八幡side
あれから本当に御影専農戦までの1週間の間、イナビカリ修練場で特訓をした。いや、本当死ぬかと思ったけど何とかお兄ちゃんは生きてるよ小町。オレ以外の奴らもかなり疲れている。体がボロボロになりそうなくらい特訓をした。そのおかげで小町や母ちゃんに心配されたな。そんなこんなで試合当日。オレ達は試合会場である。御影専農の学校に来ている。あとついでに御影専農は正式名は御影専修農業高校附属中学校と言うらしい。かなり長い名前の学校だな。だから略して御影専農と言うのか。まぁ、これは試合には関係ないけどな。
『さあ、フットボールフロンティア地区大会2回戦の開始です!!』
実況のその一声に、会場全体が興奮の渦に包まれる。そういえば実況しているのは確か…名前は…角馬圭太と言ってたな。
角馬『本日は雷門中と御影専修農業高校附属中学校の対戦!御影専農のその強さは帝国に匹敵するとも言われています!それに対し雷門中はどう戦うのか!?』
オレ達はイナビカリ修練所での特訓を乗り越えたんだ。アイツらがとったというデータや予測を超えている。……多分。だからアイツらの思い通りに行かせない。こんなところで負けてたまるかよ。
フォーメーションは野生中戦と同じでオレはMFだ。FWはいつものように豪炎寺と染岡のツートップ。
角馬『審判によるキックオフのホイッスルが…鳴ったァァァ!!試合開始です!!』
そんな事を考えていると試合が始まった。ボールは豪炎寺から染岡、染岡から豪炎寺。そしてまた豪炎寺から染岡に渡り攻めていく。オレもその後ろを追いながら攻めていく。そして目の前に立ちはだかるのは先日、俺達をボロボロに打ち負かしてくれたエース下鶴。
染岡「何ッ!?」
染岡が驚きの声を漏らす。一瞬にしてボールを奪われただとか、そんなことではない。下鶴は動かないのだ。チッ、舐めやがって。多分だがオレ達のシュートでは1点すら取れないとか思っているのだろうか。
杉森「ディフェンスフォーメーション、ガンマ3。発動!!」
キャプテンでありキーパー、杉森がそう指示を出すと、全員が素早く動いて陣形を組む。その様はさながら機械のよう。確かにサッカーサイボーグと言われるだけあるな。パスを受け取った豪炎寺がゴールに目線をやると、目の前には徹底されたマークが。
染岡「豪炎寺こっちだ!!」
染岡が豪炎寺からのパスを受け、そのままシュート体勢をとる。
染岡「ドラゴンクラッシュ!」
蒼龍がボールと共に暴れ回る。向かう先はゴール。が、ゴール前には4人のDFが真ん中に道を開けるように待ち構える。その4人はボールとすれ違いざまにボールに蹴りを加える。DF達を抜ける頃にはシュートの威力は完全に殺され、杉森は苦労することなくボールをキャッチする。なるほどな、角度とか力加減とか色々計算されたシュートブロックか。嫌だなホント。
染岡「何だ…今の守備は!?」
杉森「当たり前だ。君達のサッカーなど、全て予測出来ている!」
八幡「一旦戻るぞ染岡。攻撃に備えるぞ」
染岡「ああ」
その後杉森は顔色一つ変えることなくロングパス。相手は一気に前線へと上がる。こちらのゴールまで迫る御影専農FW陣。だが、こちらのDF陣がそれを見逃してはくれない。風丸が一瞬で接近、スライディングでボールを奪い取る。早いなアイツ。前よりも早くなっているようにも見える。これもイナビカリ修練所のおかげかね。そして風丸はボールを持って上がっていき、宍戸にパスをする。けどすぐに御影専農がボール奪い返し上がっていく。速いな、計算だけじゃなくフィジカルも整っている。マックスと栗松が相手の進行を許してしまう。迫る10番は自分に任せ、下鶴のマークに着くように風丸達に指示を出す円堂。
ん?いや、ちょっと待て
八幡「違う円堂!逆だ!逆からもう1人攻めてきているぞ!」
そう、下鶴とは反対方向に9番の山岸が上がって来ていたのだ。
下鶴「何!?」
円堂「わかった!」
下鶴や他の御影専農の奴らも驚いている。
山岸「チッ」
