波留達がミッドチルダから戻ってきたのはその日の夕方だった。
それぞれが家族に思い出話をし、とても楽しいことが伝わったが本人達は長旅の疲れが出て夕食後、早々に夢の中へと誘われた。
その翌日、冬休みの最終日。
波留、亜樹、なのは、フェイト、アリシア、アルフ、アリサ、すずかの8人はリニスの監督下のもと八神邸に来ていた。
はやてとの約束を早速実行に移すためだった。因みにアリサとすずかには昨日、帰ってきたときに波留が連絡を入れていた。
八神邸の清掃は、いくら人数がいるとはいえまだ小学生。朝の9時から始めたが終わったのは15時ちょっと前だった。そのままはやての家でお茶をしながらアリサとすずかに説明をすることになった。
「ふ~ん。それではやては今そのドクター?の所にいるんだ?」
「そうなの。」
「上手くいくといいね。」
アリサの言葉になのはが答えすずかが心配する。
「うん。でも母さんもいるから大丈夫。」
フェイトが少し誇らしげにすずかの心配に答える。
「それにしても子供が10人って………。」
アリサは呆れながらお茶を飲む。
「みんないい子だよ。二人も会えばすぐ仲良くなれるよ。」
なのはは目を輝かせて答える。
そんなこんなで八神邸の掃除は無事終了。なのはとアリサ、すずかは習い事の為16時にはお迎えが来た。フェイト達は買い物をしながら帰るとのことで一緒に帰る。波留と亜樹は後片づけをしてから帰宅した。明日からは学校が始まる。
ようやく日常が戻ってくると思いながら眠りにつく波留だった。
3学期も始まった最初の週末。順調にいけばもう2、3日ではやて達も帰ってくるだろうと考えていた波留のもとにクロノから連絡が来た。
「それで一体どうしたの?」
波留の質問にクロノは
「昨夜、ドクターに進捗を確認したんだ。
作業は順調に進んでいると…。」
「ならいいじゃないか。何で俺が向こうに行かなきゃいけないの?」
クロノの答えに波留は聞き返した。今二人はミッドチルダからドクターのラボに向かっている最中だ。
「うん。僕も詳しくは聞いてなくてただブリジットさんがすごく深刻な顔をして
『明日、波留と一緒に来てくれ。』って言って通信が切れたんだよ。」
「そっか。」
こうして二人はミッドチルダから5時間余りかけてジェイルのラボに向かうのだった。
◇
到着した二人はクアットロに連れられて地下のラボへと向かう。
ラボの扉が開くと、奥の応接セットではやて達がなにやら楽しく話をしているのが見える。
「ようやく来たか。」
幾つかある部屋からブリジットとジェイルが出てきて波留に声をかける。
「ブリジット、ジェイルさん。
それで用事ってなに?」
早速、本題に入ろうと質問をした波留に答えたのはジェイルだった。
「ふむ。私が説明しよう。
先日、夜天の書の解析を進めている時、違和感が発見されてね。
小さな物だったから私はそのまま解析を続けたんだか同じような違和感がその後も続いてね
気になったからその違和感をちょっと調べたら同じものだったんだよ。
どうやら人を構成するデータだったみたいでね、それを二人に話したら
二人の解析している方にも同じようなデータが散らばっているものだから、
集めて解析して構成したらすごいものが出てきてね…。」
「それで?俺が呼ばれたのは?」
波留の質問に今度はブリジットが答える。
「それで夜天の書から抽出して具現化?と言っていいのだろうな。
まぁ体を与えた訳なんだが……。」
「それが今、はやて達と話している
「そうだ。その二人を私はよく知っているんだが波留にも確認をしてほしくてな、
それで来てもらったんだ。」
大まかな説明を受けて、波留ははやて達に近づく。
はやて達の中に同い年位の女の子が
その後ろ姿に波留は見覚えがある。そして声も幼いが聞き覚えがある。
波留はゆっくり近づき声をかけようとする。
その瞬間、
「やっぱり
「本当に
一人はパールピンク(薄いピンク)の髪色でロングヘアの活発そうな女の子。
