ハーメルンではエターにならぬよう心掛けたいと思います(フラグ)
地下の一室に見た目が濃いと言えるファン達が集う。
ここはライブを中心に活躍するアイドル達が集う場所。そこでピンク色の縦巻きロールで制服をイメージした衣装を着た一人のアイドルが演奏を終え、ファン達に手を振る。
「みんなーありがとう!」
ステージ裏に入ると茶色のロングヘアの女性が近づく。
(仕込みは終わりました)
(ご苦労さま。今日は何人……なのかしら?)
少女はニヤリと笑い、ステージ裏を後にした。
「応援してます!頑張って!」
「初めてですがファンになりました!」
「今日もいい歌をありがとう」
「ありがとう」
「これからもよろしくね」
「楽しんでくれてありがとう」
常連や初見にも笑顔を欠かせない少女、それにファンも喜ぶ。
そんな微笑ましい雰囲気が続く中……。
「やった!当たりだ!」
「俺もだぜ!」
まさか、自分がそう思い。
「おめでとうございます……さぁコチラです」
黒髪でパンツスーツの女性が2人に祝福の言葉をかけ、とある場所に案内する。
「おい?アレなんだよ」
初めてライブを訪れた男は親友に尋ねた。
「アレは常磐エレナちゃんのチェキを買って当たりを引いたんだよ」
「何が貰えるんだ?」
「エレナちゃんと近くで会話」
「へぇー、お前当たったのか?」
「まさか!それにどんな事があるのか分からないんだよ」
「なんだそりゃ」
友人の返答に肩透かしをくらう。
「羨ましいよなぁ……アイツら」
「やる事やったし、俺達は帰るぞ」
「おー」
去りゆく男達を見て、ロングヘアの女は皮肉混じりに呟く。
「運が宜しいですわね……あのおふた方は」
―――*―――
とある個室、そこにはエレナとファンの2人がテーブルに向き合って座っていた。
「ようこそ、エレナと楽しい時間を過ごそうね」
満面の笑みを浮かべるエレナにファン達は目を逸らしてもじもじとしてしまう。
「可愛い」
ポツリと呟いたエレナのその言葉にファンの2人は更にモジモジとなる。
「いや……」
「その……」
「大丈夫……直ぐに楽になるんだから」
すくっと立ち上がって両手を広げると空気が変わる。
「何?エレナちゃん?」
「手品見せてくれるの?」
「ううん。手品より面白い事を……ね?」
緑色の触手を出すとファンの1人に突き刺す。
「うわぁぁぁ!」
親友が悲鳴をあげるもエレナは吸収を続ける。
「エレナね……これもお仕事なの?」
アイドルとしての笑顔を見せるエレナ。今までなら自分にだけが見れる特別だと感じる。だが、その顔に恐怖を感じていた。
「ホントはすぐだけどじわじわと吸ってあ・げ・る♡」
無邪気な笑みに変え、しゃがむと男は恐怖で震える。
「た、助けて!!」
「何でそう言うの?」
首を傾げるエレナは男の首を絞める。そして……。
「どうでもいい情報ね……死んで?」
汚いモノを見る目で男にトドメを刺し消滅させるともう1人の男の方を見る。
「ヒィッ!?」
「どうせ貴方も大した情報も無いから……」
もしかしたら助かるかもしれない……そんな幻想を抱くが、エレナの側からサボテンの怪人体が現れ男は絶望の顔を浮かべる。
「コイツの情報はアンタが吸いなさい」
「了解しました」
そう言い、エレナは個室から去る。そこに残ったのは……。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
男の悲鳴であった。個室から出てきたのはその男であり、【先程】とは違う男が帰り去った。
エレナの元に茶髪のロングヘアの女性が駆け寄る。
「お疲れ様です。檮杌様」
「里崎……アイツにはキチンと伝えた?」
「はい。抜かりなく」
「なら良いわ」
そう言うと、エレナと里崎は闇の中に消えていった。
―――*―――
四ノ宮高校では朝、それぞれの学び舎に向かう生徒達の賑わっていた。
「おはよう!晴人!」
「あ、おはよう。明倫さん」
相変わらず元気な声な明倫に晴人も笑みを浮かべて挨拶を交わす。
「うん!相変わらず、晴人は元気ダ。じゃ教室でナ!」