9番はダイレクトでシュートを撃つも、それをすぐに反応してキャッチする。もしあの時オレが言ってなかったら、まだ状況が変わっていたかもしれないな。そして円堂はすぐさまパスを出そうとするも出せなかった。なぜなら付近の味方が相手にマークされていたのだ。なら、こうするまでだ!オレはそう思い走り出す。それをすぐに気づいた円堂が
円堂「比企谷!」
八幡「はい、っよ」
円堂からロングパスを受け取る。そのまま上がっていく。いや、少し下がっておいて良かったな。
八幡「お前ら上がれ!」
オレの掛け声と共に攻撃陣が上がっていく。オレのすぐ近くに豪炎寺も上がってくる。そしてオレはアタッキングサードに差し掛かると同時にボールを上に上げて、自分は回転しながら飛び上がる。そして足には黒い炎を纏って…
八幡「ダークトルネード!」
自分でも分かるくらい前よりも威力が上がっているのを確認できる。基礎能力の向上によって既存の必殺技の威力が底上げされたのだ。そして黒い炎を纏ったシュートは杉森に向かっていっている。
杉森「シュートポケット…ぐッ!!」
シュートがゴールを貫くことはなかったが、予測より速く、力強いシュートだったのだろう。杉森はセーブしきれずボールを弾く。ボールが弾かれたその先にいるのは豪炎寺だ。
八幡「やれ!豪炎寺!」
豪炎寺「ああ!ファイアトルネード!」
豪炎寺の想いに呼応するように勢いを増した火炎が脚に宿る。
空高く上げられたボールに回転しながら迫り、同じ高さまで上昇すると同時に勢いを乗せて蹴りを叩き込む。打ち出されたボールは火炎を纏い、敵を打ち破らんとゴールへ迫る。
杉森「シュートポケット!!」
先程と同じく、腕を大きく開いて溜めた力をバリアとして展開する。が、またしても止めきることは叶わずボールは弾かれてしまう。それを再びキープするのは豪炎寺、背後から上がってきた染岡と共にゴールへ向かう。染岡が蒼い龍を使役し、豪炎寺が龍に炎を吹き込む。
染岡「ドラゴォォン!!」
豪炎寺「トルネェェド!!」
炎に染められた紅龍が容赦無く牙を剥く。杉森は再びシュートポケットを展開し迎え撃つ。苦悶の声を上げながら杉森は耐える。ひたすら耐える。それでもドラゴントルネードの勢いは殺しきれず、ボールは前に進もうとする。それを咄嗟に弾いて何とかやり過ごす杉森。
だが。
壁山「豪炎寺さん!!」
豪炎寺「──よし!!」
後陣から上がってきた壁山が豪炎寺と合流すると同時に大きく飛ぶ。豪炎寺は壁山を踏み台にさらに高くまで跳躍。オーバーヘッドキックで放たれたボールは、稲妻の様に降り注ぐ。
壁山「イナズマ落としィィ!!」
杉森「ロケットこぶしッッ!!」
杉森は今まで見せてこなかった技でイナズマ落としに抵抗する。円堂のゴッドハンドのように拳にエネルギーを集約させ、それをそのまま拳の形で打ち出した。打ち出された拳状のエネルギーは襲い来るイナズマ落としを真正面から弾き飛ばす。と言うよりもオレ達の連続シュートを全て防ぐとはな。
杉森「オフェンスフォーメーション、デルタ5!!」
杉森がオフェンスの指示を出すと、御影専農は一気に攻撃的なプレイへと転向する。ボールの奪取を試みるも、あっさりと躱されてしまった。
そのまま一糸乱れぬ連携で御影専農は前へ前へと上がっていく。当然全員タックルなりスライディングなりを仕掛けるが全てやり過ごされる。一気にゴール前へ。
円堂「ディフェンス囲め!!」
風丸と土門が10番のマークに着く。が、先程同様サイドから走ってきていた9番にパスを出し、そのままキック。迫るボールに円堂が飛び付くが、ボールはその前で曲がる。狙いはゴールではなく、そのまた逆サイドから上がってきていた下鶴へのパスだった。
円堂が踏ん張って耐え、下鶴のシュートをパンチングする。が、そのボールにも回転がかけられており、拳に触れた瞬間9番の方向へと曲がっていく。
そのまま9番がヘディングでボールを押し込んで──
角馬『ゴール!!決まってしまった!!御影専農、これで1点先取だ!』
円堂の健闘むなしく、無情にも失点を告げるホイッスルがなる。ヤツら、あんな所まで計算して狙っていたというのか…?
