リリカルの世界に転生?   作:Y's T

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A’s編
再会と不穏な影


木枯らしが吹く11月も中頃が過ぎた頃の早朝。

波留はいつも通り道場の朝稽古に精を出している。

先日から、奥伝の修練に入った波留は日々苦戦している。

奥伝はどの流派でもいえることだが奥義に値するものである。波留は一通りの型を父である孝夫に教えてもらったがこれが途方もなく難しい。というか形をなぞることもできない。

月山流の奥伝は、そのほとんどが成人した体(里では16歳で元服)で放つ技ばかりで今の波留にはそのほとんどが使えない。使えたとしても本来の威力の1/10以下の威力しか出せない。

 

「うーん……やっぱうまくいかないなぁ。身体強化を使えば、十二分に威力は発揮できるけど

それだけだからなぁ。やっぱ練習あるのみか。」

 

そうつぶやきながら型を始めた。そこへ孝夫がやってきて、二人の朝稽古が本格的に開始される。

 


 

次の土曜日、波留は商店街で買い物をしていた。

この日は両親が商店街の会合で夜にいない為、波留が夕食を作ることになっている。

 

「今日は何にするかなぁ……。お?鶏肉が安い。チキン南蛮か…唐揚げか…」

 

そう肉屋の前で考えていると後ろから

 

「うちなら唐揚げやね!」

 

聞きなれた声に振り向きながら

 

「その心は?」

 

波留は声の主、はやてに聞く。

 

「それはうちも今晩、唐揚げの予定だからや!

 おっちゃん!胸肉とモモ肉のいい所500gづつ頂戴!」

 

「おっ!?はやてちゃん!毎度あり!おまけにササミを付けてやろう。」

 

「ほんまに?やったぁ!おおきにおっちゃん!」

 

そんなやり取りを波留は、一緒に来ていたシャマル、ヴィータと眺めていた。

 

「相変わらず人気があるなぁ。」

 

「そうですね。はやてちゃんはこの商店街のアイドルですからw」

 

そんな会話をしていると次々に声をかけられるはやてだった。

そんなはやての車椅子を押しているヴィータに違和感を感じる波留。

 

『ヴィータの奴、どうしたんだ?今日はなんだか殺気だった感じというか戦いから

 帰ってきたばっかりって感じだ。』

 

「ねぇシャマルさん。」

 

「なんですか?」

 

「今日のヴィータ、なんか変くないですか?」

 

「っ!そうですか?いつもと変わらないですよ?」

 

「なんていうか、イライラしているっていうかピリピリしているっていうか…殺気だってる?

 みたいな感じ…。」

 

「そんなことないですよ。」

 

「そうですか。すいません、変なこと言って。」

 

『この子なんて鋭いの。ヴィータちゃんのほんの少しの変化に気づいた。はやてちゃんの話だと武道をやっているらしいけどそれでもこの年で察知するなんて異常だわ。』

 

〘ヴィータちゃん、殺気が少し漏れているわ。波留君が異変を察知したわ。気を付けて。〙

 

〘マジか!?そんなつもりはなかったけど悪い気を付ける。にしてもあたし本人も気づかない

 殺気に気づくってどんだけだよ波留の奴。〙

 

〘それだけ奴の感覚が鋭敏なんだろうな。〙

 

〘シグナム!今どこに?〙

 

〘お前の後ろだヴィータ。ちなみに波留は気づいているぞ、ていうか視界に入っているからな。〙

 

ヴィータが振り向くとその先にはシグナムがジャージ姿で竹刀の袋を持って歩いてきた。

それに気づいたはやては笑顔で

 

「あっ!シグナム。お帰り、稽古はもう終わったん?」

 

「主はやて。ただいま戻りました。」

 


 

ヴィータの殺気が消えたことを感じた俺は唐揚げ用の鶏肉を買い、皆に挨拶をしてその場を後にした。

 

『3人とも表には出さなかったけど疲労と焦りが見えたな。

 はやてには知らせていないみたいだけど。』

 

そんなことを考えながら家の前に来ると見慣れた姿が店を覗き込んでいた。

 

「リニス?何やってんの?」

 

「あぁ、波留良かった。平日なのにお店が閉まっているから何かあったんじゃないかと思って

 心配しました。」

 

「それなら裏に回ればよかったじゃん。亜樹もアリアもいるよ?てかなんでここにいるの?

