ダァン
イリスの足元が狙撃される。間髪入れずにもう一発
ダァン
すると今度は、はやてを拘束していたフォークグラップルが破壊されはやてが落下する。
そのはやてが地面に落下する前に抱きかかえる者がいた。はやてはうっすら目を開けて
「…は、波留君。
おおきに……。」
「あとは任せな。
俊さん、はやてをお願いします。」
少し離れた位置にいた俊は波留の所に移動し、はやてを抱える。それを見たイリスは驚愕する。俊が居たのは4車線道路の反対側、多少斜めの位置に居たので距離にして約30m。その距離を一呼吸している間に移動したのだ。見ようによっては瞬間移動したように見える。実際は夜の一族の身体能力のおかげなのだが、イリスはその目で俊を見て純粋な身体能力なのだと驚愕していた。
⦅あなたは、いいえ
その質問に波留と俊はお互いに目を合わせてから
「ちょっと魔法が使える小学生?」
「ちょっと体が丈夫な会社役員?」
⦅…………。⦆
それを聞いたイリスは固まりはやては
「ぶはっw」
盛大に吹いて笑った。
波留がはやての下に到着するちょっと前
波留達が泊っているホテルの1室で女性陣がお風呂上がりで楽しく話をしているとリンディから通信が入った。
「皆さん、お休みのところごめんなさい。
先程、現地の警察から暴走車輛が多数いると言う内容の無線を傍受しました。
位置的に、はやてさんが標的だと思われます。万が一の場合を考えて応援と救護を兼ねて
出動を要請します。」
「了解しました。私とフェイトちゃんが先行して出動します。」
リンディの言葉になのはが答え、その後ろでフェイトがバルディッシュを持って頷く。
それを聞いたリンディは安堵しその横にいるクロノが
「相手は何人いるか未だ不明だ。妨害される可能性もあるから注意してくれ。」
「「了解!」」
2人は元気よく答える。
「ところで波留はどうした?」
「あっ、お兄ちゃんならお風呂に行ってます。」
クロノの疑問に答えたのは亜樹だった。
そんな時、部屋の扉が開いて波留とジェイルが帰ってきた。
「ただいま~。」
「いいお湯だった。」
さっぱりした顔をしながら2人が部屋に入ると、緊張していた空気が一変した。
波留が頭を拭きながら
「どしたの?」
と聞くと、通信をしていたクロノが簡潔に説明してくれた。
「……と、いう訳だ。
行けるか波留?」
「分かった。取り敢えずなのはとフェイトは先行して出てくれ。」
「うん。」
「分かった。」
そう言うと2人は部屋から出て行った。
「俺と亜樹で2人とは違うルートで、はやてのところに行く。」
それを聞いたクロノは納得した顔をした。
「了解した。くれぐれも気を付けてくれ。」
「分かった。ここは母さんもプレシアさんもいるし、それにスカ一家がいるから
問題ないと思う。
ゼストさんたちは?」
波留の質問に答えたのは
「俺たちも現場に向かおう。」
本人である。
「ありがとうございます。そしたらなのは達の方と、はやての方と二手に応援を頼みたいんですが?」
「了解した。
ナカジマ、アルピーノ。」
「了解です、隊長。
私とメガーヌでなのはちゃん達の方に向かうわ。」
クイントの返事に波留はお礼を言って亜樹と共に部屋を出た。
ホテルを出て、なのは達とは違うルートで現場に向かう波留と亜樹、亜樹は疑問に思ったことを波留に聞く。
「お兄ちゃん、なんでなのはさんたちと別に行くの?」
「昨日、相手は一人じゃないかもって言ってただろ?
だから最悪の事を想定して、二手に分かれたんだ。」
波留がそう答えると亜樹はまだ分かってなかった。
「つまり、なのは達が邪魔されて、はやてのところに行けなくても、
俺たちが行ければいいってこと。」
「分かった。」
亜樹が理解したところでゼストから念話が来た。
〘ゼストだ。月山兄弟は今どのあたりだ?〙
〘現場から南西の方角、直線距離にして約3キロの地点を高度50mで飛行中です。〙
〘了解した。〙
ゼストは今いるところで停止し辺りを見回した。
〘そうしたら現場まで約1キロの地点に、約30階建ての建物がある。そこで合流しよう。〙
〘了解です。あ、見えました。〙
波留がゼストを確認すると彼の目の前に月山兄妹が到着した。
そこは35階建てのマンションで、3人はマンションの屋上に一旦降りくことにした。
「さて、これからどうする?」
ゼストが早速、この後の事を波留に聞いてくる。
波留はここから、はやてがいる方を確認しながら亜樹に
「亜樹、ここからはやては見えるか?」
その質問に、マンションの端まで行き右手の人差し指と親指で円を作りそれを覗く亜樹。
「えーっとね、うん。
大丈夫だよ。」
「よし、それじゃあ、亜樹はここから敵を狙撃。
目標は相手への邪魔がメインではやてがもし捕まっていたらそれを壊すこと。
ゼストさんはここで亜樹の護衛をお願いします。」
「はーい!」
亜樹は元気に返事をして、自分のデバイスを準備する。
それを見ながらゼストは
「了解した…、が本当に大丈夫か?」
「あ、はい。
この子はまだ集中すると周りが見えにくくなるので、
そのフォローをして欲しいんです。」
波留の返事にゼストは
「分かった。」
「それに……
ゼストさんの不安は直ぐに解消されますよ。
亜樹を見ててくれれば分かります。」
そう言った波留に亜樹が
「お兄ちゃん!