円堂「クッソォォ…!!」
円堂が地面に拳を叩き付けて悔しがる。だがまだ1点だ、大丈夫だ。まだオレ達攻撃陣が攻め立てれば取り返せる。まだ前半だ。なんとかなるだろうな。
が、その想いは虚しくも打ち砕かれることとなる。ホイッスルでこちらのキックオフから試合再開。すぐさま染岡から9番がボールを奪い取り、下鶴へ。下鶴は───ゴールの杉森まで。
バックパス?何故攻めてこない?…いや、待てよ。……まさか、こいつら……!
八幡「お前ら、何としてもボールを奪え!コイツら、このまま逃げ切るつもりだ!」
「「「何!?」」」
ずっとキーパーがボールを持っている訳にも行かず、杉森は1番近いDFへパスを回す。そして全員でボールを奪おうとするも、次から次へと別の選手にパスを回していく。
やはりコイツらはこのまま前半逃げ切るつもりだ。
そうこうしてるうちに前半を終えるホイッスルがなってしまう。
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そしてオレ達は自分達の控え室に向かっている途中、御影専農の奴らと出くわすと、円堂が杉森に話しかける。
円堂「杉森!」
円堂の声で杉森とその他の御影専農の奴らも円堂の方に振り向く。
円堂「なんで攻撃しないんだよ。あれじゃあサッカーにならないだろう!」
杉森「それが監督命令だ」
円堂「なんだって!?」
ホントなんだってばよ。そんな理由で攻撃しないのかよ。
杉森「10点差でも1点差でも同じことだ。リスクを侵さずタイムアップを待つ」
円堂「…何もかも計算通りに行くと思っているのかよ!」
オレ達のデータは全て把握している。故に杉森からはゴールは奪えない。俺達は既に負けている。そう淡々と語る杉森。すると我慢できなかったのか円堂が
円堂「そんなの分からないだろ!勝利の女神は勝利を強く信じる方に微笑むんだ」
杉森「データに無いことは決して起きない」
円堂「データ、データって、そんなサッカーやってて楽しいのか!?」
杉森「楽しい?」
どうやらこいつらの頭にハテナマークがいっぱいだろうな。
円堂「そうさ!サッカーは楽しいもんだろ!仲間とボールを通して通じ合う素晴らしいものだ!」
杉森「素晴らしい?君の意見は理解不能だ」
円堂「不能?それはこっちのセリフだ!見てろ!俺達がお前らに本当のサッカーを見せてやる!」
そう言って指を指す円堂。というかコイツらホントに感情とか無いのか?そこまでサイボーグになったのか?
