闇の書の暴走が始まり、管制人格が表に出てきて空間攻撃を仕掛けた。そしてナハトヴァールに手を伸ばし腕に装着すると、結界を張った。
その様子を離れたビルの屋上から見ている影があった。
波留と亜樹それにブリジットの3人だ。
「お兄ちゃん、はやてさんが変わっちゃったよ?皆もなんか消えちゃったし。
いいの?てか助けに行こうよ!」
「まぁ待てって。俺たちの出番はまだ先だから。
それにそろそろ管理局も動くころだろ?なぁクロノ?」
そう言った波留が振り向くと屋上入口の影から人影が現れる。
「なんだ。やっぱりばれてたか?
うまくいったと思ったんだけどな。」
頭を掻きながらクロノが出てきた。
「当たり前だ。それは俺が教えた技だからな。
でも、よくできてたよ。合格点を上げよう。」
「まぁ褒め言葉として受け取っておくよ。
それで、波留達は動かないのか?」
「あぁ、もう少しだ。
ところでそっちはどうなんだ?」
クロノの質問に答えた波留は再度質問する。
「どうにか配置は済ませた。後は…。」
配置とは、今回の件で管理局が用意した武装局員たちの事だ。彼らは決して弱くないが今回は相手が悪すぎる。束になってかかっても被害が広がる一方なので今回は周囲に広域展開し街に被害が出ないように結界を張る準備をしていた。
「あれか…。」
二人が話しながら視線を送る先には闇の書の管制人格と戦闘を繰り広げるなのはとフェイトの姿があった。
その戦闘を見ながら亜樹は「あぁ」や「あぶなっ」「避けて避けて!」と一人騒がしくしている。今にも飛び出しそうな亜樹をブリジットが時折抑えている。
「お兄ちゃん!!」
亜樹が振り向きながらもう我慢できないって顔をすると、戦闘区域で動きがあった。
地面から無数の炎のようなエネルギーの塊が柱となって次々と現れる。
それからさらに戦闘が激しくなっていく。
「お?なのは達が反撃するぞ。」
波留の言葉に亜樹が振り向くと上下から挟んだ二人がコンビネーションを放つところだ。
「あれくらうとかなりしんどいんだ。。。」
クロノが思い出したかのように言葉を発した。
「コンビネーションを幾つか考えたから見て欲しいって言われてユーノと一緒に
相手したんだけど、二人からそれぞれ別のバインドをかけられるから解除するのに
時間がかかるし挟み撃ちで砲撃されるから逃げ場がないんだよね(´;ω;`)
それにあの時より練度が上がっている。更に練習したんだな。」
そんなことを話している間に二人が砲撃を放つ。すると管制人格は力ずくでバインドを解き二人に反撃した。
その様子を見たクロノは興奮しながら
「なぁ!あんな解き方、よほどの魔力量じゃなきゃ無理だ!」
「あっ」
亜樹が声を上げると二人は自身の魔法で拘束されている。
それを見た波留が
「そろそろだ。行くぞ!」
その言葉を待っていた亜樹はやる気満々だ。
「じゃあ手筈通り。亜樹はなのはのサポートをしながら遠距離から攻撃。
ブリジットは亜樹のフォローを。」
「分かった!」
「了解した。」
「クロノは…」
「僕は状況を見極めなきゃいけないからまだ動けない。」
「分かってる。いざというときは頼むな。」
「任せろ。」
波留はそれぞれに言葉をかけてからバリアジャケットを身にまとい戦闘空域に飛んでいく。
それを確認した亜樹もバリアジャケットを展開、愛機のレティシアを構える。
〘亜樹。二人のバインドを破壊してくれ!〙
〘りょーかい!〙
波留が念話で亜樹にそう言うと亜樹はうつ伏せになりデバイスを構え大きく深呼吸をする。
「すぅぅ、はぁぁぁ、すぅぅ。」
そして息を吸い、止めると
ドン
一発の弾丸が発射される。少しずらし、直ぐに2発目が撃たれる。
ドン
するとなのはとフェイトを拘束していたバインドがはじけ飛んだ。
と同時に上空から双方の間に波留が飛来する。
「波留君?」
「波留?」
「お待たせ。」
波留を見た管制人格は
「『強いな。だが…』主の邪魔をするならお前も眠れ。」
そう言うと闇の書を前に掲げページに蒐集した魔法を放つ。
「あれは、私のフォトンランサー。」
フェイトが声を上げると波留は難なくシールドで防ぐ。
「お前たちが来なければ我が主や騎士たちは心し静かな聖夜を過ごせた。
残りわずかな命の時間を暖かな気持ちで過ごすことが出来た。」
その言葉にフェイトが
「はやてはまだ生きてる!シグナム達だって…」
「もう遅い。
闇の書の主の宿命は始まった時が終わりの時だ。」
それを聞いたなのはは涙を流しながら
「終わりじゃない!
