日常が戻ってきた
はやての誕生日パーティーをした翌日から亜樹の特別訓練を開始した。
やることは単純、魔力制御の訓練なので普段から狭い道場内を飛び回っている亜樹には簡単だったみたいで、ものの2日で魔力を隠すことに成功した。
「良し!もう大丈夫だな。」
「うん!案外、簡単だった。」
「隠蔽結界の中にいるとき以外はいっつもするんだよ。」
「うん、でもなんで?」
「そうしないと怖~い人が来るし、何よりお母さんに怒られる……。」
「…………分かった!絶対にいっつもやってる!」
亜樹の決意は固かった。
3日後
放課後、波留は珍しく一人で下校中である。亜樹は帰りにはやての家に寄って帰ると言い、なのは達はそれぞれ習い事があると言っていた。
なので一人で帰っている波留は、これまた珍しく遠回りをして帰っていた。
「こっちは、はやての家の近くか……ならここを曲がってみるか。」
通ったことの無い道に入りちょっとした冒険気分で歩いていると、広場でゲートボールをしている人達が目に入ってきた。特に気にすることなく近くまで来るとちょっと変わった光景がそこにはあった。
ゲートボールを楽しんでいる老人の中に、赤い髪のおさげをしている小さい女の子が混じっていたのだ。
「誰かの孫かな?……にしても楽しそうにやるなぁ…。」
波留はその光景を横目にしながらその場を通り過ぎた。
その日の夜、亜樹がはやての家でのことを話してくれた。
「今日ね、はやてさんの家族に会ったの。」
「え?…へぇ~……。」
今日、亜樹が借りていた本を返しに行ったら金髪お姉さんが出てきたらしい。
中に入ったら、青っぽい毛の大型犬もいたと興奮して伝えてきた。
他にも2人いるんだが亜樹が行った時は留守にしていて会えなかったと残念がってた。
『はやてに家族ねぇ~…。
それにしても我が妹は相変わらずコロコロ表情が変わってカワイイなぁ。』
翌日、新商品の入荷の手伝いを兄妹でしていた。
雑貨屋らしく食料品から小物まで今回も十数点の新商品が入ってきた。
「…紅茶とコーヒー豆……これはキャラクターグッズか?」
「あーーー!お母さん!のろウサ!のろいウサギ………。」
亜樹がすごい勢いで奈々に詰め寄る。
「亜樹、知ってるの?」
「お兄ちゃん知ってるも何もこの、のろウサは今クラスでも人気急上昇のキャラクター
なんだよ!」
その後も亜樹に、のろいウサギの事を熱く語られた波留だった。
次の日曜日
波留は、朝から店の手伝いをしていた。今日もいつも通りのそこそこ忙しい一日になるだろうと予想していたが
開店直後に、はやてが来店したのが幕開けとなった。
「いらっしゃいませ~……、なんだはやてか。」
「なんだとはなんや。お客やぞ?」
「悪い悪い。まぁゆっくりしていきなよ。…亜樹~、はやてが来たぞー!」
はやてと一緒に見知らぬ3人が一緒に入ってくる。
『あれが噂のはやての家族か……。
亜樹が言っていた金髪のお姉さんに、ピンクポニテの美人さん、赤髪おさげの女の子……ん?
