もろびとこぞりて   作:クソザコぎつね

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う〜ん、長く書くのが難しいねんな。あっさりしすぎてると感じてるのでもっと表現を意識したい所。今回は千景ちゃんの帰省回です。原作よりポジティブだしなんとかなるやろ!(適当)


憎悪 ヘイト

「あっ、若葉ちゃん見て見て!この雑誌と新聞にインタビュー載ってるよ!」

 

そう言って友奈が出したのは、この前の初陣が終わった後に出された優勝達へのインタビュー雑誌だった。表紙は若葉が真ん中に写っており、周りに皆んなが円の様に配置されている。華々しい初陣であったから、多くの出版社がここぞとばかりに勇者を褒め称えている。

 

「こんなに多くの雑誌に載るんですねぇ〜」

 

「うむ、初陣の前まではまだ勇者としての力を証明できなくて勇者不要論とかいうのもあったからな。その反動もあってこんなに多くの本に出ているのだろう。だが私としてはあまりこういうのは性に合わない。すこし持ち上げすぎだと思うがな。」

 

若葉は昔から剣の道を教わっていた。まさに鎌倉武士、気高き和の心を持つ彼女には称賛はむず痒いものだった。

 

「むむむ・・・何ですかこのアングルは!この写真も、あの写真も若葉ちゃんの魅力を全く表現できていない!こうなったら、私の選ぶベストショットを各社に直接・・・!」

 

「するなよ!絶対にするなよ!」

 

「振りということですね!?」

 

そんなダチョウ倶楽部じみた夫婦漫才を横目に、杏と球子は友奈の持ってきた雑誌を読んでいた。

 

「それにしても・・・どいつもこいつも勝手なことばっかり書いてるよなー」

 

球子が見ていたのは、『勇者達は無条件でバーテックスから自分達守ってくれる』と書かれている一面だった。

 

「タマ達は平気でも希望でも盾でも、ましてや機械でもない。ただの人間だってのにさ!」

 

「うん・・・そうだね、なんか祭り上げられているみたいでちょっとプレッシャー・・・」

 

「・・・!この本のここ見てみろよ。三年前に村を救った光の巨人の目撃者へのインタビューだってさ!」

 

「でも、こういうのって都市伝説なんじゃ・・・」

 

「あれ!そういえばぐんちゃん今日は見てないね。変なものでも食べちゃったのかな?」

 

「ああ、千景さんは2、3日お休みです。なんでもご実家に帰っているそうで・・・」

 

 

 

 

その日千景は実家方面行きのバスに乗っていた。

千景はおもむろにカバンからスマホを取り出し、電源を入れる。

 

(ゲームが私の趣味だった。数少ない父親からの贈り物で、初めて貰った時はワクワクしたものだ)

 

千景の脳裏にまだ優しかった頃の両親の姿が思い浮かぶ。

千景は乗客のいないバスの中で一人、イヤホンをつけてゲームをしていた。

 

(イヤホンをつければバスの音も、他人の声も聞こえなくなる。画面に集中すれば周りの光景も見えなくなり、自分だけの世界に入ることが出来た。まるで世界から自分を守ってくれるような感じが私の心を繋ぎとめてくれていた)

 

だが、それまで自分を守ってくれていたゲームを終わりにした。

千景にとってゲームはもう自分を守る為のものではなく、他人との仲を深める為のものへと変わっていった。

 

(今度、伊予島さんにやらせてみようかしら)

 

ゲームが終わった後に、千景は大手の情報サイトを見る事にする。そこのトップページには『天空恐怖症候群』の患者への密着ドキュメンタリーが、何かを訴えかけるかのようにネットの海を流れている。

 

『天空恐怖症候群』とはバーテックス襲来の日以降に多くの人々が発症した病気でありその名の通り、バーテックスが飛来してきた天空に恐怖を覚える病気だ。

その症状には4段階のステージがある。

ステージ2以降では精神不安定となり日常生活にも支障が出る。

千景の母はステージ2だったが、先日ステージ3に悪化してしまった。

治療の為に千景の母は専門の病院に入院する事になる。その前に顔を見せて欲しいと、千景の父がここに呼び出したのだ。

 

「私が勇者になった事、父さんや母さんだけでなく四国中の人が知っているのよね・・・、でも私のもう一つの秘密は知られてはいけないわね」

 

彼女の握るスマートフォンの中では、三年前に村の人々を救った英雄の映像が流れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千景はバスを降りて徒歩で自分の実家へ向かう前に寄り道をした。

高台につき、村を見渡してみると中々に復興している。この高台は千景が幼い頃からずっと来ていた所で、ここからずっと村を見渡しては物思いに耽っていた。

その時の景色の記憶を思い出しながら今の光景をみると、あちこちにはまだプレハブ小屋や荒れた大地、足跡の形に変形したたかいなどがあちこちに見られるものの、3年前に神社からみた景色に比べれば大きな変化だった。

幼い頃と同じように物思いに耽ると、これから両親に会うという事のハードルが上がった様な気がする。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ただいま」

 

千景の家は伝統的な日本家屋らしく和風の見た目をしている。一階建ての小さな借家だ。

三年前に家を飛び出して以降戻ってきていなかったが、昔に比べて家の周りの石壁は崩れ、庭も雑草が生い茂り、廃墟のような雰囲気を感じるほどにまで荒れ果ててしまっていた。

 

たてつけの悪い玄関を開けて靴を見ると二人分ある。

片方はあの子どものような父親の靴

もう片方は千景を捨てた人の靴

二人分あるのはいつぶりだろうか。

 

