海を駆ける傭兵   作:スフィラ

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これ何ヶ月放置してたんだ? 
お久しぶりです


第十話

「このロボットはなんでちか?」

 

「詳しいことは省くが、まぁ別世界の兵器だ、俺はこいつと一緒にこの世界へ飛ばされたのさ」

 

「不思議なこともあるもんでち」

 

「まったくだ」

 

そんな雑談を繰り返していたらあっという間に鎮守府へ到着する

 

「58」

 

「ゴーヤでいいでち」

 

「そうか、とりあえず入渠してこい、そしたら白崎提督のとこ行くぞ」

 

「じゃあイムヤ達も連れてくるでち」

 

ACから降りたゴーヤは艦娘寮へと向かう、かなりフラフラしているが大丈夫そうだとエドガーは思う

 

「それじゃ、白崎のとこにでもいくか、お前の部屋をあてがってもらわなくちゃな」

 

「了解です」

 

58の事を報告しに本館へ入ると目当ての人物はすぐに見つかった

 

「おーい、白崎…うおっ⁉︎」

 

呼び止めた白崎は少女の死体を抱いていた

身体中は血に塗れ、ところどころ肉が抉られそこから腐敗が進んでいるのか紫色の染みが広がっている

 

「エドガーさんこの子達を運ぶのを手伝ってください‼︎」

 

「運ぶったって何処に?」

 

「入渠施設です早く!まだ地下にいますから!」

 

「おい!ちょっとま…」

 

呼び止める間も無く、白崎は工廠の方へ走り去っていった

 

「なんだってんだ…」

 

運べと言われたがそもそも地下の場所がわからないため、どうしたものかと立ち尽くしていると白崎が走って行った方向から1人の艦娘が走ってくる

 

「エドガーさん!いいところに!」

 

「君は確か古鷹だったか、提督から話は聞いてるから案内してくれ」

 

「はい!こっちです!」

 

古鷹について、艦娘寮から本館へと向かう

 

そこに向かうまでに戦艦や空母などの艦娘が白崎と同じようにボロボロの少女を抱いて走っていった

 

「ここです!」

 

「執務室か?」

 

目的地は本館と艦娘寮を繋ぐ通路のすぐ横にある掃除が終わっておらず使われていない本来の執務室だった

 

「はい!ここに地下に通じる隠し扉があって、そこに…」

 

「わかった、急ごう」

 

執務室に入ると豪華な家具が大量に目に入った

エドガーはそういったものに疎いが、どれもこれも相当値が張るものだということはわかった

 

そしてその豪華な部屋の壁に、人が1人余裕で通れそうな程の穴が空いていることに気づく

 

「この先だな」

 

穴の中には階段があり所々で照明が明るく光っている

奥からは嫌な事にエドガーが一番嗅いだことのある臭いが漂ってきた

 

「肉が腐る臭い…戦場はどこも似たような匂いがするな」

 

階段を降り地下へ向かう

クローリクは途中まで着いてきたが、感覚が鋭いため臭いにやられて離脱した

 

「ここです」

 

そして正面に見える吹き飛んだであろうドアがあった場所をくぐると、階段よりは広い通路に出た

そこはエドガーが最初入れられていた監獄のような両隣にドアが並び、その大半は開け放たれている

 

試しに一つの部屋を覗いてみると

 

「これはまた…前任は艦娘を虐げるために提督にでもなったのか?」

 

部屋なの中には拷問器具が散乱しており、そのどれもに血がこびりついている

壁から垂れ下がった鎖の下は汚物と血が混ざり合った物が溜まり、壁には真っ赤な文字で『助けて』と書いてある

ここで艦娘達に対して何が行われていたかは知るまでもなかった 

 

「エドガーさん、早く!この部屋で最後ですッ!」

 

通路の奥にいた古鷹が固く閉ざされた鉄の扉を蹴破り中に入る、それに続き中に入るとそこにはそこには鎖に繋がれたままの艦娘が3人床に横たわっていた

 

「まさかお前らイムヤにイク、それとハチか?」

 

血だらけ傷だらけではあるが、その特徴的な髪色とスク水という服装はゴーヤから聞いた通りだった

 

「知ってるんですか?」

 

「いや、さっき58から話を聞いただけだ、さっさと運ぶぞ」

 

古鷹がイムヤを抱え、エドガーがイクとハチを担ぎ入渠施設へ急ぐ

ゴミ箱に顔を突っ込んで嗚咽するクローリクには今は構っていられなかった

 

「どっちだ!」

 

「こっちです!」

 

古鷹に先導され着いた入渠施設は大混乱だった

資材を運ぶ者、バケツを運ぶ者、浴槽の横で仲間の名前を呼び続ける者

 

「そりゃ死にかけの艦娘が十数人も来たらこうなるか」

 

「古鷹さん!エドガーさん!重傷者はこちらへ!」

 

明石が艦娘の修理を行うドックである浴槽の横でこちらを呼んでいる

 

「ここにイムヤちゃん達を」

 

「分かった」

 

イムヤ達を浴槽に入れる

いくらか顔が穏やかになった気がした

 

「あとは任せてください、入渠さえしてしまえばもう大丈夫です」

 

「ああ、それにしてもすごいな艦娘ってのは、こんな大怪我負っても死なない程頑丈で入渠すれば元通り、そりゃ無茶な進撃も、こんな扱いも生まれるわけだ」

 

そのエドガーの言葉に明石が不機嫌な声で反応する

 