ゲートボールをしていた子だ。はやての家族だったのか。』
波留がはやてたちを見ていると、タッタッタッタッ亜樹が店に出てきた。
「あッ!はやてさん、シャマルさん、いらっしゃいませのおはようございます。」
「亜樹ちゃん、おはようさん。」
「おはよう、亜樹ちゃん。」
3人はお互いに挨拶を交わす。そこへ波留が
「はやて、亜樹、俺にも紹介してくれない?」
「あぁ、お兄ちゃんゴメン。」
「ゴメンな波留君。私の家族のシャマルにシグナムそれとヴィータや。」
「初めまして、はやての友達で亜樹の兄で月山波留です。よろしく。」
「シャマルです。よろしく波留君。」
「シグナムだ、よろしく頼む。」
「ヴィータだ、…よろしく。」
お互いが自己紹介をしている、後ろで父・孝夫がほんの一瞬ではあるが警戒心を高めたのを波留は感じ取った。
波留もこの3人はただものじゃないと感じたが、孝夫の警戒が一瞬だったのと何よりアリアが全く警戒していなかったので、気にしなかった。
はやて達は小物と調味料を買いに来たみたいでそれぞれのコーナーで物色している。その時、ヴィータが
のろいウサギの前で、目を輝かせてじーーーーッと眺めていた。
それを見たはやては、のろいウサギのぬいぐるみを一つカゴに入れた。ヴィータは大喜びしていた。
はやて達の買い物が終わり店を出たところでヴィータがさっそくぬいぐるみを出したのが怒涛の一日の幕開けとなった。
のろウサのぬいぐるみを見た女の子が
「あーーーー!のろウサだーーー!!!」
の一言でゴングが鳴った。
次々に子供たちが入店、のろいウサギのコーナーに殺到する。
あまりの人数に、店内は騒然として急遽、入店人数制限・のろウサの購入制限をかける羽目になった。
夕方、なのはたち3人がムーンに来た。
「「「こんにちは~。」」」
「ってどうしたのよ!波留。」
そこには燃え尽きている波留がいた。
翌週
今までと変わらない日々が続く中で変化は徐々に起きるもので、その一つが先日、紹介されたはやての家族だ。
街中で見かけるようになると、次第に会話もするし仲良くもなる。シャマルは、はやてとよく買い物している時に会うし、シグナムは近くの剣道場で師範代みたいなことしてる。ヴィータからはゲートボールに誘われたりザフィーラという大型犬の散歩中によく会う。
その他にも変化はあって、高町家の練習の日になのはが見学をするようになった。よく美由希さんに
「なのはもやる?」
と誘われるが
「今は見てるだけでいいの。」
と断っている。これは近々なのはも鍛錬に参加するだろう。
そんなこんなで、変化してるが平和な日々を過ごしているがそんな日がいつまでも続くわけがない。
それは、波留が土曜日の午後にアリサ達に誘われたのが始まりだった。
その日は特にやることがなかった波留は、久しぶりに読書(ラノベ)に打ち込もうと帰宅した直後の事である。
アリサとすずかがムーンに買い物に来て
「どうせ暇してるなら、私達に付き合いなさい!」
のアリサの一言に連れまわされる羽目になった。ちなみに亜樹は今日もはやての家に遊びに行っている。
連れまわされると思っていた波留はあっけにとられていた。
「…ここって翠屋じゃん……。」
「そうよ、それがどうしたの?」
「いやてっきり買い物に付き合わされて荷物持ちをさせられると思ったから……。」
「そんなことしないわよ!この前、なのはから新作が出たこと聞いたから来たかったの!!
それにこの前、お店が忙しかったみたいだから少しでも元気になるかもって………。」
最後の方は声がだんだん小さくなっていくアリサ。
「ごめんよ、アリサ。ありがとう。それじゃゆっくりお茶にしようか?」
「わ、分かればいいのよ!」
そう言って耳まで真っ赤になりながら中に入っていくアリサに続いて波留とすずかは少し笑いながら後についていく。
「いらっしゃいませ~。あらアリサちゃん、波留君にすずかちゃんまで。」
「「「こんにちは。」」」
桃子が3人を出迎える。席に着くと美由希が水を持ってきてくれた。
「いらっしゃい、3人とも。」
「こんにちは、美由希さん。なのはは?」
アリサが美由希に訪ねると
「ごめんね~、今お使い頼んだばっかりでしばらく帰ってこないんだ。」
「そうですか…。それなら仕方ないですね。」
少し落ち込むアリサ
「そういえば、士郎さんと恭也さんは?」
「二人は知り合いの道場に出稽古………さて、注文はどうする?」
3人は顔を見合わせて
「「「新作で!」」」
「かしこまりました!」
3人は新作のケーキを堪能しゆったりとした時間を過ごす。
「「「ごちそうさまでした。」」」
「ありがとうございます。またいつでも来てね。」
桃子にお礼を言って翠屋を出た3人は
「帰り、送るよ。」
波留が二人に言うとアリサが
「鮫島を呼んだから大丈夫よ。」
「んじゃ来るまで一緒に待ってるよ。」
鮫島とはアリサの家の運転手である。
3人で待っていると、すごい勢いで黒塗りのワゴンが横付けし波留を押しのけアリサとすずかを車に押し込め
走り去っていった。
波留は、押されたこともあり状況が呑み込めなかったが二人が攫われたことに気づき、車の後ろバンパーにサーチャーをくっつけた。
「俺の目の前で誘拐とか、いい度胸じゃんか………。」
これから波留の追走が始まる。