレンジのバンダナと、こげ茶色でネコ耳のように逆立った髪をした男子がいた。
八幡「もしかして、オレを呼んだのか?」
「ああ、そうだ。なんでお前は1人でサッカーしてるんだ?」
八幡「いや、なんでって…一緒する奴がいねぇんだよ」
「え?そうなのか?」
八幡「ああ、こんな見た目だから一緒してくれねぇんだ」
「そ、そうだったのか…なんかスマンな」
八幡「いや、気にするな。もう、慣れてるから」
「慣れてるって…」
バンダナをつけた男子は苦笑していた。だって実際に慣れてるからな。
「だったらオレと一緒にしようぜ」
八幡「は?お前と?」
「ああ!1人より2人でやった方が楽しいだろ!」
八幡「まぁ、確かに1人よりは良いかもな」
円堂「だろ!あ、オレ円堂守。よろしくな!」
向こうが名乗ったんだ、こっちも名乗らないとな。
八幡「比企谷八幡だ」
円堂「よし、比企谷!シュート打ってこい!」
八幡「円堂、お前ゴールキーパーできるのか?」
円堂「あったりまえよ!オレのポジションはキーパーだからな」
八幡「そうなのか」
円堂「ああ。比企谷、お前はどこのポジションなんだ?」
八幡「オレか?オレはキーパー以外ならどこでも」
円堂「そっか。じゃあこい!」
八幡「わかったよ。じゃあいくぞ!」
オレはボールを置き助走をつけてシュートを打つ。オレのシュートは右に曲がる。円堂からしたら左に曲がっているはずだ。でも円堂はそれを瞬時に反応してシュートを止める。
円堂「いいシュートだ!」
八幡「止めたくせによく言うぜ」
円堂「はははっ、よしもっと打ってこい」
八幡「よし!」
そして円堂からボールを受け取り、またシュートを打つ。今度はさらに回転をかけ右にさらに曲がる。けどまた止められる。
円堂「すげぇ回転だな」
八幡「あ、ああ。1人でいつも練習してからな」
円堂「あはは…」
その後も円堂に向かって何度もシュートを打つ。止められたりしたが、逆に入ったりもした。
円堂「なぁ比企谷」
八幡「なんだ?」
円堂「サッカー部に入らないか?」
八幡「は?ウチの中学にはサッカー部ないはずだが?」
円堂「ないんなら作るんだよ!」
八幡「は?作る?サッカー部をか?」
円堂「ああ、そうだ!」
八幡「作ってもいいが、部員集まるのか?」
円堂「それだったら探すんだよ!」
八幡「ああ、そうかい。で?部員はお前だけか?」
円堂「いや、もう1人いる」
八幡「へぇ〜」
いるんだね。というよりコイツすげぇ暑苦しいやつだな。というよりサッカー部作るのにかなり熱が入っているようだ。でも、この数分間円堂とやっていると楽しかった。こんな思いは初めてだ。他の人とやるとこんなにも楽しいだなんて。
「あ、やっぱりここにいた」
八幡「?」
何やら声がしたので、そっちを見てみるとそこには、緑がかった髪の外ハネとヘアピン、そして同じ雷門中の制服を着た女子がいた。誰だ?
円堂「お、木野」
お前の知り合いか。そしたらもう1人の部員ってもしかしてコイツなのか?
