「眠い…。」
はやては暗闇の中、まどろみの中に居た。
「我が主。そのままお休みを。
あなたの願い、すべてわたしが叶えます。」
「優しい声…誰?
でも聞いたことのある声。」
思い出そうとするはやてだがまどろみが邪魔をして思考が定まらない。
一方
なのはとフェイトは2対1という状況にも関わらず攻めあぐねている。
接近戦の得意なフェイトが近づいても軽くいなされ、遠距離の得意ななのはが射撃しても躱される。あの手この手で攻めるが上手くいかない。
今は、中距離で砲撃を撃ちあいながら作戦を考えている。
〘なのはカートリッジあとどれ位ある?〙
〘私は、3本18発分。フェイトちゃんは?〙
〘私も同じ。
さて、どうしようか?〙
〘もっと思い切りの一発でないと…
波留君もはやてちゃんもあの人も助けることができない。
フェイトちゃん援護して?〙
〘なのは?〙
「行くよ。レイジングハート!」
「
「ああん、もう。なのはったら。
バルディッシュ!」
「
なのはが飛び出すと同時にフェイトも飛び出しけん制のフォトンランサーを複数放つ。
管制人格はそれをシールドで防ぎ、向かってくるなのはにカウンターを合わせて魔力弾を放つ。
「お前たちも、もう眠れ。」
二人はどうにか攻撃を躱し管制人格と距離をとる。
「いつかは眠るよ。」
「でもそれは今じゃない!」
フェイトとなのはは彼女の言葉に力強く返す。
そしてなのはがレイジングハートを構えなおす。
「レイジングハート。エクセリオンモード!」
なのはの言葉に彼女の愛機レイジングハートがカートリッジを2発ロードして答える。
「ドライブ!」
「
そうするとなのはのバリアジャケットが再構成されレイジングハートがより攻撃に特化した形に変形していく。
「さぁ、我が主よ、お休みを。
あなたの願いは私が叶えます。」
「私の…願い……。
なにを望んだっけ……。」
「悲しい現実。すべて消してしまいたい。
主の望んだ幸せも…。」
「私が、欲しかった、幸せ…。」
「…健康な体、愛するものたちと過ごす日々
眠ってください。
そうすればあなたは夢の中でそんな世界にずっといられます。
だれもあなたを傷付けない、悲しみも痛みも何もないそんな世界に。」
「あぁ、それは、あったらええなぁ。」
ズズゥン
遠くで爆発に似た音がする。
ズズゥン
今度は、はやてのいる周辺に地震のような揺れが起きる。
それにより車椅子と共に揺れるはやては落ちそうになるが、管制人格が咄嗟に車椅子を抑えて事なきを得る。
次の瞬間、今まで朦朧としていたはやての意識がはっきりと覚醒した。
そしてその目を見開いて
「…思い出した。
全部、思い出した。
なにがあったか…。なんでこんなことになってもうたか。」
はやては目の前の女性にはっきり告げる。
そんな彼女は、はやての手を優しく握りながら
「…どうか……どうか再びお休みを、我が主。
後何分かしないうちに、私は私の呪いで貴女を殺してしまいます。
せめて、せめて心だけでも幸せの夢の中で…。」
涙ながら、はやてを説得しようとする彼女にはやては
「優しい気持ち。ありがとう。
せやけどそれはあかん。
私ら、よう似てる。ずっと寂しい思い、悲しい思いをしてきてん。
一人やったらできひんことばっかりや。
せやけど忘れたらあかん!
あなたのマスターはこの私で、あなたは私の大事な子や。」
そう言いながら泣いてる彼女頬に優しく触れる。
「ですが、ナハトがナハトが止まりません!
…暴走も、もう!!」
それを聞いたはやては目をつむり集中して足元に白いベルカの魔法陣を出現させる。
そして力強く
「止まって!」
すると魔法陣を中心にはやての魔力が空間に広がり、周辺の闇が少し明るくなった。例えるなら月明かりに照らされた夜の暗さだろうか。
するとはやての後ろの方で突然「うをっ!」という何とも言えない驚きの声が聞こえた。
はやてが振り向くとそこには鎧を身に纏い背中に翼を生やし驚きの顔をした波留の姿があった。
「…波留君?
……なんで涙目なん?」
「えっ、なっ!?」
はやての言葉に慌てて顔を拭う波留にはやては微笑みながら
「フフッ。
ところで波留君はなんでここにおるん?