泣いてるのは悲しいからじゃないの?
まだ諦めたくないからじゃないの?
そうじゃなきゃおかしいよ!本当に全部諦めているなら泣いたりなんかしないよ!!」
「そうだ。少なくてもここに居る俺たちはまだ諦めていない!」
それを聞いた管制人格は涙を流す。が直ぐに魔力弾を放つ。
3人はそれを避け上空に退避する。
「伝わらないなら伝わるまで何度でも言う。
助けたいんだ。あなたの事もはやての事も。」
フェイトが想いの丈をぶつけるとナハトヴァールから鼓動が聞こえてくる。
すると周辺の地面から石の柱が現れ始める。
「早いな。
もう崩壊が始まったか。
私もじき意識をなくす。
そうなれば直ぐにナハトが暴走を始める。
私の意識があるうちに主と騎士たちの望みを叶えたい。」
闇の書を展開し無数の魔力の刃を出現させ一言
「…眠れ。」
それを聞いたフェイトはカチンときた
「…この「この、わからずやが!」」
フェイトの怒りにかぶせてきたのは波留だった。
放たれた魔力刃を躱しながら管制人格に殴りかかる。
しかし直前でシールドを張られ防がれる。
「お前にも心の闇があるだろう?」
すると波留の体が光の粒子になってどんどん薄くなっていく。その行先は闇の書の様だ。
「
消える寸前、波留は一瞬微笑む。
「波留君!」「波留!」
「我が主もあの子も覚めることの無い夢を見る。
生と死の狭間の夢。
永遠の…夢。」
「永遠なんて…」「ない!」
なのはとフェイトは真っすぐ力強い眼差しで答える。
波留が目を覚ますとそこはとても懐かしい部屋だった。
部屋の中をぐるりと見渡す。そこは
天蓋付きのベッドの横に子供用の小さなベッドが見える。ベッドに子供はいない、すると部屋のバルコニーから話し声が聞こえてきた。とても懐かしいそして愛おしい人の声が。
そこにいるのは、かつての自分を心から愛してくれた女性と、心から愛した女性、そしてその子供達がいる。
その光景を見た
先に彼に気づいたのは子供達だった。
「あーっ、とう様!」
「とう様どうしたの?」
子供たちは
心から愛した女性”ステラ”と、心から愛してくれた女性”アーデルハイト”。
ステラは人間だがその心のありように惹かれ妻として迎え入れた女性。
アーデルハイトは同じ純血のヴァンパイアの王族で一族の存続と繁栄を目的として迎え入れた女性。
因みにアーデルハイトが正妃でステラは側室である。
そしてアーデルハイトとの間に生まれた子”モミジ”。
ステラとの間に生まれた子”ユキネ”。
ユキネの方が一つ年上のお姉ちゃんだがお転婆で、モミジは割とおとなしいがユキネと一緒にいつも走り回っている。
それを見たステラたちは驚きを隠せないが
「あらあら、ストラウスったらどうしたの?」
「きっと悪い夢でも見たんじゃないかしら?」
ステラに続きアーデルハイトが首をかしげながら話していると子供たちが
「とう様、こわい夢みたの?」
「だいじょーぶ?」
二人は顔を見合わせてから
「「えい!」」
「こわい夢を見た時にかあ様がしてくれたから、とお様にもしてあげる。」
そう言うとユキネもウンウンと頷いている。
それを見て
「二人ともありがとう。もう大丈夫だよ。」
「ホントに?」
その言葉にユキネが聞き返してきて
◇
次の日の夜
まだ子供たちが寝ている。
「ここは、夢なんだよな?」
「突然どうしたんですか?」
アーデルハイトが不思議に思い聞き返してくる。
「本当なら二人共もうこの世にいない。」
「こわいこと言わないでください。」
ステラが返す言葉に
「もう、もう二度と叶うまいと思った。
かつて望んだ夢。だがもう叶わない…夢。」
「いいじゃないですか。ここでならその夢も叶います。」
「そうです。子供達とも仲良く暮らせるじゃないですか?」
ステラに続きアーデルハイトが答える。
「そうじゃないんだ。過去を受け入れなければ
それに、
そう言いながら、ストラウスの姿が波留の姿に変わっていく。
空の月を見上げる波留の後ろ姿を二人の妻と子供たちが笑顔で見送る。
波留はかつてのストラウスがしたように背中から翼を出して振り向く。
「行ってきます。」
その言葉に
「行ってらっしゃい。」
「
「「「「いと高き月の恩寵があらんことを!」」」」
そうして波留は月へと目掛けて飛び立つのであった。