 ミッドチルダにいるんじゃないの?」

 

そこにはミッドにいる筈のリニスが立っていた。

 

「それはですね…」

 

「あーっ!波留だぁ。やっと帰ってきた。」

 

後ろから声をかけられた波留はびっくりして振り返るとテスタロッサ一家がいた。声をかけてきたのはどうやらアリシアみたいだ。

 

「アリシア?なんかすごい背、伸びてない?」

 

俺が知っているアリシアは小さく幼稚園児位だったのに今は、フェイトとほぼ変わらないくらいまで成長している。

 

「そうなんだよ。ここのところ急に背が伸びてきて体中ギシギシいうの!でもフェイトにはまだちょっと負けてるんだよねw」

 

そんなことを言いながらフェイトと顔を合わせて笑っている。

 

「そっか、よかったな。立ち話もなんだからとりあえず中にどうぞ。」

 

皆を中に招き入れ買ってきた食材を冷蔵庫にしまい亜樹たちを呼んでリビングで話を聞くことに。

 

「それで?ここにいる理由を教えてくれるんだよね?」

 

俺はリニスとプレシアに聞く。アリシアとフェイトとアルフは亜樹と一緒に翠屋のシュークリームに感動している。

 

「私が説明するわ。」

 

どうやらプレシアが説明してくれるみたいだ。

 

「先日、私たちの裁判がすべて終わったの。フェイトは保護観察処分。私は管理局に技術協力と

 保護観察処分ということになったわ。それと過去の事件についてだけど…。」

 

ヒュウドラに関わっていた当時の会社役員、現在は業績が上がって取締役になった者を始めとする関係者数名が捕まり、そこから芋ずる式に管理局上層部の人間まで繋がり一斉検挙に発展した。

 

「それで、逆恨みの懸念もあるからミッドよりこちらの方が安全ということでしばらくこちらで

 暮らすことになりました。」

 

リニスが補足をしてくれた。

 

「なるほどね、それで挨拶に来てくれたのか。わかった、雑貨ならうちの店で扱ってるから

 利用してくれるとありがたい。今日は両親が二人とも商店街の会合でいないけどゆっくり

 していって。」

 

それを聞いたリニスとプレシアが夕食を作ると言いだし、材料の買い足しに再び肉屋に走る波留。またにぎやかになるなと思いつつ楽しい食事を楽しんだ。

 


 

翌日、さらに驚くことが起きた。なんとリンディさんとクロノもこっちで暮らすらしく挨拶に来た。

どうやらテスタロッサ一家の保護管がリンディさんらしい。それに他にも理由があるみたいだ。

ちなみに両家共に近所のマンションに隣同士で引っ越してきた。

 

「それでもう一つの理由ってのがこれか?」

 

ハラオウン家のリビングで説明を受ける俺はクロノに聞いた。

そこにいたエイミィが空中に映像を映し出す。

 

「そうだ。今回この地球を中心とした管理外世界で多数発生している事件に我々アースラが

 担当することになった。今までは現地の大型生物が対象だったが今回は違う。

 不審に思った本局の担当が精鋭の魔導士を1個小隊24名を派遣したんだ。

 その結果がこれだ。」

 

次に映像が切り替わり、無残にも横たわる魔導士たち。

 

「幸い全員の命には問題無いよ。ただあるものが急激に減っていたけど…。」

 

何とも歯切れも悪い言い方をするエイミィに

 

「あるもの?」

 

「リンカーコアだ。どうやら自然回復はするようなんだが戦線復帰はかなり先になる。」

 

「そういう訳で、私たちの他にも本局の武装隊精鋭2個小隊が来ているわ。」

 

ここでリンディさんが補足で付け加える。更に

 

「それにあなた達にも被害が及ぶ可能性があるのでその護衛もかねてなの。」

 

「護衛の必要があるのか疑問だがまぁそうゆうことだ。しばらくよろしくな波留。」

 

「それはひどくないかクロノ?まぁいいやこちらこそよろしく。ところでこの事プレシア達には?」

 

「プレシア女史には話してあるわ。捜査協力をお願いしているの。子供達にはおいおいね。」

 

何ともまた厄介なことになったなと思う波留だった。

 


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