ドカ~ン!!
入口のドアと共に見張りの男が飛ばされてくる。
「だから言ったのに~。素直に入れてくれれば痛くないよって……。」
飛ばされた男が立ち上がろうと四つん這いになった所で、氷村が男の襟を無造作につかんで入口にいる波留目掛けて投げる。波留は難なく避けて男は入口を通り過ぎ廊下の壁にめり込む。
「あっぶないなぁ。当たったらどうするんだ!」
「フンッ。なんだい?君は……。」
「波留君……。」
「お?すずか、無事か?アリサは……も無事か。」
「………っ。」
「アリサ?……しゃべれないのか?」
アリサは声を出そうとするが出せず、波留の質問に頷いて答える。
現れた波留に驚きつつも冷静に聞く氷村を見事にスルーし、すずかとアリサの安否を確認する波留はアリサの声が出ないのを不思議に思っていると
「貴様は何者だ?」
「あぁん?……人に名前を聞くときは、自分から名乗れ!」
波留の答えに
「やれやれ、これだから下等生物は…。」
と上から目線で呆れている氷村に少し怒りの態度が表に出ている波留、そこにアリアが入口にちょこんと現れる。
氷村はそれを見て笑いながら
「ハンッ!高町恭也かと思ったらナイト気どりのガキに野良猫か?
警戒していた僕が馬鹿だった…。いいだろう!特別に名乗ってやる!
僕は、夜の一族が筆頭、氷村家の当主”氷村 遊”だ。」
「……夜の一族?」
〘知ってるか?アリア。〙
聞いたことが無い。赤バラの記憶にもそんな一族は存在しない。
〘いいや。私も聞いたことが無いな。〙
アリアなら知ってると思っていたが当てが外れた波留だったが、名乗りを上げた氷村が意気揚々と説明してくれた。
「知らなくて当然だ。貴様ら人間なんかより遥かに高貴で超越した存在
「なん、だと…。」
〘アリア!どういうことだ?〙
〘分からん。ただ純血では無いはずだ。最後の純血の
その王妃”アーデルハイト”なのだから。〙
「……………。」
〘考えても分からん!分からないから適当な会話と奴の実力で判断する。分析よろしく!〙
〘…そうだな。分かった。〙
波留達はひとまずの方針を決め氷村に揺さぶりをかけることにした。
「…その
驚愕の表情をした波留を見て愉悦に浸っている氷村は気分がいい為、答えてくれた。
「これから死ぬ奴に、教えても意味はないが教えてやろう。僕が欲しいのは月村すずかだけさ。
そっちの金髪は要らん。」
「……何で、すずかを?」
「それはな……」
「いや、やめてやめて、言わないで……。」
「それは、その女も夜の一族なんだからなぁwハァッハハハー。」
すずかの願いもむなしく、氷村はすずかの正体をあっけなくバラす。
確かに驚いたが、波留はどこかで合点がいった。普段おとなしそうに見えるすずかだが体育やスポーツをする時は異様に能力が高かったのだ。
すずかは俯き涙を流し、アリサは未だに驚きを隠せないでいると波留が
「…な~んだ、そんなことか。」
一同は波留の反応に驚く。
「なに!?」
「え!?」
「…すずか、ゴメンな?知られたくない秘密をこんな形で知っちゃって……。
その代わりじゃないけど後で俺の秘密も教えるからさ泣くなよ。」
波留の言葉にすずかは頷いて答え、アリサは決意をしたような目になった。
「友情ごっこはやめてくれるかな?反吐が出る。」
「それはこっちのセリフだ!
「なんだと?…貴っ様……楽に死ねると思うなよ!!」
「!いけない波留君!彼の目を見ないで!!」
「動くなーー!!!」
氷村がそう叫ぶと眼光を鋭くして波留の目を見る。すずかが波留に注意をするが間に合わず、波留は氷村と視線が重なる。よく見ると瞳孔が猫のように垂直のスリット状に変化している。
波留が固まっていると、すずかは絶望した顔をし氷村は笑いながら波留に近づいてくる。
「生意気なことばかり言っているからこうなるんだ!これが僕の力だ!どうだ?
僕の魔眼を味わった感想はww?」
〘波留?〙
〘うーん?問題ない。〙
〘だろうな。〙
アリアが心配するが大したことはなかった。魔眼と言っても眼から魔力を飛ばし瞬間催眠をかけるもので、普通の人間ならまだしも魔力を持つ者には効果が全くと言っていいほどない。かかったとしても自身の魔力で催眠効果を消してしまえば問題ない。戦場では一切使い物にならない児戯である。
そんなことも知らずに高らかに笑っている氷村に波留は右ストレートをお見舞いする。
「ハハハハハー、ぶべらっ」ドカッ
氷村は見事に吹っ飛ぶ。左頬を押さえながら
「な、な、なんで動ける?」
波留がゆっくり氷村に近づいて行く。
「クソッ!クソッ!止まれ!動くな!」
何度も魔眼を使うが波留は涼しい顔で近づいて行く。
「クソッ!」
そう言うと氷村は
それを見ていたすずかはかろうじて見えていたが全部は見えなかった。すずかでかろうじてなのでアリサには氷村の手や足が残像で沢山見え、
「なんなのよ、これは…。!」
絶句し出た言葉がこれである。
「アリサちゃん声が……。」
それを聞いたすずかはアリサに抱きついた。
いつの間にか二人の縛られていた手が解かれていた。
波留は避けながらおもむろに右手を前に突き出し、氷村に強烈なデコピンをお見舞いする。見事に吹っ飛ぶ氷村はそんな波留に怯え後ずさりしていく
「クソッ来るな!」
後ずさりしながら無駄な魔眼を放つ。がもちろん効果は無い。氷村が下がっていくと手にモフモフしたものが当たる。ゆっくり振り向くとアリアが座っており、器用に後ろ足で立ち右足で氷村のおでこをポンっと触ると、2mくらい吹き飛ばされた。
「なんだ、こやつダムピールではないか。」
アリアは触れた瞬間に氷村の血と力を読み取り答えを出した。
「ね、猫が喋った…。」
氷村があわあわしながら驚いていると、波留が左手で後ろから氷村の目を隠し右耳に
「眠れ。」
そう囁くと彼はそのまま意識を失った。
波留が立ち上がりアリサとすずかに
「二人とも大丈夫?」
優しく声をかけた。
「波留…あんたって……。」
「波留君……。」
「詳しい話は後で、とりあえずここから出ようか?」
「「…うん。」」
3人はゆっくり階段を下りていくと、ビルの入り口に影が2つ見える。
「みんな無事か?」
士郎と恭也の二人がそこには立っていた。
その後ろには美由希と忍の姿も見える。
「すずか!」
「お姉ちゃん…。」
二人は抱き合って、すずかは安心から泣き始めた。
アリサも疲労から座り込むが、執事の鮫島が迎えに来た。
「士郎さん、中の奴らお願いします。
3階に主犯がいますがそいつは家の道場にお願いしていいですか?」
「分かった。どうするんだい?」
「父さんとうちの猫に任せようと…。」
士郎はなるほどねとうなずき恭也と共に事後処理をしてくれた。
そして後日、夜の一族に関しての話し合いが月山邸のリビングで行われることになった。