木野「もう、探したんだからね」
円堂「悪い悪い」
木野「まったく…ん?そちらの方は?」
円堂「ああ、コイツは比企谷。今、一緒に練習してるんだ」
木野「そうなんだ。あ、私木野秋って言います」
八幡「比企谷八幡だ。同じ学年だから敬語はいいぞ」
木野「わかった」
円堂「それでさ木野。比企谷にサッカー部に入らないか誘ってたところなんだ」
木野「そうなんだ」
円堂「ああ!それで比企谷。どうだ?一緒にサッカー部作らないか?」
八幡「そうだな…」
木野「?どうかしたの?」
八幡「あ、いや。今まで誘ってもらえた事なかったから、ちょっと驚いてるんだ」
木野「そうなんだ」
円堂「でも今は違う!オレがお前を誘ってるんだ。だから一緒にサッカーやろうぜ!」
確かに今は円堂に誘ってもらえている。それは驚きもあるが、嬉しさもある。今まで誘って貰えなかったオレがこうして誘ってくれる人がいるんだからな。
八幡「ああ、いいぜ。サッカー部に入る」
円堂「本当か!?」
八幡「ああ」
円堂「あはっ!やったぁぁぁーー!」
円堂はその場でジャンプをして喜んでいる。
円堂「よろしくな!比企谷!」
八幡「お、おう」
というか暑苦しいやつだな。松岡〇造かよ。でも、コイツと一緒にサッカーをやるのも悪くないかもな。
木野「よろしくね。比企谷君」
八幡「ああ、よろしく」
そして翌日オレ達はサッカー部を作った。かなりボロい部室だがその中にはサッカー部の看板があった。
円堂「本当にサッカー部はあったんだ!」
八幡「みたいだな」
ここサッカー部は無いとか言ってたけど、本当はサッカー部はあったんだな。けど、なんで無くなったんだ?
円堂「よし!サッカー部設立だな!」
木野「そうだね」
八幡「まぁ、それはいいけど。その前に」
円堂「なんだ?」
八幡「ここ、部室にするのならまず掃除しようぜ。見る限りガラクタが沢山あるし、物置みたいになってるだろ」
木野「そうだね。まずは掃除からだね」
円堂「よし、それじゃあ掃除をはじめようぜ!」
円堂の一言で掃除が始まる。オレと円堂は中にある重いものを運ぶ係、木野は軽いものとかを運んだり、拭き掃除など役割を分担して掃除をした。そして中の掃除が終わると次は外の掃除だ。部室の壁や屋根などを拭いてキレイにする。これだけでもマジ疲れるな。そして……
八幡「ハァ〜…やっと終わった」
木野「おつかれさま比企谷君」
八幡「ああ、マジ疲れた」
木野「あはは…」
円堂「これでよしっと」
円堂はそう言ってサッカー部の看板を部室の前にかける。
円堂「これでサッカー部の設立だ!」
八幡「ああ…そうだな」
円堂「なんだ比企谷。元気無いな」
八幡「掃除して疲れたんだよ。普段教室の掃除でもここまでしねぇからな」
木野「まぁ、確かにそうだね」
円堂「でもこれでやっとサッカーできるんだ!嬉しいだろ!」
八幡「そうかもしれねぇが未だに3人しかいないんじゃな」
円堂「それは探したり、入ってくれるのを待つだけだ!」
八幡「……そうだな」
でも、やっぱり思ってしまう。ホントに入ってくれる奴なんているのかと。でもそう思っていたら2人入ってきた。1人は染岡、もう1人は半田という。この時マジで入ってきたと思った。
円堂「ほら比企谷見ろ!2人も入ってくれたんだぞ!」
八幡「お、おう。そうだな」
染岡「よろしくな」
半田「よろしく」
八幡「お、おう。よろしく?」
木野「なんで疑問形?」
八幡「仕方ねぇだろ。こういうのには慣れてねぇんだからよ」
