海を駆ける傭兵   作:スフィラ

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第九話

エドガーの請け負ったカウンセリングの仕事は意外と早く回ってきた

 

とある艦娘から相談を受けたことや、まだ無事が確認できていない艦娘のデータをまとめ終わった白崎立案の『鎮守府の皆んな元気になろう大作戦(命名、夕立)』によりエドガーも艦娘のカウンセリングに行くことになったのだ

 

「急すぎないか?」

 

「そうですね…でもずっと放っておくわけにもいかないですし、それに…」

 

「まぁ士気に関わるな」

 

いまエドガーに第六駆逐隊が抱きついて泣いている

理由はドックで幽霊を見たからだそうだ

 

なんでもいきなり資材置き場から出てきて第六駆逐隊を一瞥した後すぐに海に出ていったらしい

 

こんな鎮守府だったら怨念とか未練とかであり得ない話ではない

 

普段クールな響ですら目に涙を溜めているのだからの迫力は凄まじいものだったのだろう

 

「で、アテはついてるのか?」

 

「はい、おそらくこの鎮守府でまだちゃんと確認が取れてない子のうちの1人伊58ちゃんかと」

 

「了解、でその伊58はなんで海に?」

 

「資材集めだと思います、聞いた事があるんです、オリョール海へ潜水艦を出撃させ資材を集めてくるという方法を、伊58ちゃんはそれを永遠に繰り返しているんだと思います」

 

「永遠にか…そりゃかなりまずいな」

 

そんなことをしていれば身体も精神もズタボロになっているだろう、そりゃ幽霊にも間違われる

 

「しかもその海域はそれなりに危険です、もう制海権も取り返されているような場所、いまの艦娘達の状況ではまず到達すら不可能でしょう」

 

「そこで俺の出番か、わかったすぐに行こう」

 

「伊58ちゃんをよろしくお願いします」

 

執務室から出てガレージへ向かうそこにはすでにクローリクが待っていた

 

「出撃ですか」

 

「そうだ、無茶してる艦娘の捜索救難、できるか?」

 

「勿論です」

 

「よし、行くぞ」

 

ACに乗り込み、海へ出た瞬間

 

「ハッ!クローリクは!」

 

クローリクを乗せてないことに気づく、深海棲艦にダメージを与えられるのはクローリクの力によるもの、そのクローリクがいなければこっちがやられてしまう

 

『ACの中ですパイロット』

 

COMがエドガーの問いに応える

 

「もしかしてクローリクか?」

 

『はい、私はACの魂のようなものです、私がいなければそもそもACは動きません』

 

誇らしげにしゃべるCOMに少し違和感を覚えるが、戦えるのなら問題はない

 

進路を伊58が向かう海域へと向け直す

 

「伊58の位置を予測できるか?」

 

『出撃した時間が分からないので詳しい位置は分かりませんが、体調が万全じゃないのであれば…』

 

「そう遠くまでは行けないか…」

 

『大雑把な予測範囲を出します、時間をかければ範囲は広がっていくので急いだ方がいいかと』

 

「そうだな…リコン用意、しらみつぶしに行くぞ」

 

『了解』

 

グライドブーストを起動しクローリクの出した円状の予測位置をリコンを撒き続ける

 

「どうだ」

 

『反応ありません、リコン残弾30%』

 

「鎮守府に戻って、待った方がいいかもしれないが…それで今回とうとう沈みましたじゃ嫌だしなっ!!」

 

遠くで爆炎が見え反射的にハイブーストで横に移動する

次の瞬間元いた場所には大きな水柱が立った

 

『リコン07に反応あり、数17、深海棲艦です』

 

「おいでなすったか」

 

『敵勢力、駆逐5、軽巡2、重巡3、戦艦5、空母2、うち戦艦3隻、空母2隻、重巡1隻がフラグシップ、他はエリートです、撤退を推奨します』

 

数はそこまでじゃないが一個体の性能がかなり高い

いくらACとはいえ、いくらかの損傷は確実だろう

 

「そうしたいが、ここが58の目的地だ、尻尾巻いて逃げてみろ、確実に沈められるぞ」

 

『お人好し…システム戦闘モード』

 

「こちらエドガー、オリョール海にて敵勢力と遭遇、交戦する、増援はいらない」

 

『了解、貴機の幸運を祈ります』

 

鎮守府への報告は終えた

 

「やるか」

 