もう一人は金髪で少しウェーブがかったロングヘアのおとなしそうな女の子。
「……ステラ…
……アーデルハイト…。」
波留の視界に映っているのは、かつての自分が愛した女性とかつての自分を愛してくれた女性の幼い姿に見える。
「……これは…どういうことだ……。」
頭を抱える波留にブリジットが答える。
「…波留。
この二人は
それからブリジットの話をまとめるとこうだ。
・夜天の書は一度、月に出現したことがあるらしい。
・その時、主は見つけられなかったが月の様々な力を吸収できたらしい。
・その際にステラとアーデルハイトの意識体と呼べるものがシステム内に構築されたらしい。
・表に出ることは一切なかった。管制人格はリインフォースが行っていたので。
・リインフォースも彼女たちの存在に気がつかなかった。
・今回出てこれたのは、波留とブリジットが魔力を流したのがきっかけ。
・今の波留やブリジットがどういう状況かの説明済み。
以上の様な説明を受けた波留は冷静さを取り戻した。
「ふぅ……驚いた。
けど、また二人に会えてうれしいよ。
それで、はやて?」
「ん?なんや波留君。」
「俺の記憶継承の事なんだけど、なのは達にはまだ話してないんだ。
だから内緒にしてくれると助かる。」
「ええよ。波留君は恩人やからそれくらいは引き受けるよ。」
「ありがとう。」
そんな事を話しているとステラが苦しそうにうずくまった。
「ステラ!」
「ゴメン、大丈夫だから。
このままじゃちょっと辛いから……。」
そう言いながら呼吸が荒くなりステラの体が光りだす。
光が治まるとそこには小さくなったステラの姿があった。
大きさは30cm程で、頭の横(耳のちょっと上)に黒い鳥の翼が生えた姿になっていた。
「…ス、ステラ…その姿は一体………。」
驚いている波留にステラは
「ふぅ、こっちが本来の姿なの。
さっきのは魔法で無理やり大きくなってたから疲れちゃった。
ストラウス?」
「は……ははは。」
波留が力なく笑うとジェイルが
「ほうほう。なるほどなるほど。
珍しい…。」
簡単にスキャンをしながら感心しているにジェイルにクロノが聞く。
「なにが珍しいんですか?」
「あぁ、すまないね。
彼女は融合機なんだが本来はデバイス同様、人の手で作られて世に生み出される物なんだ。
そこは理解してるね?」
「はい。融合機は術者のサポートがメインと言えますからね。」
「その通り。大抵、はやて君みたいな魔導書を持っている魔導士や研究所で生み出されるのが
セオリーなんだが彼女はそう言ったものとはまた違うみたいなんだ。
いうなれば天然物とでも言うのかな自然発生的に生まれた融合機だよ。
そもそもそれを融合機と呼んでいいかも分からないがね…ハッハッハッ。」
「融合機だと誰かとユニゾンも出来るのか?」
ヴィータが疑問に思ったことをつぶやく。
するとステラが
「たぶんできるよ。ちょっと待っててね。」
そう言いながらその場にいる皆に右手をかざしながら何かを調べている。
そうして一通り確認が済んで
「この中だとストラウスとアーデルハイト様の二人だね。
ブリジット様はどうにか出来るかもって感じ。
他の皆とはできないや。」
「へぇ。どんな感じになるか見てみてぇ。」
ヴィータがそう言うがそれはジェイルに止められた。
「それはやめた方がいいね。」
「何でさ?」
ふくれっ面のヴィータにはやて達も好奇心が抑えられずヴィータに賛同してる。
「二人はまだ生まれたばかりと言ってもいい状況なんだよ?
そんな二人に無理強いはよくないよ。」
これには皆、納得するしかなかった。
「しばらくはここで養生と検査だね。」
ジェイルはそう言い上にいるドゥーエに連絡を入れた。
しばらくしてドゥーエが降りてきて二人を上に案内する。
「それではストラウス、しばらくお別れね。」
「そっか、またね。
ストラウス。」
二人は
「二人共、ブリジットから聞いてるだろ?