「じゃあ、貴方はこの扱いが妥当だとでもいうんですか」

 

「かもしれないな、それに真っ当な理由があるなら」

 

「理由…ですか?」

 

「戦争ってのは勝つためにするんだろ?そのために俺やお前らみたいな一兵士がいろんな形で犠牲にならないといけない、その犠牲が勝利に繋がれば報われる…犠牲なった理由ができると思う、だが、こんな前任の一個人の私利私欲のためにお前らが犠牲になるのは違うと思うよ、俺は」

 

「そう…ですか、申し訳ありません、さっきは嫌味ったらしく…」

 

「いや、あれは俺が悪い、お前達の前で言うような事ではなかった、すまなかった」

 

これ以降2人は言葉を交わすことなく黙々と艦娘の手当てを続けた

怪我を負っている艦娘は地下にいた12人、「伊168」「伊19」「伊8」「如月」「菊月」「鹿島」「阿賀野」「瑞鳳」「熊野」「羽黒」「摩耶」、「山城」だけではない

 

一部の艦娘達も動けているというだけであって第三者から見れば九割が重症だというだろう、そういった子達らは応急手当てでその場を凌ぐ

 

なにしろ動かせるドックは2つしかないのだ

バケツを使えば傷はすぐに治るが、それも前回使ったことにより地下にいた艦娘達の分しかない

艦娘の修復をまともに行うことはなかったのになぜこんなに貯蔵量が少ないのか、もちろん前任がせっせっと他の鎮守府に売り捌いていたからである

 

「ありがとうございます…」

 

「しばらく安静にしておくんだ」

 

今手当てしていたのは朝潮という艦娘、傷口を見るに塞がりかけていたのがまた開いてしまっていた、恐らく防空棲姫の時だろう

 

「エドガーさん」

 

「なんだ?朝潮」

 

いつのまにかそばに来ていた朝潮がエドガーに問いかける

 

「なんで皆んなはこんな目に遭わなくちゃいけなかったんでしょうか」

 

声自体はとてもか細かったが、確かな怒気をはらんでいた

 

「さぁな…人間ってのは欲深くて自分勝手なもんだ、自分が望むものの為に他人を不幸にする奴なんていくらでもいる」

 

「私達が命をかけて守ってきたのはそんな奴等だったんでしょうか」

 

真面目な朝潮の口調が少し荒れる

 

「まぁそうだろうな、お前が守ってきた人間の中にはそうい奴らがいるだろうな、でも…結構良い奴だっているさ、白崎みたいにな」

 

艦娘の手当てを続ける白崎を見る

真っ白だった提督の制服は今では血で赤黒く染まっていた

 

「人間はだいたい3つに分けられる、白崎みたいな良い奴、前任みたいなクソみたいな奴、そしてそのどちらでもない奴、割合で言え1.7.2ぐらいだ」

 

「そんな、たった1の為に私達は戦うんでしょうか」

 

「あー…いや、これは俺の世界の感覚だな、こっちの世界のことは知らんからな、まぁどちらにせよ人を守らなきゃこの鎮守府を支援してくれる人達も居なくなっちまうからな…そうだ、俺が何のために戦ってるかわかるか?」

 

「お金のため…でしょうか」

 

「そうだ、正確には生きるためだが…お前らが戦う理由ってのは何だ?」

 

「それは…提督からの命令で…」

 

「提督からの命令でお前らは戦っている、そしてそれは何のためだ?」

 

「姉妹や鎮守府の皆んな…大切な物のためです」

 

「なら答えは出たな」

 

「何でしょうか?」

 

少し屈み朝潮と目を合わせる

 

「お前が守るものは人間じゃない、仲間を守る為に戦え、仲間が…そして自分自身が死ぬことがないように、この戦争を生き延びれるように、そうすりゃ勝手に人間も守れるさ最前線に、そして最終防衛線にいるのはお前らなんだから」

 

朝潮の頭をわしゃわしゃと撫でる

 

「…エドガーさんはいい人です」

 

「そうか?俺はクズだと思うぞ、これだって金の為だからな」

 

「それでもです」

 

「そうか」

 

朝潮が頭の上にあるエドガーの手を取り、それを頬のところへ持っていく

 

「本当にひどい人はこんなに温かくありません、私…頑張ります、訓練も実戦も、仲間を守れるように、2度とこんな悲劇が起こらないように…今は守ってもらってもばかりだけど…貴方の事も守れるように」

 

「言うじゃないか、楽しみにしてるよ」

 

そう言うと朝潮は声を上げて泣き始めた、抑えていたものが溢れ出したんだろう

 

「霞、頼めるか?」

 

すぐ後ろにいた朝潮の妹である霞に、朝潮のことを任せる

 

「…ありがとう」

 

去り際にそう言って、霞は朝潮の手を引いて寮へと戻っていった

 

「…仲間か」

 

以前自分が殺した戦友を思い出す

 

「報酬のために殺しておいて、友なんて思うのはおこがましいか」

 

エドガーにとって唯一友と呼べた存在は今の言葉を聞いてどう思うのだろうか

 

「まぁ、今更どう思ったって遅いか」

 

反省はしても後悔はするな、エドガーの師匠が最後に言った言葉を思い出し、立ち上がる

 

とりあえずゲロ塗れであろうクローリクを回収しにエドガーは入渠施設を去った

 

 

 

 




次回みんな大好きフレンチクルーラー
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