そう呟くと同時に敵が一斉射を放つ

頭がいい、さっきのハイブーストを見たからか一点を狙うのではなくACの周囲を囲むように撃ってくる

 

「舐めるなよ」

 

ハイブーストを2回連続で行う、エネルギーは大量に消費するがジェネレータの出力が高いので問題はない

ACの回避方向に対応して攻撃してくる艦載機はCIWSで対応

そして避けると同時にライフルで射撃、クローリクが意図を汲んでくれたかのようにロックを様々な敵に変更し、この一瞬で多くの敵へ攻撃する

 

『ACの操縦の補助である神経接続の応用です、パイロットの思考を読むなんて造作もありません』

 

「ほう、便利だなっ!」

 

ライフルの榴弾の煙の中から戦艦の徹甲弾が飛んでくるのを間一髪で避ける

重巡までは撃破可能だが、やはり戦艦には弾かれる

もう戦艦には撃たない方がいいだろう

 

『リコン03及び05に反応、個数それぞれ12と11』

 

「増援か!」

 

囲まれるのは流石にまずい、タンクと同じだ、いくら重装甲だったとしても複数に囲まれたらひとたまりもない

 

「チッ!」

 

埒があかないと一気に距離を詰めブレードを振るが

 

「避けた⁉︎」

 

戦艦はその場でかがみブレードを回避する

切られた片方の盾の破片が宙を舞った

 

「クソッ‼︎」

 

すぐさまハイブーストで反撃を回避する

駆逐から重巡そして空母は撃破したが強靭な装甲を持つ戦艦が厄介だった

 

「ライフル撃ち込み続けるか?そうすりゃ鎮守府の弾薬すっからかんだな」

 

もう一度ブレードで攻撃を仕掛ける

今度は海ごと切るように上から振り下ろす、今度は回避できない悟った戦艦は2枚の盾を重ねるが意味をなさずバターのように盾ごと切断される

 

『敵機直上‼︎』

 

「援軍の奴か!」

 

もう一隻もやろうとした瞬間、とうとう敵の援軍の艦載機が到着した為ブレードではなくハイブーストで突進、爆撃を回避しつつ戦艦を蹴り飛ばす

 

「数が多い…面倒だ」

 

こうしている間にも敵の増援はこちらに迫ってくる

 

潮時かと思った瞬間リコンから反応がひとつ消える

さらに2つ3つと反応が消えていく

 

『敵グループB撤退を開始、グルーCもです』

 

「なにが起きてんだ?」

 

いつのまにか艦載機も引き上げている、さっきまでの騒がしさが嘘のように静かだ

 

「もしかして58か?」

 

『補給も整備もできてないのに敵の撃沈ができるんですか?』

 

「聞けばわかるさ」

 

無線をオープンにして呼びかける

 

「助力してくれた所属不明の艦、私は…、ぁー…鎮守府所属の戦闘員だ、聞こえていたら返事をしてほしい」

 

エドガーは自分の所属する鎮守府の名前を知らない、正確には白崎は説明していたがエドガーが聞いていなかったのである

 

そんな怪しさ全開の呼びかけに相手は答えてくれた

 

《なんでこんなところに人がいるでちか》

 

「提督のお願いで君を助けにきた、まぁこっちが助けられたがな」

 

《あの提督がそんなこと言うとは思えないでち》

 

「あの提督ってのは趣味悪いおっさんのことか?そのことなら安心していい、もうそいつはいない」

 

《そうでちか》

 

足元でざぱっという音がする

 

下を見れば魚雷を抱えた伊58と思われる艦娘がこちらを見ていた

資料で見た58とは随分違う、髪が伸び放題でもはや前が見えているのか不安になる

セーラ服はところどころ破れていて黒く染まっているところがある、おそらく固まった血だろう

 

「なら早く帰りたいでち、イムヤ達が待ってるから」 

 

「ああ、そうしよう」

 

58をACに乗せる

 

「ところでイムヤって誰だ?」

 

「伊168の事でち、ゴーヤの大切な仲間の1人でち、伊8も伊19も」

 

「そうか…」

 

この時エドガーは疑問を抱いていた

白崎がまとめた書類には伊168、伊8、伊19の名前はかった

 

無事が確認できているのか、それとも

 

疑問が嫌な予感に変わっていく

 

「チッ、俺の嫌な予感は当たりやすいのにな…」

 

「え?」

 

「なんでもない、鎮守府へ戻ろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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