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角馬『あーっと!後半早々、御影専農は全員下がってのディフェンス!これでは雷門中守りを崩せない!!』
やはりと言うべきか、御影専農はボールを下げ、前半の最後同様守りに徹するつもりだ。が、何やら司令塔である杉森の表情には曇りが見える。今はそんな事よりもボールを奪うことだけ専念しよう。
それに必殺技ではないが、あれを試してみるか。そう思いオレはパスを受けた眼鏡をかけた大部に向かってスライディングタックルをする。けどそんなスライディングタックルをヒラリと横に躱される。けど、オレはそれを待っていたのだ。そう思いオレは地面に片手をついて、それを軸にして身体を反転されて2発目のタックルを打ち込む。
八幡「フッ!」
大部「な!?」
そしてオレは相手からボールを奪う事ができたのだ。
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今のはキャプテン翼の松山光が使うフェイントタックルと同じようにしてボールを奪いました。
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角馬『なんと!比企谷がボールを奪う事ができた!比企谷のスライディングが躱されたと思いきや!反転して大部からボールを奪った!』
杉森「なんだと!?」
どうやら杉森や他の連中も驚いているようだ。そんな事は気にせずオレはそのまま上がっていく。けれどすぐに我に返った杉森が指示を出す。そしてすぐさまオレの前に2人が立ち塞がる。これじゃせっかく奪ったのに、シュートすら出来ない。どうすればと思っていると後ろから声をかけられた。
円堂「比企谷!こっちだ!」
呼ばれて振り向いてみると、円堂がいたのだ。え?何やってんの?お前?ゴールはどうした?けど、今はそんな事に構っている暇はない。今ので驚いたのか相手の動きが止まっているうちにオレは円堂にパスを出す。それを受け取った円堂は勢いよくゴール前まで上がっていく。まぁ、今思えば攻撃してこないんじゃゴールに居ても仕方ねえもんな。でもだからってここまで上がってくるかね普通。
角馬『なんと!キーパー円堂!ゴールをがら空きにして上がっていくぞ!』
杉森「何だと!?」
どうやら、杉森も相当驚いているようだ。
円堂「行くぞ!!うおおおおおお!!」
杉森「君のシュートは…データにない!!」
悲鳴に近い叫び声を上げながら杉森は円堂のシュートをキャッチする。円堂は心の底から悔しがる。
杉森「なぜお前が攻撃に参加する。」
円堂「点を取るために決まってるだろ!それがサッカーだ!」
円堂が堂々と告げる。まぁ、確かにそうだけど……
染岡・八幡「「いいから!早く戻れ!」」
染岡と全く同じことを円堂に向かって言う。
円堂「へへっ!」
八幡「笑ってる場合か!」
円堂は何やら満足そうに自分ゴールへと戻っていく。はぁ…まったく。
杉森「オフェンスフォーメーション、シルバー1だ!」
御影専農監督「ま、待て!命令違反だぞ!」
杉森は「オフェンス」を指示した。ベンチの監督は「命令違反」と声を荒らげた。なるほど、お前は自分の監督の指示に逆らったのか。
杉森が蹴ったボールを追いかける。ボールを持った相手の前には壁山。すると、突然壁山は倒れ込む。倒れ際に頭でボールをマックスにパスしてみせる。
壁山「松野さん!」
マックス「へえ、やるじゃん壁山!」
すぐさまボールを奪いに来るが、マックスは華麗なターンで躱してみせる。どうやらイナビカリ修練所の成果が出てきているみたいだ。豪炎寺にパスを回そうとした瞬間、下鶴のスライディングでボールを零してしまう。こちらのディフェンス網を掻い潜り、下鶴はゴール目前まで迫る。待機していた風丸と土門がボールを奪いにかかるが──
下鶴「パトリオットシュート!!」
突如下鶴は高くボールを蹴りあげる。ファイアトルネードか、と警戒したが下鶴自身は跳躍する素振りを見せない。その時だった。ボールは突如煙を吐きながら急降下。その様子はさながらパトリオットミサイルの様。そのシュートを拳でボールを弾く円堂。弾かれたボールはラインの外へ。
相手のコーナーキックだ。蹴られたボールは再び下鶴へ。空高く蹴り上げ、再びパトリオットシュートを放つ。するとまたもや円堂が前に出てくる。何してんの?ホント。ゴールがら空きだよ。すると
円堂「豪炎寺、こっちだ!」
豪炎寺「円堂、何する気だ!」
円堂「止まるな!このままシュートだ!!」
豪炎寺「何!?」
円堂「俺を信じろ!」
突然の提案に豪炎寺も戸惑う。だがもうシュートは目前までせまっている。半ば強制的に豪炎寺は円堂と共にボールを迎え撃つ。
円堂「行くぜ!」
豪炎寺「おう!」
そんな掛け声をしながら、2人はツインシュートでシュートを打ち返す。するとそのボールは雷が辺りに迸る。あれは…新必殺技なのか?