手をヒラヒラ動かすと、駆け足で自分の教室に向かう明倫を見送る晴人。その後ろでは……。
「おはよう。ハルくん」
「あ、おはよう!ミカちゃん」
幼なじみに挨拶をする晴人。
「李さんと仲良いんだね」
「明倫さんも僕も料理屋だからね」
「そういえば、そうだったね……」
「ミカちゃん?」
「何でもない!ほら!早く教室に行かないと!」
予鈴のチャイムが鳴ると晴人と美風は急ぎ足で教室へと向かった。
―――*―――
寺野屋
「葵、店前を掃除たのむ、モンドさんはテーブルを拭いてからの床掃除だ」
「わかったわ」
「わかりました」
箒と塵取りを持ち、外に出た葵の前に赤髪でウェーブヘアの女性が立っていた。
「
「おはよう、葵……今日も負けないわよ」
挑戦的な言葉だが口元には笑みが浮かんでいた。
「勿論……あたしも同じよ」
葵もその挑戦を受けると美凰は背中を見せて立ち去る。
「じゃお互いに頑張りましょう」
「源二さん……あの人は?」
「李美凰……向かいの中華料理屋【口福】のオーナーだよ。それに娘さんが晴人と同じクラスなんだ」
「そうなんですか……」
「ほら!手が止まってるぜ」
そう言い、源二はモンドの背中を叩く。
モンドはそれでハッとなり作業を再開した。
「俺も、うまい飯を作るように頑張らないとな!」
気合いを入れた、源二もまた厨房に戻り準備を始めた。
―――*―――
「ふーん、人間の授業って暇そうね……現に寝てる奴もいるし」
エレナは遠くから四ノ宮高校の授業風景を木の枝に立って見ていた。
「さてと……青龍の奴は……ビンゴ♪」
目で追いやると、ノートを取っている晴人を見つける。
「改めて見るとあたし達の驚異になる男とは思えないわね……」
興味が無いような素振りを見せるとチャイムが鳴る。ある人物の視線が晴人に向いてるのにエレナは気付く。
「続けてビンゴ……後は待つだけね」
ニヤッと笑うとその姿を消した。
「ん?」
気の所為かなとふっと外を見る晴人だが、何も無いとみて次の授業の準備に取り組んだ。
「……気の所為か」
龍也もそう呟いたことは誰も知らないでいた……。
―――*―――
晴人はモンドの部屋でシミュレーションを行い、ゴーグルを外した。
「ふぅ。ベストスコア更新かな」
「お疲れ様……日に日に成長しているのが分かるよ」
「ありがとうございます……守りたい人がいますから」
「美風ちゃんだね」
「いや!その!!」
モンドの言葉に晴人は顔を赤くする。
「図星みたいだね」
そんな中晴人のスマホが鳴る。
「はい。ミカちゃん……どうしたの?」
「2人は預かったわ……取り返して欲しければ場所は──」
電話が切られると晴人は振り向かず、扉に手をかけたまま止まる。
「モンドさん、行ってきます」
「あぁ……」
怒りが混じった気迫にモンドはただ頷くだけしか無かった。
(待っててくれよ……ミカちゃん!)
―――*―――
地下ステージ、ライトで照らされた場所にエレナとファンの男、美風に顔は見えないが彼女と同じ女子の制服を履いた人物だけが映される。
スマホを元の持ち主である美風に返すエレナ。その顔は悪戯が成功して喜ぶ子供のようであった。
「貴方【達】……いったい何なの?」
美風はエレナとファンの男を睨む。
「そんな顔してもダメよ……アハハハハハハ」
アイドルとしての顔で美風を小馬鹿にするエレナは高笑いをする。
「李さんは関係ないじゃない!」
美風の横には気絶している明倫がいた。
「あら、アタシのする事を止めようとしたのが悪いじゃない」
平然としているエレナに美風は恐怖を覚える。
「エレナ様、気絶している女は頂いても?」
「それはお預けよ」
「……」
扉が開かれると晴人が姿を表す。
「ハルくん!」
幼なじみが来た事で顔に希望が浮かぶ美風。エレナは尖った牙のような歯を出して笑みを浮かべた。
「明倫さんも……」
友達を巻き込んでしまった。そんな後悔を思うがすぐにエレナの方に顔を向ける。
「来たわね!青龍……さぁ楽しみましょう!」
エレナが殺気を出すと晴人はセイリュウブレスに気を込めた。
「龍……」
「待ちな!」