はやてさんがピンチ!」
スコープを覗いていた亜樹がはやてのピンチを伝える。
「それじゃあゼストさんお願いします。
亜樹!俺が結界の中に入ったらお前のタイミングで撃っていいぞ。」
「分かった!」
そして波留が結界の方に飛んでいくと亜樹はうつ伏せになりゆっくり深呼吸をして集中する。
それを見たゼストは驚愕した。
――なんて子だ。まだ幼いのにとんでもないな。
そんなことを思いながら周囲の警戒をしていると
ダァン
亜樹のデバイスから魔力弾が発射された。
続けて2発目。
ダァン
狙撃が終わった亜樹はその場で立ち上がり、大きく伸びをする。
「もういいのか?」
ゼストの質問に
「はい、もう大丈夫です!」
元気に答える亜樹だった。
一方のなのはとフェイトも戦闘中であった。
アミティエとキリエのフローリアン姉妹が2人の行く手を阻んだ。
十数分前
なのはとフェイトがはやての下に急行していると
「emergency!」
「えっ!?」
レイジングハートが危険を察知しなのはに教える。すると前方から魔力弾と思われるものが数発、2人に向かってきた。2人ともプロテクションを張り難なく回避する。煙が晴れるとなのは達の前に2人の女性が現れた。
「ごめんねー。今2人にこの先に行かれると、ちょーっと困っちゃうから
ここでお姉さんたちと少し遊んでくれないかな?」
ピンクの髪のキリエがおチャラけて言うとすぐさま、赤い髪のアミタが突っ込む。
「キリエ、その言い方だとかなり怪しいです。
それにおじさん臭い…。」
そんな漫才みたいな事を見せられたなのは達はポカーンとしてる。
「ほら見て下さい!キリエがそんなことを言うから彼女たちが呆けてます。」
「そんなー、そんなことないよね?」
キリエがそう言いながら2人の方を見るとなのはとフェイトは一瞬の殺気を感じ取りアミタ達から一定の距離を取る。そしてなのはが
「あ、あの、私達、急いでいるんでそこをどいてもらえませんか?
友達が危ないんです。」
そんな、なのはの言葉にアミタが
「そうしたいですが私達もここを通す訳にはいきません。
どうしても通りたければ……。」
アミタは右手に持っているデバイスの様な銃をなのはに向けながら
「力づくで通ってください!」
そう言いながら発砲し、なのはと打ち合いをしながら空中に移動する。
一方のフェイトはキリエと対峙していた。
「そこを……」
フェイトがバルディッシュを構えながら
「…どいて下さい!」
そう言い突進しながらバルディッシュを振りかぶる。キリエはそれを交わすとフェイトはすかさず振り上げる。
その攻撃も難なく躱されると、今度はその勢いのまま宙がえりをしキリエに肉薄する。流石にそれには驚いたキリエはアミタが持っている武器と同じ”ヴァリアントザッパー”をフェンサーに変換し受ける。
アミタとキリエが持っている武器・ヴァリアントザッパーは状況に応じて3種類の形態に変換できる。
一つはアミタが使った”ザッパー”銃の形態
一つはキリエが使った”フェンサー”剣の形態
そして最後の一つが”ヘヴィエッジ”大型両手剣の形態である。
更に2人の武器はザッパーとフェンサーに関してはコピーができ、両手で一つずつ持つことが出来る。
なのはもフェイトもそれぞれ対峙していると違和感を感じ始めた。始めはやや優勢に戦闘を行っていたが徐々に相手のアミタとキリエの手数が増えていくのを感じた。
よく見ると2人の武器が両手に一つずつあるのが確認できた。なのは達は戦闘を続けながら
『フェイトちゃんこの人たち…。』
『うん、強い。でも…。』
『そうだね、私達も急がなきゃ。
でもどうしよう?』
『そしたらなのは、お願いがあるんだけど――
――――てな感じで、できないかな?』
『分かった、やってみる。
そのあとでバインドで縛ればいいよね。』
『そうだね。それじゃお願い!』
なのはとフェイトは戦いながら念話で作戦を立てると直ぐに実行に移した。