私はストラウスではない。今は”月山 波留”だ。いつまでも昔の名前を
呼ばないでくれ。」
それを聞いた二人は顔を見合わせてクスッと笑うと。
「そうだったわね。ごめんなさい波留。」
「すみません。波留。」
「「それじゃあ、またね。」」
二人は手を振り笑顔で退出していった。
◇
「それで、ドクター。
そちらの方はどうなんですか?」
二人を見送った後、クロノが質問する。
「実は先程、作業の全行程は終了しているんだよ。」
コーヒーを片手に質問に答えるジェイル。
その答えにクロノはもちろんの事、はやて達も驚いていた。
「「「「えーーーーー!!!」」」」
「そんな事だろうと思ったよ。
おかしいと思たんだ。俺たちが入ってきたときに作業していた皆が出てきたから
もしかしてとは思ったんだ。」
波留の言葉を聞いてはやてが
「そ、それじゃあ……。」
「あぁ、問題なく魔導書との分離は完了したよ。」
その一言を聞いたはやては、涙を流しながら
「ありがとうございます。」
感謝を伝え、その言葉を聞いたヴォルケンリッター達も泣き始めた。
◇
一同が落ち着いたところでジェイルから注意事項があった。
「まず、分離は成功したとはいえ私も初めての作業だ。経過観察の為
もう2,3日は滞在してくれたまえ。」
「分かりました。」
「それと、リインフォース君の事についてなんだが…。」
少し歯切れの悪い言い回しの言葉に本人が
「なんでしょう?」
と答えると
「…今後、はやて君とのユニゾンは一切できない。」
「やはりそうでしたか。
うすうすですがそうではないかと感じてました。」
「気づいていたのか。
これは切り離したことが原因と思われる。
ただ、彼女個人の戦闘能力は健在だから安心してくれたまえ。」
「主を守れるのであれば、問題ないです。」
こうしてすべての作業を終えた一同はラボを後にした。
◇
翌日
波留・ブリジット・プレシアの3人は海鳴に戻ることにした。
八神家一同とクロノはあと2日程こちらに滞在する。
ステラとアーデルハイトは八神家に一旦、身を寄せることになった。その後は波留が両親を説得して月山家で預かるようにするそうだ。
2日後
はやて達も無事に海鳴に戻って数日。
波留はかなり疲れていた。
両親や真玄にちゃんとした説明をしていなかった為、これまで起きた事を説明した。協力してくれた各里や典膳には真玄と孝夫が説明してくれるそうだ。そして今回、新たに知り合いになったステラとアーデルハイトの事を両親に説明。ブリジットの古い友人だと話し、月山家で面倒を見れないかとお願いする。
「それで今ははやてちゃんの家にいるのね?」
「うん。そうなんだ。」
奈々の質問に波留が答える。それを聞いた奈々は
「取り敢えず明日にでも一度連れてきなさい。」
「分かった。」
そして翌日
波留は事前にはやてに連絡を入れて二人を迎えに行った。
「いらっしゃい波留君。
ほな行こか。」
そう言いながら出かける準備をするはやてに波留は訪ねる。
「はやてさんよ、一緒に行くつもりかい?」
「買い物のついでや。いやちゃうなついでに買い物か?
