海を駆ける傭兵   作:スフィラ

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タイタンフォール2楽しい


第11話

地下の一件からやく一週間、囚われていた艦娘達は姉妹艦や白崎の努力により少しずつだが立ち直り始めていた

 

他の艦娘達もようやく全員の修復が完了し、鎮守府としての体制が整ってきたと思えたが

 

「弾が…ない」

 

弾薬がかなり少なくなっていた

その原因はもちろんACである、鋼鉄の消費量は今まで長い間修理されてなかった細かい部分も前回修理されたため大幅に減少し、燃料はACをシャットダウンした際にジェネレーターに残っていたエネルギーは空っぽになるのだが、それを妖精さんが満タンにしたためとんでもない消費量が生まれていたということが判明し、ジェネレーターを動かすための燃料分だけで良くなったのでこちらも大幅に減少したが弾薬だけはそうはいかなかった

 

前回の戦いでライフル2丁を合計で200発消費し、その消費は約4000、このことからだいたいライフル1発で20の弾薬を消費することが判明した

 

現在弾薬の量は主力部隊が2回運用できるほどしか残っておらず、動ける部隊のほとんどは遠征もしくはこちらへ弾薬を運ぶ輸送船の護衛へと向かい、鎮守府の防衛と哨戒は空母の艦載機が行なっていた

 

では出撃を制限された戦艦や重巡などの遠征に行くには資源の消費量が多すぎる艦娘達は何をしているのか、大抵は各々暇を持て余しつつ、自由に過ごしている

それは現在鎮守府最高戦力である長門も例外ではなく

 

「エドガー殿、手合わせを願えるか?」

 

「別にいいぞ」

 

こうして始まったエドガーと長門の柔道の手合わせ、結果は言うまでもないが、力で勝っても技量で大幅に劣るエドガーが惨敗して終わった

 

ちなみに艦娘は艤装がなければ見た目相応の力しか出すことができない

リミッターか何かだろうかとエドガーは長門に背負い投げを決められ、宙を舞いながら考えていた

 

「ふぅ…ありがとうエドガー殿、楽しかったよ」

 

「そりゃよかった」

 

長門の感謝の言葉にエドガーは仰向けになりながら答える

1時間ぶっ通しで投げられていたため、三半規管に少なくないダメージが入っていた

 

「立てるか?」

 

「ああ、少し待てば大丈夫さ」

 

「すまないな、つい夢中になって…」

 

「何かに夢中になれるのは良いことさ、ただ今度からは程々にな」

 

「肝に銘じておく」

 

長門から差し出された手を取り立ち上がるが、まだ回復しきっていなかったのか、ふらふらとバランスを崩し、近くの壁に頭をぶつける

 

「痛っ」

 

「フッ…」

 

「笑うな笑うな、頭だけじゃなくて心も痛くなる」

 

「すっ…すまない」

 

そんな2人の様子をクローリクが禍々しいオーラを放ちながらドス黒い瞳で眺めていたのだが、それに気づいたのはエドガーを探しに来た暁と電だけである

 

「で?何でそんな不機嫌なんだ?」

 

「別に…何でもありません」

 

「あっそう、調子悪いなら休んどけ」

 

長門と別れた後は、ACの整備をしていたのだが、手合わせの後どころか地下の一件からずっとクローリクが不機嫌なことに疑問を覚えていた

エドガーはあまり関わらない方がいいかと思い深掘りしなかったが、むしろこれは原因がエドガーにあるため関わってやった方がいい問題である

 

「さて、終わったな」

 

機体の最終チェックを終え、外部点検用のアクセスドアを閉じる

異常は一切見られず、妖精の頑張りがうかがえる

妖精は甘味を好むため、また今度間宮のところで何か買ってこようとエドガーは考えた

 

「お疲れ様です」

 

「ああ、というかお前がやった方がいいんじゃないか?自分の身体だからどこがおかしいかわかるだろ」

 

「私ができるのは自己診断プログラムを走らせることぐらいです、細かいところは知識のある方に診てもらわないと分かりません」

 

「そうか、確かに自分の身体だからって何でもわかるわけじゃないか」

 

「それよりも、作業開始から既に6時間が経過、食事を摂ったほうがよろしいかと」

 