2人のカウンターキックで打ち出されたボールは、そのまま真っ直ぐ相手ゴールへと稲妻と共に進んでいく。
杉森「有り得ない…有り得るかァァァァ!!!」
これも予測していなかったのだろう。杉森が雄叫びと共に腕を前へ突き出す。稲妻は守護神の守りを突き破り、 ゴールネットを揺らす。
角馬『遂に、雷門中のゴォォォル!!!』
どうやらこれで同点。振り出しに戻ったという訳だな。
円堂「やったぜ!守備と攻撃が同時なら、ヤツらも対応出来ないんだ!」
豪炎寺「ああ!あんな技が決められるなんてな。」
円堂「ほんとだ。何か身体が軽いとは思ったんだけど。」
それも特訓の成果だろうな。けれどまだ同点。気が抜けないな。そして相手のキックオフから再開する。それから他の連中の動きも前とは違う。やはりこれもイナビカリ修練所の特訓でオレ達の身体能力がレベルアップしているからだろうな。
染岡「比企谷!」
八幡「おう」
染岡からボールを受け取り上がっていく。すると目の前に相手DFが立ち塞がる。けれど無意味だ。
八幡「ファントムドライブ!」
ファントムドライブで相手DFを抜き、ゴール前まで上がっていく。そしてペナルティエリア前まで行くと、杉森と1体1の形になる。そしてオレはボールを上にあげて、回転しながら飛び上がる。
八幡「行けっ!ダークトルネード!」
野生中やさっきよりも力が入る。多分、さっきよりもパワーが上がっている筈だ。
杉森「シュートポケット!」
腕を大きく開いて溜めた力をバリアとして展開する。けれど威力は落ちずそのままバリアを貫通し杉森ごとゴールの中へとねじ込む。
角馬『ゴォォォル!!!雷門中2点目!比企谷のダークトルネードで逆転だァァァ!!』
八幡「よし」
オレは小さくガッツポーズを取る。やはり点を取るのは嬉しいな。
円堂「さあ皆!!残りも油断せずにガンガン行くぞ!」
「「「「おお!」」」」
後ろからの円堂の声を受けて、全員が今一度気を引き締め直す。闘志に充ちた雷門側とは対象に、御影専農側は何やら絶望しきった表情。力無いキックオフ。すぐさま染岡がボールを奪い全速前進。御影専農は誰一人として動かない。否、一人。未だその瞳に闘志を宿し続けている者がいた。
染岡「うおおおお!!ドラゴォォンクラッァァシュ!!!」
染岡全身全霊のドラゴンクラッシュ。試合序盤で繰り出したそれよりも明らかに強力だ。
杉森「シュートポケットオォォォォォ!!!」
再び守護神は吠える。展開したバリアが打ち砕かれようと、決して諦めずに腕を突き出す。暴れる蒼い龍を抑え込み、守護神はボールをその手に収める。
下鶴「キャプテン…!」
杉森「皆!俺は負けたくない…皆も同じなんじゃないか!?最後まで…戦うんだ!!」
杉森が頭に着けていた電極を剥がす。恐らく、あれでデータの管理、情報の共有を行っていたのだろう。それを見て、フィールドプレイヤー達も全員電極を剥がす。そしてそいつらの眼には熱い闘志が満ちていた。フッ、なんだよ。そんな顔できるんじゃねぇか。初めっからそうしていればいいのに。
杉森「最後の1秒まで諦めるなァ!」
杉森の豪快なスロー。ボールは高く、遠くへ飛んでいく。それを追いかけていく御影専農イレブン。彼らは今この瞬間、自分達の意志に従ってボールを追っていた。