ファンの男はサボテンの怪人であるカクタス・メモリアンに姿を変えると、腕についてるトゲを美風と明倫に向ける。
「どういう事だ!」
「アンタの知り合い?なら都合が良いわッ!」
身を低くして晴人の懐に入り込んだエレナは掌底を打ち込む吹き飛ばす。
「ガァッ!?」
直撃を受けた晴人は床に転がる。
エレナはそれを見て近付いて脇腹を踏みつける。
「呆気ないわね。少しは──」
「抵抗しなさいよ!!」
サッカーボールを蹴るように晴人を吹き飛ばした。
「ハルくん!」
「動くなって!!」
カクタス・メモリアンが美風を抑える。
「これで終わり!」
エレナは足を振り下ろし、晴人の頭を潰そうとするが、晴人は回避して立ち上がる。
「骨はあるようね!」
エレナはもう一度、掌底を仕掛けるが晴人はその逆に腕を掴み投げ飛ばす。
メモリアンとはいえ女性であるエレナは一瞬の出来事の為、ふらつく。
「エレナ様!?」
カクタス・メモリアンが晴人にトゲを連射する。晴人はしゃがみこみ回避しながら近づいて行く。
「ッ!」
晴人のする事を悟ったエレナは蹴りを晴人の頭に入れようとするが、晴人は短い動作で回避する。
「ちょこまかと!」
カクタス・メモリアンが再びトゲを放つがその1つがエレナに向かって放たれた。
「このッ……バカ!」
手で払い除けてトゲを落とす。
「今だ!」
一瞬の隙を見逃さず、晴人は美風の元にたどり着いた
「大丈夫かい?ミカちゃん!?」
「うん!」
「明倫さんを連れて逃げるんだ……!」
「……わかった!」
美風は明倫の腕を肩にかけ引きずるようにステージを後にしようとした。
「させるかよ!!」
「ッ!」
カクタス・メモリアンは美風目掛けて針を放つも晴人が身を呈して狙いが外れる。
「ハルくん!怪我は!?」
腕からは血を流す晴人を、美風は心配する顔で見る。
「こんなのかすり傷!良いから急ぐんだ!」
美風を心配させまいと、晴人は
「このバカサボテン!アタシを狙うなんていい度胸じゃない……処分されたくなかったら……」
「わ、わかりました!」
「龍装!」
青白い光が晴人を覆う。その光景にボソリと呟く声が聞こえる……。
「晴……人?」
安堵したのか、その人物は再び眠りに着くのであった。
―――*―――
「遅いな……晴人のやつ」
「ホントね」
源二と葵が息子が帰ってこない事に不安を抱く。
「あの。僕が行きましょうか?」
「モンドさん!?」
「あなた、そろそろ忙しくなるわ。ここはモンドさんに任せましょう」
「しかしな……」
「日頃お世話になってますし……源二さん!すいません!しばらく抜けますね」
(カメラが示した場所は……何か嫌な予感がする……無茶だけはするなよッ!晴人くん!)
モンドは急ぎ足で現場へと向かった。
―――*―――
「このぉ!死ねぇ!」
カクタス・メモリアンは大振りのパンチを繰り出すが、セイリュードは回避する。
「まずは明倫さんの分だ!」
怒りを込めた重い拳の一撃がカクタス・メモリアンの腹部にめり込む。
「ガァッ……抜かせ!!」
後退りをするも再び拳をセイリュードに向ける。
「な……グガァ!」
その拳はセイリュードに受け止め、握り締められ、投げ飛ばされる。
「この……ッ!」
カクタス・メモリアンは起き上がろうとするもセイリュードの膝蹴りをくらい再び地に伏せる。
(感情が強くさせてる……厄介な代物ね)
「アタシは用があるからここからいなくなるわ、しっかりやりなさいよ」
エレナはカクタス・メモリアンにそう言い闇に溶け込むように消えた。その手には晴人の血が入ったアンプルを握られていた……。
「後が無いんだ……くたばれや!!」
腕だけではなく頭、脚のトゲを弾幕のように飛ばし、セイリュードを襲う。
「……ッ!」
腰からセイリューバーを抜き、自身に来るトゲを斬り払う。だが、それでもトゲはセイリュードに突き刺さっていた。
「アレだけ言ってこのザマじゃ意味ねぇよなぁ!」
全体重を使ったカクタス・メモリアンの体当たりをくらいセイリュードは壁まで吹き飛ばされる。
「これでいい加減くたばれ……!?」
壁は壊れ瓦礫となったその場所には闘志を燃やす、セイリュードが立ち上がっていた。
