話し合いから1週間、今度こその日常を満喫している波留。
『あの日はあの後も見ものだったなぁ』
店番をしながらニヤニヤする波留は、あの日の事を思い出す。
あの後、すずかの父・俊さんが氷村の事について聞いてきた。
「そういえば彼、氷村君は今どうしてるのですか?」
「あぁ、今は道場に簀巻きにしてまだ寝ていますよ。波留の暗示で。」
俊さんの質問に父さんが答え今度は父さんが聞き返す
「そういえばこういう時、夜の一族はどういう対応をするんですか?」
「どういう、というと?」
「事件や犯罪を犯した者に対して一族のしきたりみたいなものです。」
「あぁ、それはいくつかありまして……。」
内容としてはこんな感じだった。
・その者を特殊な檻に投獄させる。
・強力な暗示をかけ能力を衰退させる。
・上記の二つの組み合わせ。
・抹殺。
「とまぁ、こんな感じですかね。家同士の争いだと財の没収や一族郎党処分ですね。」
それを聞いてたなのは達3人は手を取り合い震えていた。
「なる程ね、どうしますか……ねぇ?ブリジット。」
「そうだな、投獄は脱走される恐れがあるし、暗示はいくら強力でも解かれる危険がある。
抹殺が手っ取り早いがそれでは罪を償っていないからなぁ……。」
どうしたものかと皆で考えているとブリジットが
「どうやら波留の暗示が解けたな。氷村何某が起きたみたいだぞ?」
そう聞いて全員が道場に向かった。
道場に着くと簀巻きにされた氷村がビタンビタン跳ねている。まるで陸に上がった魚のように。それを見た女性陣からプッと笑いがもれる。
当の氷村は「クソッ!」とか「解け!」とか叫んでいてうるさい。
そしてようやくこちらに気づいた氷村は更にヒートアップした。
簀巻きのまま器用に膝立ちになって
「高町恭也!それにさっきのガキ!貴っ様ー…ぶっ〇してやる!……。」
それからも月村家の面々を見てはギャーギャー騒ぐ。あまりにも五月蠅いから黙らせようと前に出ようとした時、横からタッタッタッタッと亜樹が氷村に向かっていった。
そして氷村の前まで行くと
「なんだ?このガ………」
氷村が言い終わる前に、亜樹の渾身の張り手が奴の顔面に炸裂!
バッチーーーン!!!
氷村は2回ほど跳ねてゴロゴロと転がる。
「この人…うるさいです!!」
そう言いフンスッと腕を組む妹に一同の口は空いたまま塞がらない。
俺が氷村の様子を見に行くと、左頬が腫れ白目をむいていた。取り敢えず彼を引きずり皆の近くに運ぶと奴の目が覚める。ちょうど亜樹の目の前だったため情けなく「ヒッ!」
なんて声を漏らしてた。
そして亜樹が父さんたちに
「この人、おじいちゃんズにお願いすれば?」
それを聞いた月山家一同は
「「「「その手があったかー!」」」」
納得している俺たちに士郎さんが
「なあ波留君。おじいちゃんズってまさか……。」
「そうです。うちの里の人たちです。」
それを聞いた士郎さんの顔色が青ざめていくのがよく分かった。
士郎さんは何度かうちの里に来たことがあって、里のご隠居達とも顔見知りだ。何度か手合わせをしてもらっていると聞いたが全く歯が立たないと聞いたことがある。
「…あ、あそこなら大丈夫だね。皆さん元気だし、簡単には出られないし……。」
「え、え、どういうこと?」
「ねぇ波留。私達にも説明しなさいよ!」
なのはとアリサが聞いてきたので皆にもわかりやすく説明する。
「家の里はさっきも話した通り隠れ里で、まず見つけられない。里から出るときも普通には
出られないし、監視対象がいると里中で見張る。無理に出ようとすると直ぐに包囲確保される。
それに里のジジババはとにかく元気がいいからこき使われる。」
俺の身振り手振りをつけた説明を聞いてアリサが
「あぁーそりゃ無理だわ。」
ってため息交じりで言ってた。
「そうと決まれば明日にでもさっそく連れていきますか!」