円堂「面白くなってきた!」
そこから全身全霊全力のぶつかり合い。攻めて守って、また攻めて。先程までとは別のような空間へと変貌を遂げる。観客達の声も、次第に熱が籠っていった。
円堂「決めろ!豪炎寺!」
円堂はそう言いながらロングスローで豪炎寺へと渡す。そして豪炎寺はボールが自分の上まで来ると、回転しながら飛び上がる。
豪炎寺「ファイアトルネード!」
豪炎寺がファイアトルネードを撃とうとしたと同時に下鶴もファイアトルネードを撃ち、ボールを同時に蹴った。行き場を失った力は、近くにいた豪炎寺と下鶴へ襲い掛かる。体勢を崩した2人はそのまま転落、身体を痛めたのか顔を歪めている。
杉森「改ァァァァァァ!!」
杉森が下鶴の名前を呼ぶ。それに答えるように、下鶴は頭でボールを杉森に。
下鶴「キャプテン…」
杉森「───オォォォォォォォォォ!!!」
杉森は咆哮と共に駆け出す。守護神が、護るべき場所から飛び出した。いや、お前も攻めてくるのかよ!杉森はどんどん上がっていく。キーパーにも関わらず、雷門のディフェンスを潜り抜けて。
杉森「行くぞ!!円堂ォォォォォォォォ!!」
放たれたシュート。空気を斬り裂きながらゴールへと迫る。
円堂「ゴッドハンドォォォ!!!」
杉森の全力に、円堂も全力を持って答える。この試合で初めて顕現した神の手。好敵手の全力を、真正面から受け止める。
杉森「円堂ォォォォォォ!」
杉森は円堂の名前を大声で叫ぶ。なんとも力が入った気持ちだな。そして円堂は杉森の全力シュートをガッチリと止めた。
角馬『試合終了ォォォ!!準決勝進出を果たしたのは、雷門中だァァァァ!!』
その声で会場は一気に盛り上がる。負けてもいい試合だったぞとか、御影専農の連中への言葉が聞こえてくる。オレはそんな中、豪炎寺の元へ向かい。
八幡「大丈夫か?豪炎寺」
豪炎寺「ああ」
嘘だろ。未だに立ち上がれないのに、何が「ああ」だよまったく。
八幡「ほら、肩貸すぞ」
豪炎寺「すまん、助かる」
八幡「どういたしまして、っと」
オレは自分の肩を貸して豪炎寺を助け起こす。
染岡「比企谷、俺も手伝うぞ」
八幡「おう、頼むわ」
染岡「任せろ」
染岡の手伝いもあって豪炎寺は立ち上がることができた。まさかと思うが捻挫か?それとも骨折か?どっちにしても1人では歩きづらいだろうな。すると
円堂「杉森!」
円堂が自陣へ戻った杉森を追いかけ、声を掛ける。
円堂「またサッカーしような、サッカー!」
杉森「…ああ、また!」
2人は握手を交わす。そこでまた拍手喝采の勢いは強くなる。ホント御影専農の奴ら、いい顔になったな。
こうしてオレ達は準決勝まで駒を進めることが出来た。
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翌日
いつも通り部室にいるのだが…
円堂「ええ!ドクターストップ!?」
そう、昨日の下鶴との激突なのか、落下した時受け身を受け損なったのか分からないが、それでドクターストップになったらしい。そうすると次の準決勝には豪炎寺は出場出来ない。
豪炎寺「すまん」
円堂「そんなぁぁぁー」
なんとも弱々しい声を出す円堂であった。
いかがでしたか?ではまた会いましょう。