まぁ、でも入ってくれたのはありがたい。今までは円堂と2人で練習してたからな。と言っても基礎練習みたいなものだけどな。そして、その日から2人を加えた練習もした。パス練習やリフティングやドリブルに守備練習それにシュート練習もした。2人の時と違って効率も良くて中々良い練習ができる。でも時々他の部活の人とトラブルになったりしたけどな。そんなこんなで1年が経過した時、更にこのサッカーに入部してくれる人が現れた。しかも4人も。1人目は宍戸、2人目は少林寺、3人目は栗松、4人目は壁山が入ってきてくれた。全員1年生だけどな。けど、入ってきてくれたのは嬉しい。それにオレもだんだん円堂達といるとやっぱり楽しいと思えるようになってきた。
…けれどそれでも人数は揃わない。オレを含めても8人。そんな人数ではサッカーなんてできないし、グラウンドも他の部活に取られたりしてまともな練習ができない。そしてだんだん他の奴らもやる気を無くしてしまった。
そんなある日
円堂「さぁ、練習だぁ!」
勢いよくドアを開け、暑苦しく宣言する円堂。
円堂「さぁ、練習……」
そしてまた円堂が声をかけるが他の奴らは一向に動こうとしない。栗松はゲームをして、宍戸はその横で見ている。染岡は椅子に座り腕を頭の後ろで組んでいる。半田はマンガを見ていて、壁山はお菓子を食っている。少林寺、改めて少林はなんかカンフーのポーズをとっている。あと、少林というのはみんなそう呼んでいるからオレもそう呼んでいる。
円堂「どうしたどうした。ずーっと、練習してないんだぞ」
まぁ、確かに練習はしていない。
染岡「グラウンド借りられたのかよ」
円堂「…そ、それはこれからまた、ラグビー部に交渉して」
半田「だと思った」
栗松「どうせ笑い者になるだけでやんすよ」
宍戸「八人ぽっちならテニスコートだけでも十分だろうって」
半田「グラウンドが空いてる日にやればいいんじゃないの」
壁山「そうそう」
少林「空いたことないけど」
おいおい、コイツら言いたい放題だな。まぁ、事実だけどよ。
円堂「俺達はサッカー部なんだ!」
そう言って部室に貼ってあったポスターを叩き。
円堂「フットボールフロンティア今年こそこれに出ようぜ!な、半田、染岡」
半田「無理無理」
円堂「な、壁山、少林」
壁山「…」
何も言わない壁山、少林。
円堂「な、栗松、宍戸」
栗松「部員8人じゃ試合にならないでやんす」
ゲームしながら言うなよ。
円堂「お前らな!サッカーやりたくてサッカー部に入部したんだろうが!サッカー部がサッカーをやらなくてどうすんだよ!」
そう言って部室を出ていく円堂。まぁ、ある意味正論だな。
半田「何1人で暑くなってんだ?」
染岡「頑張ってもしょうがないさ。もうすぐ廃部っていう噂もあるしな」
「「「「「廃部!?」」」」」
え!マジかよ。廃部って…なんのために円堂と一緒にこのサッカー部を作ったんだ。オレも1人ではなくて他の人達とサッカーをやりたいからこのサッカー部に入部したんだ。でも、どうすれば…まぁ、今は考えても無駄だ。廃部も所詮噂だ。嘘に決まってる。そう思い部室を出ると1人でボールを蹴ってる円堂がいた。
円堂「お、比企谷。一緒に練習しないか?」
八幡「いいぞ」
そして少し円堂とパス練習をしていると…
木野「円堂くーん、比企谷くーん」
八幡「ん?」
オレと円堂を呼ぶ声。それはウチのサッカー部のマネージャーの木野だった。
円堂「おう、木野」
八幡「うっす」
木野「ごめん、グラウンド借りられなくて」
円堂「仕方ないさ」
木野「みんなは?」
円堂「いつもと同じ」
木野「練習しろって言ってこようか?」
八幡「言っても無駄だろ」
木野「またそういう事言う」
八幡「事実だろ?」
木野「そうかもしれないけど」
円堂「木野ありがとう。でもいいよ。そのうちやる気になってくれるさ」
八幡「そうだと良いけど」
円堂「大丈夫さ!アイツらだって本当はサッカー大好きなんだから」
八幡「かもな」
木野「じゃあまた河川敷行くんだ?」
八幡「河川敷?何しに行くんだ?」
円堂「実は小学生チームの練習に付き合ってるんだ」
