Re:エヴァンゲリオン シンジとアスカの物語   作:鱸のポワレ

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第拾壱話 人の造りしもの

碇ゲンドウの場合

 

私にとってユイという存在は生き甲斐であり、彼女と出会ったその瞬間から私の人生は彼女を中心に回っていた。

そんな彼女が初号機に取り込まれた時から、私の感情は死んだも同然だった。

だから私は彼女と再び会うために人類補完計画を遂行しようと試みたのだが、まさかこんなにも近くにいたとは思ってもいなかった。ユイ以外の生きがいが。ユイが残してくれた大切な命。

すまんなユイ。お前と会うのはもう少し先になりそうだ。

シンジの成長と、そして孫の顔を見るためにもう少しだけ頑張って生きるよ。君がいないこの世界で。

 

 

⭐︎

 

 

量産型との戦いから半年が経った。

待ちに待ったこの日がとうとうやってきたのだ。

シンジとの食事の日が。

とは言ったもののシンジと会うのは実に半年ぶり。お互いに緊張するので2人きりではなく、それぞれ見知ったものを1人ずつ連れていくことになった。

もちろん私が連れてきたのは冬月。

そしてシンジが連れてきたのは、

 

「ちょっとなんで私なのよ。他にもいるじゃないミサトとか、あと、それから、ええっと……」

「やっぱりアスカが最初に頭に浮かんだからさ。それに色々話しもしたいし。将来のこととか」

「そ、そう。将来ね。まあ、それなら仕方ないわね」

 

式波・アスカ・ラングレー。

絡みはゼロ。全くない。

ネルフのトップという立場ながらどっからどうみても普通のおじさん。そんな私が現役の女子中学生と話す話題などなかった。

そもそもシンジとすらまともに話せていなかったのに、そのシンジの友達?となんてもってのほかだ。話せるはずがない。

しかしそれにしても見過ごせない単語があった。『将来』だと。それはつまりそういうことなのだろうか。これは確認するしかない。

 

「君たちは付き合っているのか」

「ええ!?何言ってるんだよ父さん!」

 

シンジが大袈裟に反応をする。

ふむ。この反応からして付き合ってはいなそうだな。やはりただの同居人。ただの友人か。

 

「いや、その、僕とアスカは付き合ってるというか……」

「付き合ってるわ。それもちゃんと結婚も考えてる」

「ほう」

「ちょっとアスカ!?」

 

キッパリと言い切ったか。シンジも否定はしているが満更でもなさそうだ。

そうかこの2人がそんな関係になっていたか。シンジが記憶を無くしてからはどうなることかと思ったが。

 

「よかったなシンジ」

「う、うん」

 

待てよ。

結婚を考えているということは孫が生まれるのではないか。

いや、一旦落ち着こう。2人はまだ中学生だ。まだ結婚ができる年齢ではない。それに子供となると最低でもあと5年は先か。

となると今やることは、

 

「パパと呼びなさい」

「え?」

「これからはパパと呼びなさい。娘よ」

「はあ!?ちょっとあんたのお父さんなんか気持ち悪いわよ」

「ま、まあ。アスカいつも父さんのことシンジのパパって呼んでるわけだし、短くなるんだならいいんじゃない?」

「嫌よ!シンジのパパとパパじゃ全然違うじゃない。気持ち悪い」

「おい碇、ボロクソに言われてるぞ」

「ああ、問題ない」

 

これから家族として愛を深めていけばいい。そうだろうユイ。

 

「とりあえず今日は家族3人で風呂に入ろう。裸の付き合いをしようじゃないか」

「こんのエッチ!バカ!変態!ゲンドウ!信じらんない!」

 

また1人大切な人が増えた。新しい家族が。

今の私は幸せものだよ。

 

「ユイも喜んでいるな」

「いやブチ切れてると思うぞ」

「あ、ああ。問題ない」

 

この日から1週間、何故か右肩が重かった。

 

 

⭐︎

 

 

葛城ミサトの場合

 

私にとって使徒は救世主だったのかもしれない。

そう考えるようになったのはシンジ君とアスカと3人で一緒に暮らすようになってから。

私たちは所詮血の繋がっていない偽物、家族ごっこをしていた。でも、それでもあの2人と暮らしていたあの場所とネルフは確かに私の居場所だった。

だからそれが奪われてしまうのが怖かった。

もし使徒がいなくなったらネルフのやることなんかほとんどなくなる。シンジ君とアスカの関係に私はいらない。むしろ邪魔になるだろう。

つまり私はどこからも必要とされなくなるのだ。

だから私はあの時、シンジ君をネルフに向かわせたんだと思う。一緒に死ぬために。

シンジ君とアスカと私。

偽物だとバレてしまう前に、私の居場所がなくなる前に幸せな家族のまま3人で死んでしまいたかった。

でもあの時あいつが気づかせてくれた。私に居場所をくれた。

私には未来がある。新しい家族がいる。

私とリョウジとこの子。

これが今の私の居場所だ。

 

