ヤンデレは突然に   作:ぽぽろ

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タイトル(欲望)


栞子ちゃんに束縛されたい人生だった

他人を幸せにするとはなんでしょうか。

私は以前まだ生徒会長に就任して間もない時にその人の適正によって部活を強制的に変えていた時がありました。

その時の私は、その人にはその適正があるのだからその方が幸せになるだろう。という思いでした。

でもそれは私の自己満足にしか過ぎませんでした。

 

それから何度も何度も人を幸せにするにはどうすればいいのか熟考に熟考を重ねた結果私はある結論にたどり着きました。

 

私が幸せになればいいのです。

 

他人の幸せを喜ぶには、願うには、幸せにするにはまず自分が満ちていればいいのです。

自分の気持ちに正直になってしたい事をする。

そして、私がしたい事とは彼を手に入れる事です。

 

自分の気持ちに正直になった時に一番最初に出てきたのがこの気持ちでした。

自分の気持ちに正直になる。これがまっすぐ系スクールアイドル、三船栞子というものです。

心配せずともちゃんと彼との人生設計は緻密に立ててます。

なのでその計画を進める為には無理やりにでも彼と一生を添い遂げる様な仲にならないといけません。

果林さんや愛さんと言った障壁はありますが、二人の愛の前ではきっと脆く崩れ去る事でしょう。

 

なので、その為には彼が必要不可欠なのです

私と深く愛し合っている彼が。

 

###

 

栞子ちゃんが僕に向かってジリジリと向かってきている。

一歩、また一歩と下がるといつの間にか壁まで下がっていた。

僕が多分力いっぱい栞子ちゃんを押せばきっと逃げれるけれど、足が竦んで動かなかった。

 

「私は貴方が欲しいのです」

「僕には何も栞子ちゃんが得する様な事はないと思うけど?」

 

唇の震えを何とか抑え囁くように紡いだ言葉。

 

「いえ、そんな卑下しないで下さい、私には貴方は宝石よりも億万の富よりも価値があります。そんな綺麗な貴方だからこそ私以外の人が手に入れてしまうこと、その輝きが曇ってしまうことを私が恐れているのです」

 

僕を見ているようで、僕を見ていない。

どこか奥底を見ているような栞子ちゃんの目に僕は恐怖を抱いてた。

そして、じっくり、ゆっくりと僕の方に手を伸ばして頬に両手を添えた。

力は全く入っていないはずなのに万力で固定された様に動く事が出来なかった。

 

そして、顔が近付いてきて唇にキスをした。

ねっとりと僕の口腔に侵入してきたものは、自由に僕の口内を這うように舐めまわした。

 

離れると栞子ちゃんが美味しいものを食べたように舌なめずりをした。

僕はただ呆然としたまま立ってることしか出来なかった。

 

「ふふっ、助けを求めようと思っても鍵は閉めてありますし、ここの鍵を持っているのは今は私だけ。生徒も今通る心配もありませんし、元々生徒会室を通る人は少ないです。すなわち何でも出来るという事です」

 

クスクスと笑いながら、僕を挑発する様にチャラチャラと鍵を揺らす。

 

「貴方には適正があるんです」

「適正……?」

「えぇ、私と一緒に隣で人生を歩んでいく適正です」

「僕にはそんな適性があるとは思えないよ」

「いいえ、そんな事ありません」

 

栞子ちゃんの目には仄暗さ湛え、ただじっと僕を見つめていた。

 

「それにしても、今回のラブレターの件、最初に私の方に来てくれても良いのでは無いですか?」

「え……?」

 

僕は記憶を辿った。

栞子ちゃんに愛と果林さんに相談したかを言ったかどうかを。

頭が絞れてしまうくらい考えても答えはNOだった。

いくら考えても栞子ちゃんに言った記憶は無い。

 

「ふふっ、あなたの事なら私は何でも知ってますよ、何たっていつも貴方を私は見ていますから」

 

とても気味が悪かった。

本当か嘘か分からないけれど、言葉は何処と無く何故か信憑性があって。

 

「先程も申し上げましたが、貴方は私のこれからの人生設計には必要なのです。貴方にはそう言う適性があるのですから。したがってこれから貴方の輝きを奪い取る女性、特に愛さんや果林さんとの接触を禁じます」

 

恍惚とした笑みを浮かべて楽しそうに笑う栞子ちゃん。

 

「それはいくらなんでも横暴じゃ……」

 

栞子ちゃんのこれからに僕が必要というのは譲るのは100歩じゃ足りないし、どのくらい譲れば良いのか分からないけれど、それよりもっと分からないのが愛や果林さんとの接触を禁じる事。

 

「いえ、私が決めたことですのでしたがって貰います、貴方の事は何時でも私は見ていますのでズルをしていても分かりますよ?」

「同じ部活の仲間だしさ……愛なんて家族ぐるみだからさ、いきなり態度が変わると……」

「なら、必要最低限の会話、これならどうでしょう。部活の必要な会話は許しましょう。しかしそれ以外の事、果林さんの場合は2人きりで話す事、愛さんは二人の接触が多く見られるので肉体的にくっつく事を辞める事」

 

そんな事栞子ちゃんが決めるべきではない、僕はそう思った。

すると、待っていたかのように携帯の着信音が静かな生徒会室に響き渡った。

僕は主も見ずに出ようとしたけれど、いつの間にか携帯は栞子ちゃんが持っていて、ソファーへと綺麗な放物線を描きながら落ちていった。

 

「今は私の事だけを見てください」

「……そういえば果林さんから迎えくるように言われてたからさ」

 

きっとさっきの電話の主は果林さんかもしれない。

 

「そういえば、マネージャー代わりになると言うような事を言ってましたね、私の方から断るメッセージを入れておきます」

 

先程投げた僕の携帯を拾って十秒ほど操作して、自分の机に置いた。

栞子ちゃんは「はぁ」と仕切り直すようにため息を付く。

「先程の条件ではどうでしょう、私なりに譲歩した方ですし。勿論破るような事があれば遠慮はしません。バレないなんて思っていてもいつも私は貴方を見ていますから」

 

嫌な静寂が一時、生徒会室を包んでいる。

すると付け足すように彼女は人差し指をピンと立てて僕の鼻先に付けた。

 

「もし、破ったらスクールアイドルの活動停止にでもしましょうかね?」

「栞子ちゃんはスクールアイドル楽しくやってくれてたんじゃないの?思い直してくれたんじゃないの?」

「えぇ、スクールアイドルはとっても楽しいですよ、でもそれより私には貴方が欲しい」

 

仕方なく僕は承諾をした。

彼女の足元に広がる崩れかかった崖の危なさを知りながら。

 

###

 

朝、いつものように愛と一緒に学校に登校すると、昇降口に栞子ちゃんが立っていた。

愛は寂しそうな顔をしながら、何かを悟ったように「先行ってるね」と言って教室へ向かった。

 

「それではいつものように」

 

栞子ちゃんは目を閉じて、僕はキスをした。

破った時のかなり譲歩した罰だった。

そんな風に歪ながら僕なりに、今の僕も違う世界の僕も幸せに暮らしている。

 

「貴方には必要なのは私だけですから」

 

きっと違う世界でも僕は誰かに縛られながらの自由だろうけど。




栞子ちゃん、愛、果林さんのヤンデレ増えるといいなと願いながらこれにて完結です。
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