なのははアミタとの距離を少しづつ離し一定の距離を取った後、今まで5発づつ出していたアクセルシューターのスフィアを15個、展開する。
一方のフェイトはキリエと肉薄していたが一気に距離を取り、自身の周囲にフォトンランサーのスフィアを出現させる、その数15個。
すると2人ともほぼ同時に
「アクセルシュート…」
「フォトンランサー…」
そして同時に
「シューート!」
「ファイヤー!」
同時に放たれた魔法は、とんでもない所に命中した。
なのはの魔法はキリエに、フェイトの魔法はアミタにそれぞれ
この時の空中には、なのはとアミタ、地上にはフェイトとキリエがそれぞれ戦闘を行っていたのだが、戦闘をしながらなのはとフェイトは一直線になるように動いていたのだ。そこで
『真正面からは防がれる攻撃も後ろからなら当たるかもしれない。』
とフェイトが思いつき即座に2人して実行に移した。その作戦は見事に的中し、アミタとキリエは全弾命中。
なのはがアミタを、フェイトがキリエをバインドで拘束する。
なのはとフェイトは、ひと安心してアミタとキリエに近づく。
「これで終わってよかったね。フェイトちゃん。」
「うん。」
なのはの言葉に素直に頷くフェイト。実はこれで駄目ならこの後の方法も考えてあったのである。それはバインドが効かなかったら又は直ぐにバインドが解かれた場合は魔力ダメージで気絶させるというものだ。つまりなのはのディバインバスターとフェイトのプラズマスマッシャーを放ち気絶したところをバインドで拘束するというものだ。自分が考えた案だったが改めて考えてみると容赦がないなと思いつつ自身の目の前にいる友人の笑顔に応えるフェイトだった。
「くっ…」
「うっ…」
アミタとキリエはバインドで拘束された状態でその場に座り込んでいる。なのは達の攻撃が思いのほか強かったので油断をしていた。
「…っつ、キリエ大丈夫ですか?」
アミタは妹を心配し声をかけるが当のキリエは俯きながらブツブツと小声で何か喋っている。そこへ、なのはとフェイトが近づいてきて声をかけた。
「あのー、もしかしてはやてちゃんを襲っている人の
仲間ですか?」
なのはの問いかけにアミタは無言で答えキリエは相変わらず俯いたままだ。
「なのは、このままだと何もできないから、
取り敢えずリンディさんやクロノに任せよう?」
「…そう、だね。」
フェイトの言葉に答えるなのは。そしてだんだんと声が大きくなるキリエ。
「………―――のに…。」
「えっ?」
「―――――けたいだけのに。」
「どうしたのなのは?」
フェイトの言葉になのはが振り向くとキリエが勢いよく立ち上がりながら
「皆を助けたいだけなのに!!」
「キリエ!?」
次の瞬間、キリエの体が光り始める。
「…フォーミュラードライブ、アクセラレーター!」
キリエが叫ぶとバインドが弾け、光に包まれたキリエが高速で辺りを飛び回る。そしてなのはとフェイトに蹴りを入れ吹き飛ばす。その間にキリエはアミタのバインドを破壊する。あっという間の出来事で目では捉えることが出来たフェイトは体が動かなかったが、キリエの蹴りが当たる瞬間に、どうにかキリエの動きを捉えることが出来たなのはがギリギリのところでシールドを張り防ぐことが出来た。
「…ありがとうございます、キリエ。
でもアクセラレーターはやりすぎです。」
アミタが言い終わるのと同時にキリエは蹴り飛ばしたなのは達に追撃を仕掛ける。自分の蹴りが防がれたのが分かったからだ。
「いたたた、フェイトちゃん大丈夫?」
「ありがとう、なのは。」
なのはがフェイトを気遣っている瞬間にキリエの追撃、ザッパーの大型銃による砲弾が迫ってくる。
防御は間に合わない。2人が目をつぶる。次の瞬間、自分の頭上から声がする。
「ギリギリセーフ。
2人とも大丈夫?」
なのはとフェイトが目を開けるとそこには、ごついナックルを両手につけ、ローラーブーツを履いたクイントの姿があった。