「おめでとうございます。元気な男の子です」

「可愛いわね」

 

よかった。これからはこの子のために生きていこう。

 

 

⭐︎

 

 

「ミサトさんおめでとうございます」

「おめでとミサト」

「わざわざありがとうね2人とも」

「いえいえそんな」

 

今日は記念すべき我が子が産まれる日、だったが、

 

「あいつ本当に来なかったわね」

「ほんっと加持さん最低」

「まあまあ2人とも。ほら、加持さんだって仕事が忙しいんじゃないかな」

 

今朝リョウジは仕事がどうとかメールで言っていたが本当に来ないとは思ってもいなかった。

逆にシンジ君とアスカは遠くからわざわざ駆けつけてくれたのだが、リョウジの狙いはこれなのだろうか。

これからは子供の世話をしなくてはいけない。

それになんとなくもう私たちは前の家族という感じがするから。

これがこの3人で過ごせる最後の時間。

 

「シンジ君、アスカ。本当にこれまでありがとう。あなたたちと一緒に過ごせた日々、絶対に忘れないわ。あなたたちと家族になれてよかった」

「こちらこそありがとうございました。僕も楽しかったです。そりゃあ料理に洗濯、掃除に買い物、何から何まで僕任せでしたけど……」

「「うぐっ!」」

「し、シンちゃん?」

「でもやっぱりいつ思い出しても楽しかったなって思えるんです。本当に楽しかった」

 

いけないなあ。私ももう歳だ。

もう涙腺がゆるゆるでこの子達の顔を見てると、

 

「でもミサトさん」

「なにぃシンちゃん」

「僕たちは今も家族ですよ。一緒に暮らしてなくても、どれだけ離れていても僕たちは家族です。ミサトさんは僕たちの大切な家族です」

「そうよミサト。なに勝手に終わらせようとしてんのよ。私たちは家族。それ以上でもそれ以下でもないの」

「……あんたたち。うん、うん、そうよね」

 

そうか、今やっとわかった気がする。

私が思っていた以上に関係って脆くないんだ。

そう簡単には作れないしそう簡単にはなくならない。

私の居場所はなくならない。私たちは本物の家族だから。

 

「あらミサト元気そうね」

「葛城さん、って今は違いましたね。加持さんご出産おめでとうございます」

「「おめでとうございます」」

 

リツコにマヤ、日向君に青葉君が次々にやってきた。

わざわざ仕事を抜け出してきてくれたのだろう。

ネルフもずっと私の居場所か。

 

「ありがとうねみんな」

 

 

⭐︎

 

 

「で、リョウジ?今更なんのようなの?」

「おいおいひどいな。俺も一応父親だぜ?」

「一応ね一応」

「こりゃあご立腹だ」

「ふんだ」

 

出産から数時間後、みんなは私の体を気遣ってくれたためあれからすぐに帰ってしまった。

さらに数時間が経ってからこの男はノコノコとやってきたのだ。

 

「悪かったよミサト。実は緊張してな。こう見えてビビりなもんで」

「そう」

 

どうせこいつは何考えてるか分からないことの方が多い。

本当にビビっていたのか私たちにも気を使ったのか。

 

「それでどうだったんだ。あの2人とは」

「ええ、ちゃんと話せたわ。とてもいい子に育ってた。やっぱり私の子供ねあの2人は」

「そうか。そいつはよかった」

 

リョウジが病院の窓に視線を移したので私も釣られて窓の方を見る。

日はもうとっくに沈んでおり代わりに大きな月が浮かんでいた。

 

「綺麗だな葛城」

「ええそうね」

「絶対幸せにする。君も子供も」

 

こいつは本当にズルい。

たまにこういうこと言うから私みたいな女はすぐに惚れてしまうのだ。

 

「それにしても俺たちが親になるとはな」

「昔はあんなにだらしなかったのにね」

「これから大変だな」

「ええ頑張りましょう」

「葛城……」

 

スッとリョウジが顔を近づけてくる。

 

「ちょっと今!?」

「大丈夫。お前はいつでも可愛いよ」

「ったく……んっ」

 

リョウジと私とそしてあの子。

これからは3人で生きていく。そこが私の居場所だから。

 

「ていうかあんたさっきから呼び方戻ってるわよ」

「こっちの方が呼びやすくてね」

「はあ、まあいいわ」

「たまにはな」

「そんじゃ戻りますか私たちの場所に」

「おいおいまだ退院できないぞ」

「……そういうことじゃないのよ」

 

見つけた。私の生きていく理由。そして大切な3つの居場所。

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