それにその恰好は……?」
◇
時は少しさかのぼり、波留が夢の世界?のステラ達から別れ直感で怪しいと思った月に向かって飛んでいると不意にズズ~ンと空間が震えたと思ったら突然、暗闇の中に居たのだった。
さっきまで飛んでいた筈なのに今は地面らしき所に立っている。夜目が効くはずのダムピールなのに周りが一切見えない。本来なら無闇に動き回るのはやめた方がいいのだろうが今の波留は気力に満ち溢れていた為、取り合えず歩き回ることにした。
◇
…10分が経ち
…20分が経ち
波留の体感で1時間が経過したところで、彼の気力はレッドゾーンになっていた。
歩き始めは
「いくら暗闇でも真っ直ぐ歩けば何かにぶつかるだろう。」
なんて浅はかな考えをしていた。が実際は歩けど歩けど何処にもぶつからず、時間だけが経過していた。
そして1時間が経った頃、幾度となく周辺が震える音がした。
その音を聞き、少し冷静になって状況を整理始めた。
「えっと、さっきまでは闇の書に囚われて夢の世界に居た。
そこが夢だと気づいてその世界の月が怪しいと踏んで月に向かった。
飛んでる途中で空間が震えたと思ったら今の暗闇の世界に居た。
それで取り敢えず歩くことにして今に至る。
はぁ、我ながら浅はかな…。久しぶりに彼女たちの顔を見たから気が緩んだのかな。
取り敢えず周辺の探索をしないとな。」
そう言いながら波留は魔力で辺りを探索しようとした。が、そこは本当に何もなくただただ闇の広がる空間だった。
その後の波留は魔力で明かりを作ってみるがその明かりすらも闇に溶け込み全く見えない。確かに明かりを作っているのにかかわらずだ。他にも魔力弾を撃ってみたり、収束砲を撃ってみたり、魔力を開放してみたり、思いつくことを片っ端から試したがどれも効果がなく途方に暮れていたところに、今までより長く振動が起きたかと思ったらそれが突然止んだ次の瞬間、波留のいた空間がパリンと砕けたかと思ったらそこにはやての姿があってホッとしたら目に涙が溜まっていた。のが、はやてに再開した場面までに起きた事だった。
「そっかぁ、そんなことがあったんやね。
なんかうちの子がごめんな。」
「いや、いいって。
それより今の状況はどうなってるの?」
はやての謝罪に波留は大丈夫と答えるとどうなっているかを聞いた。
それには管制人格が答えた。
「今は、主が制御を出来るようになりましたが防衛プログラムの暴走が止まらない状態です。」
「どうすればそれを止められる?」
はやてが聞き返すと
「外で、表に出ている私と防衛プログラムを止め事が出来ればこちらに主導権が渡り切り離すことができます。」
「なら外には、なのはとフェイトがいるから二人に伝えることが出来れば…。」
「「止められる。」」
波留の言葉にはやてと管制人格が一緒に答える。
「今ならば主の声を外に届けることができます。」
「よっしゃ。なら頼もうか。」
「ハイ!」
外のなのは達は
一進一退の攻防が繰り広げられていた。
レイジングハートのエクセリオンモードでより攻撃に特化したなのはが前衛にフェイトがその援護の後衛に、各々の得意なポジションが逆転した形で戦闘が続けられている。
いったん距離が離れた時、変化が起きた。
突然、管制人格が苦しみだした。
「うぅぅ……うあぁぁぁ。」
彼女の動きが止まりナハトヴァールも苦しんでいるように見える。すると何処からか声が聞こえてきた。
「外で戦ってる方。すみません、協力してください!」
「はやてちゃん!?」
なのはが驚きながらフェイトを見る。
「この子に取り付いてる黒い塊を…「うわぁぁぁ!」。」
そこまで言うと管制人格が更に苦しみだし咆哮と衝撃を辺りに飛ばす。
その声になのはとフェイトは耳を抑えるとそこにユーノから通信が入る。
「なのは、フェイト!」
「ユーノ君!」
「フェイト。無事かい?」
「アルフ!」
ユーノとアルフは飛翔しながらなのは達のもとに向かっている。
「融合状態で主が意識を保っている。
今なら防衛システムを融合機から切り離せるかもしれない!」
それを聞いた二人は
「本当?」
「具体的にはどうすれば?」
「二人の純粋魔力砲でその黒い塊をぶっ飛ばして!
