これがジュエルシード
『誰か…
僕の声を聞いて…
力を貸して…
魔法の…
…力を』
「ん?
誰か呼んだか?」
波留は、誰かに呼ばれたような気がして足を止め物思いにふける。
「痛っ」
お腹の痛みで我に返り
「気のせいか。
にしても、恭也さんは手加減ないなぁ。」
シャツをめくりながらお腹をさする。
青あざがお腹に何か所かできている。
先日の高町家に行ったときに父親のあの一言で、月曜と木曜の放課後、週2回、高町家に稽古に行くことになった。また、父親との早朝訓練は毎日行っている。
『士郎さんと美由希さんは手加減してくれるけど、恭也さんがなぁ』
どうやら、孝夫が恭也に「手加減しなくていいからな!」のほぼ冗談を真に受けたみたいだ。
『まぁ、そうじゃなきゃ意味無いしな。
これから先のことを考えると、今のうちから鍛えておいて損はないし。
魔力のほうはどうするかな?身体能力強化がメインかな?』
今後の強化プランを考えながら帰宅する波留であった。
現在の波留の能力は
・古流武術月山流 / 初伝(基礎技)
・小太刀二刀御神流 / 基礎
・赤バラの記憶
・月山一族特有の魔力と霊力の運用
管理局の定める魔導士ランクでいえば現時点でA~AA相当である。
翌日、登校すると波留は少し違和感を感じた。
いつもなら、うるさいくらいになのはが絡んでくるのだがどこか上の空だ。
放課後になり、波留と亜樹の二人は図書館に向かっている。
今日は、はやてが家に遊びに来る日なのだ。
どうやら昨日、亜樹が偶然にはやてに会ったそうで、その時に
「明日だったらお兄ちゃんもいますから遊びに来ませんか?」
と誘ったらしい。わが妹ながら凄まじいコミュニケーション能力だな。
そんなことを想いながら、待ち合わせ場所の図書館に向かう。
「はやてさ~ん!」
亜樹が手を振りながら、はやてに近寄りその後に波留も続いた。
「亜樹ちゃん!波留君!」
「おまたせ。やが、はやて。」
一瞬ムッとしたはやてが言い直した波留を見て
「まぁ良しとしよか。
大丈夫。今来たとこやで。」
事なきを得た波留を横目に亜樹が
「それじゃ行きましょー!」
元気いっぱいに言うと3人は雑貨屋MOONに向かうのであった。
◇
「たっだいまー」
元気に帰ってくる亜樹に両親は
「「おかえり」」
嬉しそうに返す。
そのまま亜樹が両親にはやてを紹介する。
その後に亜樹とはやては二人で店内を見て回る。
二人とも楽しそうだ。
そんな二人を見ながら波留は自分の部屋に行き、さっと着替え店の手伝いを始めた。
気づいたら外が暗くなりはじめ、はやてが帰ろうとした瞬間
母・奈々が強引に夕食に誘い、父・孝夫が「一狩りしようぜ!」なんて言うもんだから、
ゲーマーはやてが悪ノリし結局、夜9:00を過ぎたところで無理やりはやてを送っていっ
た。
「悪かったな。うちの両親が強引に。」
と申し訳なさそうにはやてに言う波留
「ええんよ。楽しかったし。」
笑顔で、でもどこか寂しそうに言うはやて。
◇
「送ってくれて、ありがとな。波留君。」
お礼を言うはやてに
「どうってことはないさ。
おやすみ。はやて。」
ちょっと照れながら返す波留。
「おやすみなさい。」
はやての返事とともに玄関が閉まった。
無事にはやてを送り届けた波留は帰宅途中に変な違和感を感じる。
「なんだ?
この感じ。
胸の周りがモヤモヤする感じ。」
そこは、近所の神社で波留があたりを見回しながら鳥居のほうに歩いて行くと、石を蹴ったみたいだ。
コツーンと転がった石は、宝石みたいに青い石だった。
波留がその石を拾いじっくり観察する。
「ま、まさか、これが
ジュエルシードか?」
波留がジュエルシードをまじまじ見ていると、後ろから声を掛けかられた。
「その石を渡してください。」
声のする方を向くと、暗がりから2つの影が出てきた。
一人は、アリサよりも明るい金髪の少女で、もう一人はピンクっぽい髪で犬耳と尻尾がついてる。
「その石を渡してください!」
先程よりも少し強めに訴える。
すると波留は石と少女を交互に見比べて
「この石の事かい?
この石は君の落とし物か?」
聞き返すと、少女は困ったように
「ぇえっと、あの。。」
答えに詰まってる。
すると隣の犬耳女性が
「いいから渡せってんだよ!」
脅迫めいた言葉に少女が
「アルフ、だめだよ。
見たところ現地人だし
力ずくはダメ。」
アルフと呼ばれた女性は耳を垂らしながら
「フェ、フェイト、でもさ。」
そのやり取りを見ていた波留は、気づかれないように後ずさりをした瞬間
一瞬の気配を感じ取ったアルフが、視界から消えた。
次の瞬間、波留の後ろから冷たい声がした
「おっと。逃げようなんて思うんじゃないよ?
フェイトが言うから、手荒な真似はしたくないんだ。
おとなしくジュエルシードを渡しな。」
波留は背筋に冷たいものが流れるのを感じた。
フェイトが手を前に出しながらゆっくりと波留のほうに歩いてきてもう一度聞いてきた。
「その石を渡してくださ-。」
「にゃぁ」
言い終わる瞬間に猫の鳴き声が被ってきた。
驚いた二人は鳴き声のする鳥居のほうを見ると数匹の猫がこちらを見ていた。
よく見ると、鳥居の周りの林の中からも猫の目が光ってこちらを見ている。
数匹は「フーッ!」威嚇をしている。
アルフが「チッ!」
と言うと、右手が光り始めた。
それを見たフェイトが咄嗟に叫んだ。
「アルフ、ダメー!」
その瞬間、まったく別の方向から光の玉が2つ、アルフとフェイトの足元に放たれる。
二人はジャンプで躱し、波留との距離が離れる。
「今日は戻ろう。アルフ。
その石は必ず貰います。」
そうフェイトが言うと
「あーもう!
次は覚悟しろよ!!」
アルフ威嚇しながらフェイトと共に暗闇に消えていった。
◇
波留が一息ついて猫たちのほうを見ると、一斉に鳥居の上を見た。
つられて上に目を向けると、見慣れた白猫が堂々と座っていた。
「うぉッ!
まさかアリアか?」
驚きながら、波留が声かけるとアリアはフワッと境内のほうに降り、ついてこいと言わんばかりに「にゃぁ」と鳴いた。
「ついて来いってか?」
波留は呼ばれるまま、境内に入っていった。
今回はここまでとなります。
いかがだったでしょうか?
次回は、アリアの正体がわかります。