父さんがそう言ってる後ろで母さんが里に電話をして事情を説明していた。
「皆さんそれでいいですね?」
みんなが同意する中、父さんが氷村に
「今夜はここで寝なさい。波留、亜樹、彼に布団を用意して。」
「「ハーイ」」
二人で布団を用意して氷村を転がす。そして布団の所だけにブリジットが結界を張ってくれた。逃走防止と騒音防止らしい。
翌朝、氷村は父さんと一緒に隠れ里に連れていかれた。
そんなことを思い出しているとお客さんがやってきた。
「いらっしゃいま……。」
「波留君!波留君!」
「せ~…ってなのはか。どうした?そんなに慌てて。」
「今ね、リンディさんから連絡が着てフェイトちゃんと少しお話しできたの!」
「おぉー、そうか。で?」
「それでね今、じじょーちょーしゅってのをしてて、来月に裁判をやるんだって!」
「来月かぁそうすると8月だな。」
「うん!リンディさんの話だとフェイトちゃんは罪にならないのが濃厚なんだって!」
それからもなのはの興奮は治まらず矢継ぎ早に色々話していった。一通り喋った後は
「あっ!お買い物頼まれてたんだった。それじゃあね波留君!」
まるで嵐のようだった。
「いろいろ言ってたけどよくわからないなぁ。……ユーノに聞くか。」
〘ユーノ、今ちょっといいか?〙
〘波留?どうしたんだい君からなんて珍しい。〙
〘さっきなのはが来て、フェイトの事をいろいろ言ってたんだけどよくわからなくて説明
してくんない?〙
〘あぁそのことか…今、お店だよね?ちょうど近くにいるから今からそっちに行くよ。〙
〘分かった、待ってる。〙
5分ほどして
「いらっしゃい、ませ~?」
店の入口にいたのは人間姿のユーノとクロノが立っていた。
「なんでここにいるの?」
「さっきついたんだ。2日ほど休暇がもらえたんだよ。」
波留の質問にクロノ本人が答え
「それで僕が迎えに行ってたのさ。」
ユーノが付け足した。そのタイミングで母さんが帰ってきた。
「ただいま~、あらお友達?ゆっくりしていってね?波留、お店はもういいわよ。
お友達と遊んでらっしゃい。」
「お帰り。それじゃ行ってくるね。どうせだから翠屋で話そうか?」
「そうだね。」
俺の提案にユーノが賛成してくれてクロノは「任せる。」ってさ。
そのまま俺たちは翠屋でお茶をしながらさっきの話を詳しく聞いた。
「それで?結局どうなるの?」
俺は翠屋特製シュークリームを食べながらクロノに聞いた。
「あぁ、まずプレシア女史だが君達が見つけてくれた資料でかなり有利になった。
当時の酷い状況を鑑みて情緒酌量の余地ありが管理局側の見解だ。ただアースラに攻撃を
加えたのは事実だからそこの点だけだな。後は管理局に従事してもらい保護観察処分って
ところさ。」
「温情ってわけだ。」
「そういうこと。…そしてフェイトなんだが、母親からの命令に従っていただけということと
今、受けている事情聴取にも積極的に答えていること、後は君たちの資料と使い魔の
アルフとリニス証言で保護観察処分が妥当だろう。」
写真を見せてもらいながら、みんなの近況を聞いて
「元気そうでよかった。」
「元気といえば、アリシアなんだが元気が良すぎてちょっと困ってる。彼女は被害者なので
特にどうこうすることはないんだがとにかく元気すぎる。今はリニス達と本局の居住区域で
プレシア女史の帰りを待っているよ。」
「ハハ。」
「それで、彼女の裁判の1回目が8月の後半だ。予定としては10月の中頃と11月の後半の
計3回だな。裁判といってもこれだけの資料があるから半ば形だけさ。」
「なるほどね。ようやくわかった。興奮したなのはの話だけじゃ要領を得られなくて…。」
3人で苦笑いしつつお茶を飲んでると本人が帰ってきた。
「ただいま~。ってあれ?なんでクロノ君?どうして?」
はぁ、またなのはが興奮しだした。
なのはをなだめつつみんなでお茶をする、のんびりな日常を過ごす波留だった。