全力全開!手加減なしで!」
力強く語るユーノに二人は笑顔で
「さすがユーノ。」
「分かりやすい。」
「「
なのはとフェイト、それに二人の愛機も納得だと答える。
そして二人は魔法の準備に取り掛かる。
◇ ◇ ◇
一方のはやては
「名前を上げる。
闇の書とか、呪われた魔導書なんてもう呼ばせへん。
私が言わせへん!
ずっと考えてた名前や。
強く支えるもの、幸運の追い風、祝福のエール
リーンフォース。」
◇ ◇ ◇
そして外では管制人格ことリーンフォースが無差別に魔力弾を放っていた。
なのはとフェイトは落ち着きながらそれを防ぎ
「N&F中距離殲滅コンビネーション。」
「ブラストカラミティ。」
「「ファイアー!!」」
二人のコンビネーション砲撃が直撃した。
◇ ◇ ◇
一方の管理局側も今の砲撃で現在の状況が把握できるようになり、リンディがアースラの面々に指示を出す。
「現在の状況確認とクロノと連絡を!
それとアルカンシェルの準備を。」
そのクロノはというと
「さて、僕はなのは達のもとに行くが君たちはどうする?」
その質問に亜樹が答える。
「もちろん行きますよ!」
「だそうだ。」
亜樹の答えをきいたブリジットはやっぱりといった顔でクロノに答える。
「分かった。なら行こう。」
そうして飛び立つとクロノは一つのカード型デバイスを取り出し
「お前の力を借りるぞ、デュランダル!」
◇ ◇ ◇
再びはやては
「夜天の魔導書とその管制融合機、リーンフォース。
この身全て御身をお守りいたします。
ですが、ナハトヴァールの暴走は止まりません。
切り離された膨大な力が直に暴れだします。」
リーンフォースに抱えられたはやては
「…うーん、まぁなんとかしよ。」
そう言いながら手を伸ばし魔導書を出して抱きかかえると
「いこか。
リーンフォース。」
それを聞いたリーンフォースは満面の笑みで
「はい、我が主。」
リーンフォースは光になりはやてと重なる。
はやては魔導書を開き
「管理者権限…発動。
リンカーコア復帰。
守護騎士システム破損回帰。」
はやての周りに5つのリンカーコアが浮かび上がる。
「おいで…私の騎士たち。」
◇ ◇ ◇
なのは達のそばで4つのベルカ式魔法陣と魔法陣の中心に白い球体が現れ光の柱作りだす。
光が治まると各魔法陣の上にシグナム達守護騎士の姿があった。
「我ら夜天の主に集いし騎士。」
「主ある限り我らの魂尽きることなし。」
「この身に命ある限り我らは御身のもとにある。」
「我らが主、夜天の王、八神はやての名のもとに。」
そしてその4人の中心に騎士甲冑のアンダーを着て魔導士の杖を持ち、魔導書を携えたはやての姿現れた。
はやては杖を掲げ
「夜天の光に祝福を!
リーンフォース、ユニゾンイン!」
はやての言葉に最後の浮かんでいたリンカーコアが反応してはやての胸の中へと入っていく。
すると白を基調とした騎士服がはやてに装着され背中には3対6枚の羽根がある。最後に白い帽子をかぶり髪の色が白みがかり瞳の色が青く変わった。
騎士服に身を包んだはやては近くの岩場に降り立つとそこにはシグナム達が居た。
目に涙を溜めながらヴィータが近寄る。
「はやて…。」
「すみません。」
「あ、あの、はやてちゃん私達…。」
ヴィータに続きシグナムとシャマルが申し訳なさそうに喋るがはやては
「ええんよ。みんなわかってる。
この子が、リーンフォースが教えてくれた。
まぁ、細かいことは後や。取り敢えず今は
お帰り!みんな。」
笑顔で両手を広げるはやてにヴィータはたまらず涙を流しながら抱き着く。
「はやて、はやて。うわぁぁん。」
そこに、なのはとフェイト、ユーノとアルフが降りてきたところでクロノと亜樹、ブリジットが一緒にやってくる。亜樹がキョロキョロしているとクロノが
「すまない、水を差してしまうんだが。
時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。
時間がないので簡潔に事態を確認したい。
あそこの黒い淀み。 あれは闇の書の防衛プログラムであと数分で暴走を開始する。
間違えないか?」
クロノの質問にはやてが答える。
「うん、自動防衛システム。
ナハトヴァール。」
そこへ融合しているリーンフォースが小さい体を投影し
「暴走後、周辺の物質を侵食しナハトの一部としていく。
臨界点が訪れなければこの星一つくらいは飲み込んでしまう可能性がある。」
「停止のプランは用意してある。」
クロノはそう言いながらカード型デバイスを起動すると辺りに冷気が立ち込める。
「一つ目は極めて強力な氷結魔法で停止させる。
もう一つは軌道上に待機しているアースラに搭載されている魔導砲・アルカンシェルで
消滅させる。
これ以外になにか手はないか?