居間に入ると千景の母親が布団に伏せっている、どうやら薬を飲んで眠っているようだ。久しぶりに会うその姿に、不倫のきっかけとなったある出来事が脳裏をよぎった。

 

ある夜、彼女の母親が突然高熱を出して倒れてしまった。本来であれば救急車を呼んだりすればよいのだろうが、その時家に居たのは千景ただ一人だった。

まだ幼い千景はどうしたらいいか分からず、どうにかならないか助けを求めて父親に電話をかけたのだ。

 

「薬でも飲ませて寝かせていろ」

 

泥酔していた父親が放った言葉はたったそれだけだった。

その後父親が帰って来た時刻、なんと午前二時頃。

それ以来、千景は失望する事になる。

 

 

 

 

 

「千景、帰ってきてたのか!久しぶりだな、元気にしてたか?。ん?それは・・・勇者の武器か。大変だっただろう?」

 

父が帰ってきたようだ。

 

「それより父さん・・・掃除くらいちゃんとして。玄関にも廊下にもゴミが溜まってる。」

 

誰も掃除していない家の中はゴミ屋敷だった。

 

「あ、ああ。母さんの看病で忙しくて、つい。すまんな千景。母さんがこんなことになって」

 

「・・・いや、ちょうど休暇貰えたし」

 

「千景、昼飯は食べてきたか?お腹が空いてるんじゃないか?今から出前でも・・・」

 

「いいよ別に・・・ちょっと出掛けてくる」

 

「どこに行くんだ?」

 

その質問には何もいいたくなかった。

答えないまま実家を後にする。

 

 

 

 

 

 

千景はあてもなくそこら辺をぶらぶらしていた。

友達もおらず、たった一人内に篭って生きていたこの村に長居するのは正直居心地が悪く、香川に戻りたくなっていた。

 

(帰りたい・・・さっさと香川に帰って皆とゲームしよう・・・)

 

「あなた・・・郡さん?どうしてこんな所にいるの?みんなもう、あなたの家へ行っているわよ。」

 

「は?・・・私の家?」

 

その後街に出ると、自分を群衆が取り囲み様々な人間が

(千景が勇者だから)

そんな理由で媚びへつらっていた。かつて自分をいじめていたクラスメイト、何も売ってくれなかった店、さらには何も聞き入れてくれなかった無能な市長までも。

その手のひら返しに千景はかなり不快感を覚えた。

 

 

 

 

 

何とか群衆を抜けて畑の方に出ると、小さな人だかりが見えた。

あまり厄介事に関わりたくは無いがその光景に見覚えのあった千景は、群がる人々の隙間からそれを覗く。

 

「さっさと消えろよ!」

 

「よくもそんな目で見やがって!」

 

「お前に生きてる価値なんて無いんだよ!」

 

そこでは少年がうずくまって転がっていた。それを子供達が足で何度も踏みつけている。立派なイジメだった。

その光景を目の当たりにすると、千景の体が勝手に動く。

その苦しさを誰よりも知っている彼女にとってそれは許されない事だった。

 

「貴方達!何してるの!?」

 

「あっ!勇者様。早くこの怪物を倒して下さい!」

 

その時だった、少年をいじめていた子ども達の体が風船のように宙に飛び始めた。

ある程度の高さまで飛ぶと突然止まり、子ども達の頭が地面に叩きつけられる。

そして木々が波打ち、大地が揺れる。

地震だ。

混乱に乗じたまままま、千景は少年の手を引いて逃げる。

 

「とにかく、ついてきて。」

 

人目のつかない路地裏に逃げるとさっきまで黙っていた少年が口を開いた。

 

「・・・どうして助けてくれたんですか?」

 

「どうしても何も・・・貴方が助けを求めているように見えたからよ。」

 

「・・・優しいんですね。」

 

「まぁ・・・一応勇者やってるし」

 

「あの・・・一つ聞いてもいいですか?」

 

「ええ、何でもいいわよ」

 

「僕って価値のある存在なんでしょうか・・・」

 

その質問に千景は過去の自分を重ね合わせた。そして、あの時自分が言って欲しかった言葉を自分に言い聞かせるように答えた。

 

「・・・自分の価値は自分で決める物、でも私は貴方に価値がないとは思わない。それは、この星に住む人間もよ。」

 

すると、少年の顔が少し笑顔になる。

 

「・・・ありがとうございます」

 

「どういたしまして」

 

少年にとってそれは素晴らしい一言で、千景にとっては何気なく守りたいと思える様な一言だった。

 

「・・・ところで貴方、家族はいるの?」

 

「いえ・・・今はいません。事故で亡くなってしまって・・・」

 

少年は天涯孤独の身だった。

そんな姿に、誰一人味方がいなかったあの頃の自分を重ね合わせてしまう。

 

「そう・・・ならウチくる?」

 

「・・・え?」

 

 




郡千景 久しぶりに帰ったけどわりぃやっぱつれぇわだった人。何を血迷ったのか少年を誘拐しようとする優しいおねぇさん。原作と違い、自分の価値は自分で決めると考えている。

少年 イジメのターゲットにされてしまっていた人。(地震とは何の関係も)ないです。名前はある。



これ書くのすっげぇキツかったゾ〜
怪獣出そうと思ったけど無理矢理かなと思いましたね、はい。
今回のモチーフは怪獣使いと少年です、あまり要素無いですけどね。
さて、ついに登場したオリキャラの少年君。彼がこれから何を為すのでしょうかね?
私にも分からない()
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