クローリクに言われ時計を見れば針は夜の9時を指していた

ハンガーの外に見える港は夜の暗闇に包まれ、クレーンと到着したのであろう輸送船の赤色灯がポツポツと光っている

 

「待たせて悪かったな、食堂はまだ空いてるのか?」

 

「食堂が開いているのは8時50分までです、それ以降は各自で自作とのことです」

 

「なるほど惜しかったな、お前は何か食うか?」

 

「パイロットが何か食べるのなら」

 

「そうか」

 

後始末を終えて食堂に行こうとハンガーを出ようとした時、目の前の扉が大きな音を立てて開いて白崎が現れた

 

「エドガーさん!!」

 

「なんだいきなり、ゴキブリでも出たか?」

 

「違います!そんなことじゃありません!大変なんです、5時間前に前線の八丈島鎮守府が正体不明の敵に襲われて壊滅しそうだということで周辺の鎮守府に出撃命令が出たんです!」

 

「大変だな、だがなんで今頃?」

 

「それが…さっき送られてきた敵の写真なのですが、これってエドガーさんの世界の兵器じゃ…」

 

「なんだって⁉︎」

 

白崎が持っていた写真を奪うようにして取る

その写真はピンボケしまくっていたが巨大な敵を識別するには十分だった

 

「コイツは…また面倒なものが…」

 

写真に写っていたのは、この世界に来る前にも撃墜したフレンチクルーラーこと「GLAY LOTUS」だった

 

「白崎、目的の鎮守府までは何キロだ?あと、艦隊は出てるのか?」

 

「約300キロ、第一艦隊が向かっています」

 

「そうか…、到底間に合うとは思えないが…俺も出る、出撃中の艦隊も借りるぞ」

 

「わかりました、でも作戦とかは…」

 

「道中で説明する、行くぞクローリク」

 

「了解」

 

ACを起動させ海岸に移動する

今回は使い所のなさそうな左手のブレードを装備せず、機体を少しでも軽くして速度が出るようにしていた

 

しばらく待っていると通信が入る

 

《こちら第一艦隊長門だ、エドガー殿聞こえるか?》

 

「ああ聞こえるよ、」

 

《提督から話は聞いている、これより第一艦隊はエドガー殿の指揮下に入る》

 

「わかった、長門編成は?」

 

《私をを旗艦に陸奥、比叡、霧島、赤城、瑞鶴だ》

 

「なるほど…赤城、瑞鶴、艦載機は?」

 

《こちら赤城です、零戦五二型、彗星、零戦六三型を装備しています》

 

《瑞鶴よ、こっちも同じ装備》

 

「了解した、これからお前らにやってもらいたい動きを目的地に向かいながら説明するから聞いてくれ」

 

《わかりました》

 

グライドブーストを起動し、常闇の海に出る

 

「まず、敵の情報からだが、呼称はGLAY LOTUS、8枚の板を樽にくっ付けたみたいな物が空を飛んでる…俺らの間ではフレンチクルーラーなんて呼ばれたりしてるな」

 

《なんか…美味しそうな名前ですねぇ》

 

「だが実際はかなり厄介な代物だ、まず攻撃手段だが無数のビット…まぁレーザーを放ってくる小さな飛行物体が大量に出てきて四方八方から撃たれて穴だらけにされる、これがメインだな」

 

《なにそれ怖っ》

 

瑞鶴がビビるがエドガーは構わず続ける

 

「そして直下の敵に撃つレーザー砲、これはレーザー対策をしてきた機体でも喰らえばタダじゃ済まない、次に防御力だが、装甲はそこまで厚くないが8枚の板についたブーストで高速回転してどんな攻撃でも弾いてくる」

 

《そんなのに私たち勝てるんでしょうか…》

 

ACがいるとはいえ、どう考えても自分達だけでは勝てなさそうな敵の情報を聞き、比叡が不安そうにつぶやいた

 

「そこでさっき言ってたお前らにやってもらいたい動きなんだが、まず俺が先行して囮になる、そして出てきたビットを空母の艦載機で墜としつつ、爆弾を持ってる奴はロータスを攻撃して欲しい、攻撃のタイミングだが、奴はちょくちょく回転と動きが止まる、その時がチャンスだ、長門達もその時にありったけの砲弾を喰らわせろ」

 

《了解》

 