まぁええやん。行こ行こw。」
やっぱりというか何というかリインフォースやシャマルの方を見ると無言で謝っていた。
一応の説得はしたみたいだが無理だったようだ。
「ほら行くで。私のリハビリも兼ねてるんやから、はよ行くよ。」
松葉杖(ロフストランドクラッチ)をつきながら玄関を出るはやてをやれやれという表情で迎える波留。
そう、はやての足は回復傾向に向かってはいるもののまだ治ってはいない。少しづつ歩けるようになっているので担当医師からも
「積極的にリハビリもしていかないとね。」
と言われている。
そんなはやての後ろを獣姿のザフィーラとリインフォースが付き添いでついて行く。
因みにシャマルは留守番、シグナムは道場、ヴィータはゲートボールにと、皆それぞれ出かけている。
そんなこんなで一同は波留の家に向かうのだった。
「た、ただいまぁぁ。」
「おかえり。どうしたのそんなに疲れて?」
帰ってきた波留の疲れた様子見て苦笑いを浮かべながら聞く奈々は後ろのはやて達を見て察した。
商店街に着くまでは、はやてのペースに合わせて休み休み来たが商店街の手前で疲れ切ったはやてはギブアップ。
これに関しては仕方ないと波留は思ったがその後がいけなかった。そんな疲れたはやてを始めはリインフォースが抱きかかえるかと思ったがはやてが休みながらザフィーラをじっと見つめザフィーラの背中に乗ったのだ。
そんな恰好で商店街に現れたアイドル?は久しぶり来たことも相まってたちまち商店街の人達に囲まれた。
リーンフォースの紹介も兼ねていたのでそれに巻き込まれた波留たちはかなりもみくちゃにされた。
ようやく解放されやっとの思いで帰宅できたのであった。
◇
お店は丁度、お客が居ない状態だったので閉店の札を出し【今日の営業は都合により終了させていただきます。】の張り紙を出し皆でリビングに移動した。
奈々がお茶の用意をしている間にすでにリビングに居た亜樹とアリアは、はやて達に軽く挨拶をする。
そこへお茶の用意が終わった奈々がやってきた。
「それじゃあ簡単に自己紹介しようか。
月山 孝夫です。
ここに居る波留と亜樹の父親で雑貨屋MOONの店主をやっています。」
「月山 奈々です。
彼の妻で、二人の母親よ。」
二人の挨拶の後に
「アーデルハイトと申します。」
「ステラ・ヘイゼルバーグです。」
奈々は二人の顔を交互にじっと見つめる。
「・・・・・。」
「……うん。
いいわよ。2人とも家にいらっしゃい。」
「「ありがとうございます。」」
2人はホッとして満面の笑みを浮かべる。
するとステラが手を挙げ息を吐き
「す、すみません。
本来の姿になっていいですか?
そろそろ限界です。」
奈々たちは不思議に思いながら
「本来の姿?」
孝夫が不思議そうに言うと奈々が何かを察したように
「いいわよ。無理しないで。」
その言葉にステラは安心して元の姿に戻る。
辺りが一瞬光ると小さくなったステラがリビングのテーブルの上に立っていた。
それを見た孝夫は開いた口がふさがらず亜樹は目を輝かせ奈々は知っていたかのように冷静だった。
その後、波留が事情を説明し人目につかない所は元の姿でいる事になった。
◇
「あっ、そう言えばブリジット姉さまはどこですか?
こちらにいると聞いたのですが…。」
アーデルハイトが思い出しかのように皆に聞く。
すると窓の方から声が聞こえた。
「私ならここに居る。」
「?どこですか?」
「ここだ。」
アーデルハイトは声のする窓を見るが猫が居るだけでブリジットを見つけられない。
「姉さま。どこです?
声は聞こえてもお姿が見えません。」
「ええい。
しょうがない娘だな。」
そう言いながら窓辺にいた
アリアからブリジットへと変わるとステラは驚きのあまりその場で固まり、アーデルハイトは驚くも即座にブリジットに抱き着いた。
「姉さま!!」
「こらこら、落ち着かないかアーデルハイト。」
「だって、この前はお話すらほとんどできなかったじゃないですか。」
「これからは一緒に住むんだ。
ゆっくり時間も取れるだろう。
だから落ち着きなさい。
アーデルハイト。」
「分かりました。でも姉さま、昔みたいにハイジと呼んでください。
そうでなければ離れません。」
「分かった分かったから離れなさい。
ハイジ。」
「はーい。」
そう言ってアーデルハイトはブリジットからようやく離れた。
その様子を見ていたはやてが
「ふぅ。家にいた時とはえらいちがいやな。
それより、姉さまってどうゆうことなの?」
「それになんでブリジット様が猫になってたの?」
我に戻ったステラがようやく突っ込みを入れた。
その答えをアーデルハイトも興味津々で待ちわびてる。
「それは………。」
ブリジットが諸々の説明をしているそんな時、ミッドチルダの郊外にあるジェイルの家では新たな騒動が巻き起こっていた。