闇の書の主とその守護騎士に聞きたい。」
クロノの質問に守護騎士一同が答える。
「最初の案は難しいと思います。
今のナハトヴァールは魔力の塊なので効果が薄いかも。」
「コアがある限り直ぐに再生してしまう。
せいぜい足止めが精一杯だろう。」
シャマルとザフィーラが答えると
「アルカンシェルも絶ーー対ダメ!!
こんなところでアルカンシェルなんか撃ったらはやての家も吹き飛んじゃうじゃんか!」
ヴィータの言葉になのははユーノに聞く
「そんなにすごいの?」
「えーっと、発動地点を中心に百数十㎞を歪曲させながら反応消滅を起させる魔導砲って言うと
想像できる?」
それを聞いたなのはとフェイトそれに亜樹がクロノに
「「「それは絶対にダメー!」」」
と迫った。
「あれ?亜樹ちゃん?なんでここに?」
ここでなのはが亜樹の存在にようやく気付き質問する。
「えへへ。この間、プレシアさんにデバイスを作ってもらったんです♪
それでいっぱい頑張ってお兄ちゃんと
そういえばお兄ちゃんはどこですか?」
「「あっ!」」
なのはとフェイトは思い出したかのように驚き今度は、はやてに詰め寄る。
「はやてちゃん波留君は?」
「あっ、そういえば……どこにいった?」
とはやてはキョロキョロして波留を探すと皆がいる岩場の少し上にある足場にブリジットと二人、黒い淀みをじっと見つめている。
「あそこや。おーい波留君。」
波留は、はやてに呼ばれブリジットと共にみんなの近くに移動した。
「どうした?はやて。」
「いやな、なのはちゃんとフェイトちゃんが波留君を探してたからよんだんよ。」
「そうか。
んで二人はどうした?」
何事もなかったかのようになのは達に話しかける波留に
「んも~、どうした?じゃないよ!
すっごく心配したんだからね!」
「そうだよ。いきなり現れたかと思ったら闇の書に吸い込まれちゃうから心配したんだよ。」
なのはとフェイトに立て続けにしまったと思った波留は素直に
「ごめん。心配かけた。」
と謝った。
その後も、ぶつぶつと色々二人で言っているがクロノが咳払いをして
「あ~3人ともいいか?時間がないんだが……。」
「ごめん!クロノ君。」
そんな中、ブリジットが
「ところであれはコアさえ露出させてしまえば対処は簡単なのか?」
そんな質問にリーンフォースが答える。
「コアを露出させるまでがかなり大変だ。
今回の蒐集で得た魔力をもとに体ともいえる物を形成する。
さすがに人間の様な複雑なのは構築が難しいが蒐集した魔法は使える。
原生生物なんかは構築が比較的簡単だから形を成すだろうな。」
「つまり
「あぁ、そう捕らえて貰って構わない。
それに体、本体の周辺に多重防壁が常に張られている。
これは本体もそうなんだが再生速度がかなり早い。
突破するには高威力の攻撃を間髪入れないと無理だろう。」
それを聞いたブリジットは少し考え
「ふむ、クロノ。
アルカンシェルであれば、あ奴のコアは消滅可能か?
それとアルカンシェルはどこでも撃てるか?」
「……可「可能でーす!」エイミィ……。」
「割り込み失礼します。
アルカンシェルも何処でも撃てますよ。」
「そうか……。
アースラは今、軌道上だな?」
ブリジットが上空を見ながらそう言うとクロノが驚いた顔をしながら
「まさか!」
「そのまさかだ。これだけのメンツが揃っているんだ。
やってやれないことはないだろう?
それに作戦立案は私と波留がしてやる。」
こうして闇の書の闇といえる自動防衛システム・ナハトヴァールへの対抗作戦が始まる。