八幡「へぇ〜」
木野「でも小学生相手で練習になってるの?」
確かにそうだな。
円堂「ああ……。けどアイツら結構やるんだぜ!木野も比企谷も見りゃわかるって」
八幡「そこまで言うんなら見てみようかな」
円堂「本当か!ありがとうな!」
そして時間は夕方になる頃オレと円堂は河川敷で小学生チームと練習をしていた。小学生だと思っていたら、コイツら少しだがやる。シュートの狙いやカット、ドリブルも中々やるようだ。
円堂「どうだ比企谷」
八幡「確かに少しはやれるようだな。お前が指導してんのか」
円堂「ああ、まぁな」
そしてその後も練習が続いた。オレも混ざり練習をした。こうやって見ると、小学校低学年の頃の小町を思い出すな。あ、小町は死んでないぜ!死なせはせんよ。生きてるよ。今は小学校高学年だからな。そんな時1人の小学生の男子が円堂に向かってシュートを打つ時。
「今度こそ俺が決めてやるー!見ろ俺の必殺シュート!」
そう言ってボールを蹴ったがボールはゴール出なくて横に飛び、近くを歩いていた人の前を通り過ぎる。
「「っ!」」
なんかヤバそうな人達だな。見るからに高校生ぐらいの人達だ。
「誰だ!これを蹴った奴は!」
円堂「だ、大丈夫ですか?すいませんでした。あのボールを…ぐっ!」
八幡「っ!」
円堂はもう1人の高校生に腹を蹴られて、膝を地面につける。
木野「円堂君」
「ボールってこれか?」
そう言ってボールの上に座る高校生。チッ!
「あれ?雷門中じゃねぇの?部員全然いねぇ弱小サッカー部ですよ」
「くだらねぇ。ガキ相手に玉蹴りか?」
「ヤスイさんお手本見せてやっらどうです?」
「いいねぇ。やってやろうじゃねぇの。ぺっ」
そう言ってボールに唾をかける高校生。
円堂・八幡「「っ!」」
コイツ!なんてことをしやがる。
「あらよっと!」
そしてボールを蹴るが流石初心者。ボールは大きく曲がる。けど、曲がった先には一緒に練習していた小学生がいた。ヤバい!けどここからじゃ間に合わねぇ!どうしたら…と思っていたら河川敷の上から1人の青年が走ってきた。見た目は白く逆立った髪で、白のパーカにオレンジジャケットみたいなのを着ている。その青年はジャンプをして飛んできたボールを蹴り、さっきボールを蹴った高校生の顔面に当てる。うわぁ…痛そう。けど、少しスカッとした。
八幡「すげぇ…」
するともう1人の高校生が
「てんめぇ!」
と言うと青年はその高校生を強く睨んだ。
「ひっ!お、覚えてろよ!」
そう言ってのびている高校生を担いで走って去っていった。
「ありがとう」
小学生がお礼を言うとすごい優しそうな笑顔を向ける。そしてポケットに手をつっこみ去ろうとした時
円堂「待ってくれ!」
円堂が呼び止めようとする。
円堂「お前のキックすごいな。サッカーやってんのか?ね?どこの学校なんだ?良かったら一緒に練習しないか?」
円堂よ、さすがに初対面で図々しくないか?けど、その青年はちらっと円堂を見ると、何も言わずに去っていった。
円堂「あ、おい」
円堂は止めも残念そうな顔をしている。
八幡「おい、円堂。流石に初対面で図々しくないか?」
円堂「でも、一緒に練習した方が楽しいじゃないか」
八幡「そうかもしれないが相手の事も考えろよ。まず、お礼を言うとかさ」
円堂「あ、そうだった。あは、あはは…」
まったく……コイツと言うやつは。
八幡「だでーま」
小町「あ、おかえりお兄ちゃん。遅かったね。もしかして練習?」
八幡「まぁな」
小町「そっか。じゃあご飯の前にお風呂入ってきてね」
八幡「はいよ」
けど、あの時の奴。ホントすごいキック力だったな。オレもあんな風に蹴ってみたいもんだ。
いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。