「よし、赤城、瑞鶴、艦載機を飛ばしておけ、行くぞ」

 

出力を上げ、作戦区域へと急ぐ

約400キロのACの速度ならば1時間ほどで辿り着ける

 

『パイロット1人でも十分では?』

 

「アホか、鎮守府の資源が弾薬だけじゃなく銅材も吹っ飛ぶぞ」

 

『申し訳ありません…』

 

「まぁいいさ」

 

そして40分ほど海上を進み続けていると、目の前でポツポツと閃光が見えた、まだ交戦は続いているらしい

他の鎮守府の増援が間に合ったのだろうか

 

『パイロット、前方に複数の艦娘のシグナルを確認』

 

明石と夕張が取り付けた電探が艦娘の反応を拾ったとクローリクが報告する

 

「なんだ?他の艦隊か?」

 

『それにしてはかなりバラけています』

 

急に現れた艦娘のシグナルを疑問に思うが、その答えはすぐに出ることになった

 

『やはり…』

 

「そりゃ…こうなるよな」

 

シグナルの正体は海面に浮いている艦娘達だった

生死は分からないが、ほぼ全員レーザーにより体の一部が欠損するか穴が空いており、傷口は焼け焦げている

酷いものは直上から食らったのか体の右側を失っているものもあった

 

戦闘モードに切り替え、外の景色の色がしっかり映し出されると海が赤色に染まっていることもわかった

 

「長門、聞こえるか?」

 

《どうした?》

 

「俺がいる海域に大勢の艦娘達が浮いてる、大丈夫な奴だけ生存者を探しにきて欲しい」

 

《……了解》

 

「はぁぁぁ…」

 

長門との通信が切れたのを確認したあと、深いため息をつく

 

「こういう事がある分、こっちの戦争の方が嫌になりそうだ」

 

海面に浮く、下半身を失った暁を見ながらそう思う

別人とはいえ同じ姿、性格まで一緒なのかは分からないが、大人に憧れて背伸びをしていた幼いこの少女ですら戦場に出て、こうして散っていくのを見ると心が痛む

 

「不思議なもんだ、少年兵が死んでるところなんざ、いくらでも見てきたってのに」

 

再び目的地に向けて移動を開始する

その道中も、生死不明の多くの艦娘が海面を漂っている

目的地に近づくにつれて煙を上げていたり、燃えていたりするのも現れた

 

『パイロット、無線を起動して到着したことを知らせた方がいいかと、この見た目では敵と誤認される危険があります』

 

「確かにそうだな…こちら増援の浜松鎮守府所属の傭兵だ、誰か聞こえるか?あと数分で戦闘区域に突入するから撃たないでくれよ」

 

呼びかけてから10秒ほどで返答が入る

 

《こちら八丈島鎮守府所属の神通です!支援感謝します‼︎》

 

「神通、現在交戦している敵はお前らじゃどうにもならない、今すぐ撤退して後ろにいる俺の艦隊と合流しろ」

 

やっと上空に浮かぶロータスを捉える

ブースターの炎を撒き散らしながら回転し飛んでくる砲弾を全て弾いていた

 

《どういうことですかいきなり…私たちに鎮守府を捨てろというんですか⁉︎》

 

「捨てさせはしないさ、だがこれ以上無駄死にを増やすな」

 

グライドブーストの推力を下方に集中させ、それに加えて脚部のブースターも起動する

エネルギーの大半を消費して大ジャンプを行い、一気にロータスよりも上に上昇しブレードの刃を展開する

 

《なっ⁉︎》

 

「墜ちろ」

 

なんて言っているがエドガーは一切これで墜ちるとは思っていない

その予想通り、ロータスは横にハイブーストを行いエドガーの攻撃を躱した

 

目的はACに注意を向け、交戦していた艦娘を撤退させるためである

 

《貴方…もしかして…》

 

「まだいたのか、早く下がれ!レーザーに焼かれたくなきゃな!」

 

《…了解、私たちの鎮守府をお願いします、総員撤退‼︎》

 

神通の命令で艦娘達の反応がレーダーの範囲外に次々と消え、目論見通りロータスは撤退した艦娘への攻撃をやめ、こちらに大量のビットを飛ばしてくる

 

「さて、ダンスの時間だ」

 

 

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