「何でくたばらないんだよ!」
「
狼狽える、カクタス・メモリアンを後目にセイリュードは飛び上がり、その頭を掴み壁に叩き付ける。
「がはぁ!」
クレーターが出来る程の威力がカクタス・メモリアンにダメージを与える。だが、それでも力を出して腕のトゲを至近距離で飛ばし、セイリュードはそれをくらう。
「ッ!」
「まだだ!!」
タックルをするも、セイリュードはセイリューバーで斬り、タックルの体勢が崩れる。
その隙を見逃さなかったセイリュードは袈裟斬りでカクタス・メモリアンにダメージを与え、その余波で吹き飛んだ。
「……舐めるなよ!このッ!」
再び全身のトゲを飛ばす、カクタス・メモリアン。セイリュードはセイリューバーを銃モードに変える。
「ドラグバースト!!」
龍の姿を象るビームが自身に迫るトゲを飲み込むように破壊する。
その威力は落ちることなく、カクタス・メモリアンを貫き消滅させた。
「がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「これが……ミカちゃんの分だ」
そう言い、変身を解除した晴人はステージを後にした。
―――*―――
「ミカちゃん!」
「ハルくん!」
外に出た晴人は美風とまだ気絶している明倫を見つける。
「偶然とはいえ明倫さんも狙われていたなんて……」
血が出るほど強く握りしめる晴人の手に美風はそっと手を置く。
「自分を責めないで、ハルくん。わたし達を助けてくれた。李さんも無事だった……それで良いの。今は……」
その言葉にハッとした晴人は握り締めた手を解くと、後ろから声が聞こえる。
「晴人くん!こんな所にいたのか!」
「モンドさん!」
「無事みたいだね。ミカちゃん……どうして君が?」
「実は……」
晴人は事の経緯を説明した。モンドはただ黙ってそれを聞いていた。
2人は知らなかった、目を覚ました人物の事を……。
「なるほど。その少女は恐らく上位クラスのメモリアンだ、良く無事だったね」
「部下のお陰で助かったモノですから……」
「ハルくん……」
「何?ミカちゃん」
「こんな時にだけど……助けに来てくれてありがとう」
「当たり前だよ!ミカちゃんは僕が守るって言ったじゃないか」
「2人はそんな関係なんダ……うんうん」
「え?」
「!?」
晴人と美風のやり取りに第三者が入っている事に2人は気づいた。
(あの子は晴人くんの知り合いかな?)
モンドが疑問に思うと、ポケットに通信機に振動が起きる。
(これは……この反応はもしかしたら!)
「明倫さん!?」
「いつ起きてたの?」
明倫は何時もの明るい雰囲気ではなく真剣な眼差しで2人を見つめ質問に答える。
「そこのモンドって人と晴人が会話している所からだヨ……」
その答えに晴人の顔は青くなる。
(マズイ!バレた!?)
「教えてヨ。メモリアンと晴人の事を」
普段見せない明倫の真剣な顔に晴人は何も言えずにいた。
「分かった、教えるよ。明日は土曜日……午後にでも、晴人くんの家に来てくれるかい?」
この空気を切るような発言をしたのはモンドであった。
「わかったヨ。明日の午後だネ……バイバイ」
後ろを振り向き手を振り、明倫は帰っていくのを見ると晴人はモンドに質問を投げかける。
「モンドさん!あんな事を言って大丈夫何ですか……明倫さんの事だから」
「実は通信機にある反応があったんだ」
「反応?」
その言葉を聞き、晴人と美風はまさかと言うような表情になる。
「晴人くんと同じ適合者だと言うことだ」
―――*―――
廃ビルの屋上にエレナと渾沌がいた。
「はい……アンタが欲しがってたモノがこのアンプルに入ってるわよ」
「あぁ」
「それで何をしようとするのよ?」
エレナの答えに渾沌は何も答えず立ち去ろうとした。
「ちょっと!少しは教えなさいよッ!」
「青龍の適合者を倒す……それだけだ」
そう言い残し、渾沌は溶け込むように消え、残ったのはエレナただ1人である。
「何なのよいったい……こんな時は、プリンをドカ食いでもしてやるわ!」
1人残されたエレナもまた、廃ビルから消え去った。